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妖精カフェ  作者: 星村直樹
息吹の蓑衣
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魔力の器

 6竜の中で、どうして、セッパに緊張しなかったかと言うと。話し方もそうだけど、オーラが京爺と同じオレンジだったから。セッパが、魂と言っていたので、この人たちは、遠の昔に亡くなった方たちなのだろう。私は、精霊界の火龍王様たちを知っているので、恐竜たちを簡単に受け入れられた。


「魂の開放って?」


「今、自分の前世を垣間見たじゃろ。人の記憶は、魂に蓄積される。だから進歩できる。ところが、大災害の時の魔法は、魂を保っていられないほどの衝撃だったんじゃ。生命が生まれて、38億年。その記憶を霧散させるのを惜しいとは思わんか。わしらは、それを保ち、紡ぐために、こうしておるんじゃ」



― 千里、千里。大丈夫ですか?

― しっかりして、ここまで帰ってくるのよ

― ウィンディ、千里をこっちに引っ張って

― 無理よ。あの光は結界よ。風じゃあ無理。それにノイズがひどくて集中できない


「あらあら、お友達?私たちにも声が聞こえるのですね」


「まだ居たんだ。私が契約した妖精たちです」


「その子たち見ました。可愛い子たちでしたわね。エレメンタルの巨人。小さいのに、凄いオーラでした」


「我は、彼女たちとも話したいぞ」


「私とみんなは、繋がっています。みんなが、私の背中を魔力で押せば、私が見聞きしている事を感じることが出来ると思います。ただ、ミコト様のメッセージが強すぎて、頭痛を起こしてしまうので、近寄れないんです」


「ごめんなさい。あれは、千里のような子が、私たちの元に来るための道しるべです。私たちが解放されるための唯一の生命線。どうすることもできません。あのメッセージがなくなるときは、この世界がなくなるときです」


「あのっ、京爺。。ごめんなさい、セッパさん、私の背中を押してみてください。ウィンディたちが見えると思います。彼女たちは私の所にくることが出来ますか?話しかけられるなら話したい」


「外が見えるじゃと。まさか。まさかと思うが、見たい。ほれ、力を貸すぞ。みんなも、わしと繋がれ」


 セッパが私の背中を押した。


 目の中に見える赤い星と青い星の流れが加速する。それは、私のオーラが膨らんだ証拠。


― 千里のオーラが膨らんだわ。あそこに飛び込むわよ

― 分かった

― おじ様、みんなを守って

― わたくしたちも魔力を上げますわよ


 ウィンディが、私にしがみついて両手を背中に当てて魔力を送ってくれた。そして、ヒイラギ、サラ、アクアと、次々に私にしがみついてそうした。


 セッパたちの魔力と、ウィンディたちの魔力が私を通して繋がった。


「あれっ?」

「えっ?」

「ここ何処!」

「う~ん、ねっ、何処でしょう」


「みんな、来てくれたんだ」


「千里ー」

「千里、無事?」

「わー、見たことない竜だよ」

「河童じゃないですか」


「河童言うな」

 セッパが、ムカッとしている。しかし、私の背中に置いた手を放さない。


「河童、千里から離れてよ」


「待て待て、今、手を離すと、お前らとのつながりが消えるかもしれんぞ」


「セッパ、ここは私とイソバの空間よ。その私たちが、千里に触れていないのです。もう、この子たちと繋がれたのです。大丈夫ではないでしょうか」


「あーーー、聖龍王様のお妃様」

 サラが、ミコト様を指さす。


「みなさんこんにちわ。ミコトと言います」

「イソバです」

「イリーよ」

「リーフェ」

「我は、始祖鳥。フェザーだ」


「河童じゃないぞ。セッパじゃ。どうやら、手を放しても大丈夫のようじゃな」


「でっかい京爺だね」

「ヒイラギも、そう思った!」


「こりゃ、聞こえとるぞ。わしらは、自己紹介したぞ。今度は、主たちじゃろ」


 みんな、スカートを履いていないのに正式な挨拶をした。


「ウィンディです」

「ヒイラギです」

「サラです」

「アクアですわ」


 みんな揃って挨拶するのを初めて見た。こうやって見ると、みんな王室や皇室の人だわ。


「精霊界の高貴な者たちだな。我は、風を操ることが出来る。ウィンディと話がしたい」

「イソバ様。私もサラと話したいです」

「私もアクアさんと」


「その前にわしらの事情を話した方がええんじゃないか。千里を見るに、突然変異と言うか先祖返りじゃろ。精霊界に助けてもらうしかない。わしが話してええか?」


「そうですね。それは、とても大事な話」

「そうしましょ。セッパに任せます」

 ミコトとイソバが、セッパに賛同した。



「妖精たち、千里も聞いてくれ。わしらは竜族じゃ。巨大な力を持っておる。なのに滅びてしもうた。それは、外敵を助けるためじゃったんじゃ。助けたはええが、わしらの命を繋がんといかん。それで、ミコトとイソバの異世界で、魂を永らえさせておるんじゃ。すまんが、話を聞いてくれんか」


「死んでいるのに、命を繋ぐ?。難問ですわ」

 アクアが扇子を半分広げて、顔半分を覆った。


「命ですか・・・」

 ウィンディは、風のエレメンタル。風魔法の真骨頂は、生命の循環。


「命を繋ぐって?」

「そこから聞きたい」


「聞いてくれるか」


 セッパは、魂が、前世の記憶を蓄積すると言った。それは、精霊界の生き物も同じだという。


「では、魂とは何ですか?」

 アクアは、納得できないようだ。


「オーラの器じゃよ。魔力は、生きていればこそ湧くもの。しかし、魂は、オーラを宿すものじゃ。死んで、生産できんのなら、吸収すればよい。そうやって、力を蓄え、次の転生に繋ぐ。わしらじゃと光や重力。お前さん達だと、その属性の魔力となる。精霊界では、生者は死者おも成長させる。魔力が、パグーに満ちているとは感じんか」


「感じますわね」

「初めて聞いたけど、分かる」

「うん」

「じゃあ、この龍眼は?これも魔力を蓄えているよね」


「良い質問じゃ。魔力は、結晶化できる。これを魔石と言う。ところが、魔石は、器じゃないじゃろ。魔力そのものじゃ。消費したらなくなる。結晶化されとる魔石は簡単にはなくならんがな。じゃが、魔石は、器じゃないんじゃ、魔力を蓄積できるかもしれんが、記憶を蓄積できん。もし生まれ変われたとしても次の世代に、以前培った知識は持っていけんのう。するとどうなる、また、同じ大きな失敗をする。いつまでたっても、人生は、リセットされっぱなしじゃ。わしらの時代に、そうなってしもうた世界から来た魔物が、地球を襲ったんじゃ。あいつら、何て言ったかの。何か思い出したくない言葉じゃ」


「魔王ではなかったか」

「それ、戦った相手ですよ」


「バルスです。簡易語がパオ」


「パオって、空間を閉じる言葉ですよね」


「消滅よ。バルスは滅びの言葉」


「消去魔法と言うことね。使い方によったら役に立つかも」

「良いと思われていたものも、使い方によっては災害になりますものね」


「なるほどのう。後で話そう」


 ミコト様やイソバ様は、ウィンディとアクアの話を目を丸くされて聞いている。



「あれは、ひどい戦いじゃった。相手は結晶化した核から生まれた生物じゃ。自分たちが滅びるまで、戦いを止めようとせん。魔王なんぞは、魔力の結晶の塊の様な奴じゃろ。わしらを雑多な生き物だ、濁っているとか抜かして、見下すわ奴隷にするわで、むちゃくちゃじゃったんじゃ」


「ちょっとわかるかなー。今の精霊界も魔力至上主義だから」

「そうだね。それだけで、人の価値が決まるわけないのに」


 これは、ヒイラギやサラたちの持論だ。


「その話もしたいのう。多分、ミコトとイソバと、話が合うと思うぞ」


 二人が頷いている。


「続きじゃ。魔王は、自分の滅びた国を地球軌道上に転移させた。当然ここから、敵をいっぱい地球に飛来させるためじゃ。それでも、わしらは、負けんかったと思う。じゃが、黒龍王と聖龍王は、違う結論を導き出した。わしら全員が滅んでも、彼らを助けるというんじゃ。『多分あれは、魔王軍全勢力だ。あれらを救いたい』とな。ホーリーノバと言う魔法を知っとるか」


「この間、辿り着きました。あれは、メテオの対抗魔法ですよね」

「悪を滅ぼす魔法の進化系ですわ」


「半分正解じゃ。千里は聞いたんじゃろ」


「ホーリーノバは、再生もする魔法よ。やっぱりそうなんですか」


「そうじゃ、黒龍王が、衛星軌道上に現れた魔王軍の衛星をメテオで地球に落とす。それをホーリーノバで受け止め、新たな生命を生み出す。そんな大きな魔法をつかったら。魔力は消滅。オーラの器さえ粉々じゃ。じゃが、再生する。魂レベルで、地球に来た新しい命を救おうとしたんじゃ」


「私は、千里さんの記憶を見て感動したのです。地球は繁栄しています。夫の判断は、間違っていなかった」

 イソバが、泣き出した。


「ごめん、イソバ様は、黒龍王様の妃様よ」


 みんな黙りこくってしまった。


「私たちは、ただ、彼らと心中しようとしたわけではありません。こうして、あの時代の魂を温存しています。この魂が解放された時、我々は、以前の繁栄と、更なる進歩を手に入れることでしょう」


「ミコトの言うことは正論じゃ。じゃが、6千6百万年も待つはめになった。粉々になった器は、大きくなれんかった。わしらの力は強すぎたんじゃ」


「じゃあこれから、私みたいな人が増えるってことですか?」


「無理だな」

 フェザーが腕組みして、首を横に振った。


「確かに千里は、この女王二人と変わらん器じゃよ。そんなの、今の人間界だと、何千年か1万年に一人の器じゃ。この異世界には、3万の魂が眠っとる。全く無理な話じゃ。ところが、千里の記憶に光明を見出した。精霊界にわしら種族と相性の良い種族を見つけた。竜人は、わしらの世界に適応できる」


 みんな、あーーと口を開けた。擬人化人は、宵野明星が生み出した。宵野明星の適性は、光と闇。地球の恐竜と同じ属性だ。


「それも、器の大きな者まで生まれているではないか。我々の世界で暮らせば、属性の適応化や器の拡大も期待できるぞ」


「フェザーの言う通りじゃ。千里、サイモンに、ここで暮らしてみないかと聞いてくれんか。我々のノイズ対策も教える。竜人は、擬人化人は、将来繁栄するぞ」


「紅アゲハはどうなるんですか?ここが繁殖地ですよ」


「紅アゲハは、光と闇の蝶じゃよ。同じ属性の生き物と共生できんわけが無かろう」


「闇もですか?」


「黒い繭を見んかったか。紅アゲハの中に偶に、クロアゲハが生まれる。この二つの繭を掛け合わせると、息吹の蓑衣が作れる。そしてよいか、息吹きの蓑衣で、ミコトとイソバの融合した龍眼を包み込むんじゃ。そうするとノイズは、消える。しかし、100年に一度は、取り換えんとな。二人の魔力は強すぎる」


「今の話は、信用できる人だけにして下さい。セッパは、口が軽すぎよ」

「イリーの気持ちは分かるが、ウィンディたちは、大丈夫だろ」

「そうですね。千里さんのお友達ですし」

「ただ、竜人が、ここに来たくないと言ったら、今の話は、他言無用にしてくれ」

「ごめんなさい、そうしてちょうだい。ここを荒らされたくない」


「千里に任せます」

「ウィンディに賛成」

「私も」

「私もですわ」


「う~ん、世界会議は、どうするのよ」


「失敗に終わるって、おじさまが言ってたよ」

「インテリジェンスだけ、細々と残ると思うわ」

「元々それが目的だよ。後は、試しにやってみるだけだって」

「決まりですわね。サイモンの説得優先でいいのでは?」


「私ひとりじゃ無理よ。京爺とマスターに相談する。皆さん、それは、いいですか」


「そうして下さい」

「わたくしも、秘かに、セッパと京極さんが似ていると思いました」

「ええんじゃないか。わし似をわしが、信用せんでどうする」

「我に、反論はないぞ」

「いいと思います」

「マスターさんにも話していいわよ。火龍王にも、どうせばれるからOKよ」


 6竜の意見が一致した。


「決まりじゃな。千里、頼んだぞ。今日は、ここまでにしよう。サイモンの説得が優先じゃ」

「皆さん、また、遊びに来てくださいね」

「我は、ウィンディと風魔法の話がしたいぞ」

「千里さんは、ここで修行ですね。精霊界でも迷惑がられているのでしょう。ここなら思いっきりやっていもいいです」

「イソバ様、眠っている皆さんを起こす気ですか」

「いいんじゃない。竜人次第だけど」


「わはは、今日は、楽しい。わしたちが、魔法陣を解いたら、パオするのを忘れるな。こう握るようにして『パオ』じゃ。普通の人間だと、魂しかここに入れんぞ。言っている意味わかるな」


「肝に命じました。みなさん、ありがとうございます」


「皆さんのことは覚えましたからね。ここに入っても死ぬことは、ないですから」


 私たちは、ミコト様とイソバ様の異世界を抜けた。私たちって、結構危ないことをやってたんじゃないかって、この時思った。たまたまだけど、結果オーライ。

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