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第8話 翼持つ銀

「ここが冒険者ギルドか、なんかイメージ通りの作りだな。人はいないけど」

「ゲームとかで出てくる西部劇の酒場って感じよね」

「早く用事を済ませる」

城壁側の大通りまで歩くとひときわ大きな建物に入る。いかにも荒くれものが集まってそうな冒険者ギルドはそのイメージと反して閑散としていた。

弓子に聞くとこの世界では高速移動手段が乏しい為狩りにいく人は朝早く出るし、とくにギルドに用事がない人はギルドに来ない。酒場が併設されてるイメージだがもともと荒くれものが多い冒険者が集まるところに酒場を作るとか爆弾に火炎瓶投げ込むようなものだと言われて納得する。

言ってしまえば冒険者専用の市役所とハローワークみたいなものだもんな、確かにそれもそうだ。

鉱床ゴリラの時も冒険者が戦闘に介入する事も無かったし、意外と昼間は町にいないのかも

「本日はどのようなご用件でしょう?」

「この人の冒険者登録を。あと私のランクアップをお願いします」

「少々お待ちください」

今朝のうちに確認済みの魔石核を弓子のギルドカードと一緒にカウンターに置く。

受付嬢は魔石核とカードをバックヤードに持っていくと、新しいカードを二枚持ってきた。

緑に光るカードがEランク、俺のは白のGランクだった。

やっとこれで俺も冒険者の仲間入りだ。

「依頼をお探しでしたら、あちらのボードへ。三人でお受けになるのであれば敵はEランクまでを推奨いたします」

「え。俺Gですけど大丈夫ですか?」

「天核と鎧通しがいられるパーティでしたら事故率はかなり低いかと思われますが?」

この二人そんなに強いのか。恋亜のほうはざっくりとしか能力を聞いていないため全然イメージがつかない。

この二人がこれから先俺と組んでくれるかどうかもわからないし、安全考えたらクエストは暫く採取系の奴を受けて行くしかなさそうだ。

俺達はギルドを出てベルナの家に向かった





「旦那様がお待ちです。どうぞお入りください」

家令さんに通されて応接室に入る。中には40代くらいの男性が座って待っていた。

ベルナに似た金色の髪に赤い色の服を着た男性に勧められるまま席に着く

見計らったようにメイドさんがお茶を出してくれた。おお、これが貴族対応って奴かとこっそり感動していると男性がにっこりと笑みを浮かべてくる。

そういえば自己紹介もまだしてない、家令さんが旦那様って言ってたからベルナのお父さん。つまりフィルナ伯爵なんだろうけどさ

「まずは娘が迷惑をかけたね、私がベルナの父だ。ベイルド・フィルナ伯爵という」

「初めまして。ヤマモトキョウヤと言います」

「そっちの二人は鎧通しと天核だね。今日は珍しい冒険者が多い日だ、さっきも《白滝の賢者》が遺跡への探索許可を取りに来ていた」

白滝の賢者ってなんか美味しそうな名前ですね、とか小学生並みの感想を心の中で留める。

すごさが今一伝わらないけど名の知れた冒険者なんだろうか。

「ユミコ・シノノマです。鎧通しなんて大層な名前で呼ばれていますが一介の冒険者ですわ、伯爵」

「コア、天核で呼ばれてる」

「さて、それでは本題に入ろうか、まずはヤマモトに護衛料を払わなければならないね。この件に関してはベルナからも頼まれている。大金貨3枚ってとこだろうかな?」

うぇえええええええ!?三十万も貰っていいの!?

突然沸いて降った高額依頼料に小躍りしたくなる。これでとりあえず暫くはお金に困らない。

採取系のクエストを受けながらのんびり情報収集できそうだ。

何を買おうか考えていると、突然待ったがかかった。恋亜だ。

「少ない。相場でいえば大金貨8枚」

「ヤマモトは正規の冒険者ではないからね。それにアウグストも失ってしまった。その分を引いての8枚さ。まぁ異論は出るのは予測していたそこでだヤマモト、私は君たちパーティに依頼をしたい」

「どういう事でしょう?」

「アウグストの死体から、彼の剣を回収してほしい。達成料として一人当たり大金貨20枚を支払おうじゃないか」

「剣ですか?」

「ああ、今ならまだ間に合う。彼がアンデッドになる前に死体を焼き、剣を回収してこい。ちなみにこれは君は断ることはできない」

「どういうことでしょう?」

「娘の鎧を破壊したと聞いている、帳消しにしようじゃないか。わからないか?白金貨20枚は下らないミスリルの鎧の損害賠償をしないといっているのだ」

ゲッ、あの鎧そんなにするのか!?これ鎧返したら話おさまらないかな・・・?

一瞬考えるも、返すとどこから出したって話になり、そこから俺の能力がバレる可能性が大きい。

この話自体も厄介な感じもするが、2000万なんて大金を賠償もできない。

「君が分解魔法使いだという事も聞いている。天核と、鎧通し、分解魔法使いのメンバーなら十分にこなせる内容だろう?期限はそうだな、ひと月だ」

「ち、ちなみに断るとどうなるんでしょう?」

「この国では、白金貨15枚以上の借金の場合相手に死罪を命じることもできるのだよ?」

あ、断るの無理でした。





二人にクエストの同行を頼むと両方から了承を貰えた。

剣を回収するだけだし、これで安心してクエストに行ける。防御にはメルカがいるから心配ないけど攻撃能力がないからね俺。その足りない攻撃力を補うのに案内されて白銀工房へと来た。

なんでも鍛冶神の加護を受けた異動者がやっているとか・・・

街の雑貨屋みたいな雰囲気の並びにある建物に入る。


「プラチナー!!いないのー?」

「だぁああ!その名前で呼ぶなッ!アぁん?んだテメェは・・・」

弓子が入ってそうそう大声を上げると奥から車いすに座った男性が出てきた。

両足がなく、左目は眼帯をしている。30代くらいの顔つきは明らかに日本人だが、身に纏う空気が異様に重い。飛びかかってきそうなギラギラした目から目が離せない。

学校の心理学の授業で見た快楽殺人者の顔にすごく雰囲気が近い。

俺の直感が言っている、この人は武器で殺すことに抵抗がない人だ。正直近寄りたくない。

恋亜が指をさしてプラチナと呟いた。

まじか。

「アァ、異動者か。腰のは・・・なるほどなァ。お前には槍や剣は向かねぇな」

プラチナと呼ばれた男性は俺を一目見ると腕につけた時計を触りだした。

あ、あれかなりボロボロだけどウォッチフォンだ。ちょっと前に話題になった時計型携帯電話。

プラチナさんはデバイスを操作すると空中に箱を出した。箱を投げ渡してくる。

思ったより軽い。

「開けてみろ。お前にはそれがいい」

そこには銃がおいてあった。全長30cmくらいの長さがあるリボルバータイプのこの銃は、銃身が太く輝く銀色をしていた。銃身には文字が彫ってある。翼持つ銀(ウィングドシルバー)と言うらしい。

手に取ってみるとイメージしていたより軽い。サバゲーでもったエアガンみたいな軽さだ。

こっちの金属ってこんなに軽いのか。でもおかげで思ったより取り回しが楽でいい

「あっちにある実銃のトーラスジャッジをモデルに、PPCの銃身を足して設計してある魔銀銃だ」

「魔銀?」

「何言ってっか分かんねェなら聞き流せ。説明してやる義理はねェからな。裏庭で試し撃ちしてみろ」

「俺実銃うつの初めてなんですが」

「エアガン触ったことはアんだろ?そう変わんねぇよ。遊びか殺し合いかくらいなもんだ」

いやそれはだいぶ違うだろ。カップ焼きそばと焼きそばくらい違うだろ!!

プラチナさんに勧められるまま裏庭にでる。そこには試し切りに使われたのであろう人形が転がっていた

人形を弓子が立たせる。しっかりと両目を開けてフロントサイトリアサイトを合わせて慎重に標的を狙う。

引き金を引くとドンと大きな音がして人形の腹の部分に穴が開いた

「撃つまでの時間以外は悪くねぇ、サバゲーでもやってたな。だが狙うなら頭か心臓にしろ、確実に殺せる。もう一回やってみろ頭を狙え」

人形の頭をめがけて引き金を引く。この銃は反動が少ないのか音以外はエアガンと同じ感覚で撃てる。

二発三発と人形の頭を連続で撃ち抜く。ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン

7発全部撃つと、人形の頭がもげた。

「狙いが正確で気持ち悪いなお前、なんだ?ノビオって名前か」

「さすがに動きながら動いてる標的には当てられませんよ。自分も逃げなきゃいけないですし」

「お前、いいやなんでもない・・・その銃使ってフィルナの依頼クリアしてこい。弾はおまけしてやる」

「依頼の事何で知ってるんですか!?」

「うちの嫁は占術師もやってんだ。知ってるぜお前のスライムの事も依頼の事もな、確かメルカだったか?自動防御とその銃は相性がいい。メルカが防いでいる間ゆっくり狙いをつけて撃てるからな。仲間に当てるなよ」

『マスター、彼の提案を肯定します。槍を使うよりオススメです』

確かに言われてみればこれならメルカ越しに撃てるし、遠距離攻撃もできる。弾を込めるのメルカの防御力があればゆっくりできるし、狙いだけは正確だとサバゲサークルでも評判だった。

お座敷シューティングだったら無敵だと言われあとでバカにされてるのを知ったときはちょっと絶望した。

確かに理にかなった、素敵な提案だと思う。

「今ならその銃白金貨1枚で売ってやる」

「んな金あるかー!!」


値段以外は素敵な提案だった。

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