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生き残る為に

味方‥でしょうか?

王子様とクイーン達はいつのまにかいなくなっていた。



痛さで少し気を失っていたかもしれない。去っていったのも分からなかった。

助かったのか?



あ〜、動け自分‼︎


このまま何もなかった様に、こんなワケもわからん所で密かに殺されたらたまらない…

逃げる?

逃げられる?逃げなきゃ!


痛みを堪えて見回すと、六本脚の小さな異性物?がチョロっと進み壁の穴に入った。その横に人の足?それに沿って視線をあげれば優しげとは言えないが、殺気や侮蔑の感情を出していない男が此方を見ていた事に気がついた。


いや、正しくは私の腕のウェアラブル端末をガン見しているのか?


暗闇の中で何度も光って動く事にいたく興味を示しているのだろう。

起き上がる為に腕を動かすと視線が追ってくるし、服を整え砂埃を払ったりしても私の顔では無く、腕をガン見されたら流石に気づくよね。

これは交換条件での交渉が有効かもと判断して話しかけようとしたが、さっきから息をするたびに激痛が走るんだけど‥

残念なことに再び私はまたブラックアウトした。



***  ***



「あのこの時計を見ても良いですよ、それとも‥触りますか?」


再び目を覚ましたら、やけに近くにあの男が‥(多分あのカビ臭い部屋にいた人だと思うが、)私を見るのではなく、気を失う前と同じに私の腕‥のウェアラブ端末機に注がれていた。


私に興味なし過ぎて笑える。


「時計‥それが?そんなに小さいのに?針はどこに?本当に触って良いのかい?」

「ええ、でも条件があります‥イタッ」

「‥ほう、言ってごらん」


うわっ雰囲気が変わったよ〜なんか怖いっ。

けど言う!言わなきゃ!


「ゴボッ、では私のことをイッタタ、殺さないでこの世界にゴホッ、客人として置いてくれるなら、私の世界の物をお見せする事も出来ますし使用法も教えますがゴホッ、イッ‥如何ですか?」

「拙い交渉ですが、しかしソレにはとてもそそられますね。しかしこれ以上の会話は酷というものですね。良いでしょう客人としてお迎えしますよ、この屋敷の部屋と‥侍女を付けましょう」


やった!拙い交渉とか言われたがそんなことに構ってはいられないのよ!


ん?この屋敷の部屋?

周囲を見回せばと言っても頭を動かせる範囲だけだが、いつの間にかあの薄暗くカビ臭い部屋では無くなっていた。

シャーとカーテンを開ける音の後に明るい日差しと、輝くばかりの光に照らされた室内が見えた。


ベルサイユ宮殿とは言わないが猫足のテーブルやアンティークな棚に、ご立派な誰だか解らない勇ましい軍人?とドレス姿の女性の肖像画がどど〜んと掲げてある部屋に居た。


「あ〜気を失っていたので勝手に運びました。ここが貴方の部屋‥居住区となります。危険なので暫くはここから出ないで下さいね、もうすぐ夕餉も来ますよ‥食べれますか?」


なんと豪華な部屋と侍女まで付けてもらえ、どうやら暫くは殺されずにこの異世界(多分)に客人として逗留出来るらしい。

もしかしたら牢にでも入れられるかと思ってけど、豪華すぎるけど普通に部屋で、ご飯も貰える生活を何とか手に出来たみたい。


ん?はなからここに連れてきてくれたなら、私の物をあげますよの交渉は要らなかったのでは?


やられた‥


いや、しょうがない。命のための担保はあったほうが良いはず、対応が違ってくるはず。




時計はあげられないけど、見せるのは出来る。まずは時計の代わりにボールペンでも出しておこうかな?

私の荷物は‥あっ足元に置いてくれている、良かった〜。



賄賂になる程でも無いが、実用度の高い物の方が喜ぶ‥よね?多分。


時計は充電が切れたら全く動かなくなるのだから、壊れたからと此処から追い出されたり密かに殺されたりは避けたい。


生きのびる為の貢物として他大学との交流で頂いたボールペンをまずは差し出した。(大学名がドーンと書かれてますが漢字で読めないでしょうから良いよね?記号だ記号)


配布物にしては書きごごちがいいし、普段使いのお高いボールペンやシャーペンは後々交渉の為にもったいぶって出した方が良いだろう。そっとペンケースをリュックに戻した。


これは景品でもこの世界にはまだ無い物で(あの埃臭い部屋の隅の卓上に羽ペンがあるのはチラッと見えた)インクを付けずに書き続けられるペンはかなり気に入ってもらえる筈だ。


「あのコレご親切にしてくれたお礼です、お納め下さい。ボールペンと言います。ここを押してペン先を出して書きます。書き終わったらもう一度ここを押してペン先を戻します」

「ほ〜 すっ凄いな、何だこれは何処にインクが?ペン先がカチャカチャ動くぞ!おお〜どんな作りなのだ?どんな仕組みになっているんだ?ん?字が擦れない、は?もう乾いているとは何だ!なんなんだ?」



興奮してらっしゃいます。


貰ったったばかりなのでインク量は十分なはず(で、試し書きしているのは大切な書状ではないのだろうか?いっぱい字が書いてあるし重要とか書いてあるけど?大丈夫なのでしょうか?)


当面コレで生きられる、よね?

偉そうなおっさんにはへつらっとけ!


「あっ!今あんまり書かないで、インクがなくなりますよ。こっちのインク付けても書けませんからね」


そう言うとピタリと試し描きが止まった。

案外素直なおっさんね。

次のペンの出番が早いと私の命も持ちが短いかもしれない。そんな恐怖は付きまとうのでできればチマチマ使って欲しい所だ。


さて、この胡散臭いおっさん‥(いやおっさんは失礼かな?明るい所で見たら案外若そう)偉そうだし、何処ぞの屋敷?に私の部屋を用意できるのだから、それなりの権力と金をお持ちなのは確かだよね?


信じられる人か否か?

あのポールペンでいつまで持つか‥勝負ってところかな?

次の用意はしておこう。私の命を繋ぐものだ


*** ***



「あ〜失礼した コホン…私はこのエグサリオ王国の宰相をしておりますバーミリオ・リジュオーサ侯爵です。お見知り置きを」


この国の宰相

宰相?若過ぎでしょ?


あの王子風パツ金よりは年嵩だろうが政治のトップとなればそれなりの年だろうに、見た目まだ20後半か30代そこそこっぽい。


長身痩躯で眼鏡、長めで茶の強い金髪は後ろで一纏めにしているそこそこイケメン。

文官系かと思いきや腰には帯剣しているのってここのしきたりなのかな?

まぁ日本の武士も事務系の勘定方であっても脇差さしてるんだから同じか。

因みに眼鏡を左手中指で眼鏡のブリッジを下からクイッと上げるのが癖のようね。


右利きだが書物をしながらでも手を止めることなく眼鏡を上げるための左手使いと見た!合理的な人なのかも。


言動がポヤポヤしているのかと思いきや案外眼光が鋭い。名と役職を言うのは当たり前だろうが位まで言ったよね。

態々自分は貴族だとね。




ここは異世界で、きっちりと地位やら立場が明確化された世界であるのはわかった。王子と名乗るヤツもいるのだから、まぁそう言う世界だよね。元の世界と変わらないし、対応するのは人である。

六本足のネズミではない。


そんなのが喋り出す世界でなかったのは良かった‥かな。

でも、貴族として対応すると言ってるの?


ネズミより不味いのか?

それは私にとって凶と出るかもしれないな。


この人は侯爵と言ったから結構上位の貴族なわけで、護ってくれるのか?監禁されるのか?


私の命預けても大丈夫な人なのか?


まだ名を名乗るのは怖いので、お辞儀だけして様子を窺う。

あちらもこっちの様子見か、互いに無言の睨み合いが続き宰相様が先に折れた。


「宰相としてもまずお詫びを申し上げます。本来貴女方を召喚したのは王の命でありますが、直接の対応を任されたのが先程のバ‥第2王子です。配慮が足らないのと女好きは何時もの事ですので、ホント殿下がすみませんねー」


今バカって言いかけました?

あのパツ金バカは本物の王子なんだね。まだ疑ってたけど本物ねぇ‥


この国大丈夫か?


すみませんねーと軽く謝罪をくれた宰相様だが、その目が笑って無くて若くとも宰相が出来るくらい怖い人なのはなんとなくわかりました。イケメンの表情ないのって怖いだけだよね。


自国の王子をさり気なくバカ扱いしたわよこの人。

私の命、この人に預けてホントに大丈夫かな?

でも今現在頼れるのがこの人しかいないのだから、頼るしかない‥。

ボールペンはもう宰相様のポッケにお高そうなシルクっぽいチーフと共に格納されてしまった様で、時折その辺りをポンポンと嬉しげに叩いている仕草は可愛げあるけど、気に入っていただけたなら良し!


取り敢えずの貢物は成功のもようと思って良いかな。



「明日から色々お話しを伺います。後で医師をよこしますから休んでいる様に、あぁ来たね。この子は侍女のアンナです。貴方付き侍女ですので何なりと申し付けて下さい。では私は失礼します」

「あ、あの私はイグサと申しますお世話になります」

「はい、イグサ殿よしなに」


宰相様はご飯を運んでくれた侍女ちゃんが丁度来たので、交代とばかりに立ち上がり私の名を覚えこむ様に数度口にしてから部屋を出て行ってしまった。

名だけ‥家名だけど、言ってみたのはコレで何かしても何も変わらなければ再度名を聞いてくるだろうという実験、名は簡単には教えないよ。異世界に人を召喚してしまう魔法がある世界を侮ってはダメ!


だよね。



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