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妖精カフェ  作者: 星村直樹
火龍王のタマゴ
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私の騎士は、アニメオタク?

 この戦闘は、精霊界と繋がりがある最高シークレットの事案。イギリスの魔法界や魔法警察は、戦闘が終わるまで、事件の内容を知らされていなかった。私たちが、この場を去った後、魔法警察が来て、リザード魔術教団の教徒や教祖のモバイ・カーを連行していった。


 片田舎の古城とはいえ、城一つが跡形もなくなったのだ。魔法界の偉い人が、イギリスの王室に働きかけて、マスコミに広がるのを防いだ。そして、政界にも働きかけて事件性がないことにした。


 それでも噂は広がるもので、火龍王のタマゴが、リザード魔術教団によって精霊界から盗まれたが、魔法使い防衛隊によって、見事奪還されたと、魔法界の人達は、みんな知ることになった。



 私たちは、この後、ジャッキーのお店の二階の狭い自宅で爆睡した。夕方一階に降りてみると、ジャッキーが店をやっていて、そこに栗色の髪の若い英国紳士と、金髪の若い英国紳士がコーヒーを飲んでいた。


 私は、完全に寝ぼけていた。

「ジャッキーさん、おはようございます」

 実は、夕方。


「千里、起きたのね。あなたにお客さんよ。憶えてる?。東京で、あなたからアイテムを買ったトニーとリチャードよ」


「ほぇ?」


「OH千里、会いたかった」


 いきなり、栗色の背の高い英国紳士に、はぐされた。それも、思いっきり抱きつかれた。トニーとダニエルは、まだ、私しか見えない。あの、古城での、最後の戦い。私たちの魔法は、アメージングすぎた。


 きゃーーーー 「なんですか」


「トニー、オレもだ」


 そう言って、トニーが私をはぐしている上からリチャードが抱きついてきた。リチャードも背が高いから、覆いかぶさってくる。もう、わけわかんない。


「何、この子たち」

「千里から離れてよ」

「イギリス人って、紳士じゃあ、ありませんの!」

「ジャッキー。この子たちを焼いてもいい?」


 ウィンディたちが腰に手を当てて怒っている。


「ダメよ。この子たちが、千里の騎士になる子たちよ。ちょっと、度が過ぎているけど、親愛の情なのよ」


 騎士? 普通は、手にキスとかじゃないのーーーーー


「はいはい、二人とも離れて。千里はカウンターの中に入ってね」


「もう、なんなんですか」


「二人とも、最初は、東京のことを謝るんじゃなかったの?」


「あっ、そうだった」

「ごめん」


 ごめんじゃなーーーい〈心の声〉


 リチャードが、トニーを肘でつついている。トニーが先に日本に行く。だから、先に挨拶すると打ち合わせしていた。


「まず、挨拶させてくれ。トニー・マーティンです」

「リチャード・コウエルだ」


 二人が手を出してきた。


「握手してあげて。さっきのハグは、悪気がなかったのよ。この子たちは、まだ、ヒイラギたちが見えないのよ。それであんなことになったのよ。許してあげて」


「宵野千里です」


 おっかなびっくり手を出すと、やっぱり、思いっきり握られた。今度は身構えてたから、大丈夫だったけど、さっきは本当に驚いたわ。



「東京で魔石を買ったのはぼくたちです」

「悪気はなかったんだ」


「私も300万て言っちゃって・・」


「でも、それが縁で、アンナに、千里を1年守ってくれって言われたんだ」

 リチャードは、レイブン・クロウ校長の推薦で、今日決まった。でも、修行と卒業が有るので、3か月後。


「ぼくたちには見えないけど、妖精達がいるんでしょう。ごめんなさい、修行して、見えるようになります」


 トニーが頭を下げるから、リチャードもそうした。


「あら、分かっているじゃない」

「いいけど」

「なんだろうなーー」

「千里、一応、騎士様みたいですわよ」


「そうなの?」 そうかなと思う私。


 私がアクアの方を見たので、二人とも、そっちに向いて最敬礼した。なんでも、日本式は、こうするのだと勉強したらしい。


「悪い気はしないわね」

「いいけど」

「やっぱり騎士様よ」

「千里、許してあげたら」


 サラもそう言うし。

「分かった。二人とも許してあげる」


「やった」

「はー、日本のことをもっと勉強するよ」


 二人のリアクションが、いちいちすごいので、ちょっと笑ってしまった。


「はい、顔見せ終わり。千里は、二階で待ってて。コーヒーと、みんなに蜂蜜持って行くね。ショートケーキも用意したわよ」


「もう終わりですか」

「今朝の話が聞きたかったな」


「それは、日本でも聞けるでしょ。千里は、顔も洗っていないのよ。失礼でしょう」


「ごめん」

「二階に行っていいよ」


 本当にこの人たちは

「えっと、トニーと、ダニエルだったっけ。またね」


「ジャパニーズガールって、本当にアニメみたいだ」

「最高だよ」


 こいつら、何見て日本を勉強しているんだか。


 とりあえず手を振って二階に上がった。ウィンディたちの評価は低め。自分たちが見えないと言う理由が大きい。アクアは、あんなものでしょうと、水の国特有の評価だった。簡単に言うと、気にしていないと言うこと。



 本当は、せっかくイギリスに来たのだから、観光したかったけど、クリスタ先生にガラスのハンカチと絹のハンカチを見せないといけない。このジャッキーの店がある、魔法使い御用達の通り。ミユキ通りをジャッキーに案内してもらったら、マスターたちより一足早く日本に帰ることになっている。マスターたちは、もう一日だけ旅行をしたいと言った。この一日が本当の新婚旅行になる。実際は、アンナの祖父の実家に挨拶に行ったのがその一日。その後は、魔法警察に協力したり、グリーンランドにある黒鉛の門を閉じに行ったりと、結局新婚旅行返上で事件の後処理に協力、日本に帰るのを3日延長させられた。それでも、本人たちは、のんびりできたと言っていた。ダハーカ家の関与の捜査を魔法警察が引き受けてくれたのが、大きかった。

 部屋に帰ると、ホムラが大きなバケットで、ぐっすり寝ていた。でっかい赤ちゃんだけど、私がバックで連れ帰る。帰るときは、京爺とマスターにいろいろおまじないや魔法をかけてもらうことになっている。ホムラは人に見えるし声も聞こえる。その辺をごまかしてもらう事になっている。


 ジャッキーがミルクを用意してくれていた。私たちは、ホムラの周りに集まって、ほのぼのホムラを撫でた。





 事件その後


 事件の解明をしている魔法警察は、この事件の解明が難航すると思っていた。首謀者モバイ・カーは、黙秘を続けているし、実行役で主犯格のギーブル・ダハーカは、一日しか取調べができないかった。ギーブル・ダハーカは、翌日、龍王城に連行された。


 ところが、モバイ・カーの家にずっといた下男のホグナスが、事件の全容を知っていた。話し方に癖があるので最初は、要領を得なかったが、ホグナスが、モバイの城を管理していたと言ってよかった。


「旦那様が、大旦那様と奥様を黒い石で、どこかにやってしまわれた。わっしのおやじもそう。だけんども、決して殺していないですだ」


 この証言がきっかけとなって、モバイが、こういう狂気の沙汰に及ぶに至った道筋を知ることになった。


 ヘイズストーン


 これをモバイが所有するようになって、おかしくなったのは間違いなかった。下男のホグナスに、このアイテムのことを聞くと、それは家に有ったのもではないと言う。モバイ・カー本人が、家代々の宝だと言っていることと話が合わない。この件は、ホグナスが、正しかった。


 更にホグナスは、これを持ってきた、ホセ・サントスなる人物が、たまに城に来ていたと話す。この石が渡されたと思われるのは、モバイが、まだ、バスク魔法学校に入学したばかりではなかったかと、ホグナスが言う。


 一連の事件自体は、主体的にモバイ・カーがやったことに間違いないし、ギーブル・ダハーカが加わったことで、精霊界にまで迷惑が及んだのも間違いないことだが、そのきっかけに疑問が残った。その上で、更なる疑問が浮上した。モバイが殺害した人物の中に、モバイとは繋がりのないクリスの父親、ポール・ドラグニスが、入っていた。捜査当局は、この事実に危機感を覚えた。


 ポール・ドラグニス殺害の為に、モバイにヘイズストーンを渡した人物がいる。それは、魔法使いに違いない。



 ポール・ドラグニスは、魔法使い防衛隊の一員。しかし、よほどのことが無いと召集されない。普段の彼の仕事は、考古学で、地球の恐竜について研究していた。娘のクリス・チャーチが呼び出されて、父親の仕事について聞かれたが、なにも出てこなかった。クリスは、これを聞いて、さらに調べますと言っていた。


 ヘイズストーンは、日本の大海夫妻の持ち物になった。それは、アンナがこの石を浄化するのに適していると認められたからだ。夫妻が望めば、この石は、イギリスの魔法協会が保存することにもなっている。




 私たちはというと、また、クリスタ先生に課題を貰っていた。


 情報屋のジャッキーが精霊界で、やらかしてくれた。サラたちの両親からは、戦闘に参加しないことを条件に、人間界で、火龍王のタマゴを捜査する許可を貰っていた。


 ところが、ジャッキーは、私とみんなが、戦闘しているシーンを事細かくフィーリアに撮影させていた。

 フィーリアは、5次元を見ることが出来る九つ目の目を持っている。5次元とは、空間連鎖なので、フィーリアは、ジャッキーの傍に居ながらにして、私のアップや、城の遠景や俯瞰。サラたちの活躍を事細かく撮影した。


 今回、精霊界の戦争の危機に対して、土の国は、なんら、平和に貢献していなかった。火の国のサラは、火龍王のタマゴを奪還。水の国の人魚姫サーヤは、単身、龍王城に行き、戦争を遅らせた。風の国は、それら一連の事態にたいして、風竜のシップウ、第7皇女のウィンディが、援助している。


 土の国は、何もしていない。ところが、ジャッキーが持ってきた映像には、土の国の妖精、第6皇女ヒイラギが映っているではないか。土龍王は、この映像を大いに喜び、ジャッキーに大枚の褒美を出してこれを買い取った。そして、ドワーフ王のドレイクに頼んで、ジャッキーを鍛えてもらうことにした。


 京爺が、鉄錆び門を通って土の国に来たので、ギーブル・ダハーカを龍王城に連行する際、京爺と仲が良いドワーフのガブを京爺につけ、この映像をいっぱい光豆にコピーして、持たせた。この映像は、火の国でも、とても喜ばれた。風の国でも、水の国でも欲しいと言うことになり、無料で供給された。当然そこでも放映されたわけで、精霊界は、物凄い盛り上がりを見せた。その割には、みんな気を使って、妖精カフェには来てくれない。みんな、皇女様だから仕方ない。でも、王室や皇室の人は結構来たかな。今回、どのご両親からも御咎めがなかったのは、奇跡としか言いようがない。


 当然と言えばそうなのだが、トラングラー魔法学園のクリスタ学園長も、この映像を見た。サラとアクアは、超、怒られることになった。


「でも優しいよクリスタ先生。懲罰が、ホムラの産着を作れでしょう。どうせやろうと思っていたことじゃない」

 ウィンディは、クリスタ先生擁護派。


「それね、怒られていないからそう、言えるんだよ」

「鬼よ、鬼でしたのよ」


「ここでカフェラテ飲んでないで、ホムラの産着を作ったほうがいいんじゃないかな」

 ヒイラギは、現実派。早く作らないと、ある時期、ホムラが急成長するらしい。


「私が何とか裁縫する。だから、早く反物にして」

「あゆがいて良かった。店長代理、ヒイラギを借りてもいい?」

「しかたない。一つ貸しよ千里。あゆは、片付け手伝って」

 ウィンディが、カフェの片付けをすることになった。ヒイラギに機織りをしてもらう。


 私たちは、わいわい作業場に向かった。

火龍王のタマゴ編終了です。ご視聴ありがとうございました。また、何か浮かんだら、書こうと思います。


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