お腹が空いた、飯を奪おう
凄い高いところから落とされるような感覚がした。
んで実際落ちた。
激痛が走った。
痛ぇええええええええええええ!
「おっ、新入りが」
「元気があって何よりだな」
絶対骨の数本折れたわ、と思ったが次の瞬間に痛みは嘘のように引いていった。
飛び起きて体のあちこちを触ってみたが、どこも怪我をしている様子はない。
ただし全身の肌がもうビックリするくらい緑色だった。
さっきから俺に話しかけて来たのは、身長が100cmくらいで、鼻は太く垂れ下がり、ニヤニヤと黄色を通り越して茶色く染まった歯を見せて笑う小汚いオッサン。
そして俺と同じく肌が緑色で、茶色い襤褸切れを身に纏い、何故か物干し竿を背負っていた。
そしてもう1匹、身長は1匹目と同じくらいで、容姿も変わらないが、腰には錆びたナイフをぶら下げ、頭には何故か女性の下着を被っている。
間違いない、こいつ等ゴブリンだ。
「へへ、お前は運がいいぞ」
「そうだ、俺らは今から村に行って飯を手に入れる予定だったんだ。一緒に来い」
ん? なんかそれは悪いことのような気がするんだがな。
だけども俺の良心は一切咎めず、むしろ腹が減ったから早く飯を手に入れなければという焦りすら感じる。
まぁいいや、とりあえず飯を食ってから考えればいいだろう。
ついていきやすぜ兄貴達、へへ。
「おう、返事がいいな。付いてこい坊主!」
「いい飯にありつけるといいな、肉があったら分けてやろう」
そして俺は、少し穴の開いている麻袋を持たされ、同じく麻袋を背負ったゴブリンの先輩2匹に付いていき、住処である洞窟を出て山を下り、麓にある村へと付いた。
今はまだ昼間だが、先輩たちが言うにはこの時間の方が成人した筋力のある男達が働きに外に出ているため、むしろ好都合だそうだ。
「よう新入り、俺たちはどうして肌が緑なんだと思う?」
分からないです兄貴。
「おう、それはな、こうして林の中に身を隠せるからだ」
そうなのか、あまり隠れられているかは怪しい気もするんだけどな。
なんていうか普通に臭いんだよお前ら。
確かに身長も低いし、肌も緑色だから草に隠れてればパッと見は見えないかもしれないが、多分近くを通ったら臭いでバレると思うんだよね。
「よし、あの家から女が洗濯桶を持って外に出たぞ」
「すぐには戻ってこねえな、夫婦2人暮らしのはずだから今がチャンスだ」
村だから、そこそこ人はいるんだが、隙間の空いた柵があるくらいで殆ど警戒心が薄い。
一応警備として若い男が1人見回りをしてるらしいんだが、殆どザルだし俺たち3匹は難無くその家に侵入することが出来た。
「よし、ありったけの飯を袋に詰め込め」
「時間との勝負だ、食えるものならなんでもいいぞ」
俺は先輩たちの言う通り、目についた食べられそうなものを片っ端から袋に詰めていった。
しかし空いた穴からポロポロと食べ物が零れ落ちていくため、どうしたものかと周りを見渡した。
先輩たちはこの隙にもゴキブリのように食べものという食べ物を収集し、自分の袋の中に詰め込んでいく。
まずい、これだと俺だけ今日の飯が無い。
すると俺はたまたま近くの棚の裏に、布がはみ出しているのを見つけた。
それをひっぱると、大きくはないものの十分なサイズでなめらかな手触りの黒い袋が出てきた。
これは大きな収穫だ、俺は先程の先輩たちからもらった袋から食料を大忙しでその黒い袋に移し、既に袋が満杯になってしまった先輩たちの代わりに、見つけてくれた食料を詰め込んで、俺たちはいそいそとその家を後にした。