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新年と席次②

夏の終わり(´・ω・`)

観光都市に住んでいるので人が減るのは寂しいです

ウニがうまいシーズンも終わりです

「・・・お前があの席で、我々は壁際に立つのか?」

リイファは納得いかぬというように、ゴージャスな貴賓席をにらみ付ける。


「あなたはね、じゅ♪う♪しゃ♪、なのよ。今日はその原則に従って行動してちょうだ~い。」

イェン・ズウは自分史上最悪のイヤな女になりつつ、リンズ城の雰囲気を楽しんでした。

故郷ソン公国のシャンク城は旧イン王国時代の名城であり、豪華な作りで世に知られている。そんな城で育った彼女から見ると、リンズ城の質実で機能的な造りはとても珍しく、かつ共感できるものだった。


「リュー公国開祖リューシャンの人柄が映し出されている感じ。こういう人になら負けてもしょうがないよね。」

イェンは無き王国の生れであることにあまり感傷的ではない。国内にはそういう人もいるのは知っているが、400年前に起こった因縁に対し、未だに感情を持ち続けることは不可能に思える。


それよりもこの400年間争いをせずに平和に過ごしてきた、自分の国を誇りに思っている。

この後も争いを起こさぬ国であることこそ、今の世では重要なことだ。


「じゃじゃ♪そういうことでね!式が終わるまでこちらに控えていてちょうだい!」

言い残してイェンは準備された貴賓席へ向かった。

数百名の人でザワつく謁見の間は、新年らしい華やぎに満ち溢れている。


「おのれイェンめ頭上に岩でも降ってこい・・・」

「呪い掛けんなリイファ、ホレこっち来いよ。従者にも休憩室に茶菓子が用意されてるぞ。」

ライに襟首掴まれズルズルと引きずられるリイファ。

もう1刻ほどもすると式が始まる刻限となる。




「壁際にでも立っていた方がまだましというもの!」

怒りに青ざめているのは第2妃のウェイ妃である。

「母上、我らこの式に出席すべきではありません!我ら不参加であればこの式自体に疑問を投げかける者も出ましょう!」

鋭く言い放っているのは第2公子ファン・ジャン、横でおろおろしているのが第3公子シャンレン・ジャンだ。


「ウェイ妃様、どうぞ騒ぎはお控えください。」

廟堂2位のカイファン・トイ卿と第3位のディアオ・シュウ卿が、騒ぎを聞きつけ控えの間に参上している。

「これが騒がずにおれましょうか!我らウェイ=ジャン家が蔑にされようというときに!」

「トイ卿、シュウ卿、これはいったいどうしたことなのだ!我らが何故このような辱めを!」


「はずかしめ!とおっしゃましたが。」

シュウ卿がいきなり声を荒げる。

ウェイ=ジャン家の面々は驚いて口を閉じた。


シュウ卿は自ら男の印を切り落としたような、肝の座り方が常人とは異なる者である。

ここ一番の迫力は流石だとトイ卿も目を見張った。


「第1妃のルー=ジャン家が皆様の先頭に立ってご挨拶を受ける、というだけの事でございます。これになんのご不満があるというのでしょうか?」

「そんな格差をつけることは ― 」

「かくさ!と言われるからにはこの順序にはご不満あると!」


シュウ卿はぐわっと目を剥く。


「いやしくもルー=ジャン家はリュー公シャオバイ様が亡命の折、その身を保護して公爵への道を切り開いたるお家の礎にございます!そのルー=ジャン家に対等であろうとするウェイ妃様のご存念は、いかなるものでございましょうぞ!」


叩きつけられた道理に返す言葉もなく、ウェイ妃と公子ファン・ジャンはぐぐっと唸り声を飲み込む。


「まして不参加で抗議するなど、お家の顔に泥を塗る行為、この臣シュウ、断じて見逃すわけにはまいりませぬ!!!」

迫力満点の物言いに、ぺたりと座り込んでしまったウェイ=ジャン家の面々。


勝負あったな、とトイ卿は満足した。




「ウェイ妃様、二兄、三兄、新年おめでとうございます。」

声をそろえて挨拶するシャオとジェズの前を、ウェイ=ジャン家の人々は無言で通り過ぎた。

思わず顔を見合わせる2人。


「シャオ兄、やっぱさっきの騒ぎの所為かな?」

「きっとそうだろう。2卿に叱り飛ばされて、青くなるほど怒っているようだ。」

ヒソヒソ笑う2人に、母親たちが注意する。


「2人とも、誰に聞かれるとも限りません。口を慎みなさい。」

「そーよ、城の中では皆監視されてるって思いなさい。壁にヒビありってゆーでしょ?」

「ユウ様それはヒビでなく耳です。」

「ちょっきゅう?きっついわー。」


掛け合いする2人のさらに後ろから、ルー=ジャン家の二人が式典官たちに囲まれやってくる。

「ルー妃様、ウグイ様、新年おめでとうございます!」

母親2人が挨拶するのに合わせ、公子2人も礼を取る。


「おや皆さま、おめでとうございます。」

余裕ある態度でルー妃は挨拶を返す。

「なにやら騒がしい者もおりましたが、お2人はわきまえたことで本当に感心。」

「母上、やはり教養が大事にございますな。ウェイ=ジャン家は我らと同じ王家同姓の家柄と言えど、教養の無さが致命的です。」


歯に衣着せぬ物言いのウグイは、城内でもあまり評判のよくない公子である。


― 頭は良い、行動力もある、しかし優しさに欠ける。


これがこの公子の全てを言い表している。

2人は今回の席次に対して大いに満足しているのだろう。

本来、後継者争いの最有力であるシャオに対して、敵意をむき出しにしているのが常のウグイとルー妃だが、今日は奇跡的にあたりが柔らかい。


「では皆さま、お先に失礼いたします。」

優雅な口ぶりでそう告げると、2人は悠々と台上へ向かった。


「やれやれ、一兄は相変わらずだ。あの人が後継ぎでは俺は国を出るしかないな。」

ジェズは思わず口にする。

「ジェズ、さっき母上たちに注意されたばかりだろ?」

シャオは笑って弟に注意する。


「それに誰が後を継いでもこれから先は大変だ。平和な世の中を続けることが困難になってくる。」

兄の言葉に驚くジェズ。

「400周年は一つの区切りだよジェズ。ジョー王国連邦は大きくゆらぎ始めるんだ。」




祝辞式は来賓代表のイェン・ズウの言葉で幕を開けるのだ。

いくつかの場数を踏んでいるイェンも、多少緊張しているかのようだった。


ジェズは台上2列目の末席から、美しい少女をデレデレと見ている。


― いやー。イェンったら今日も可愛いなー。


「ジェズそういえば、イェンと学舎が同じだね。」

シャオがヒソヒソと話しかけてくる。


「そう、この前一緒に狩りに行ったよ。俺たち仲がいいんだ。」

「あら。」

聞き耳を立てていたソン妃が、ヒソヒソ話に割って入る。


「ジェズ、イェンはいい子だし、私的には是非ともシャオの嫁にと思って・・・」

「母上それはカンベンと言っておりましょう?私にとってイェンは妹同然です。」

「あらあら何言っちゃってんのー!小さいころなんかさー。」


「声をお控えくださいっ!」

鋭く抑えた声で、式典官が注意してくる。


ソン妃は肩をすくめて抗議の意を示す。

「これ以上大事な事なんてないのに!」


「・・・我が国は古き戦いを教訓とし、末永い平和を求めて自らを律してまいったのです。その良き協力者として、リュー公国と皆さまの支えが甚大なお力を与えてくださったことは、我が国と国民にとっての何よりの支えとなってきました。」


イェンの声は過去から届いている。それはまさしく平和を喜ぶ400年の民たちを代表していた。


「400年の平和とこの先さらに続く幸福な時間を祝って、ソン公国を代表し新年のご挨拶を申し上げます。」


可憐な少女の祝辞を聞き、集まったリュー公国の家臣団から盛大な拍手がわきあがった。

「なんと可憐な公女様じゃあ!」

「実にお美しい!これは何としても我が国のお妃さまに貰い受けねば・・・」


「母上、私は今年必ず立太子の儀を行って見せます。」

ウグイは小声で母に誓う。

ルー妃は前を向いたまま、満面の笑みで鷹揚に頷く。


「そして・・・この娘を娶ります。もう決めました!」

ウグイはニヤリと笑みを浮かべた。



第ニ妃の出身国を修正しました。

m(_ _)m

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