地獄に仏
キノコ、キノコかぁ。
明らかに毒がありそうなのに食べるの嫌なんですよね。
でも上手く使えば罠とかに出来るんかね?
正直触りたくもないし、そこまで極度の空腹ってわけでもないから、別の方法がないかもう少し探したい。
サバイバル能力とかそもそも無いんだよな、全然興味なかったし。
ううん、とりあえず怖くて一旦森の外に出てしまったが、どうしようか。
とりあえずグルッと一周して、手軽に取れそうなものがないかどうかを確認しよう。
また岩山の方に出てしまったようだから、森で食料がどうしても手に入らなかった、もしくは次の移動先としてもう少しマシな場所に行きたい。
というか不思議だよな、殆ど草木の生えない岩山のすぐそばに森があるんだもんな。
普通もう少し間になんかあるんじゃないのか?
まぁ急に地形が変わるのであれば、逆に森のすぐそばに食料がいっぱいの楽園があるかもしれないから、希望を持って歩いていこうか。
正直なるべく森の中には入りたくない、道中に小川でも流れてれば相当儲けものだと思う。
そして遂に見つけた、食べ物。
不意に生えていて、見間違えかと思った。
木苺だ、それも結構沢山生えている。
警戒もした、さっきみたいなパターンじゃないかって。
でもこれ普通に木苺だと思うんだよ、試しに一つ摘んでみたが、いきなり襲い掛かってきたりもしないし、爆発したりすることもない。
軽く臭いを嗅いでみるが、仄かな甘い匂いがして滅茶苦茶おいしそうだ。
毒の可能性なんて考えられなかった、俺は食べた。
キノコに縋りついて食べるよりよっぽどマシだ、この木苺を食べて死ぬなら悔いはない。
美味しかった、本当に美味しかったんだ。
兄貴達と一緒に人里から食料を奪って食べたけど、本当の意味で自分の力で手に入れた食材はこの木苺が初めてだ。
俺は一つ残らず貪った。
残したら他の生き物に食べられるかもしれないし、単純にお腹が空いていたのだ。
食べ終わった後も、少し物足りない感じはしたが、一応は腹が膨れた。
思った以上のご馳走に出会えた、正直さっき食べ損ねたから、果実が凄い食べたかったんだ。
元気が出たぞ、これで寿命が延びた。
最悪明日まで食わなくても生きてはいけると思う。
このチャンスを活かして、より良い場所に移動しなければ。
どんな場所がいいかなぁ、出来れば綺麗な水がある場所で、魚とかを手に入れられるような感じであれば最高なのだが。
俺はそんなことを思い描きながら、少し張ったお腹を軽く叩いて、引き続き森の縁を歩いて行った。




