あゆって私たちのパートナー?
「すごいでしょう。絹のハンカチ完成よ」
作業場にドーーンと入って自慢した。
「ここ、カギはないの?妖精の絹のハンカチだよ。不用心よ」
「秘密の部屋に納戸があるのね。そこに置く予定。今は、作業しっぱなしって感じかな。気をつけるね。ほらほら、触ってみて」
妖精カフェがある森の大樹は、4大精霊の妖精に守られているから、安全なのだけど、確かに、ここまでは誰でも入ることができる。森の大樹の枝が茂っているところに、妖精達の会議場があり、各国の妖精が、ここで、話し合いをする。ここで一番偉い人達が、ウィンディたちの親。
「すごい!こんなに薄い生地は、他にないね。確かうちにあるショールって、七百年前のだって聞いたけど、色がいっしょ、変わらないってことね。それで、金糸は、どうしたの」
金糸とは、絹の中でも、妖精の絹糸に紡ぐには、最高の素材。色が金色で、とても美しい絹糸になる。
「まだなんだ。ガラスの糸の方が先。試作品だけど触ってみる?」
そう言って、ガラスの糸を差し出した。今のところこれが最高作品。昼間なので、糸だと光っているとは感じないが、素材が蛍光石なので、淡く緑に光っている。
「これで、完成品じゃないんだ。
「絹糸も触ってみて。同じ肌触りになるんだって」
「う~、微妙。綺麗なのに」
「でしょう。これは、絹糸より細いのに、同じぐらい丈夫で、耐火性があるのよ。妖精たちって、羽が透明な人が多いでしょう。この糸が完成したらみんな欲しがると思うわ」
「うんうん、いいね。妖精さんたちをいっぱい見ると、いいデザインが沸くかも。重ね着用のスカートとか」
妖精さんたちをいっぱい見る。そう言われて、私は、まだ、ウィンディたちの家に行ったことが無いことに気づいた。でも、大きさが違うから家に入れないか。
「今度、トラングラー魔法学園の妖精たちをカフェに招待しようと思うんだ。その時いっぱい見れるよ」
「かき氷ね。店長代理に聞いてみる?」
「もう、やるの?」
「私が慣れてからよね。えへへ」
「すぐ慣れるわよ。じゃあ、後で、ウィンディに話してみる」
何人くるのか知らないけど、サラと、アクアにも手伝ってもらったらできそう。
「みんなの秘密の部屋は、サラたちが来てからかな。異世界だからびっくりしないでね」
「そうなの。どんなかんじ」
「口で説明しにくい。行けば納得するよ。それじゃあ、一度カフェに戻ろうよ。カフェの説明するね。最初はカウンターからよ」
カフェに戻ると、サーシャが、あゆを見に来ていた。あゆは、明日から、サーシャの家で朝食をとる。ユミルが来たら夕食もかな。私は、マスターとの連絡があるので、夜は、必ずアパートに戻るから自炊〈コンビニ〉。でも、ユミルが来たら一食、食べさせてもらおう。ユミルの料理は、宮廷の料理長仕込みだから気になる。
作業場からカフェに出るとカウンターの中に出る。サーシャは、いつもカウンターに座るので、いきなり出くわした。
「サーシャさん! あゆ、サーシャさんだよ」
「平賀あゆです。お世話になります」
「そんなことないわ。擬人化人誕生祭で、私たちがきる衣装は、涼夏堂さんのよ。こちらこそお世話になってます」
「そうなんですか、その衣装を見たいです」
「うちにあるわよ巫女装束。明日から家にご飯を食べに来るんでしょう。その時見たらいいんじゃない」
「私も見たいです」
「千里は、今晩、カレーを作るのよね。大丈夫?」
「げっ、なんで知っているんですか」
「そりゃあ、食事の話だもの、アンナとするわよ」
サーシャは、嬉しそうに羽をピコピコ動かした。
「その前に、ガラスの糸を紡がなくっちゃいけないんですよ」
「私と代わる?」
「食材をもう、仕入れているので・・」
「ごめんね。私が東京側に行けたら、手伝うんだけど」
「Have空間を広げても、意識のある人は、通れないし」
「弱気ね、千里」
「たぶん大丈夫です。お肉もいっぱい買って来たし」
「ユミルが来るのよね。私も楽しみだわ。火の国宮廷料理を教えてもらうわ」
「お肉大好きユミルさんですよ。食材代が高いんじゃないですか」
「ちょっと楽しみかも」
「そこは、アンナが奮発するのよ」
「私も食べに行っていいですか」
「今日を超えたらねー。それより、注文がまだなのよ。カフェラテをお願いするわ」
「はーい。あゆ、見てて」
精霊界側の妖精カフェは、朝が忙しい。お客様は、各国の妖精達。忙しいと満席になる。しかし、カフェのいすや机のサイズが、人族サイズなので、ぱっと見はそう感じない。妖精たちは、ここで、打ち合わせをしたり、会議や評議会のブレイクタイムにここを使う。ここは、軽食がないので、お昼にぐんと客足が減り、後は、まばらになる。それは、擬人化人や、虫族たちも一緒。
いつもなら、午後になると、東京側に、ぽつぽつ常連さんが来るので、そちらで、翌日のケーキの仕込みとかやるのだが、今回は、長期の休み。常連さんは、殆どご近所さんなので断って回ったと言っていた。
「エスプレッソに、スチームミルクがいっぱい入るってことね」
「だから、味は、エスプレッソ命ってことよ。サーシャさん、どうですか?」
そう言いながら、サーシャに、カフェラテを出した。
「この間、試飲したコーヒーよね。美味しいわ。それより、絹のハンカチを見せて。まだまだ、製品にするのはこれからだと思うんだけど。気になる」
「あゆ、見せてあげて」
「これなんですけど」
それは、白い絹糸で編んだ妖精用の小さなハンカチ。とても薄いのに透けていなくて、つややかな仕上がりになっている。
「あゆ、貰ったの?」
頷くあゆ。
「涼夏堂さんは、私たちの常連さんになるお店じゃないですか。見本です」
「そうよねー。これで、衣装を作るとなると、とっても、お高いのよね」
「袖の一部分とか、腰に巻くぐらいだったら、そんなことは、ないんじゃないかな」
「そうなの」×2
あゆが、何気なくつぶやいた言葉に、私と、サーシャが反応した。
「私が作ればですよ」
「作れるの?」
「ワンポイントってことね。作ってほしいわ」
「それでも、袖、二振りでしょう。多分原価で、6万ルピーかな。ほとんど素材代だけど」
「安いわ!!! 私が一番客ってことでいいよね、千里。ターシャの分も合わせてお願いするわ」
「みんなに相談してみる。いいよね」
「夜は、空いているから、いいけど。巫女装束だと手縫いだよ。時間が、かかると思う」
「みんなで手伝うよ。あゆって私たちのパートナー?」
私の頭の中は、もう、山分けの金額がグルグル回っていた。だって、300円で買った絹糸が、6万ルピー。サーシャとターシャで、1ゴールド2万ルピー。あゆを入れて6人で割っても、一人頭、2万ルピー。私たちの通貨で、2万円になる。
店長代理が私を見かけて、嬉しそうに、紅茶2杯をオーダーしてきた。私もウィンディを呼んで今の話をした。




