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妖精カフェ  作者: 星村直樹
魔王の巫女
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魔王復活

 ・・・、力か、力なら貸すぞ。早く我を解き放て


「ありがたき…ヒッ。も、もう無理です。お止めください魔王様。お、お止め・・」


 ギャッ「アバババババ・・・、・・、・」


 男は、目から口から、毛穴から。ありとあらゆる魔力の穴から光を放って倒れた


 ・・・、魔王? 懐かしき名だ。我は、どのくらい寝ていた。なんだ、小さきものよ。・・、なんだ、我と話も出来ぬのか。ミコトは、ミコ・は、どこだ・・・


「ミ、ミコ・? ギャーーーーー」


 フシューー


 体中から光を放っていた男が倒れ。闇に飲み込まれた。その場所は、又、暗闇に戻った。


 闇の中で、大勢の信仰深い魔女魔法使いたちが、自分たちのふがいなさに、首を垂れていた。魔王のタマゴは見つけた。しかし、誰もこれを持つことが出来ない。魔王の細長い黄色い透明な大きなタマゴを自分たちが用意した場所に持って行くことすら出来ない。もう、5人もの同士が、魔王様から魔力を頂いたのに、それに耐えられず死んだ。


 ミコとは、魔王のタマゴから、力を貰い損ねて、そのため死を伴ったしもべが、最後に放った断末魔の言葉、魔王様から頂いた御言葉を話し合う。

「我らが純粋な魔力の塊ではないばかりに・・不甲斐ない」

「力を御授けになってくれたというのに」


「でも、奴の口から出た最後のお言葉を聞いたか。『ミ、ミコ・?』と、言っていたではないか。ミコとは何だ」


「古の言葉ではないか。世界で、最も古い言葉は、日本語だ。日本語でミコとは、魔王様の言葉を伝える者。魔王様には、我らと通じることが出来る巫女ミコがいるのだ。巫女ミコを探せ」


「そうだ巫女を探せ」

「我らの魔王様復活のために」


 暗闇の中で話し合われた言葉は、世界を駆け巡った。力の欲しいものは、魔王の元に集え。魔法の世界が復活する。魔王の言葉を伝えることが出来る巫女を探すのだ。




東京、六本木、リークスBAR


 トニーは、いつものように、カウンターの隅で夕食を食べていた。傍らには、お酒っぽく見えるので好きなジンジャエールを置いている。仲良くなった吟遊詩人のボイルと、他愛のない話をするのが日課だ。ボイルは、日本が気に入ったとかで、なかなか、次の目的地である東南アジアに向かわない。


「トニー聞いたか。魔王復活の話」


「また、それですか。魔法使いの王って意味ですよね。でも邪悪な意味にしか取れないんですが」


「魔王だからな。魔王には、我らと魔王を取り持つ巫女がいるって話だ。それも、日本人じゃないかって話だ。どうだ、詳しく聞くか?」


「日本人?日本って、此処じゃないですか。そう言えば、ボイルさんには、まだ3曲分貸しがありますよね」


「分かった、1曲分チャラだぞ。ここだけの話にしてくれ。強大な魔力を復活させる魔王のタマゴが発見された。だけど、誰もそのタマゴに触れないんだ。そのタマゴに触ると強大な魔力が貰えるんだが、誰も耐えられない。最近また挑戦者が出たんだと。その人も貰った魔力に耐えられなくて死んだんだが、死ぬ間際に魔王の言葉をその狂信的な集団に残した。魔王は、『ミコ』と、言ったらしい。それを古い言葉で訳したら。巫女になるそうなんだ。巫女は、魔王と人をつなぐ役割をするらしい。そいつらは、必死になって、その巫女を探しているって話だ」


「それって、カルト集団か何かですか。死者が出ているなんて、そんな情報を彼らは、よくリークできるな」


「おっ、食いついてきたか。そのカルト集団の名前は分からないが、知りたいか?」


「その、日本って言うのに興味あります。だって、此処でしょう。その狂信者が、日本にいるってことじゃないですか。知っていないと危ないでしょう」


「毎度あり、じゃあ、新しい情報が入ったら、1万円くれよ。そろそろ生活資金が危ないんだ」


「1曲3千円じゃなかったでしたっけ」


「依頼は、オーダーってことだろ。頼むよ」


「学生に、たからないでください。今晩は、今ので1曲弾いてくれるんでしょう」


「新しい客が来るかもしれないしな。そうしよう」


 ボイルがピアノを弾きに行った。トニーは、そこで真顔になった。話がリアルすぎる。わざと、この話を吟遊詩人に流しているとしか思えない。


 死人が5人。魔王の巫女か・・・


「あらー、憂鬱な顔しちゃって、そう言えば、最初に一緒に来た彼女はどうしたの」


「千里は、夜中に徘徊するのは、嫌だそうです」


「徘徊って、ふうん、千里ちゃんって言うんだ。偶に連れてきなさいよ」


「努力します。そうだ、ママに占いをしてもらおうと思ったら、いくら掛かるんですか。女の子って、そう言うの好きなんでしょう」


「いいところに気づいたわね。トニーの彼女だったら、初回をタダにしてあげる。そうしたら、千里ちゃんも、ここに来るでしょう」


「それ、本当ですよね。千里に話します」


 ボイルが、機嫌のいい曲を弾いている。なんか軽いけど。


 トニーは、夕食を終えた。今日は、いつものように、すぐには帰らないで、2杯目のジンジャエールを注文した。




 トニーの師匠である猫族の玉は、上機嫌で、モーリス家を後にした。最近、よくモーリス家にお邪魔して、豪華な食事を食べている。「私の家に住みなさいよ」と、言うモーリス夫人と娘のリリィの誘惑を振り切って帰宅中。その怪しい男を見た。


 なんだ、あれ。魔法使いにゃ


 その男は、閉店している妖精カフェをのぞき込むように見ていた。妖精カフェに魔法関係者がいるというのは、誰も知らないはずだ。もし知っているとしたら、それは、リザード魔術教団の、それも、トニーを勧誘しようとトニーを調べていた奴だけだ。リチャードとトニーが日本で、魔法アイテムを発動したのは、裏の世界では有名な話。そのアイテムの出何処は、不明というのが、人族の魔法界では、一般的な話だ。


 不審な魔法使いは、ちょっと妖精カフェを覗こうとしただけで、すぐいなくなった。


 あれは、トニーとリチャードの足跡をたどっているだけにゃ。妖精カフェがどうだとか思っているわけじゃ無いにゃ


 しかし、トニーは、現在ここで働いている。


 それで、覗いていたにゃ


 大したことはないと思ったが、玉は、その魔法使いの後を追った。その行った先で、その不審な魔法使いが、10人ぐらいの集団と合流したのを見て、嫌な感じを受けた。その10人の中に、日本人が一人もいない。そして弱いが、魔力を感じる。あれは全員、魔法関係者だ。


 魔法使い関係者の素行をしらみつぶしにしているという印象を受けた。


 更に、その中で、一番魔力が強い男の後をつけた。男が、お台場のレストランに入って行くのを見て、中に入るのは遠慮した。看板に魔法の文字が書かれていたからだ。


「レストラン シャンテワール」の看板には、『魔力のある者来たれ』と書かれていた。強い魔力の持ち主が、このレストランに居たら、吾輩のことがばれる。


注:最近玉は、自分のことを我と言わないで、吾輩というようになった。理由は、吾輩は猫だからである。


 弟子のトニーに食事に行かせよう。何か分かるかもしれにゃい。だけど、千里は、誘うなと言おう。


 いやな予感がするにゃ 


 玉は、トニーが待つ我が家に帰ることにした。



 翌日、玉とトニーは、警戒レベルを上げた。魔王の復活を目指すカルト集団の存在。妖精カフェを覗いていた不審者。どれも、今のところ、千里に話す話ではない。しかし、マスターには、注意を促す必要がある


「不審者が、全員外人ですか。カルト集団と話がかぶりますね」

「そう言う不審者が東京にいるということにゃ。博史に話すにゃ」

「分かりました。アンナさんにはいいんですか」

「大騒ぎしそうにゃ。吾輩たちで注意するだけでいいにゃ」

「実は、そのお台場のレストランは、千里と行ったことがあります。なんでか、凄く高いんですよ。金持ち相手って感じでした」

「カルト集団が使う手にゃ。純粋な魔法がどうのという奴らだけじゃないってことにゃ。京極とサイモンに、一緒に来てもらうにゃ。そのレストランに行くにゃろ」


「そうします」

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