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ゴブリンでよかったのかな

 翌日、昼頃になって起きたが、ゴブリン先輩達はアホみたいにデカいいびきをかいてまだ寝てた。

 飲み過ぎたせいもあってか、若干二日酔い気味である。

 ゴブリンは、最高だと思う。

 自由な時間しかないし、どんなことをしても怒られやしない。

 他人に迷惑かけても、好きな時に寝ても、好きな時に起きても、どれだけ食べても。

 別にゴブリンだから、元々人類の敵だから怒られるもクソもない。

 俺はなんとなく洞窟の外に出て座り込み、真上で明るく差し込む朝日の下で伸びをした。


 前世の記憶も、殆ど残っちゃいないが、朝日を浴びたのなんて久しぶりな気がする。

 いや別に引きこもりだったわけじゃないんだが、終電が残ってるかも怪しい中で帰宅して、そのまま飯なんて作る気もなく玄関先で寝て、そのままいつも通りに焦燥感と共に起きて、慌ててまた荷物そろえて、まだ薄暗い朝を始発に向かって走って、また仕事して、最近営業成績良くないから昼飯の時間なくて、必死に電話かけて、それでもダメで、その日は終電にすら乗れなくて、仕方ないから会社のデスクで寝て、翌朝上司の怒鳴り声で起きて。


 なにしてたんだろ、俺。

 なにが楽しかったんだろうなぁ。

 思えば前世で、心の底から笑ったのなんて、殆どなかったかもなぁ。

 唯一あったのは子供の頃で、まだ将来あって、きっとこの子は天才だなんて期待されてて。

 でも結局バカでさ、進学したけどロクな成績じゃなくて、大学まで行ったけど、殆ど聞いたことねえ大学で、それでも俺は他の奴らよりマシだなんて心のどこかで思ってて。

 上を見てもキリがないから、見下すことだけやってた人生だったな。


 あぁ、父ちゃんと母ちゃん元気かなぁ。

 散々迷惑かけたしなぁ、死ぬ際まで親不孝だよ。

 いい酒出す店に誘って、父ちゃんにありがとうって言いたかったなぁ。

 温泉にでも誘って、母ちゃんにありがとうって言いたかったなぁ。

 金だけは少ないけど、使う時間も無かったから溜まってた銀行の口座見つけて、二人で使ってくれねえかなぁ。

 老後の資金にでも使ってくれたらいいなぁ。

 どうせ俺はもう使えないから。


 気が付いたら涙が出てきた。

 仕方がねえのにな、ゴブリンになって、全部を投げ出した今となっちゃあ、どんなに泣いたってしょうがねえのにな。

 前世で唯一守ってた、犯罪だけはしねえってラインもアッサリ踏み越えた今となっちゃあ、別にどうにもならねえことなのにな。


 ごめんなこんな息子でさ。

 ごめん。


「おう、もう起きてたのか」


 パンティー兄貴じゃないですか。

 起こしちゃいましたか、すみません。


「謝ることなんてねえよ。ん? お前泣いてたのか」


 あぁ、なんか朝の日差しが眩しくてね。


「ふぅん」


 そう言って頭にパンツ被ってる方の兄貴も俺の隣に座って、ボーっと朝日を眺める。

 昨日まではこの人達を臭く感じたもんだが、鼻が慣れたのか、今は何も感じなくなっている。

 兄貴は頭を痒そうに指で掻くと、欠伸をして再びゴロンと横になった。


「今日はいい女に出会えるといいな」


 そうですね、楽しみですよ。

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