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前夜2

お立ち寄りくださりありがとうございます。本日、複数話投稿しています。この話は2話目です。シルヴィ視点です。

「シルヴィ、ダニエル、そろそろ明日に備えて休みなさい」

叔父様が声をかけてくれました。

明日は朝から、それこそ殿下のお目覚めの時から付き添う予定です。

今夜はお城に泊まるのです。


ダニエル先輩は手際よく片付けて、

「それじゃ、また明日」

明日に対して全く気負いなくいつものように部屋を去りました。


叔父様は無駄のないそれでも優美な動きで片づけを進めています。


「叔父様、少しだけ時間をいただけますか」


紫の混じった濃い青の瞳が、私を見つめました。

私は叔父様の傍に行きました。

叔父様からもらった守護の腕輪を外しました。

刻まれた花の文様と叔父様の強い守護石が一瞬光を放ちました。

叔父様の腕を取り、私は腕輪をつけました。


「せめてこちらだけは傍にいさせてください」


文様には私の魔力を注ぎ込んでいました。

ともに戦うことはできなくとも、魔力の一部は寄り添うことができます。


叔父様は腕輪を嵌めた手を私の手に絡めました。

微かに清らかな魔力が流れ込んできます。同じように叔父様も私の魔力を感じているでしょう。


「あんな言い方をして悪かった」

身体に沁みこむ声がしました。私は目を閉じながら頷きました。


「ダニエルにもあの後、責められた。お前を傷つけてしまった。お前を信頼していない訳ではないのだ」

叔父様は残りの手で、私の頬を撫でます。

そして叔父様に抱きしめられていました。清らかな魔力が私の身体全体に染み込んできます。

「シルヴィ、私はこの強い魔力があるために諦めてきたことがいくつもある」


その言葉は私の心臓に鋭い痛みをもたらしました。

叔父様を見上げようとしましたが、しっかりと回された腕はそれを許しません。


「シルヴィ、私の宝。明日は、この叔父のわがままな願いを叶えておくれ」


今にも頷きたい思いでしたが、どうしても一つだけ私もお願いがありました。

「叔父様が負けても生き残って下さるなら、私は引き下がります。叔父様のために」


笑う気配が降ってきました。

「約束しよう」


それさえ約束してくださるなら、私は引き下がります。

私は叔父様を抱きしめました。


「先日は叔父様に納得できず、辛かったです。大好きです。叔父様」


叔父様は私の額に口づけて、返してくれました。

「私も辛かった。愛しているよ、私の宝」


ご武運をお祈りします。叔父様。

私は魔力を込めて祈りを捧げました。



お読み下さりありがとうございました。

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