年越しと勤王②
悪者は世界征服した後どうするのでしょうか( ・∇・)
不安と絶望が溢れる世界にするって、モチベ保ち辛いっすね
むしろそういうのが書けそうにないので、普通の悪者にします(*´∀`*)
「秘事とはまた物騒な・・」
「某が物騒を考えている訳ではございません。物騒なことが起ころうとしております。」
シュウ卿は顔をこわばらせたままである。
「このこと某以外は公子ウグイ様のみが承知しておりますこと、トイ卿におかれましても他言無用にお願いいたします。」
「むしろ聞かぬ方が気が楽なのかもな。」
トイ卿はうんざりして呟く。
しかし廟堂の中で国政にあたる者として、問題があると聞かされ放置するわけにはいかない。
「ウグイ様が主とジョン・ガン卿との密談を耳にしたのです。いや耳にしたという言い方はあまりに公子の肩を持った言い方かもしれません。盗み聞きしていたと言ったほうがよいでしょう。」
「公子が?なぜそのような?」
ジェズがやるならそのくらいでは驚かぬが、品行方正を絵にかいたようなウグイ様が、盗み聞きするなど想像もつかない。ましてやその行為自体、国家機密にかかわる犯罪である。
「公子は以前からお父上の行状に不信感をお持ちだったのです。ウグイ様は勤王の心熱きお方、王家の方とも交流もあり、強い忠誠心をお持ちです。そのウグイ様がリュー公国の軍備や、王に代わって号令する不忠行為に心を痛めぬはずがありませんでしょう。」
勤王精神は盗聴という犯罪行為を正当化するだろうか。トイ卿は疑問に思う。
「主とガン卿が密談されていた内容は・・封禅の儀についてでございました。」
シュウ卿が言ったのは爆弾のように危険な話だ。
封禅の儀とは王となる儀式の事である。
リュー公国内の東岳において行われる儀式だ。
ジャン公が王になろうとしている・・・疑わしい兆候はあったものの、まさかそこまでの事はすまいと思っていたトイ卿は完全に虚を突かれた。
「ウグイ様がおっしゃっているのは・・・不遜ながら謀りではないのか?」
「某も容易には信じられませなんだ。しかしながらかの公子が、勤王の忠心強き方であることは疑いありません。かえって主とガン卿のこれまでの行いを見ていれば、王を敬ったところは皆目見当たりません。これだけでもどちらが疑いを持たれるべきか、お分かりになりませんか?」
シュウ卿の言うとおり、ガン卿は確かに王の窮地を利用して自国の立場を強め、覇者としてのリュー公国を築き上げている。
しかし本当にそんなことまで?
「しかしシュウ卿、本日はそのような確証もない大問題を語るため、忙しいわれらが集まったわけではない。大変な問題であり儂も軽視するわけではないが、この件はまず我らの胸に収め、主がお戻りになられてからまた対策を考えようではないか。」
「結構ですトイ卿。某も別にこのような危険な話を、我ら二人で処理できるなどと考えてはおりませんぬ。」
ここはあっさりと引くシュウ卿。
「しかしながら、この正月の祝辞でございます。万一のことを考え、今われらが取れる最善の対策だけはしておきたい。」
「それが席次に差をつけることだと?」
「左様でございます。公子の席次に差はつけれますまい。されば奥方様の席次に差をつけ、公子はお母上の横にご着席いただきます。」
うまい考えだった。
母親の横に腰かけるのは自然である。そして妃にはもとより順位がある。
そこを利用して公子ウグイを立てておけば、問題がおきてジャン公が失脚しても、すでに太子同然であったとウグイを擁立する機運が生まれる。
「しかしシャオ様の選択肢を切るわけにはいかん。」
「シャオ様は主の寵愛を受け、養育係であったガン卿の薫陶を受けておりますれば、間違いなく同じ考えをお持ちです。選択肢にはなりますまい。」
シュウ卿はその選択があり得ぬことを言外ににじませる。
しかしそういうシュウ卿本人は、公子ウグイの養育係だった。すでに元服しているとはいえ、まだ深い付き合いもあろうとトイ卿は考える。
「ううむ・・分かった。しかしもう少し時間をくれ。7時辰(午後4時)の会合で返事をしよう。」
「無理を申し上げました。ありがとうございます。」
トイ卿はぐったりと椅子に掛けたまま動かない。
シュウ卿は礼を取ると部屋を後にした。
「ディアオ・シュウ様、お疲れ様でございました。」
城内の執務室へ戻ると、従者が茶を入れて持ってきた。
小柄な体だが、その燃えるような赤い髪が存在を目立たせている。
「おお、すまないなアルラン。」
シュウ卿は執務卓につくと、従者の持ってきた茶をすする。
60歩ほど(約32㎡)の執務室には装飾らしきものがなく、いくつかの木簡が棚に並ぶほかは掛け軸や絵なども飾られていない。
「ご首尾はいかがでございましたか?」
アルランと呼ばれた小柄な男が尋ねる。
「うむ、お主の言うとおり、ジャン公の姿勢に対してトイ卿はもともと疑念を持っていた様子だった。」
シュウ卿は満足そうに頷いて答える。
「軍備拡張や覇者としての驕りだけでも万死に値する。勤王の心をないがしろに、ただ自国の拡大を図るなどもってのほかだ。」
また一口茶を飲んで、窓の外を眺める。
冬の雨が降り続けている。このまま温度が下がれば、明日は雪が積もるかもしれない。
「そこへウグイ様のお話しとなれば・・・」
「まったく公子はよくやってくれた。この話は決定的よ。」
「さらに証拠を探らねばなりません。」
赤髪の従者はやはり窓の外を見ていた。
変わった男であった。10日ほど前に公子ウグイが紹介してきたとき、ただの連絡係といった話であったのが、いざ口を開いてみると古今東西知らぬものはないほどの博識、さらには驚くべき情報網であらゆることを調べ上げてくる。
今も外を見ていながら、何を考えているのかは測りかねる。
一つ言えるのは、この男が来たことでシュウ卿自身の未来は大きく変化したという事だ。
シュウ卿は公子ウグイの養育係として、ジャン公がルー侯国へ亡命していた時代から傍についていた。当時はシャオバイ・ジャンに期待などできず、せいぜい亡命先のルー侯国で領土の少しももらえれば御の字という状態だった。
それでもシャオバイは勤王の心を持ち、公爵となった兄がリュー公国で傍若無人にふるまうのを、涙を流して悔しがっていた。シャオバイ・ジャン公は本来、王座簒奪など考える人ではない。
あのジョン・ガンがすべてを変えてしまったのだ!
公子ウグイはディアオ・シュウの養育を受け、勤王の心熱き青年に育った。
父の不忠を嘆き、王家の方々と連絡を取っていたのも、シュウ卿の献策によるところが大きい。
シャオバイに見切りをつけたシュウ卿は、理想の主君 ― 勤王忠誠の青年公爵を自ら作り上げたのだ。
そしてこのアルランという男・・・公子ウグイが盗み聞きしたとは言っているが、この男がやったと考える方が自然である。
いずれにしても、この男の登場以来内気な公子が積極的になったように見える。歓迎すべき変化といえる。
「証拠を探して・・・まずはトイ卿を落とすか・・・」
「左様でございます。その後はシュウ卿とトイ卿のお二人が連携し事に当たる。今よりはるかに容易に事が運びましょう。」
大きく頷くディアオ・シュウ。
この国を正しき勤王の国へ建てなおす。
美しき精神の国、開祖リューシャンの理想に基づいた不戦の国。
戦う事だけを思う国主は不要だ。
時はあたかもジョー王国建国400年の正月。
勤王国家への回帰と平和をめざし、シュウ卿は動き始めた。
その頃学舎では・・・
「ジェズの家に!いいの!」
「おお、母上も是非友達を連れて来いっていうからな!大晦日は無理だけど明日どうだ?」
「行く!行く!」
女子二人を含む友人一同大喜びである。
「あ”あ”あ”ぁぁ!着るものが胴着しがないぃぃぃ!!!」
「私は一応訪問着くらいはねぇ・・・リイファ、何か貸してやっても良くってよ!!!」
「ぐぬぬ・・悔しいがジェズのお母様にお会いするのに・・・胴着では・・・」
騒がしい年越しだった。
年越しに限らないんですけど、中国の北京天津辺りでよく道路で焚き火してるのを
見たんですよねー。
風俗風習として先祖信仰みたいなもんかなと




