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妖精カフェ  作者: 星村直樹
息吹の蓑衣
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新しい仲間

 私は、アオイとルーに駆け寄った。ウィンディとヒイラギもそう。


「千里さん、ごきげんよう」

「ウィンディもヒイラギも、ごきげんよう」


 ウィンディとヒイラギは、学校の挨拶など無視して、二人の手を取った。


「ルー、来てくれたの!」

「アオイ、お父様が、いいって言ってくれたんだ」

 アオイは、土の妖精。ヒイラギの親戚。ちょっと事情を知っている。ルーは、風の妖精。冬将軍カラデ・ルートの孫。風の国の将軍は、四季将軍で四人いる。武家の娘だ。  


「ウィンディは、そうだと思っていたけど、ヒイラギも垢抜けちゃっていない」


「あら、挨拶できるわよ。ねっヒイラギ」

「そうだよー」


 二人して、スカートを少し上げる振りした。


「ごきげんよう」×2


「ほんとだ」


 みんなでケタケタ笑っている。


「二人とも、アルバイトに来てくれたんだ」


「それが、ちょっと違う感じ?」

「裁縫の修行をしなさいだって」


「なるほどー、クリスタ先生らしい」

「いいんじゃない。学生に公募したら、みんな手をあげちゃうわよ」

「カフェし放題だし」

「ケーキもですわ」

 サラとアクアもやって来た。


「そうなの!」

「そうなんだ」


「食べ放題じゃないわよ。でも、お茶セットは出すわ。じゃあ、あゆを呼んでくるね。しっかり働いてもらうんだから、あゆから裁縫を習ってね」

 私は、休憩していたあゆを呼びに行った。


「二人だけ?うちは、4人欲しいんだけど」

 ウィンディの中では、もうブティックが忙しいことになっている。


「後輩から2人選別するみたいよ」

「学校に裁縫部を作るってクリスタ先生か言ってらしたわ」

「涼夏堂の技術をトラングラー魔法学園に入れたいみたいなんだ」

「食えない先生ですわ」

「そうかしら、花嫁修業にもなるし、基礎を覚えた子をここに送ってくれるってことじゃない」

「クリスタ先生には、かなわない」


 学園組は、後輩のことを心配しているみたい。


「まだ仕事は入っていないんだー。でも、直ぐ忙しくなるかも」

「もしかしたら、紅ガラスって布で、ローブをいっぱい作らないといけないのね。ローブだから、初心者向きだって、あゆが言ってたわ。私も一緒に覚える」

「わたしも」


 私たちは、仕入れ製造販売を統べてやらないといけない。あゆがいるから、めちゃめちゃ楽なんだけどね。涼夏堂の看板をしょっていなかったら、ブティックの社長になってもらいたいぐらい。みんな、あゆにずっと助けてもらう気満々。


 その辺り、ウィンディたちと付き合いの長いアオイとルーには、分かるみたい。


「アオイさん、ルーさん、いらっしゃい。じゃあ、作業場で説明するね」


「はい」×2


 あゆが来たら二人とも、急に背筋が伸びたように感じた。二人とも、この中で、一番の実力者が誰なのか分かっている。


「他の人達が集まったら、私たちも行くね」

 今日は、お茶とケーキを大奮発しよう。



 ブティック妖精カフェは、サラたちの家人から一人ずつ来てもらって、素材の仕入れと機織りを助けてもらう。

 サラとアクアの家人の人は男の人。素材の仕入れをやってもらう。紅アゲハの繭を採りに行くのは大変だからだ。紅アゲハの異界に入れる実力者で、インテリジェンスにも強く、政治的バランス感覚がある人になる。だから本業は、情報機関と言う人が来ることになっている。

 ウィンディとヒイラギの家人の人には、機織りをお願いする。二人とも、自分のことは自分でやってしまう人だけど、ちょっと前までは、サラやアクアのように、専属のメイドが付いていた。やはりどちらも、サラやアクアのメイドみたいにメイド長になれる器。実際は、公の命令なのだが、本人たちは、メイド長より、こっちの方が面白いといって、来てくれる。


 家人の人達は、専属になってくれるわけではない。「あくまで手伝いです。良いですね」と、みんな釘を刺されている。だけど、私たちは、頼る気満々である。



 もうすぐ、この人たちが来るだろうなと思って、テラスをぼーっと見ていた。妖精たちは、玄関の洞から入らず、みんなこのエリシウム湾に開かれたテラスから入ってくる。

 すると、肩をぶつけあって、我先にカフェに入ろうとしている火の妖精と水の妖精が、カフェに飛び込んできた。


「ほら、おれの方が早い。竜道を使うと火より早いんだよ」

「何言ってる。爆炎の方が早いに決まっているだろ。竜道の方がしょぼいから、おれよりカフェの近くで使えたんだ」

「なんだと」

「最初から勝負するか?」


 サラとアクアが二人を見て、「あーー」と、ため息をついていた。


「ガイ、いいから、こちらにいらっしゃい」

「グレンが来てくれたんだ」


「姫様!」×2


「ここで姫様と呼ぶのは厳禁です」

「名前でいいよ。友達がいっぱいいるんだよ」


 ここで姫様と言いだしたら、みんな姫様なので、収取が付かなくなる。水妖のガイと火妖のグレンが、我先にと、二人の前に来てかしずいた。


「それも無し」

「普通にしてください」


「ガイさんと、グレンさんでしたっけ。こっちで、お茶を飲んで、待っていてください。後、二人来ますから」


「千里だよ」

「千里さんです」


「千里様」

「おおっ、千里様ですか」


「すいません、様をつけるの、やめてくれます。私、普通の人ですから。さん付けでいいです」


 そう言えば、ちょっとだけ、話を聞いていた気がする。ガイとグレンは、二人の護衛隊長。たまたま同級生で、学生時代、いつも戦闘訓練で、競り合っていたとか。


 二人は、私たちにダメ出しをされて、ちょっとしょんぼりしている。結構似た者同士なのだ。



 その後来た風の妖精エストと、土の妖精ノーラは、とても品が良く、二人とも、ウィンディとヒイラギの手を取って喜び合った。


「こんなに早くヒイラギ様と再会するとは、思いませんでした」

「ノーラが来てくれたら100人力だよー」

 ノーラの実家は、服屋。機織りや裁縫も得意。ヒイラギが、機織りが得意なのは、ノーラの実家に遊びに行っていたからだ。


「お久しぶりでございます。お変わりありませんか?」

「あの二人より、エストに、紅アゲハの繭を採ってきてもらいたいわ」

「土の世界は、専門外ですよ。でも、千日草は、分かります。今回の仕事は、ノーラさんにいろいろ教えてもらいますね」

 エストは、花の専門家。ちょっと変わった経歴の持ち主。

「機織りを習うのは、こっちだもんね。でも、それだけじゃないのよ。ギブ&テイクでやってちょうだい」

「承知しました」


「千里です」二人にペコっと頭を下げた。


 二人が、ふよふよ駆け寄って、私が広げた手にハイタッチしてくれた。


「千里さんも裁縫を覚えるのでしょう」

「それが、糸を依れるのが私だけなので、難しいと思います」


「千日草の調査は、どうですか」

「行きます。その後、紅蓮洞にもいきます。その時は、エストさんとノーラさんに、千日草の調査を任せていいですか」


 二人は、目を合わせてから頷いた。今回の手伝いだが、機織りをやっているだけでは、だめだと思ってくれた。紅蓮洞に土の国の人が入植できるかどうかの調査は、最初、私たちしかできない。紅アゲハの異界の調査もそう。普通なら目が回るほどの忙しさなのだが、私たちは学生で、クリスタ先生には堂々と本業である学業をしなさいと言ってもらっている。4人は、私たちの代理人になれる。最初は、ガイ、グレン、エスト、ノーラに、いろいろ、調査の肩代わりもしてもらわなくてはいけない。


「それじゃあ、打ち合わせをしましょう。ガイさんとグレンさんを紹介しますね。最初は、4人で火龍王様に謁見です。とっても忙しくなります」


 私たちは9人で打ち合わせをしてから、あゆたちがいる作業場に向かうことになった。

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