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火を手に入れたゴブリン

 初めての火起こし、さてどうなるやら。

 とりあえず木の棒を板に擦り付けてみる。

 しかし全く安定しない、ぐらつくし、俺が不器用なのもあってか全く摩擦熱が高まっていく感じがしない。

 多分これあれだな、まず擦り付ける側の木の枝の先を尖らせる必要があるな。

 そんで木の板の方は少し窪みを作っておかないと、安定もしないし、熱が溜まる感じもしない。

 先の尖った石を探してナイフのように使って枝の先を尖らせる。

 そして今度は板にその石をグリグリと押し付けると、いい具合に窪みが出来てくれた。


 よし、今度こそ。

 俺は祈るようにして枝を窪みに差し込み、擦り付ける。

 頼みます、どうか火が点いてください。

 ちょっとなんも考えずに川に入ってしまったせいで、さっきから寒いんです。

 あと出来れば寄生虫みたいなのがいると怖いので、焼いた魚が食いたいんです。

 お願いしますお願いします。


 そんなことを祈りながらかれこれ20分くらいひたすら擦ったころだろうか、枝の先から煙が出始めた。

 多分慣れてる人がやったらもっと早いんだろうが、それでも嬉しい。

 絶対に無駄にしないように、油断せず擦り続けよう。

 スリスリ……心なしか、寒さがマシになってきた気もする。


 そして遂に、待ちわびていた火が点いた。

 結構大きめについてくれたのでびっくりしたが、俺は近くにまとめていた燃料の木材の近くまで、火が消えないように急いで持って行った。

 持って行った後に、ちゃんと焚き木の形に予め組んでおくべきだったと後悔したが、とにかく酸素が通るように、そして火が消えないように小さな枯れ葉などから近くにおいて、燃え移るようにして枝を重ねた。

 これで本当に正しいのかは分からなかったからヒヤヒヤしたが、無事に立派な焚き木が出来たので、俺はなんだか感慨深い気持ちになりながらも近くで体を温めた。


 さて、この後どうしようか。

 とりあえず火が絶えないように追加の燃料を調達して、その後に魚を取りに行こう。

 手掴みの難易度は高そうだが、それでも数を繰り返せば取れるだろう。


 俺は確実に順調に事が進んでいるのに気をよくして、きっとこのまま魚もすぐ手に入るだろうとタカを括っていた。

 甘かった。

 多分木苺を見つけたのも運が良かったし、川辺にたどり着いたのも運が良かった。

 そして焚き木まで作れたのなんて本当に運だけは良かったのだ。

 いざ実力という面になると、俺は平凡以下どころか底辺なのだということを改めて感じるのは、魚捕りを開始して10分もしないうちだった。


 生きた魚を鷲掴みにするのって、こんなに難しいのかよ。

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