表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

サンタなんて信じない

作者: Guru

 夜になると町中はイルミネーションで埋め尽くされる。

 12月に入ったばかりだというのに、早くもクリスマスムード一色だ。


 この時期になると今でも、ふと思い出すことがある。

 これは私が小学校低学年の頃の話だ。




ーーーーーーーーーーーーー


 子供の頃の私は、とても純粋な少年だった。

 クリスマスになると、子供達の間で必ず話題にあがる事がある。それは


『果たしてサンタクロースは、本当にいるのか?』


 という問題だ。これは永遠のテーマでもあるかもしれない。

 私はサンタは本当にいるものだと信じていた。


 しかし、学校に行けば色々な性格の子がいる。

 中には、「サンタなんていない プレゼントは親が用意してるんだ」と、夢のない事をいう者が少なくとも出てくる。


 その話に感化されてか、次第に私も

『サンタクロースはいないのではないか……』


 そう思うようになっていた。

 そんな疑惑を持ち始めていた、クリスマスイブの夜。



 心の中ではサンタはいないと思いながらも、私は僅かな希望を抱き、欲しいプレゼントをメモに書いて枕元に置いていた。


 実際いようがいなかろうが、願うのは自由だ。

 正直その真意よりも、ただ単に私はプレゼントが欲しかった。

 すると、そのメモ書きを見かけた父が、一人言を呟いた。


「俺もサンタさんからプレゼントが欲しいな。そうだな、お父さんは車が欲しいかな!」


 それならばと私は父に提案する。 


「じゃあ、お父さんも枕元に『車が欲しい』って書いておけば?」


 父はなるほどといった様子で、私と同じように枕元にサンタさん宛にメモ書きを残した。


 定説では、サンタさんからプレゼントを貰えるのは、良い子にしている子供なわけなのだが……


 そんな事は父もお構い無し。

 なにせ、息子同様に父もプレゼントが欲しいのだ。


 サンタもびっくりな、親子揃ってのプレゼントの要求という、おかしな光景の中、私は期待感を膨らませながら眠りについた。




 そして、翌日の朝……


 私の枕元にはプレゼントが置かれていた。

 テンションが上がり、すぐさま袋を開けてみると、中にはキャラクター物のおもちゃが入っている。


 私の要求はゲームソフトだったはずなのだが、急には用意できなったのだろう。

 それでも私は、サンタさんからのプレゼントに喜んでいた。


 私がおもちゃに夢中になっていたその時、隣にいた父が大きな声をあげた。


「あーーっ! 俺にもサンタさんからプレゼントが来てる!」


 私が父の方に目をやると、驚いたことに、父の枕元に私と同じようにプレゼントが置かれていたのだ。


 父はその場でプレゼントを開ける。

 すると、中には確かに父の要求通りの物が入っていた。


「中身は……車だ! でも、車は車でも……ミニカーだよ。俺が欲しかったのは、この車じゃないんだよな……」


 これは一本とられた。

 サンタは父のひとつ上をいっていたようだ。


 父は残念そうにしながら、いくつもセットで入っていたミニカーの箱を私に手渡す。


「これじゃ俺はいらないから……このミニカーはおまえにあげるよ!」


 ラッキーなことに、結局私は自分と父の両方のプレゼントを貰えた。


 この出来事により、サンタクロースの存在に疑問を感じていた私は


『親がプレゼントを用意してるなんて嘘だ!サンタさんは本当にいるんだ!』


 そう思うことができた。





ーーーーーーーーーーーー


 大人になった今でも、この年のクリスマスの事は特に記憶に残り、よく覚えている。


 毎年のようにクリスマスプレゼントを貰ってきたわけだが、他の年は何を貰ったかのなんて全くもって覚えていない。


 やはりサンタからの父のプレゼントは衝撃的で、強烈な印象を与えていたようだ。


 よくよく思い返してみれば、父の演技も非常にわざと臭かった気もするし……

 手の込んだ細工まで考えて、『よくやるな』と今では笑えてしまうほどだ。


 けれども当時の私は、そのおかげで数年間はサンタを本気で信じたわけで、とても効果的なことだったのだろう。



 まだ私に自分の子供はいないが、いつか子供が生まれ、サンタを疑う年頃になってきたら……


 父と同じことをしてあげたいと思う。

 こんな素敵な夢のプレゼントを、私も我が子に送ってあげたい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ