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妖精カフェ  作者: 星村直樹
息吹の蓑衣
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光色からエクスペクト

 週末、精霊界、妖精カフェ作業場


 蜂族のローグ隊長率いる斥侯隊と、蟻族のマーガレット女王が派遣した情報アリのスミス隊長率いるウフーラ女王の羽蟻隊の合同探査隊が、エリシウム山、紅蓮洞の探査から帰ってきた。その情報を貰って、明日、いよいよ私たちが、紅蓮洞に入る。


 私たちがいつものように、作業場で、絹糸を紡いでいたら、アンナが、お客さんを案内してきた。


「ローグさん、スミスさんこちらです。後で、飲み物を持ってきますね。みんな、大変だったみたいよ。よくお礼を言ってね」


 蟻族は、自宅が、ヒイラギの部屋なので、スミス隊長と一緒にやって来たが、蜂族は、擬人化人の蜂族なので、私の半分ぐらいの大きさがある。作業場にいっぱいは、入れない。カフェで、くつろいでもらっている。


 最初は、蟻族の先遣隊を紅蓮洞に送ってもらうようムシキングのデビットにお願いしただけだったんだけど、蜂族のローグ隊長が、それは、なかなか良い訓練場だと言い出して、蟻族と一緒に紅蓮洞を探査してくれた。ローグ隊は、斥侯部隊なので、とってもありがたいお話し。


 ヒイラギは、ウフーラ女王の羽蟻隊のところに駆け寄ってみんなをねぎらっている。私たちは、ローグ隊長とスミス隊長の話を聴くことになった。


「お疲れさまでした。成果はありましたか」


「我々が、紅蓮洞の地図。スミスさん達が、紅アゲハの探索をしたんだが、どちらも難航してね」


「紅アゲハが、いないんだよ。リザード親衛隊に、紅アゲハを見かけた時の様子をもう一度、聴きに走らせたり、紅蓮洞周辺も探査したりしたんだ」


「大勢で行ったせいかもしれないと思ってね。ローグ隊は、地図作成が終わった時点で、紅蓮洞を出て、羽蟻隊と交代したんだ。結構深かったよ。奥には地下水が流れているところがあってね。そこは涼しいんだ。ヒカリゴケも生息していて、真っ暗って分けじゃなかった。多分その周辺だと思うのだが」


「いいですわね」

「生き物が居そうね」

「でも、ヒカリゴケがあるって言っても、暗いんでしょう」

「溶岩が通った後だもんね。地下水があるところより、深いところもあるんだよね」


「サラ様の言う通りだ。そこから奥がある。ほら、千里、火岩石だ。今度、我々に旨いものを食わせてくれるんだろ」


「嬉しい。はちみつたっぷりのコーンブレッドをメアリー婦人に教えてもらっているところ。今度、みんなで妖精カフェに来てね。腕を振るうわ」


「良かったね千里」

「ローグ隊長様々ね」


「蜂蜜たっぷりか、いいね。火岩石は、紅蓮洞最奥にあったぞ。俺らが行って良かったな。地図はこれから作成だ。ちょっと待ってくれ。龍王城への報告用と二枚用意する」


「ありがとう」

「それで、紅アゲハは、どうでしたの」


 これは、情報蟻のスミス隊長が、頑張った事案。


「それなんだが、やはり、地下水が流れているところ辺りが怪しいと思う。三日も張り込みしたんだ。それでも、確認できなかった」

 スミス隊長が残念な顔をする。


「千日草が咲いている生息地は見つけたぞ。山の谷間に咲いていた。あそこは飛べる者でないと見つけられないね」

 ローグ隊は、得意の周辺探査をしていた。


「じゃあ紅アゲハが、地上に出てきても不思議ないんだ」


「紅アゲハは、臆病よ。おじさまに頼んで、バルゴの光を貰うよ。地下水が流れている所に、設置したら千日草が咲くと思う」

 ヒイラギが言うおじさまというのは、土の妖精ヒース王の事。


 羽蟻たちは、3日も張り込んでいたので、憔悴していた。ヒイラギは、手持ちの蜂蜜で、みんなをねぎらった。


「それは良いお考えです。伝言を送らせましょう」


 スミス隊長は、疲れを知らないようにテキパキしている。ローグ隊長も元気いっぱい。


「我々だと、ここまでのようだ。みんなは、行けば、紅アゲハが出入りしている次元門が見えるんだろ。ぜひ同行したいところだが、紅アゲハを脅すことになるといけない。だから遠慮するよ」


「ヒイラギ様から聞いたドベルグ王の伝承からすると、我々もそうなのだろう。妖精以外は、とても警戒されるのだと思う」


 ローグ隊長も情報蟻のスミスも、とても残念そうだ。


「二人ともありがとう。みんなもありがとうね」


 羽蟻たちは、キキッと言って、ヒイラギに答えていた。


 ウィンディが、やることが決まったわねと、ヒイラギに言っていた。


「紅蓮洞の地下水が流れているところに、バルゴの光を設置するのは大賛成よ。でも、あれって土の世界のものでしょう。私たちだと設置できないわ」


「確か、ドワーフの仕事じゃない」

「明るいほうがいいから、設置してもらおうよ」

「千日草は、私たちでも植えられるかな」


「種を取って来てやろうか。ついでに蜜も」


「お願いします」

 本当に蜂族は、役に立つ。


「千日草の蜂蜜が食べられるんだ」

「私も、千日草の蜂蜜を食べてみたい」

「そうですわね。千日草の蜜の味を知っているのは大事ですわ」


「バルゴの光の設置は、ドレイクおじ様に頼むね」

 ドレイクおじさまとは、ドワーフ王の事。


 羽蟻隊が、京爺に頼んで、ドワーフの親友ガブさんに、バルゴの光のことを打診してもらった。設置に、火龍王の許可を貰うとか、天井をぶち破って高くしないといけないとかで、1週間掛かると言われた。そんな大工事をしていたら、ますます紅アゲハが出て来てくれないし、その工事現場の中に、紅アゲハの次元門があるとまずいので、やはり、私たちが先行して調査することになった。



「それで、千里。エクスペクトは、出来るようになった?」


「えへへー、ほら」


 私は、人差し指を立ててオーラを指先だけ強く光らせて光色化して見せた。ローグ隊長やスミス隊長には見えないが、私たちには、とても明るい光だ。


「私ができたんだよ。みんなもできるようになるよ」


「じゃあ、みなさん家に帰って特訓ですわね」

「ここでやろうよ」


「私、ローグさんとスミスさんの蜂蜜取ってくる」

 ヒイラギが、カフェに走った。


「千里は、ローグさんや、スミスさんにも見えるぐらい光る特訓をしたら。二人とも、はちみつ飲むでしょう。まだ居てね」

 ウィンディは、修業に厳しい。


「新しい魔法かい」

「エクスペクトで光を発するのだろ。闇を照らす希望の光ってとこじゃないか」


「正解です。ちょっと待ってください。指二本だとどうかな」


 二人の反応なし。


「触媒がいるんじゃない。光豆とか」

「ウィンディ、冴えてる」


 私は、自分の光豆を出してそれを触媒にした。


「ローグさんもスミスさんも見てください。みんなやるね。『エクスペクト』」


 すぎゅーーーーんと、光豆が爆発したように光り出した。


「キャ!」

「わっ」

 キキキキッ×大勢

「千里、ストーーップ」


「なんだ、何が爆発したのか」


「ごめんなさい」


 私の魔法は、迷惑な魔法なのだ。


「何事じゃー」

「何かあったの?」


 京爺やアンナまで、作業場に飛び込んできた。京爺には、魔法詠唱しないで光らせなさいと怒られた。でも五次元空間が見えないお客様には、迷惑をかけていないと思う。


「じゃ、光らせるね」〈小声〉


 それは、温かい光だった。


「優しい光ね。これなら紅アゲハも驚かないよ」

「そうだけど、今回は、オーラの光色だけにして」

「それがいいですわ」


「そうする」

 魔法修行の道のりは遠い。

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