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妖精カフェ  作者: 星村直樹
息吹の蓑衣
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メテオの対抗魔法

 お宮の鳥居をくぐって、境内に向かうには、人が通る階段とは別に、大きな竜の通り道が脇にある。風竜は、みんな飛べるので、境内に行くだけなら、この道は使わないが、ここに、人用、妖精用、それに風竜用の出店が連なる。風竜も擬人化人も妖精もごちゃごちゃに賑わっていた。


 竜のスケールの大きな出店と、ビックリするような可愛い妖精のお店。見慣れた人間の出店を見ながら、知らないおじさんから、「ゴールドヘクロディアを見たよ。すごく綺麗じゃないか」と、声を掛けられる。おばさんも子供もそんな感じ。出店のおじさんに、水あめを貰ったり、団子を貰ったりとモテモテ。なんだかとっても楽しくなってきた。


 浴衣で、食べ歩きは、良くない。特に風竜が近くを通る時は、大渋滞になる。そこで、団子屋さんのお店の隅に座らせてもらって、団子にぱくついているときに、アクアから強烈なテレパシー通信があった。


「皆さん、急いで、天竺書庫に来てください。大変な記述を見つけましたわ」


 最初、スーパーノバのオーラをしていた水竜王のご先祖様が海を作って死んだ話を見つけたのかと思った。


「スーパーノバって、やっぱり危ないの?」


「それどころじゃありませんわ。メテオの記述を見つけました。明星様は、この魔法のことを知っていらっしゃったのです。詳しいことは、テレパシー禁止。皆さんいらして」


 それを聞いて、みんなバラバラな所にいたけど、アクアがいる天竺書庫に向かった。ここは、天空園の中心の高台にある。みんなは飛べるけど、私たちは歩きなので、最後に到着した。



 天竺書庫の書籍は平積。ちょっと探しにくい。ウィンディがサポートしてくれているから、読めるけど、こういう所でお目当ての書籍を見つけるのは、ちょっと大変。


「メテオって、どんな魔法だった?」


「はいこれ、今は、関連書籍をみんなで手分けして探してもらっていますわ」


 そこに書かれていた文字は、わたしから見たら、日本の巨石に見られる古代文字だった。でも、簡単な挿絵も入っている。ここに恐竜の絵が描かれていた。これに驚いた。この恐竜の絵はレックス。ティラノザウルスだった。


「これ黒龍王様よね。ほら眉間の龍眼」

「そうね、早く中身を読んで」

 あゆは、字までマスターしていない。



 メテオ:宇宙の塵を地上に降らす魔法


 黒龍王の最大魔法。メテオを使うには、精霊界の4大精霊と契約していなければいけない。サーチ範囲は、大地を通り越して月近くまで必要だ。まず、宇宙の塵を捉えて、向きを調整して地上に落とす。重力操作系、闇魔法に属す。



 地球規模! いいえ、それ以上。私たちのサーチ範囲を超えていた。 


「どうなの?出来そう」


「無理無理、私たちのサーチ範囲って、浅草橋が限界だったよ」


「良かった。じゃあ、地球は危なくないんだ」


「そんなことありませんわ。黒龍王様の龍眼の威力が分かりません。千里も、対抗魔法を探してください。闇に対抗するのは、光魔法です」


 それで、みんな右往左往していたんだ。


「光の竜王様の名前は何て名前? なんで、恐竜たちを助けてくれなかったの?」


「多分、その時、人間界に居なかったんじゃないかな。理由は分からないけど」


「なんか文献見つけたの?ヒイラギ」


「そうじゃないけど、竜に対抗するには竜しかいないよね」


「有翼族が、人間界に出入りしていたみたいよ。最近だけど」


「ウィンディの言っていることは何となくわかる。天使の話って最近なんだ」


「みんな。おじさまが、『わしが手伝ってやろう』だって。力を貸して」


「サラさん、ナイスです」


 サラの首輪には、火龍王が流した龍眼の涙がついている。サラの龍眼は、火龍王と繋がっている。


「火龍王様、ありがとうございます」


― うむ、わしも、黒龍王の龍眼があるのなら、保護すべきだと思う。みんな、サラに力を貸してくれ


 私は、両手を重ねて、サラの背中を押した。みんな、私の手に自分の手を重ねて、力をサラに送る。


 サラは、ずぎゅーーーんと、浮島の全貌が見えるぐらい広大な範囲に、視界が広がった。


― 竜宮の時より範囲が広いな

「今日は、ヒイラギもいるからよ。おじさま」

「あゆも、後学のために、私の背中を押してみて。サラからの魔力の逆流を感じられたら、私たちが見ている映像が見えるよ」

「やってみる」


― サラ、広げたサーチ範囲を天竺書庫に集中させろ。字が読みにくい

「がんばる」


「文字に、オーラがあります」

― アクア、よくそれをつかんだ。光のオーラを探すのだ。金色のオーラは、ほとんど、宵野明星様の自筆だぞ


「火龍王様、白魔法を探せばよいのですか」


― ウィンディの勘所も悪くない。そうしてくれ。ヒイラギ、地脈に生脈と言うのがあるのを知っておるな。多分、星の自己防衛機能を利用すると思うのだ。探す勘所が分かるのならやってみてくれ


「地生脈! ライフストリュームのことですか」


― 分かっておるではないか。探してみろ


 ものすごい勢いで、みんな検索しだした。でも、私は、全く違うことをしていた。なぜなら、あゆが、遠くにいたからだ。紫のオーラの人なんてあまりいない。そのオーラの人が、浮島の上空を漂っていたから迎えに行った。多分、みんなの魔力にはじかれたんだと思う。


 あゆの所まで行ってみると、星空を眺めていた。


「あゆ」

 そう言って、あゆの手を握ると、ドンと、今いる天竺書庫の中に戻された。あゆがびっくりしている。

「あゆ、みんなが見える?」


「私、さっきまで、星空しか見えなかったんだけど、今だと、書庫の本が光って見える」


「それが、オーラよ。私たちもいろいろな色で光っているでしょう」


「みんな、属性の色ね。でも、びっくり。本当に、千里は金色に光っているのね」


「あゆも珍しいよ。紫色の人って見たことない」


「私が! 本当だ。私のオーラって紫だったのね」



 火龍王様が、大きな声を出した。


― 理解した。スーパーノバを出せるオーラの者しか使えない魔法を探すだけでよい

「そう言うことね」

「そう言うことですのね」

 サラとアクアが相槌を打つ。


「それだと、根源魔法だと思います」

「ライフストリームを操る根源魔法だね」

 ウィンディとヒイラギもよい反応をした。みんなトラングラー魔法学園を飛び級できる能力を持つ。


「地球にいる命を助けてくれるんでしょう。聖なる光かな」

 あゆが、ぽそっと、みんなの話の感想を述べる。みんな、その話に飛びついた。


「ホーリーよ」

「規模が合いませんわ」

「それは、メテオだってそうじゃない。規模が隕石って感じじゃないよ。小惑星じゃない」

「ライフストリームを使ったホーリーなら、大規模な隕石に対抗できるかも」


― ヒイラギの意見に賛成だ。ライフストリームは、星に流れる命の川だ。先人が、後人を助けるために光の柱とならんか。多分、ライフストリームに、右回転と左回転をさせて、ノバを発射するのだろう。新たな魔法が見えたと言ってよい。ホーリーノバと名付けよう


「メテオの対抗魔法の記述がなかったってことですか」


― 多分、ヒイラギが言ったように、光の竜たちは、この時、既に、人間界に居なかったのだ。エグゾダスしたか、滅んだかは定かでないが、そういう事だろう。だから、対抗魔法の記述がない


「千里、ホーリーノバを特訓よ」 ウィンディは、ドンドン突き進もうとする人。


「無理無理、地球全体をサーチできないと無理よ」


― 千里の言う通りだろう。みんな、各自力をつけるように


 火龍王様の答えを聞いて、みんな、サラから離れた。星全体をサーチするなんて、途方もない話だった。


「火龍王様、ありがとうございます」


― まだ、結論を言っていなかったな。星を助けるにしても、星に居る命を滅ぼすにしても、黒龍王の遺産が必要だ。わしも気に掛けるとしよう。これを悪の手に渡すわけにはいかない


 みんな、頷いている。後で、マスターと京爺に話そうと思う。





 あのあと京爺か珍しく魔法について教えてくれた。わたしとあゆは、かしこまって話を聞いた。


「ホーリーか。パトローナムの先の魔法じゃな。パトローナムっちゅうのは、守りの魔法じゃろ、盾じゃったり壁じゃったり。ところが、その先に進むと、なんでか、獣憑依して、攻撃出来たり守ったりできるようになるんじゃ。多分ご先祖様が、助けてくれるのかのう。獣っちゅうことは、低級霊じゃろ。その先は人、更に龍じゃったり、元魔法使いじゃったりするっちゅうことじゃ。なるほどのう、最後は、星の命か。命に愛されていないとできんことじゃ」


「火龍王様が、そう言う魔法をホーリーノバって名付けたよ」


「ノバか、いい得て妙じゃ。ノバっちゅうのは柱が立つじゃろ」


「水竜王様のオーラのことね」


「そうするとじゃ、普通その柱は、地上に降り注いで次の渦を作る。つまり、新しい命を作るっちゅうことじゃ。お前さんら、もし、これに成功しても、ご先祖様の命が消耗するっちゅうか。無くなるとは、考えんかったか」


「あー・・」

「うん・・・」


「星にいる全生命が滅ぶような災いじゃぞ」


「そっか、ご先祖様の命の流れと引き換えだもんね」

「身を削って助けてくれるのよね」


「ここで疑問じゃ。確かに恐竜は滅んだ。ところが、わしらの世界は繁栄しとるじゃろ。ホーリーノバが発動されたとは、考えんかったのか。ホーリーノバの光の柱は、地上に降りて新しい渦となった。わしは、光の龍も、その時代におったと思うぞ。だから、新しい命が生まれ、繁栄した」


「難しい話だけど、京爺の言っていることも分かる」

「でも、それじゃあ結局、闇の龍も光の龍も滅んだってことじゃない」


「じゃから、千里。黒龍王の遺産を受け継いでやれ」


「星を滅ぼす遺産を?」


「魔法っちゅうのは表裏一体じゃ。その逆も真なりじゃぞ。まあ、この話は、まだ早かったか。今度また話してやる」


「うん」

「お願いします」



 今日は、遅くまで、天空園に居た。京爺が教えてくれたこの公園には、いっぱい光るリンドウが咲いていた。京爺の話は難しかったけど、この景色は忘れない。

 あゆは、今日、自力で次元門を超えて実家に帰る。明日からの修行は、通いになる。

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