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年越しと勤王③

年越しの話が続きますϵ( 'Θ' )϶

ガンぞくんは実家に帰ったので今回ハブです

大晦日を1日前に控えた亥の月29日。

いつも武器職人の荒くれ者が出入りするティエル=ジャン家に、今日はジェズの友人である4人が遊びに来ている。


ガンゾはすでに実家に向けて出発したので、ダロン・アモン・リイファ・イェンの顔ぶれだ。

それだけで普段とは違う雰囲気になったようで、ティエル=ジャン家の者たちは何とも落ち着かない。


応接の間で母親のムーンに挨拶をすべく待っている間にも、ひっきりなしに茶を持って人が来る、果物を持って人が来る、用もないのに誰か来るという有様。


「ウーズ、ウチの者に部屋をのぞきに来ないよう伝えろ。」

「若、それは無理というものです。若の友人が ― まあアモン殿は別にしてこれだけお越しになり、しかも見目麗しい花嫁候補まで・・・茶を運ぶにも奪い合いとなっております。」


家宰は超笑顔でジェズの言いつけを拒否する。

「別にされた俺の立場わ?」

アモンは不満気だが、幼いころからジェズの家に入り浸っていたので、家の者たちとも馴染みなのだ。


「花嫁候補・・・めっちゃモチベ上がりました・・・」

「うーむ。いずれこの家に嫁ぐ日が・・・」

女子二人は気合を入れなおす。


ダロンは応接の間に飾られた武器の品評に余念がない。

「ウーズさん!この長剣はここで生産したの?」

「おおさすがお目が高い!実は先日の狩りのあと、見本品を取り寄せ作ってみたのです。」

「ううーん、ちょっとバランスが悪いかなー。振りづらいよねー。」

「うむこの際ダロン殿に開発のお手伝いをお願いできますかな・・・若に振らせると常人が使うものに仕上がらないので・・・」


「この間の仙人の話どうなった?」

アモンはちょこんと椅子に座り、ジェズに話しかける。

声をかけられたジェズは、アモンに向かい合って座った。

イェンとリイファも暖炉に近い椅子へ腰かける。


「ええとな、まず叔父貴(トイ卿)に話を入れるっていうのは、実現できていない。あの時すでに父上とガン卿は王都に出発してたから、叔父貴はいま宰相代行としてしこたま忙しい。話ができるとしても年明け父上たちが戻ってからだな。」


「ふーん。そうするとひと月以上何もできないってことだなあ。」

「まあ明後日新年の祝辞式では、兄弟全員そろうわけだ。それとなく様子を見ておくよ。」


「大丈夫?ジェズにそんな器用な事が出来るのか心配・・・」

イェンは心配なのかディスっているのか、そんなことを言う。


義父(ちち)にはもう話したよー。」

武器談義の終わったダロンも、一同に交じって椅子に腰かける。

「義父の話では、あのアルラン・ヤンっていう仙人は結構大物の武仙だって。東岳の武仙たちが束でかかっても適わないって話だね。」


「そこまで・・・」

「いやでも納得だ。あの迫力はジェズと対峙した時の比ではなかった。」

リイファもあの仙人の実力を測りかねていたらしい。


「だけど人間界に干渉するような仙人ではないらしいんだよねー。特に謀略なんかに不向きだし、正義感の強い性格らしいしー。だから本人の言うとおり、不良仙人の取締りっていうのは筋が通っている話だって言ってたよ。」


「学長がそう言うのなら間違いはないだろう。心配するほどの事もないか。」

ジェズは笑顔になって言う。

「うーん、どうにもすっきりしないけどなあ。」

アモンは不服そうだ。


「それからあれだよねー。金行相とか土行相とか言ってたやつ。」

「おお!あれも分かったの?」

アモンが食いつく。ジェズも当然知りたいと思っていた。


「義父も全て理解している訳では無いそうだけど、『陰陽五行説』という仙界の最新理術学説があるんだって。」

「うう・・早くも拒否反応が・・」

「ダローン、分かりやすくたのむよー。」

ジェズは頭を抱え、リイファは理解できる自信がなさげだ。


「うーん、まあ学説の方はじゃあ後回しにして、どんな現象が起こるかについて説明するねー。修業で仙力を(センリー)を身に付ける際に、極めて限られた人に『五行相』と呼ばれる特殊な力が発現することがあるんだって。」

「五行層?」

「土・火・水・木・金の5つのことだね。これにまつわる特殊な力を授かる人がごく少数存在する。この力は普通の仙力と比べて、かなり巨大な力だそうなんだ。」


おーと皆どよめく。まあジェズだったらありえるかー等と口々に感想を述べ合うが、仙人の話はそれだけに留まっていなかった。


「ガンゾとイェンの毛の色も、そこに関連してるって言ってたろ?」

「そーだね。土・火・水・木・金はそれぞれ黄・赤・黒・青・白の色相に代表されるそうだ。そういう意味ではあの仙人は火行相なわけだよねー。」


「2人にも強力な力がわき出てくるようになるの?」

「ジェズの髪は真っ黒だから水行相なんじゃないの?」

「いやーその辺僕もわかんないけど。」

「うん、何となくわかったけど、詳しくはもっと調べる必要あるな。」

調べるとなればアモンもやる気がわいてくる。


「それから修業のためになんで西岳まで行かなきゃならないのか?」

「そういってたな、うん学舎の書をまずは調べてみよう。」




「奥方様ご到着でございます。」

使用人の声が部屋の外から聞こえ、ジャン公第6妃のムーンが入ってきた。

ジェズの友人たちはイェンを除いて一斉に跪いた。


ティエル妃は装飾品などをつけないリラックスした格好だ。

落ち着いた茶色の、濃淡が異なる何枚かの布を重ねた訪問着は、彼女の趣味の良さを際立たせる。

「みなさん、楽にされてください。せっかくお越しいただいたのに、お顔も拝見できないのでは意味ないじゃありませんか?」


楽しそうに語りかける貴人の言葉を聞いて、ジェズ友人組はどうしたものかと顔を見合わせながらズルズルと立ち上がった。

「お言葉に甘え失礼します。」

代表してダロンが礼を言う。


「あなたがダロン君ねえ!まあ!ホントにイケメンねえ!!」

はしゃぐ母にジェズは苦笑いする。

「それであなたはリイファちゃん!まあーお肌すべすべねー!かわいー!」

緊張で固まるリイファを抱きしめ、ティエル妃はゴキゲンでしゃべり続ける。


「アモンも久しぶりね。ジェズと共にいてくれてありがとう。あらー泣かないで!どうしたの?」

何故かぐずぐず泣きだすアモン。

「そして、あなたがイェンねー。」

両肩をがしっと掴まれ、イェンはぐいっと緊張する。


「は、はい。ジェズのお、お母様・・・」

「まあー!ホントきれいねえ!なんて素敵な瞳の色!ソン妃がおっしゃっていた通りだわあ!」


「ん?????」


部屋にいた皆がティエル妃の言葉を聞いて特大の疑問符を頭に浮かべる。

「母上?」

「なにかしら?」

「ソン妃とおっしゃると・・第3妃のことですよね?シャオ兄の母君の?」

「リュー公国でソン妃といえばあの方しかいないでしょ。」


「私の母はソン妃の姉にあたるから。」

イェンがしらっとそんな話をする。


「?ていうと第4公子シャオ・ジャン様は従兄妹?」

「そりゃそーよ。」

ティエル妃の何言ってんだ的な言い方に、一同『そりゃそーじゃねえよ』という気持ちになるが、誰も声には出せない。


「イェン・・・すでにジェズと姻戚関係だったとは!何か知らないがすごく腹が立つ・・・」

「腹立てられてもねえ・・不可抗力でしょ?」


「皆さまお食事のご用意も整いましてございます。どうぞ次の間にお進みください。」

ウーズが家宰らしい仕事を果たす。

「さあ続きのお話は食事しながらね!」

ティエル妃のテンションは高止まり続けている。



食事はどれも見たことのない、西部の料理だった。

「私は西部の田舎者でしょ?どうしてもこっちの方が落ち着くの。お口に会えばいいのだけど。」

肉料理を中心にバリエーションに富んだ大皿料理である。

貴族の家では普通各自に取り分けられて料理が出されるが、ティエル=ジャン家では一つの皿から皆が食べたいだけ取るのが流儀らしい。


リュー公国でも一般家庭ではそんな感じである。

庶民的な食卓に、一同次第にリラックスしてくる。


そして食事は西部の香辛料をふんだんに使うもので、食欲を大いにそそる。

皆遠慮を忘れて食べに食べた。


「ジェズはご迷惑かけてないかしら。」

色々な話題は出たものの、ティエル妃の質問の中心は、まとめればこの1点に尽きる。


「迷惑はおたがいさまだしー。僕たちはそれでも凄くうまくやれてます。」

ダロンは快活に笑う。

「文術において私はジェズ殿と同じようなレベルで・・・2人力を合わせ乗り切っていきます。」

「私が上級生としてジェズを引っ張っていきます!お義母さまはどうかご安心なさって・・」

女子アピールも激しさを増す。


「おぐさま・・・うううう」

アモンは泣き止まない。


「ホンットによかったわー。伏竜学舎などに行かずに正解よねー。」

「御意にございます!」

「ウーズお前そういえば、先日は狩りに行って私よりも先に皆さまとお会いしてるのよねえ?」

「・・・それは・・・何かわだかまってらっしゃいますかな・・・?」


家宰は給仕の差配をピタリと止め、不安そうにティエル妃に伺いを立てる。


「ズルいじゃない!私も行きたかったのに!」

「奥方様、もはや狩りなどにお出でになるご身分ではあらせられません。御自重を・・」

プリプリと怒っているティエル妃は少女のように可愛い。


「お義母さま、ジェズったら凄かったんですよ!魔兎を2匹同時に仕留めてしまったんです!」

「私の追って行った魔兎をジェズが仕留める、完璧な共同作業でございました!」

「まあ!ちょー見たかった!」


奥方様は怒ったりはしゃいだり忙しい。

ウーズは微笑みながら使用人たちに指示を出す。

仲間たちはティエル=ジャン家の居心地良さにすっかり満足し、貴族らしからぬこの家の人々がすっかり好きになった。



ジョー王国400年目の正月まであと2日となった日の、暖かい夕食会のことである。




ここでいう西部はウイグルの手前くらいのイメージです。

ウイグル料理もうまいんですよね。

あの地域も気楽に行けなくなってしまいました。美しい町なのに許せないっすよね(´・ω・`)


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