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復活した、でもゴブリンです

 落ちる落ちる落ちる。

 物音なんて一切しないが、この世界に来た時のように、自分の身体が落ちていくのを感じていた。

 そして着地、共に襲い来る激痛。

 痛ぇ!


「新入りが来たな、さっさと持ち場に付け!」

「武器はその辺のを拾え、早く前線に復帰しろ」


 なんだなんだ。

 響く怒声と刃物がぶつかり合う音、そして時折聞こえる悲鳴。


「よぉ、さっきぶりだな」


 あっ、パンティー兄貴じゃないですか。

 よかった。正確にはパンツ被ってるわけじゃないから、もうパンティー兄貴とは呼べないのだが、知っている顔がいると安心できる。

 それより兄貴、俺らどうすればいいですかね。


「良いことを教えてやろう、ゴブリンはな、弱い」


 知ってます兄貴。

 今しがたその弱さを実感したばかりです。

 いや、さっきの全身鎧に関しては俺がドラゴンでもない限り勝てる気しないけど。

 なんでそんな分かりきったことを今更?


「だから俺らが選ぶ方法は基本的に2つだ」


 そう言って兄貴は顎で怒声の響く方を示し、口を開いた。


「一つは群れることだ」


 群れるという手段を選んだ場合、長生きをする場合と即死する場合の両極端らしい。

 大きな群れ、果てはゴブリンだけではなく、より上位種族が束ねる群れに属し、その先兵、つまり使い捨ての駒として戦う。

 ただ生き残った場合の見返りは大きく、群れ全体の実入りから考えれば少ないものの、上手く世渡りをしていけば、ゴブリンとしてはかなりレベルの高い水準を送れるらしい。

 ただし集団に属する以上は一定のルールがあり、郷に入っては郷に従えというか、突撃しろと言われたら死ぬかもしれないけど突撃する。

 基本的に逃げるのは一番最後だし、場合によっては死ぬまで戦うことも要求される。

 まぁそこまで従うゴブリンも少なく、大抵は不利と分かったら逃げ出すらしいが。


「んで二つ目が、はぐれゴブリンとして生きることだ」


 はぐれゴブリンは、群れから逃げ出したゴブリンがなったり、そもそも集団に属するのが苦手なゴブリンがなるらしい。

 パンティー兄貴が言うにはゴブリンが死んだ場合、全員が空から叩きつけられるような痛みと共に復活するので、いくら死なないといっても、何度も群れに入って即死を繰り返すと精神的に参るようで、そういった理由でも、はぐれゴブリンという道を選ぶことがあるそうだ。

 はぐれゴブリンの生存率は、群れゴブリンと比べて段違いに高い。

 運悪く戦闘が出来る人間や、その他ゴブリンも食べる動植物などに遭遇してしまえばそれまでなのだが、先程までのパンティー兄貴や物干し竿兄貴達のように、小規模の個体同士で活動する分には自由に生活が出来るようだ。

 生活も、まぁ貧相といえば貧相なことが多いのだが、自分で稼いだ分がそのまま手に入るのが特徴だ。


「まぁ、今回みたいな場合な」


 最後にそう言ってパンティー兄貴は足元に転がる棍棒を手に取り、俺に銅の剣を渡すと、軽く肩を回しながら怒号鳴りやまぬ戦場へと体を向けた。


「とりあえず参加してみて、死にそうなら逃げりゃいいんだよ」


 この世は弱肉強食ではなく適者生存。

 場の空気を読むのが一番大事だぜ。

 そう言って人間に殴りかかる兄貴に置いて行かれないよう、俺も慌てて剣を構えて下手くそな構えで突撃した。

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