アクアとサラの秘密の部屋
「あゆさん、わたくしの部屋に、案内いたしますわ」
ひと段落着いたので、私は、ヒイラギと交代することにした。秘密の部屋を見るあゆの反応を直接見たかったけど、私には次の関門がある。夕食を作らなくてはいけないので、お店の様子次第では、東京側の台所に走る予定だ。
3人は、連れ立って、秘密の部屋に向かった。
アクアの部屋は、半分、あゆから見ても巨大な水槽になっていて、中は、アクアリュウムになっていた。水は常に流れていて、水槽の中は、森の中のようなレイアウトになっている。そこで泳いでいる色とりどりの魚たち。
「すごい、癒される」
「この子たちは、みんな淡水魚ですのよ。海水に戻っても生きていける種族ばかりを集めていますのよ」
「でも、こんなに大きな水槽。掃除が大変なんじゃないの」
「してないですわ。自然浄化で十分です」
「本当は、掃除屋が水槽の中にいるんだよ」
「サラさん、ばらさないでください」
「ふ~ん、私には見えないや」
「だって」
水槽の中で手を振っていた水のエレメンタルが、がっかりしている。
「そのうち見えるようになるよ。あゆだったら、ここに入っても、大歓迎だってさ」
この部屋には、更に奥がある。カーテンで仕切られている部屋。
「あそこは?」
「わたくしのプライベートルームです」
「見たい」
「ぼくも」
「仕方ないですわね。ここでも泊れるようにしているだけですわ」
そう言ってアクアが、カーテンを開けてくれた。千里がいたら、納得のプライベートルーム。寝るところ以外は、ランドスルーになっている。それは、水槽の中まで続く。
「すごい衣装!!」
「あっ、メイド服」
「見つかりました? マーナのお古ですのよ」
「マーナさんって?」
「アクアのメイド長だよ。ぼくも、しのにお願いしよ」
「今日、ガラスの糸が完成しましたでしょう。まず、妖精カフェで働けるのは、間違いないですわ」
「うんうん。ぼくもそう思う」
アクアとサラが手を取り合って喜んだ。
後は、だだっ広い部屋。あゆはここを見回して、夏は、ここに居たいと思った。
「ここで、フルーチェ食べたいかも」
「今何とおっしゃいました?」
「あゆ作れるの」
「そりゃ、牛乳と混ぜるだけだもん」
「ぜひ、ここでおやつの時間を持ちましょう」
「賛成」
「他にもちょっとしたものなら作れるよ。ジェリーとか」
「そうなのですか!!」
「お母さんと一緒に作ってたから」
「美代に教えてもらったんだ」
おやつの話で盛り上がる3人。
その頃、千里は、東京の台所で、カレーを作っていた。多分、ウィンディとヒイラギが、まだいるだろうから、プリンも作っておこうかな。でも、メープルシロップぬきかー。などと考えていた。
「今度は、ぼくの部屋だよ」
「温泉がありますのよ。そこは、わたくしも手伝いました」
サラの部屋は、アクアの部屋より5度は、室温が高いのではないかと思われた。温泉があるというから、ムシムシしているのかと思ったけど、どちらかというと乾燥していて、気温が高いのに、ここも清々しい。アクアが、すすっと、温泉の方に移動したから、やっぱりそうなんだと思った。水の妖精は、湿気を好む。
「妖精さん用の温泉ね」
「アクア用だよ」
「皆さんも入ればいいじゃないですか」
「今度そうする」
サラの寝床は、黒い石で、触ると暖かい。見回すと、その黒い石で、入り口横の壁がコーティングされていた。奥の温泉側は、木肌が出ていて、とても清々しいが、黒い壁の方は、なんだか見ていると落ち着かない。
「あの黒い壁は? 見てると落ち着かないよね」
サラとアクアは、目を合わせてニコッとした。
「あゆ、いい線言ってる。でも、壁に見えるんだ」
「サラマンダーの巣ですのよ」
「とても小っちゃい種族のね。みんな飛ぶから、警戒して、あゆの周りを飛んでいるよ」
「ごめん見えない。でも、こんにちわ」
あゆが頭を下げると、サラマンダーたちもペコっと頭を下げた。敵ではないと判断して巣に戻っていく。
「サラは、サラマンダー家を継ぐ人ですわ」
「サラマンダーって、竜じゃあないの」
「竜族もいるよ。火のエレメンタルのサラマンダーも含めて全部サラマンダーなんだ」
「寝床がだだっ広いですから、ここに衣装を置いてはどうでしょう」
「いいね。しのに、お古を持って来てもらうよ」
サラとアクアの頭の中は、妖精カフェで働くビジョンでいっぱいだ。
コンコン 「みんな、ここにいるの?」
「ヒイラギさんね」
「遅いよ、早く入って」
メイド姿のヒイラギが入ってきた。これに反応する二人。
「ヒイラギさんのメイド服は、イボンヌのお古ですの?」
「これ?、これは、お母さんが新調してくれたんだ。イボンヌのは海老茶色じゃない。年齢が合わないよ」
ヒイラギが着ているのは緑色基調で、ポイントポイントが、白のレースになっているメイド服。
「そっか、しののは赤で、家の色だから気にしていなかったよ」
「マーナのも、藍でしょう。でも、新調ですか」
ちょっとうらやましい二人。
「人族は普段着でいいんだよね」
「気にしなくていいですわ」
「スカートならいいんじゃない」
「あゆは、みんなの部屋を見たの?」
「後は、ヒイラギの部屋だけよ」
「デンジャラスゾーンですわ」
「大自然って言ってあげようよ」
「とにかく見て」
4人は、デンジャラスゾーンに向かうことになった。




