秘術士の少女
神は言葉でこの世を創造した。
神はその言葉を7つの本【エクレシア】にまとめ地に投げ落とした。
地上に落ちた本は力ある言葉によって龍となった。
龍達はそれぞれ異なる神の教えを持っており、異なる力を備えていた。
神は言った。
「地上にいる者達に力を分けてあげなさい」
龍達はそれぞれの特性に合わせて、人間が神の言葉を悟れるように全ての万物にメッセージを刻み込んだ。
力に魅了された人間達はこぞって神の言葉を探し求めた。
そして私も…………。
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カイル「ツツジーーー、ツツジ居るーー?家に居ないから探したぞー」
本が乱雑に積まれた薄暗い図書館にカイルはツツジを呼びに来た。
ツツジ「カイルーーー、おーーーい」
ツツジの声がする方を振り向くと 山積みにされた本の中から手が生えて来た!
どうやら生き埋めになってしまっているらしい。
カイル「ちょっ!何やってるんだよ!」
本の隙間から手を引っ張り上げる。
ツツジの灰色の長髪がサラリと浮き上がり、外の光で黒ブチのメガネが光る。
引っ張られた勢いそのままに向かい側の本棚に激突!
ツツジ「ガハァ!!」
本が崩れ落ち また生き埋めになった。
カイル「ご、ゴメン・・」
今度は自力で本の山から顔を出す。
ツツジ「良いよ、良いよ〜何時ものことだし、それで何の用?」
カイル「何の用って、今日は昼からシゲルの自警団で《秘術》を教える日だろ?忘れたの?」
ツツジ「あ〜〜そーだった」
カイル「さては、また徹夜したんだな」
ツツジ「だって だって 神の言葉関係の本がこんなにあるんだよ?研究意欲が止まらなかったんだもの」
カイルはツツジの手を取り立ち上がらせる。
カイル「妹がそんなんだとお兄ちゃん心配だぞ」
ツツジ「私達同じ16歳でしょ」
カイル「昔はお兄さんって呼んでただろ?」
ツツジ「あの時は幼かったから勘違いしただけだよ」
カイル「ハハハッそうか そうか、取り敢えず風呂に入ってこい」
ツツジ「は〜〜い」
〜。〜
ツツジが準備を済ませ奥の扉から出て来た。
ツツジ「如何して秘術士の服装って黒マントなのかな?」
カイル「カッコいいからだろ?似合ってるぞ」
ツツジ「そうなのかな〜、まあいいや 行こう」
石造り建物が並ぶ街並みに おしゃれな服装の鮮やかな人達。
この街に同じ黒マントを着た人達は殆どいない。
と言うのも《秘術》と言う分野が入って着たのがここ最近だからである。
ツツジはこの街で初めての《秘術士》基《秘術の先生》なのだ。
自警団の訓練所に着くと5人の子供達が模造刀で素振りをしていた。
シゲル「おお!着たか」
ツツジ「シゲルさん遅くなりました」
シゲル「10分程度なら構わんよ。素振りの時間をの伸ばすからの」
シゲルが子供達を呼び集めツツジを囲むように座らせた。
ツツジ「いい?皆んな、秘術は本来 神の言葉を地上の自然物から読み取る事で得られるの、
自然と遊んだり、瞑想なんかが習得方法の一種かな?」
カバンの中から2冊の本を取り出す。
ツツジ「秘術士の中にはこうやって本に神の言葉を記録して出版する人達も居るわ、
だけど読むだけでは力は使えない、言葉の意味を理解し 悟り 思いを汲み取ることができて初めて力が得られるの。力の大きさは悟りの度合いで決まるから、やっぱり本より自然物から悟った方が力は強いわね」
本を子供達に構える。
ツツジ「自分なりに簡単な本を選んで着たわ、【リリー・シュガー作】《武人の心》』
【グランビィル・エン作】[命と過程》』両方絵本だけど それだけに感じ取りやすいと思うの」
その後、読み聞かせ会が行われた。
子供達も もう絵本離れした年だがそれでも物語とは やはり楽しい。
老若男女問わずついつい聞き入ってしまうものだ。
ツツジ「………でした。おしまい」
ツツジが最後の本をバタンと閉じる。
シーンと静まり返った空気、皆 頭の中で物語を思い返して居るのだろう。
この思い返しの時間こそ秘術の訓練には必要なのだ。
ツツジ「今日はこんな所かしら?後は継続とセンス次第ね」
帰り道、ツツジの足取りは軽やかだった。
やはり自分の好きな分野の話をするのは気分のいいものである。
ツツジ(・・・あれ?)
ツツジは背後から妙な視線を感じ、家に帰らず林の方へ向かっていった。
しばらく進んだ所だ立ち止まり振り返る。
ツツジ「・・・・・おじさん誰?」
誰も居ない茂みの奥から大柄な男が鎖鎌を両手に現れた。
男「こんな人気のない所に来るとは、秘術によっぱどの自信があるらしいな」
ツツジ「何の用?」
男「嬢ちゃん自分の状況分かってる?秘術の使える若い女ってのは最高級品なんだぜ?」
ツツジ「あーなるほど誘拐か」
男「余裕こいてるみたいだが、俺も秘術士だぜ?」
ツツジは目を閉じて両手を前に出した。
男「使わせねえよ!」
男の鎖鎌が一直線に飛んで来る。
ツツジ「【アン・エクレシアの書】一章、生命の創造より《炎の柱》」
炎の渦がツツジの体を覆い鎌をはじき返した!
男「な?!」
男は鎌を引き戻し今度は横から投げ込む、ツツジの体を炎ごと鎖で拘束した。
しかし炎の熱が男の手に伝わり、鎖鎌を離てした。
男「熱っ!!」
ツツジは鎖を解き、鎖鎌を拾うとブンブンと振り回し、今度はこちらが男の体を拘束した。
男「ギャーー!!!」
肉の焼ける匂い、林中に断末魔が響き渡る。
しばらくして聞こえなくなった事を確認し、側に近づく。
ツツジ「おじさんは誰かに雇われてこんな事したの?」
男「ハァー、ハァー、知るかボケ」
ツツジ「え?何?おじさんの夢はチャーシューになる事なの?」
ツツジは普段誰に対しても優しいが悪人には容赦がない。
男「なめ・・・舐めてんじゃねえぞ!!」
男は渾身の力でポケットから 針の付いた薬玉を取り出し太ももに打ち込んだ!
危険を感じ男から離れる。
男の体がどんどん膨張し鎖を破壊する。
5倍くらいだろうか?まるで怪獣映画の化け物の様だ。
巨大な両手を広げ襲いかかって来る。
ツツジは慌てず反撃。
ツツジ「【アン・エクレシアの書】一章、生命の創造より《地形創造》」
目の前に穴が出現し、男は両足を取られ体が穴に埋まった。
男「やべえ、体が重くて出れねえ」
ツツジが再度問い詰める。
ツツジ「今の薬は何?」
男「馬鹿か?仲間を売る様な事する訳ねえだろ」
ツツジ「仲間がいるの?て事は組織的なものかな?おじさん手馴れている様に見えないし下っ端?」
男「・・・・」
ツツジ「図星なの?なら人質には使えないか・・・・取り敢えずシゲルさんに相談しよう」
薬の効果は直ぐに消え、簡単に鎖で縛り上げる事ができた。
鎖を引っ張り上げ訓練場に戻る。
{注意} 誤字脱字多し!
温かい目で見て頂けると嬉しいです。