ドベルグ家に伝わる息吹きの蓑衣
なんか、凄い話を聞いちゃったな
「ヒイラギ、息吹の蓑衣を見たい」
「そうね。私たちも作るの手伝うんだから、どんなものか見ておきたいわ」
「お父さん、そう言えば、私も映像でしか見たことない」
「そんなことは、ありませんよ。ヒイラギの産着にしていたのよ」
「おかげで、元気に育ったのだ」
「ノック、わしも見たいぞ」
「おじさん、ぼくも」
「わしも見たことが無い。あるのなら見せろ」
王家の人にも見せていないなんて、どんだけの家宝なの。
「そんなに見た目が良い衣ではないのですが、セバス、セバスは、居るか」
「旦那様、セバスでございます」
「セバス、話が成ったぞ。王が、御所望だ。ここに、息吹の蓑衣を持って来てくれ」
「それは、ようございました。しばらくお待ちを」
セバスが持ってきた息吹の蓑衣は、期待に反して、残念なデザインだった。色は錆び色。見た目はずんぐりしていて、お世辞にもカッコいい衣とは言えなかった。
「残念な感想を言わせてもらってよいか。これを着て人前には出にくいな」
「そうじゃが、これを着ていれば、どんな環境でも生きていられるのであろう」
王と先王は、ノックが、息吹の蓑衣を公開しなかった理由が、良く分かると、ちょっと同情的。
でも、私たちは、この服のオーラに気押されしていた。
「すごいよ」
「綺麗ですわ」
「そうなの?」
ノーグ王子が、不思議そうにサラとアクアを見上げる。
「表地は、赤いオーラなのに、中は、青いオーラだよ。こんなの初めて見た」
「そうなのかい、ヒイラギ」
「ティル、私と手を繋いで。息吹の蓑衣のオーラが見えない?」
二人が手を繋いで、神経を集中させたが、力不足。ティルには、オーラが見えない。
「見えないや」
「ごめんね、もっと修行する」
私は、ほのぼのと二人を眺めた。そこに、ウィンディが、ひそひそ言ってきた。
「あの裏地の青。青金じゃない」
「多分そうだよ。闇系のオーラってことね」
「ヒイラギ、皆さんも、何かわかるのかね」
ヒイラギのお父さんがそわそわする。
「ウィンディが答えて」
「分かった。みんなもいい」
「そうですわね」
「そうしてよ」
「賛成」
「私たちは、ホムラ王子奪還の為に、火龍王様をきっかけに、オーラが見えるようになりました。私たちの目に息吹の蓑衣は、とってもきれいに見えます。それも、表地と裏地のオーラの色が違うなんて初めて見ました」
「表は紅色よ。紅アゲハのオーラの色だね」
「ところが、裏地は青色です。そのため、布の色自体は、赤錆た色に濁って見えます」
「この服を作るの大変だよ。紅アゲハだけじゃ無理」
「そうなのか?ヒイラギが伝承を読み直してくれ。更に秘匿された素材があるのかもしれない」
「その前に、ウィンディの意見を聞こう。まだ、話の続きがあるのだろう」
さすがに、ホーク先王は、人を見る目がある。ウィンディは、神妙に答えた。
「この裏地の青いオーラは、千里の目の中に有る星の色と同じです。これは青金。闇を司るオーラの色です」
ノックが、ポンと手を叩いて納得した。
「そうか、だから、命が保証されるのだ。表地は、紅アゲハの強力な耐性のある糸。裏地は、異界に繋がっている。ミノムシのようにこの中に隠れれば、命が保証されるわけだ」
「そう、思います」
「素晴らしい。見た目だけで、批判して悪かった」
「ヒース様、問題ないです。わたくしも人のことは言えません。見た目が、こんな、なので、人に見せたことが無かったのです」
「ヒイラギには、息吹の蓑衣が綺麗に見えるのね」
「お母さまにも見せたいよ。アンナに修行してもらう」
「そうだね。ぼくにも見せてくれるんだろう」
「そうしなさい」
「すばらしいわ」
ヒイラギ、旨くやったなーと思うサラとアクア。ウィンディも、そう思った。
「息吹の蓑衣を作るのに、紅アゲハの繭が必要なのは、間違いありません。ノックおじさま、ヒース様、ホーク様、紅アゲハの繭を取りに行く許可をください」
「元よりそのつもりで、王たちに集まっていただいた。よろしいですかヒース様」
「許可する」
「すごい、調査を飛び越した」
「ウィンディの采配に乾杯ですわ」
「やっぱり店長代理だよ」
みんなに持ち上げられるウィンディ。本人も悪い気がしないみたい。みんなに「いやあねぇ。そんなことないわ」と、照れている。でも、本当によくやったと思う。




