どうしようかな
うめぇ、うめえよぉ……。
塩もなにも振ってない、ただの焼いた魚がこんなに美味しいとは思わなかった。
川魚だからか、臭みが少しあるのだが、そんなものは気にならない程に美味しい。
久しぶりのタンパク質、心から堪能したい。
良い感じに焼いたおかげで、外の皮はパリパリに焼けた。
体もあったまったし、完全にお腹も膨れた。
しばらくはこの川の近くで住んでもいいかもしれない。
だとしたら体力が残っているうちに、雨風を凌げるようなところを探すか、自分で作るかしなければならない。
森の中に再び戻るのはリスキーだから、どうにか川辺で解決したいのだが、どこまでも石ころが転がっているだけなので、多分橋の下に住むよりも条件が厳しい。
でもなぁ、自分で作るって言ったって、木を切って建てるのは難しいしなぁ。
木を切ると言えば、そろそろ武器が欲しい。
転生すると所持品は全て失った状態で新たな地へと飛ばされるので、前回の戦場で使っていた銅の剣などは残念ながら持ってはいない。
次回もし群れに参加することがあったら、そういうのだけ持って逃げるのはアリだなぁ。
いやでも同族で盗みを働くと、また会った時にややこしくなりそうだしやめておくか。
そう考えると、やっぱり人から盗むのが一番効率がいいし、後腐れがない。
人里に行くと死ぬリスクはあるが、人里に行かないとゴブリンはきっと飢えて死ぬ。
道具を奪えるだけではなく、食料や衣服だって奪える。
倉庫や空き家にでも住み着けば、住む所だって確保できる。
やっぱり人里に行くしかない。
得られるリターンが大きすぎる。
死なないようにしなければならないのは自分の中では大切だが、同時に満ち足りた生活をしたいとも思う。
この川の先が海に繋がってて、港町かなんかがあったりしないかなぁ。
いや、川沿いにだって村があるかもしれない。
ならこれからの目標も決まった。
とりあえず川に沿ってひたすら下流に歩いていく。
ひょっとしたら海まで繋がっていないかもしれないが、とにかく歩いて終わりまで目指す。
人里が見つかったら、そこでどうしようか考えよう。
あんまり細かく予定を決めても仕方がない。
なるようになるさ。
前世はそれで人間として失敗したのかもしれないが、今はゴブリンだ。
むしろ計画通りにいかないことの方が多いのだから、その場その場に合わせる方が絶対いい。
だから、予定を決めないっていうのも作戦なんだ。
俺はそんなことを考えながら、石ころが敷き詰められた川沿いを、ひたすら歩いて行った。




