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第6話 ベイルーシャ国入国と温泉街


教訓:目立つことはするもんじゃないネ!!


「「やっと解放された・・・」」


「・・・キョウヤがあんな目立つことするからいけないんだからね」


「いろいろ言いたいことはあるけど、すまんかった」


昼前にベイルーシャについたのに今はもう夜の帳がすっかり落ちた夜中。歓楽街の方からは賑やかな声が聞こえる中、ぐったりした顔をして弓子と一緒にベイルーシャ国の城壁と温泉の町アルケーの温泉街の中を歩いていた。


「誤算だった。まさかまた接触収納が足をひっぱるとは・・・」


何があったかというと昼前まで話は遡る・・・


◇ 昼前 鉱床ゴリラ討伐後 


「「倒せた!?」」


鉱床ゴリラが、弓子の一撃を受けて大きな音を上げて倒れる。先ほどまであんなに動き回っていた鉱床の塊はその気配もなくただの岩山に代わっていた。

まるで、もとから、変わった形の岩塊だったかのように


「「やったぁあああああああああ!!」」


目論見が思ったより上手くいったことに喜びを抑えきれず、思わずハイタッチを交わす

二人で鉱床ゴリラに近づくとバリスタの巨大矢が左脇腹を貫いて右脇から飛び出していた。

周りには色とりどりの宝石や鉱物が飛び散っている。鉱物にあんまり詳しくない俺でもわかる。紫水晶やラピスラズリ、もしかしたらダイヤモンドなんかも探せばあるのかもしれない。

しかし、すごいお宝モンスターだったのね。一攫千金夢じゃないじゃない。

これ貰っていいのかな?教えて弓子先生!!


「そんな顔しなくても、倒したモンスターは倒した人の物よ」


すごく物欲しそうな顔をしていたらしい、苦笑いされながら返してくれた。

おお、つまり半分は請求できるってことだ。これで余計な金策を練らなくて済むかもしれない。


「・・・半分は貰えるって事だよね?」


「半分も私いらないわよ。魔石核だけ貰えればいいわ。これでランクが上がるかもしれないしね!」


冒険者の弓子は、現在、下から二番目のFランクの冒険者らしく。ランクアップの条件が大型モンスターの魔石だということで近く魔猪かジャイアントリザードと呼ばれる大型の魔物を狩りに行くつもりだったとのこと。魔石核は結構なお金にもなるとの事で、魔石核がほしい弓子と、鉱物が欲しい俺で丁度よかったとの事だった。

願ったりかなったりだネ!


「でもどうやって魔石核を取り出すかが問題なのよね・・・ギルドの解体料は前金制でさ。私このモンスターの解体料払えるほどお金ないのよね」


「あぁ、そういう・・・それなら俺が立て替えてやるよ、ベルナの護衛料が入るから。代わりに案内してくれないか?ギルドにも行ってみたいんだ」


「おっけー。交渉成立ね。ねね、これストレージに仕舞えないかな?」


「あ、行けると思うよ、『接触収納』」


スマホを操作して接触収納を発動させる。鉱床ゴリラの残骸が緑に淡く光って一瞬で消えた。

ストレージを確認すると鉱石事に分かれていた。ラッキー!これで解体料がタダになった。とりあえず結構な量があるからあとでゆっくり確認するとして、まずは何気に楽しみにしていた異世界初入国と行きま「お前らそこ動くな!!!!!」すか?

怒鳴り声に驚いて振り返ると城壁の軍隊であろう人たちがいつの間にかこっちを取り囲んでいた。


「い、今のはなんだ!!?まさか分解魔法か!?おい、お前説明しろ!!!」


軍隊の隊長らしい人が足をガクガクさせながら必死に大声を上げる

分解魔法ってベルナもいってたけどそんなに珍しいものなの?

弓子をみるとあっちゃーみたいな顔をしている。


「おいどゆこと?」


「接触魔法が分解魔法に見えた。分解魔法は最低でも第3呪位の攻撃魔法、ぶっちゃけ戦略兵器。つまりキョウヤが危険人物にみえた」


「三行で解説ありがとう。やばいじゃないか!!!どうすんだよ!!?」


「おい、何をこしょこしょやっている!!答えろっ!!!今のは分解魔法か!!」


隊長さんの膝がすっごい震えてる。どれくらい震えてるかって恋人にあいたくてあいたくて震えてるくらい震えてる。とりあえず嘘でもなんでも否定しないと!


「ち、違います!!俺はキョウヤ・ヤマモト、冒険者の付き人してます!!鉱床ゴリラを倒した矢を放ったのはこっちの冒険者です!!分解魔法なんて使えません!!」


「うぇえっ!?私に振らないでよっ!!っ?・・・ベイルーシャの冒険者ギルド登録冒険者のユミコ・シノノマです!!ギルドカードもちゃんとあります!!」


弓子がギルドカードを提示する。ギルドカードをみた隊長はとりあえず身分がわかったのかほっとしていた。


「冒険者の方だったのか、なるほど、あの化け物を倒せるはずだ。しかし君はFランクじゃないかね?どうやって倒したのだね?」


「うぇっ!!?えっと、その・・・」


ランクを突っ込まれて慌てる弓子。ヤバイ!!また疑われる!!

突っ込まれるところをカバーしなきゃいけないという意識が、研究発表でさんざん練習した質疑応答対応スキルがこの時ばかりは牙を剥いた。


「それは僕が説明しましょう!!どうやって倒したかというとですね!!」


落ち着け、まずは起こりえた現象から説明してそれに肉付けをしていけばいい!!

それには何人もの人が目撃したであろう攻城弩から説明していった方が後々楽だ。だってそれは変えようのない事実だもの!!!いかにもインテリっぽく歩いて


「そこの攻城弩を使ってですね!!」


先ほど狙撃した地点を指さす!!そこには先ほどと同じく攻城弩がっ!!!!


()()()()()()()()バシュッと音を立てて一瞬で消えた。


あ、あるぇえええええええええええええええ!!!!!???ナイ、ナイナンデ!!?


「ごめんっ、さっき邪魔だと思って消すボタン押したんだけど・・・攻城弩はラグあるの忘れてた・・・」


冷や汗だらだらの俺に、同じく冷や汗を垂らしながら耳打ちをする弓子。

ギギギと隊長の方を振り向く。一言でいうとすごく震えていた。

そう、隊長は見てしまったのだ。俺が目の前で指をさした瞬間に、分解魔法だと勘違いされる原因になった緑の淡い光に包まれて攻城弩が消えるのを。


「か、かくほー!!!!!!!!!!」


「「いやぁああああああああ、ちがうのおおおおおおおおおおおおおお」」



結局、フィルナ家のメダルを持っているということで身分を保証して貰った。そのあともいろいろ尋問されたが無事に弓子ともども解放された。鉱床ゴリラは触った瞬間に一瞬で消えたことにして、攻城弩はいつのまにかあったのを使ったがいつのまにか無くなってた。不思議なものもあるもんだねスタイルを貫き通した(半場涙目で)

ベルナの家には夜分遅くという事で兵詰め所に来ていた家令さんに明日お伺いする旨を伝える。

この町だとメダルを見せるだけで買い物が出来るらしく、路銀の心配は必要がないがすごく精神的に疲れた。

俺達は家令さんに聞いた温泉があるという宿街を探して歩いている。辻馬車で近くまで送って貰い、宿が密集している区画の方向を教えてもらう。大通りにでるといくつも屋台が立ち並んでいた。


「おにいさんたち、買ってかないー?コッカ揚げだよーおいしいよー?」


「コッカ揚げ?」


「カラアゲみたいなもんね。うわっ、ここのお肉すっごく大きいわね・・・」


「ハンバーガーくらいあるぞ。この肉・・・」


声をかけてきたお姉さんにメダルを見せてコッカ揚げを買う。かぶりつくと肉汁があふれ出る。

美味しいっ!!


「美味しいでしょー?うちら狸人(ラクーン)は色んなもの食べてるからねー!スパイスの扱いやら味付けやらには一家言持ってるのよー!」


聞きなれない単語にコッカから目線をあげるとお姉さんの頭には狸の耳がついていた。

おお!リアル獣人!!ビバ、ファンタジー!!

思わずぽかーんとしていると、お姉さんが困った顔をし始めた。困った顔もかわいい。


「すみません、コイツ獣人種(ワーアニマル)の方をみるの初めてみたいで、きにしないでください!」


「珍しい人だねー。フィルナ伯のメダルを持ってたけど・・・食客ー?」


「そのようなものなんですが、旅人です。今宿と飯を探してまして」


「温泉付きの宿とかもあるからね。ちゃんとしたとこ探したほうがいいよ?源泉かけ流しとか言っといて魔法で湯沸かしてるとこなんてザラさ。地震があってから温泉の出が悪くてね。ぼったくりとかも注意しなきゃいけないよ。フィルナ伯のメダルを持ってても別料金取られるとこもあるからね」


げっ、マジか。そうなると慎重に探さないといけなくなるな

弓子の方をみるとすごいゲンナリしていた。何かトラウマを思い出してるような顔をしている。


「なら、いいとこ紹介したげようかー?もちろんちゃんとしたとこでねー」


「マジですか!!お願いします。」


「そのかわりー、お願いと言っては何なんだけどー」


結局お姉さんにコッカ揚げを追加で10個買わされましたとさ。




ついでだからいろいろ見て回る。コッカ蒸しやコッカステーキ、大人気コッカの串焼きやトモロまぶし揚げ(オレンジ色のトウモロコシみたいなものをコッカにまぶしてあげる料理)が目を引く。しかし人気だなコッカ。

弓子に聞くとかなり大型のモンスターの一種らしく、ベイル山脈でよく狩られるらしい。

Gランクモンスターなので初心者の狩りの対象にされることが多いほか、大量に生まれて殖えるため他の大型モンスターの餌にもなっているとのこと。

極たまにコッカの突然変異種で邪眼をもったコカトリスが生まれることがあるが、コカトリスはB級モンスターでこの町で討伐できないらしい。先ほどの鉱床ゴリラをソロで倒した事がある。《天核》のあだ名を持つ冒険者がコカトリスを倒したときは一緒について行った冒険者パーティ2つが全滅したらしい。

天核は無傷だったとか。そこまで強いのなら一度会ってみたい。


「しかし、いまさらながらこの町温泉なんてあるんだな」


「ベイル山脈の一番手前の山は活火山らしいわね。炎を操るトカゲがいたって伝説があるらしいわよ」


「その辺はおいおいゆっくり調べてこうかね。やることないしさ」


神話伝承調べるのは元中二病患者の生きがいだからね!

火を操るトカゲっていうとサラマンダーみたいなのがいるのかね?


「ボルケニオンって名前の溶岩蜥蜴(マグマドレイク)が昔勇者の従者だったんだってさ、前に来た時にこの町にいる異動者(ドライバー)に聞いたの」


異動者(ドライバー)?この世界にも車ってあるのか?」


「違うわよ。私たちみたいに神様に転移させられた人をこっちでは異動者(ドライバー)って言うんだって。わりとある事らしいわよ。向こうの知識を伝えた人がいるんでしょうね。温泉街も和風の宿もあるって聞いてるわ」



食べ歩きをしながら温泉街の中を散策しながら歩く。風俗街みたいな区画もあり、立ちんぼの獣人のお姉さんに誘われたが弓子が一緒の手前0断った。

人気がなくなるほど山側まで来たところで、紹介された温泉宿が見えて来た。聞いていた通り純和風なテイストのこの宿は山から流れてくる川の向かい側に一軒だけたっていた。

人通りもなく、よく言えば風流のある、悪く言えば閑散としてる雰囲気の中ポツンとたたずむ宿に不思議と怖いや、不気味等の嫌なイメージがわかなかった。宿についた明かりがいい雰囲気を出してる。


「「ごめんください」」


「あらさっきのー。お待ちしてましたー」


パタパタと足音がして出てきたのはさっきのラクーンのお姉さんだった

客引き(マッチポンプ)かよっ!!

ここの情報得るのにコッカ揚げ12個買わされたのにっ!!

苦笑いをしながら、とりあえず一晩お世話になることにした。


「ではゆっくりおやすみくださいましー」


「じゃ、あとで」


「また明日ね。オヤスミ」


チェックインを済ませ、鍵を受け取る。

当然ながら部屋は別々である。そりゃそうだよね!この宿人があんまり泊まっていないみたいだしっ!

一瞬漫画みたいに『いま空いとるの一部屋だけになりますなぁ』とか『もう、着替えるからこっち見ないでっ』とか『へぇ、ここのお風呂家族風呂なのね』からの『一緒に入る?』なんてことは全くなかった。

さすがに女子高生くらいの子とそんなことになったら普通に捕まる。実際はカギを二つ貰った瞬間に片方を取ってスタスタ歩いて行ってしまうくらいだしね。

部屋を開けると和洋風っていうのだろうか?ベットが置いてある。

俺はベットに倒れこみ意識を手放した。



「ん・・・久々に風呂入るか」


何せこっちに異動してから一回も入れなかったしね。

備え付けのバスセットを持って温泉に向かう。横に泊まった弓子の部屋からは気配がない。

もう寝たのかな?


一階に降りて温泉に行くと、入り口が一つしかなかった。

男湯を探してると湯上りの狸人のお姉さんが出てくる。聞くとこの世界では混浴が普通らしい。一応確認すると弓子は中にはいないとの事だった。やっぱり寝てるんだな。

今は他の宿泊客はいないらしく、気にせず入っていいとの事だったので遠慮なく脱衣所にお邪魔する。

全面木のつくりで檜のいいかおりがする。こっちにもヒノキってあるんだね。

手早く服を脱いで、浴場へとつづく扉を開けた。


「へっ!?異動者っ!!??」


「うぇっ!?」


月明かりに照らされたプラチナブロンドの髪に、整った顔立ちのハーフ顔

引き締まったスレンダーな肢体にまとわりついた水滴が月明かりを反射してキラキラ光る

中学生くらいの女の子がそこに立っていた。


「えあっ・・・あっいいのか?」


反射的に出ようとするも、狸人のお姉さんが言っていたのを思い出す。

こっちでは混浴が普通なんだっけ。じゃあ変に取り繕った方が怪しい。

そう納得した瞬間だった。


「いいわけ、あるかー!!!!!!この変態ー!!!!」


ドゴッ!!


一瞬で詰め寄ってきた女の子のパンチが顎を抉り、俺はまた意識を手放したのだった。



「あ、ごめーんヤマモトさーん。コアちゃんが入ってるからーノックしてからはいってねー」


気を失う瞬間にそんな声が聞こえた気がした。



新しいヒロイン候補は《天核》さんです。

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