擬人化人誕生祭
日曜日、天空園に行けなくて悔しがっているトニーに、「スマホで写真を撮ってきてあげようか」と、いうと、「今のぼくたちじゃあ、精霊界をちゃんと秘密にできないと思うんだ。だからいいよ」と、騎士らしいことを言われた。その通りだなと思うけど、風舞いの音楽は、私たちの世界のとあまり変わらない。音は拾ってきてあげようと思う。
ターシャとナーシャは、天空園にある宮舞台の楽屋で着替える。私とあゆが、着替えの荷物を持って行くことになった。そうなのだ、あゆが着替えを担当できることになった。これこそ、着付けの出来を写真に撮りたいところだけど、やっぱり、ご主人と美代さんにやめてと言われた。そこで、有翼族の絵師に頼んで、絵にしてもらうことになった。これなら、人間界で、何とでもごまかせる。まさか、金貨1枚だとは思わなかったけど、後は、カラーコピーでごまかすつもり。原本は、涼夏堂さんんへ送り、ターシャとサーシャにも一枚づつ送るつもり。協力してくれる風人神宮もそう。そして、カフェに、でーーんと飾る事に決めた。
※金貨一枚で、10万円ぐらい
今回、収入は、12万ルピーだけど。今後のこともある。糸車や機織り機の手付金の都合で、妖精カフェに半金入れた。その方が雑貨店の場所も気兼ねなく言える。それで、残り6万ルピーなので、4万ルピーの大赤字。結局マスターに、お金を借りたり、涼夏堂のご主人に泣きついたりして、何とかつじつまを合わせた。だけど、この絵が、お客さんを呼んでくれること間違いなし。
シップウに頼んで、マスターや、アンナ。ターシャやサーシャの旦那さんたちや京爺も乗って、天空園に出発した。
「着いたぞ」
「もう!」
「ちょうど、森の大樹の真上だからね」
「5キロぐらいしか道のりが無いのよ」
「普通なら標高5千メートルと言ったら、雲の上で寒いと思うだろ。そう考えると、暖かいところだよ」
「風のエレメンタルがいるところだからの。清々しいところじゃぞ」
「大丈夫、お父さんに、昼間なら、浴衣でも大丈夫だって聞いたことある。着付けが終わったら、次は、私たちもだね」
ま、まあ、私が、お上りさんなのは当たり前。浴衣を涼夏堂さんから借りてきたのは、私だけど、そのときは、夜だったから、ゆっくり話を聞けなかった。トニーもうるさかったし。あんたは、私のお父さんか!
私たちは、巨大な鳥居をくぐって風人神宮に入った。風竜たちもここを通る。
お宮の広ーい境内に、風舞いの舞台が設置されていた。舞台と言っても低い。小さい種族から、順番に前に座ることになっている。拝殿の中には、楽師さんをはじめ、有翼族の偉いさんや、風の妖精たち、擬人化人のお偉いさんたちが座る。私たちや、これから合流するウィンディたちも、舞巫女の関係者と言うことで、拝殿の中で見学できる。もちろん絵師さんも、良い席を取ることが出来た。
風竜たちは、宮側で、左右に分かれて座る。竜族の貴賓席もここ。当然、風龍王様もいらっしゃる。
ウィンディのお母さんに、風龍王様や有翼族族長、擬人化人の族長たちと、短くでいいから全員に挨拶しなさいと言われている。その辺は、ウィンディが、ガイドしてくれることになった。
ウィンディたちが、観覧席になった拝殿の階段下で待っていてくれた。拝殿の階段は、楽師さんの席なのだが、空いているところは、妖精より小さな者であれば、座りたい放題。なので、席取りの跡がすさまじい。
この人たち全員が、私から見たら神様みたいなものか。
なんだか、こんな慌ただしい状態だけど、ちょっと手を合わせたくなった。
「千里、こっちこっち」
ウィンディが声を掛けてくれた。サラたちもいる。サラたちは、、あゆの着付けを見学する。私とウィンディは、そうはいかない。昔からいる現地の有翼人。それから、リザード、ドワーフ、陸に上がることが出来る人魚。擬人化人の、袁族、犬族、猫族、狐族、狸族。竜人族だけは、族長を知っているからいいか。その他にも、蟻族、沙羅曼蛇、陽炎族、タガメ族。虫族の長は知っているけど、それとは別に族長や、王様、女王様がいるのよね。そして、風竜の王様と妖精の王族。一挙に挨拶する絶好のチャンスなのだ。
「あれっ?、火龍王様は」
「龍玉の首輪?。しのが持ってるバックの中だよ。しのが、殿方に、舞巫女様の着替えなど見せられませんって言ってた」
しのは、サラのメイド長。
「それはそうですわ」
「どうする?、もう何人か挨拶しないといけない人が来ているけど」
「行く、じゃないと、終わらないんでしょう。でも、さすがね。よく各国の族長や要人の顔が分かるね」
「風の国には、いっぱい女王を頼って各国の人が来るから自然とね。ほら、頭尾様がいるわ。狐族の族長様。まだ、狸族の族長様が来ていないうちに挨拶に行くわよ」
狐族と狸族は、よく、つまらないことで喧嘩している。
「千里、私が荷物を持つわ」
アンナが代わってくれた。アンナも、あゆの着付けを見学したい人。
「お願いします」
「行こっ」
ターシャやサーシャ、サラたちやあゆたちが、社殿の奥に行くのをちらっと横目で見ながら、拝殿にいらっしゃる族長たちのところに向かった。
頭尾様は、綱目装束と言う狐族の戦装束から、発祥した正式な衣装を身に着けていた。イギリスの背広が、元々は、軍服だったみたいな流れの服。
「頭尾様、千里です」
「千里です」と、ペコっと頭を下げる。ずっとこれで行く。ウィンディに紹介してもらうのが一番。
「おお、ウィンディ。千里を連れてきてくれたか。悪者の城を壊したシーンは、みんなで見たのだ。どうれ、目を見せてくれるのであろう」
城を壊したのは、アクアですけど!
「はい」と、言って御前に行く。そうすると、族長の家族も、そこに集まった。多分、これが、永遠と続く。でも、「星空みたい」「綺麗ね」と、言われるのは悪い気がしない。
「千里、狸族は、目がいいでな。東海林の時は、こんなに近づかなくていいぞ」
本当だ仲悪い。東海林とは、狸族の族長の名前。
拝殿の階段に陣取っている、蟻族、沙羅曼蛇、陽炎族、タガメ族の人達には、ウィンディたちの秘密の部屋を守ってもらっているので、その人たちが、私を紹介してくれていた。蟻族の女王の中の女王。マーガレット女王陛下は、大らかな方で、とても立派な方。ヒイラギの部屋にいるウフーラ女王から私の話を聞いていて、「土の中のことなら私が分かりますから、何でも相談してください」と、言ってくれた。これから、エリシウム山の紅蓮洞に行く。その話をしたら、ウフーラ女王の元に、情報蟻を送ってくれることになった。
タガメ族は、水属性の蟲族。淡水を好むが、海中もいける。地上でも生活できる蟲族だ。
沙羅曼蛇は、火属性。コウモリのような羽のある小人族。
陽炎族は、風属性。人形で透明の羽を持った小人族。この人たちを見ていると、ウィンディたちが大妖精と言われるのが良く分かる。
みなさん、もう、それぞれの秘密の部屋に、種族の人がいるので、打ち解けた感じの挨拶になった。
そこからは、擬人化人の人達が押し寄せるようにやって来た。
猫族のギュスターヴ王が、妃のキティを連れてやってきた。高貴なお方なのだが、人間界で普通の猫として、まったりするのが好きな人。王がそんな人なので、配下の実力者もそんな感じの人が多い。精霊界では、人形になり、二足歩行をしている。擬人化人の中で、とても古い種族だ。
「ギュスターヴ王に置かれましては、良い日よりになりましたね」
ウィンディが良く知っている人よと、軽い挨拶で声を掛けた。
「まったくだ。この日向で、猫になって丸くなりたいが、親民に示しがつかないと、老臣たちがうるさくてな。ところで、ウィンディが連れているのは、千里か?」
「はい」
「千里です」
一族や、家臣が集まって、私のゴールドヘクロディアを堪能されまくってくれた。中には、私の指の匂いを嗅いで、私のことを強烈に覚えてくれた猫族の人もいる。玉は、東京で野良猫をやっていたが、家猫になることに決めたと言っていた。たぶん私の家の近所に引っ越してくる気だ。妖精カフェの東京側にいてくれると話してくれた。猫カフェっぽくなると、お客さんが増えそう。
次に、竜人族の人達が、いっぱい来た。竜族の擬人化人は、人に見える。族長が、常連さんで、ご近所のサイモンなので気軽だ。今日は、奥さんのターシャと、その妹の虫族の長の嫁サーシャが舞うとあって、一般席にも、大勢来ていた。
この人たちは握手したがる。私は、手の力を全部抜いて差し出すことにしている。じゃないと、みんな力がありすぎるので、下手に握手すると手が痛い。この、わたし発の握手が新鮮らしく、皆さん軽く手を握る握手を覚えてくれた。
蟲族も負けずと一杯やって来た。こちらは、サーシャの旦那のデビットが、種族をまとめているが、とっても種族の多い雑多な人達なので大変だ。ムシキングのデビットは、カブトムシ。カブトムシと言っても人形で、まるで、密着した宇宙服を着ているかのような人。親戚のクワガタの人は、大きいので、観客席側にいる。拝殿側に来たのは、蜂族とバッタ族の人達。
最近、サーシャに、あゆと一緒に夕飯を食べさせてもらっている。「デビットさんとサーシャさんには、お世話になっています」と、挨拶した。
そして、猿族、犬族がやって来た。以前は仲が悪かった両種族だったが、今は仲が良い。
最後に狸族がやって来た。狸族の族長、東海林は、思った通り、狐族の頭尾と一番離れた席に座った。
「東海林様、千里です」
「千里です」と、ペコっと頭を下げる。
「おお、ウィンディ。千里を連れてきてくれたか。悪者の城を壊したシーンは、みんなで見たのだ。どうれ、目を見せてくれるのであろう」
なんか、狐族の頭尾との会話がデジャブった。
「はい」と、言って御前に行く。そうすると、族長の家族も、そこに集まった。
「千里、狐族は、目がいいでな。頭尾の時は、こんなに近づかなくていいぞ」
本当に仲悪い。狐族は、最初に済ませたので、もう一度挨拶することはない。ウィンディが、はいはいと言う感じで話を済ませていたので、それに従った。
風の妖精、女王のナウシカさまがお見えになった。もう挨拶は済んでいるけど、形式的には、やった方がいいのではと思った。でも、風龍王、スサノオが、妃のスズリを連れてやってきたのを見たウィンディが、そちらにふよふよ走った。あ~んと言う感じのナウシカさまをちらっと見ながら私もそちらに向かった。だって、ナウシカさまは、あれから、何回もお忍びて、妖精カフェに来ている。ただし、ナウシカさまの近くにいた風来坊っぽい風の妖精、エイブラハムが居たので、彼にはちょっと興味があるかも。ナウシカさまの彼だから。でも、風龍王様で最後かな、もう、開演まで時間がない。この後、土の妖精王もいらしたが、挨拶できなかった。
風龍王スサノオの元に行くと、有翼族族長のザキエルも一緒にいた。二人とも、私が来たことをとても喜んでくれた。
「スサノオ様、ザキエル様。千里です」
「おお、拝殿で諸侯に挨拶しているのは、チラチラ見ていたのだ。ゴールドヘクロディアを見せてくれるのであろう」
「まてまて、ザキエル、一緒に見よう。千里は、まだ飛べなんだな。わしの手の平に乗るが良い。龍眼で見たいからな」
スサノオ王の龍眼は、透明な長ぼそい青緑。細長い顔の眉間に大きく開かれた。
風龍王が、竜族と翼人族に映像を流してくれた。拝殿を挟んで反対側にいる風竜たちも「おお!」と言って騒いでいる。ここで巫女の風舞いの中継を担当している有翼人の人達が気を利かせて、観覧に来ている人全員にも、私の目のアップの映像を流したので、風人神宮の境内が、大いに盛り上がった。
私は、ターシャとサーシャの前座を務めた気分になった。
スサノオ王とザキエル族長には、近いうちに王宮と族長の家に遊びにいらっしゃいと言われた。浮島が、森の大樹の上空にいるうちに、そうしなさいとのことだった。




