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妖精カフェ  作者: 星村直樹
火龍王のタマゴ
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初めてのブティック仕事

 妖精カフェは、忙しい時間を迎えていた。オーダーが、どんどん入ってくる。擬人化人さんたちは、普通に砂糖だけど。妖精たちには、フリーのはちみつを別に準備している。それも、いれ放題。砂糖もあるのだけれど、みんな蜂蜜を入れる。妖精カフェが流行っているのは、このサービスがあるからだ。ジャムの方は、別料金なので、そう人気がない。だから、私たちは、紅茶やカフェラテを一生懸命作ればよい。この時間なら、大量に作ってもすぐはける。


「千里、オーダー入ったわ。紅茶2杯お願い」


「はーい。それより店長代理。ブティックの仕事が入ったよ」

 そう言いながらも紅茶の準備に余念がない。私もだいぶ慣れたと思う。


「本当!」

「なになに?」 ヒイラギもやって来た。


「私が、お客さん1号でいいよね。今年の擬人化人誕生祭は、私たち姉妹が舞うでしょう。巫女装束に、妖精の絹で、ワンポイントつけたいのよ」


「擬人化人誕生祭で! いい宣伝になる」


「あゆだったら、ちょっとした品物なら作れるって」

「ちょっとよ。本当の衣装だと、お父さんとお母さんに頼まないと無理よ」


「頼めばできるの!」×3


「そりゃあ、商売だもん」


 みんなは興奮したけど、サーシャはいたって冷静。


「ワンポイントで、6万ルピーでしょう。妖精と違って私たちだと幾らかかるのかしら」


「ワンポイントで、6万も取れるの?」

「すごい」


 お客さんの前で、ずぶずぶな私たち。あゆは、涼夏堂の娘なので、その辺は、いたってクール。


「原価〈卸値〉の話だよ。本当は、1ゴールド〈10万ルピー〉でしょう。でも、擬人化人誕生祭で着てくれるのなら、安くするべきよ。店長代理も言っていたでしょう。いい宣伝になる」


「なるほど、6万ルピーでいいわ」 即決の店長代理。


「商談成立ね。あゆは、後で、うちに来てね。巫女装束を見せるわ。デザインは、ターシャが帰ってからになるかな。明日でもいいでしょう」


「ずっと、こっちにいると思います」


 私と、ウィンディと、ヒイラギは、飛び上がって喜んだ。そこで、はっと気が付いて、カフェの仕事に戻った。お客さんがみんな、こっちを見ている。


 多分、お客さんが多いのは、あゆを見に来たからだろう。涼夏堂の跡取り娘だから、皆さんに挨拶しないといけないのだが、ここで、ついでというわけにはいかない。そこは、明日から、サーシャと回ってもらう事になっている。



「しばらく忙しくなるから、サーシャさんと話してる?サーシャさんいいですか」


「もちろんよ」


「何飲みたい?」

「私もカフェラテ」

「じゃあ、カウンターに座って」


 あゆは、精霊界のことを両親から聞いているので、なじむのが早い。


「こりゃ千里、あゆをこっちゃ連れてこい」

 京爺が隅の席で、大声を出した。


「そっかー、あゆ、ごめんね。精霊界は種族が多いのよ。京爺に、話せるようにしてもらって。この言葉の音叉を持って行ってね」

 あゆは、妖精の言葉が分かる。でも、虫族や龍族は、大変かなー。


「分かった」

「私が連れて行くわ」


「お願いします」


 京爺にも、カフェラテを奮発することにした。



 正午になり、客が引き出した。店長代理のウィンディとヒイラギは、いたって元気。あゆのお母さんが作ってくれたお弁当をカウンターの奥で、交代しながら食べる。


 私の休み時間の時に、京爺が、ちょっと情報が入ったと言ってきた。私は、美代さんが作ってくれた幕の内弁当を京爺とカウンターの裏で食べることになった。


「千里が、スパゲティは、みんなが好きじゃといっとったじゃろ。じゃから、サミルにスパゲティを出させたんじゃ。そしたらすごく喜んでくれてのう。『懐かしいです』と、言ったんじゃ。どう、思う」


「サミルさんって言うんですか」


「そうじゃ」


「マスターが、サミルさんのマントは、アメリカインディアンの物だって言っていました。火の国のスパゲティだと、ちょっと辛酸っぱさがあるミートスパゲティですよね。たぶんメキシコ近くの人かな。アメリカだとニューメキシコとか」


「ようわからんが役に立ったか」


「いい情報です。マスターたちが向かったのは、ロサンジェルスなので、調べるのに、そう遠くないと思います。名前が分かったのは、本当に大きいです。後で、メールしておきます」


「よし、幸先ええ。それでどうじゃ、あゆは」


 一つ仕事が片付いたらまた一つ、京爺は、忙しい。


「明日、サーシャさんがあいさつ回りに連れて行くそうです。今日の午後は、みんなの秘密の部屋を紹介します」


「それで、相性属性が分かるとええな。デビットからなんか話は、なかったか」

 デビットとは、ムシキングのこと、サーシャの旦那さん。


「無いみたい。サーシャさんも捜索に加わらなくなったし」


「もう、不審者は、おらんということか。ええことじゃ」


 京爺は、喉のつかえがとれたように、お弁当を美味しく食べだした。食べるスピードがとても速い。私は、のどを詰まらせるんじゃないかと心配して、お茶を用意した。

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