表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖精カフェ  作者: 星村直樹
息吹の蓑衣
91/96

サイモンの決断

「『パオ』」

 私たちが、紅アゲハの異界に戻ってみると、茂みの外で、ガイとグレンが泡を吹いて倒れていた。主人を心配しない家臣はいない。慌てて、二人を、ここから遠ざけた。


「みんな来てくれてありがとう」


「途中まで、目的地に行っていたのよ。急にノイズが膨らむから心配したのよ」

「私たちもですわ」

「古の恐竜の魂が3万体。おじさま、驚くだろうな」

「良かったね千里。魔法が勉強できそう」


「サイモンが首を縦に振ってくれなかったら、難しんじゃないかな。寝ている人たちを起こすことになるって言ってなかった」


 この後、ウィンディたちは世界樹に。私たちは、異界の出口に向かった。アクアが扇子を広げて私の肩にちょこんと座る。さっきの恐竜たちの話を考えているようだった。


 異界の端は、穏やかで清々しい。二人を看病しながら私は、サラとおしゃべりして過ごした。恐竜たちの魔力は、火龍王と変わらないという話だった。


「ここを出たら、おじ様にも相談するでしょ」


「あっ、サラ様。さっき天国の光が見えました」

「う~ん」


「二人とも、目を覚ましました?」


「相談は、サラがやってよ。二人には、聞かせられない」

「わかった」


「二人とも、ちょっと待っててね。ウィンディとヒイラギが、世界樹の落ち木と葉っぱを採りに行っているから」


 ウィンディとヒイラギが、世界樹の落ち木を3本も拾ってきた。


「落ち木を1本貰っていい?これを京爺のお土産にしたい。ちょっと大変なお願いがあるからね」


「いいよ。1本は、学術会議用。1本余ったね」

「エストに勉強させたい。京爺の話し相手になれるし」

「決まりだね」


 アクアは、生命とは、魂とは、そして、魔力とはという考えさせられるテーマを貰って、思考に耽っていた。


「アクア、帰るよ」


 アクアは、頷いて、もう一度、紅アゲハの繭がある茂みの方を一瞥して、紅アゲハの異界を後にした。


 結局、他の、紅アゲハの次元門を確認できなかった。火龍王様にサラが、今回のことを報告してくれた。サイモンの決断次第で、こちらも対応を考えると言ってくれた。紅蓮洞は、龍王城の支配地域。移住が決まったら、竜人は、ここを出入り口にすることになる。




 妖精カフェに帰って、京爺に世界樹の落ち木をお土産にあげた。そして相談。京爺は、腕組みして、難しい顔をした。


「わしは、賛成じゃよ。サイモンに話そう。じゃが、竜人の何人が、次元門を通れることやら。もしそうなっても、街は、ここと向うの二ついるということじゃ。この話は、世界会議の後でええんじゃないか。とりあえず妖精王達には、話さんのじゃろ」


 恐竜たちが手放しで喜んでいたから、そこまで考えていなかった。でも、この話は、世界会議の後では、遅いと思う。


「駄目よ、サイモンの首の振り方で、この話がオープンにできるかもしれないのよ」


「師匠、千里君の言う通りです。私も一緒にサイモンの所に行きます」


「そうするかのう。やれやれ、飲み友達が遠くなる」


 難しい顔をしていたのは、そこだったんだ!


「善は急げじゃな。今日、酒飲む約束しとった。こっちから出向くか」

「1本持って行きましょう」


「あっ、灘の春」


「なんじゃ」


「あゆが、妖精カフェに来たとき、京爺にって美代さんが、日本酒を持ってきてくれたのね。でもマスターもアンナも、ホムラの捜索でいなくなるから、京爺の歯止めが効かなくなるじゃない。だから大海家の台所に隠したのよ」


「そんな大事なこと忘れるな」

「まあまあ、師匠」


 私は、東京側に走った。


「千里が、ミコト様たちから話を聞いたんじゃろ一緒に来い」


 そう言われて、引っ張ってもらった。まだ、浮くことしかできないので、森の大樹の中腹まで行こうと思ったら相当大変。一人だと、よじ登る形になる。


 行きがけ、アンナが、夕食を持って私も後から行くと言っていた。アンナもターシャが遠くなるのが寂しいのだ。



 カタパルト家に行ってちょっと事情を話すと、ターシャが、サーシャとムシキングを呼んでくると言って向かいの家に走った。そして、やって来たサーシャに、アンナが来るまで、話を待ってと言われた。


 みんな魔力の器。魂に、前世の記憶が刻まれるという話をすんなり受け入れた。


「それで、どうするサイモン」


「行く。明星様も喜んでくださる。ただ、わしらに、種族の純血主義はないぞ。それでもいいのか」


「多分、光か闇属性で、器の大きなものが生まれればいいだけの事じゃろ。明星様が、こっちで一生を終えることが出来たんじゃ。今のままでいいじゃろ」


「それで、どうなんだい。紅アゲハの異界に入れる者はいるのかい」


「自力だと数人かな。でも、京爺が押せば、1500。擬人化人や有翼人の希望者が、同じぐらいいるとして、3000人は、行けると思うぞ」


「わし、そんなことしたら、死ぬんじゃないか」

「師匠、手伝います」


「里帰りの時も、又、頼むか。千里も、そのうち憶えろ。それで、紅アゲハの異界は、どんな感じだ」


「竜族の町ができるようなところ。ノイズが無かったら、清々しいところよ。世界樹もあるし」


「新天地だな。我が一族も、希望者を募る」デビットも乗り気になった。

 サーシャがアンナに、私は残るからと言って安心させていた。


「デビットに、擬人化人の連絡を頼むか。みんな、恐竜たちの器になれる素質があるはづじゃ」


「有翼人もね」と、ターシャ。

 宵野明星様は、有翼人と結婚して一生を終え、その血を有翼人に残した。


「蜂族に連絡役を頼むか。少し事情を知っているしな。それで、サイモン。とりあえず、話し合いに行くんだろ」


「ああ、そうだな。 京爺、千里の背中を押すやり方を教えてくれ」


「サイモンならすぐ覚える」


「あなた、後は、食事をしながらでもいいのよね」

「そうしてくれ」


 ターシャの一言で、緊張する感じの話し合いは、いったん終わった。京爺とサイモンの酒にマスターも加わることになった。私たちは食事の準備。


 アンナが弱音を吐く。


「寂しくなるわ」


「私は自力で、次元門を超えられるようになると思うから、変わらないわよ。サーシャもそうなりなさい」

「飛べるから、近いしね」


「そうっか、そうよね」

 アンナ復活。


 そこからは、女同士の他愛もない話。私は途中で、京爺たちに捕まった。


「千里聞いたか。サイモンは、向こうに引っ越しても、当分こっちに来てくれるんだと」


「ターシャに連れて来てもらえばいいだけだからな。黒龍王の遺産捜査の現実味もおびたし、重要性が増しただろ」


 京爺もアンナと一緒で、復活していた。


「黒龍王の話は、聞いたか?」


「まだよ。お妃さまのイソバ様がいらっしゃるから、詳細に聞けると思う」


「わしも一緒に話を聞こう」


「ミコト様とイソバ様の世界は、魂しか入れないのね。だから、私が、あそこに行ってから、来てね」


「なるほど。普段は、封印をしっかりしとかないといけない」


「千里、悪いんだが。最初は、ローグ隊と一緒に、擬人化人の各種族を回ってくれないか。わしらにとって、千里のビジョンは、覗きやすい。信ぴょう性が増すからな」


「そうする」

 京爺とサイモンが、盃をクイッと出すものだから、お酒を注ぎながら話す。一升瓶重いから、とっくりほしい。


「そうそう、トニー君だが、なかなか見どころがあるじゃないか。一度、こっちに呼ぶか」

「ええじゃろ、博史」

「師匠がそう言うなら」


「7月に、トニーの友達のリチャードが来るのね。リチャードと一緒にいろいろしたそうだって。火龍王様に、玉がトニーを鍛えてるって言ったら、師弟供に此処に来させよって言ってたし、まだ先でいいんじゃないかな」


「それは、それじゃ。トニーは、自分の属性を光じゃと言うとったが、闇もいける。そうじゃろ博史」

「トニー君は、重力とか次元とか、物理の知識が深いんだよ。闇属性の魔法を使える者は、とても少ないんだ。もう、鍛え始めたほうがいいと思うよ」


「いいなー、トニー」


「そう腐るな。擬人化人の長と昵懇になったら、秘術を教えてもらえると思うぞ。ローグ隊と顔をつなげ」 デビットが慰めてくれた。


「そうする」


 そんな話をしていたら、アンナ達が、ご馳走をどっさり持ってきた。夕食は、灘の春の一升瓶が、1/3になるまで続いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ