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年越しと勤王①

夏の終わりに年越しの話です( ・∇・)


年越しには中国では餃子を食べるのよー

ふーん、端午節は?餃子ー 。七夕は?餃子ー!…他にないんか

春節(旧正月)期間中、学舎は1か月の長きにわたってお休みである。


『長きにわたって』とはいうものの、実家に帰るのにどの程度時間が必要なのかによって、この長さが十分かどうかは違うものだ。

たとえばガンゾの場合、実家はリンズ郊外の小都市にあり、馬車を使えば2日で実家へ帰ることができる。

ジェズとアモンに至っては、実家は徒歩圏内だ。


更にダロンの場合、実家=学舎といえる。


こんな状況の中、実家に帰るのに1月はかかるというリイファは、今年の年越しをいかに過ごすかについて相当悩んでいた。

学舎に相談したところ、宿舎へ残ることも可能だという。

ただし食堂は閉鎖するので、飲食は自身で調達せねばならない。


実家が遠い者たちが、学年・組を横断して残留の期間中どう協力するか相談会を開くというので、リイファは参加した。

学生代表が相談会を主宰するという。

当然ながら・・・彼女もいた。


「リイファも実家遠いもんね。一緒に過年(グオニェン)(大晦日)のごちそうつくろっか?」

「ううむ・・まずは年越し休戦といったところか・・・」

イェン・ズウの故郷ソン公国も、馬で移動して半月ほどかかる距離である。


談話室に集まっていたのは10名ほどの生徒たち。

1年次2年次にかかわらず、すべて甲級の生徒たちだ。

乙級・丙級には、地方から出てきてまで入学する者はいないという。


「皆も聞いたと思うけど、宿に関しては学舎が提供してくれるので、食糧調達と料理当番、それに掃除の当番なんかが必要だね。」

皆が集まったところで、イェンがこう切り出した。


「去年はどうしていたのだ?」

リイファは挙手して質問する。この場には3名2年次の生徒がいた。

「去年は5名しか残る生徒がいなかった。なので各自が費用を支払って、孤児院で一緒に食事を摂らせてもらっていたんだよ。」

2年次の大柄な男性が答える。ウェイウさんという、確か南方の人だ。


「今年もその方法がいいのでは?孤児院も子供の遊び相手がいて助かると思うが。」

リイファは疑問を呈するが、イェンが困ったように答える。

「人数が多すぎるのが問題と思うんだよね。10人分も増えてしまうと孤児院も受け入れが大変と思う。」


「お願いするのは問題ないんじゃないか?諸事は我々も手伝えばいい話だし。」

リイファと同じ1年甲級のライがこれに応じる。

「ダロンに相談してみよう。」

リイファも同じ意見だった。




「そんな訳でね、ダロン。」

ライとリイファ、そしてイェンは先ほどの残留組の相談を打ち明ける。


「いいよー。」

「か、軽い・・」

「もう少し考えなくていいのか?」


「考えても同じだよー。皆で手伝ってくれるならレンさんも助かるに決まってるし。去年もすごく有難かったって言ってたからね。」

ダロンは当然孤児院に帰って過ごすのだ。

養子になったとはいえゴズ学長の家で寝泊まりすることはないらしい。


「いいね!大晦日は宴会だな!俺も参加するぞ。」

「俺もだ。」

ジェズとアモンが割って入る。


「ジェズ・・・一緒に年越しを祝ってくれるの?私のために・・」

「休戦するつもりはないようだな、その口を閉じろ。」

うっとりするイェンに鋭く警告するリイファ。


「ジェズは実家で色々儀式があるんじゃないのー?」

ダロンが言うと

「新年は宮殿に行く。過年(グオニェン)は実家でティエルの一族が集うだけだ。」


「それは参加してないとまずいでしょう?一緒にいれるのは嬉しいけど・・・」

イェンはもじもじと顔を伏せながら言う。

「ジェズこの女は放っておけ。貴族として儀式参加は義務だろう?」

リイファはイェンの豹変ぶりに呆れつつ、道理をわきまえた。


「うん・・・今年は確かに色々と特別だな。」

「なんかあるんだっけ?」

「いやほら、ジョー王国建国の400周年でしょー。」


ああと皆頷く。

大変な祝日なのだがすでに連邦各国において、王国の存在感はその程度なのだ。


「父上はすでにジョン・ガンと王国へ出発しているよ。留守の間は叔父貴とシュウ卿が宰相代理として働いている。」

「それで新年のあいさつにお前も参加か?いつもは何の用もなかったよな?」

アモンの言い方は身も蓋もないが、確かにティエル=ジャン家には例年お呼びがかからない。」


「うん・・・ちょっとばかり駆け引きがあった。」

皆興味深そうにジェズを見るが、本人はそれ以上語らなかった。


「まあその辺りで行けなかったとしても、俺も必ず孤児院には顔を出すよ。それとみんなに年越しの差し入れをさせておこう。」


「そこは必要ないんじゃない?残留組は費用を出すんだし?」

ダロンは一応遠慮気味に辞退を申し出る。


「いやいや、是非やらしてやってくれ。」

ジェズはニヤリと笑って言う。

「ウチの家宰が最近なにかと孤児院の世話をしているようなんだ。あれは絶対レンさんに・・・」




リンズ城内ではトイ卿とシュウ卿が、新年の祝辞式を執り行う打ち合わせをしている。

細かな進行は官吏にやらせておけばいいことだが、今回シャオバイ・ジャン公が不在という初めての事態を受け、少々細かなところまでを廟堂で決めてしまおうとしている。


シュウ卿はもともと宦官として後宮へ出仕していた苦労人である。

自宮という、驚くべき行為で自ら宦官となった。


すさまじい意志の強さを持っている。


もちろん良識を兼ね備えた男である。しかし今日はその意志の強さを以て譲らない点があった。

新年祝辞式での席次である。


「シュウ卿、貴公の言われることに道理はある。だが今の時期にはやや誤解を生みかねない。」

「トイ卿が何を以て誤解とおっしゃるのか、某には分かりかねますが・・・」

その語気は強いものではない。

ただし正しい道理は曲げぬという決意は感じられる。


「正妻であるソン妃が第1席で挨拶をお受けになる、通常であれば問題はない。ただし後継者が未定である状況で、正妻と共に公子ウグイ様が家臣のあいさつを先頭で受けることには問題があろう。」

「それはいかなる問題で?」

「知れたこと、国主代理を公子が受けられておるように見えるではないか。」


トイ卿は大きくため息をつく。

「貴公もジョン・ガン卿の言葉を聞いておられたであろう?今年に限って公爵家すべてのものが出席するのは、後継を決めておらぬという公爵の意志を、言外に発信をするためでもある。そこで第1公子を前面に出せば、間違った発信をすることになる。留守を預かるものとして、儂は貴公の意見に同意できない。」


「後継問題とはまた別の話でございましょう。公子方が一列に並べば、家臣はどこを向いて挨拶すればいいのか困惑いたします。主不在の際には後継の太子に、その太子が決まっておらぬならば長子を優先する。何の問題がありましょうか?」

シュウ卿も全く譲らず、同じ主張を繰り返す。


「しかしそれではな・・・」

トイ卿が言うのをお待ちくださいと押さえてシュウ卿が言う。

「公爵のご意向はもちろん承知しております。第4公子シャオ様を後継にとお考えの事、城内に知らぬものはおりませんでしょう。」

「お分かりならば是非もないではないか。」

「そこにすべての問題が存在しておるのではありません。」


シュウ卿はここで声に力を込めた。

「封建の世に我が国は武威を整え、覇者などともてはやされております。軍隊は3軍を抱え、その威を王と並べようとしておるではないですか。」

「馬鹿を申されるな。城内ですぞ。」

「『ジャン家の良心』であるトイ卿であられればこそ申し上げております。大恩あるルー侯国の縁ある公子を太子とせず、王家を上回る戦力を整え、王に代わって諸国へ号令する今の状態を、トイ卿は正しい勤王とお考えでしょうか?」


トイ卿は市井の声を思い出す。

町人たちも不満に思うここまでの公国の軍編成である。

そして廟堂3位であるシュウ卿は、公爵の勤王姿勢に疑問を抱いている。


順風満帆に見えるリュー公国だが、火種がないわけではないのだ。

「公爵の勤王のご意志は疑いもない。ジョー王自ら『覇者』の称号を与えられたのだ。貴公は王のご意志をも疑おうというのか?」


「誰も味方をせぬ王を援け、誰にも思いつかぬ『王の利用方法』を思いつかれたジョン・ガン卿の頭脳には、驚嘆するほかございません。しかしそれは勤王とは真反対の行いではございますまいか?」


トイ卿は一瞬言葉に詰まる。

孤立する王を救い王から権威を授かる、とは確かにガン卿が考え出した知恵であった、

そのこと自体が王に対し不遜であり、勤王とは逆の行いだとシュウ卿は言う。

はたしてそうなのだろうか?


「トイ卿お伝えしたい秘事がございます。」

意志の男、ディアオ・シュウ卿は冷たい表情のままそう言った。




春秋時代は史実でも勤王意識が高まった時代でもあります。

戦国時代にはもうグダグダになるんですけどね( ・∇・)

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