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妖精カフェ  作者: 星村直樹
火龍王のタマゴ
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ウィンディ店長始動

 ウィンディたちは、いつもテラス側から入ってくる。私とあゆは、ウィンディとヒイラギを迎えに、テラスに向かった。


「ウィンディ、ヒイラギおはよう」

「おはようございます」


「あゆ来たんだー」

 ヒイラギは、あゆにすっ飛んで、あゆが広げている手にハイタッチした。


「あゆ、千里、おはよう」

 今日の仕入れは、マスターがやってくれたので、この時間になったが、ウィンディは、明日から1時間早出をすることになる。


「よろしくお願いします先輩」


「こちらこそ。ごめんね、私も店長初心者でしょう。最初は千里に聞いてね」

 ウィンディも、あゆが広げている手にハイタッチした。


「お昼休みは、時間ありそう?あゆをウィンディの部屋に案内したいんだけど。マスターがいなくなっちゃうから、ゲスト認定で入るしかないでしょう」


「あゆがお弁当を持ってきてくれたんでしょう。私の部屋で食べる?」


「じゃあ私がお店をやるから、ヒイラギも休んでよ」


「そうさせてもらおっかな。私の部屋も見せたいし」


「私か千里が付いていないと、変なのに、ちょっかい出されるかもしれないわよ」

 ウィンディが、ヒイラギの部屋は危険だと、あゆに耳打ちする。


「ひど・・くないかも。いつの間にかああなっちゃったんだ。いろんな土の精が住みついちゃって」


「多分よだれだよ。寝てばっかりいるから」

「そうなの?」

「そうそう」


「違うと言えない」


 開店に時間があるからと立ち話していたが、アンナに時間がない。


「みんなごめんね。ウィンディに、もうちょっと話していい?仕入れの話なんだけど、東京側は開けないでしょう」

「うんうん」

 アンナとウィンディが連れ立って、東京側に行った。私たちは、精霊界側の店の開店準備をすることにした。


 掃除をして、机をセットして、コーヒー豆とか全部補充されているか確認。あゆが私にくっついて、話を聞いてくれるので、なんだか本当に先輩になった気分。マスターがケーキを焼いてくれたので、今日は、通常営業だ。一通り店の準備を終えて、ヒイラギが紅茶やコーヒーの器をセットしているカウンターに戻った。


「うちは、ケーキだけで、軽食を出さないから、飲み物を作ることができれば、後は接客だけよ」

「あゆも手伝ってくれるの!」


「ごめんね。精霊界の見学が先みたい。アンナさんがサーシャさんに頼んだって言ってた」


「時間があったら手伝いたい」

 あゆは、精霊界に来たばかりでやる気満々だ。


「多分、忙しいと思う。言葉も覚えないといけないし。いろいろな人に挨拶しないといけないし。大変だよ」

「言葉の音叉は、マスターに借りて、ここに有るよ」


「妖精の言葉は、わかるよ」


「虫族は、声が高いのよ。こっちから話そうと思ったら、琥珀のティアラがいるし」

「琥珀のティアラも借りてるよ。それに、サーシャとターシャは、日本語が話せるから大丈夫だよ」


 ヒイラギと話していて、何とかなりそうな気がしてきた。


 ウィンディが私を呼びに来た。何食分かの食材も仕入れていて、冷蔵庫にぎっしり入っている。それの説明を聞きに私も東京側に来てほしいということだった。あゆは、ヒイラギに、カップやコップの置き場所を教えてもらっている。あゆをヒイラギに任せて、東京側に走った。


 東京側で、あゆの両親を見送った。あゆのお父さんは、私にまで、「あゆをお願いします」と、言ってたけど、たぶん大したことはできない。もしかしたら、こっちが助けてもらうかもしれない勢いだ。

 次に、マスターとアンナを見送って、三人で精霊界側に帰った。京爺は、しばらく店の隅でリザードマンののバクバと打ち合わせをしているので動けない。とりあえず、ウィンディの前に3人で並んで、ウィンディの初心表明を聞くことになった。


「何よ」


「なんか言って」

「初心表明よ」

「朝礼みたい」

 あゆにも、意気込みを語ってもらったほうがいいかもしれない。でも、この時は、そこまで気が回らなかった。


「みんな頑張ろうね」

 私から見るとウィンディは、いたって平常心。私の方が、ドキドキしているかもしれない。


「よろしくお願いしまーす」×3


「じゃあ、千里たちは、部屋に行っていいわ」

 そう言って、ウィンディとヒイラギは、レジの確認を始めた。


「この鍵を持っていてね」

 そう言ってスペアキーをあゆに渡した。ずっと持っていてもらったほうがいいかもしれない。私たちは、カウンターの左奥にある作業場に通じる扉から中に入ることになった。


 秘密の部屋に通じる扉の中。そこは、5次元の亞空間になっている。今日は、天気が良い。この通路に、外の光がいっぱい入っている。カフェの様子も見える不思議な空間だ。


「不思議な所ね」

「玄関もこんな感じ。ここは、世界樹の枝の中よ」

「世界樹!生命の樹ね」

「生命の樹?」

「世界を構築する樹でしょう?」

「私は、東京に出て、初めて、こんな世界があるって知ったから、何も知らないのよ。いろいろ教えて」

「そうなんだ。それなのにすごいね。ウィンディたちと契約したんでしょう。普通ないよ」

「あゆも妖精と契約しなよ。力を貰えるよ」

「私は、魔力が弱いから」

「大丈夫。相性があるんだって、京爺が言ってた。だって、あゆも精霊界に来てるじゃない」

「そうだといいな」


 そんな話をしているうちに、私の部屋の前に着いた。


「ここが私の部屋よ」

 窓は、最初にアンナが作ってくれた。とても広い窓で、窓側からテラスに出ることができる。テラスは、楠の森に囲まれていて、プライベート空間になっている。ここから、ウィンディたちのプライベートデッキに行けるのだけれど、ここからは見えない。


「広い!」

「何もないからね。水場だけは、京爺に言って作ってもらったから、そのうちお風呂は何とかする。これが蛇口なんだけど、水は、雨水がたまっているところから引いているだけだから飲まないほうがいいと思う。京爺は、『大丈夫じゃ』って言うから顔を洗うのに使ってる」

「水源を見に行こうよ。多分、飲めるのって本当だよ」


 それは、世界樹ならではの蛇口。世界樹は水を吸い上げる力が強いので、蛇口は開きっぱなしになっているのだけれど、水が漏れない。指でつつくと暫く水が出る。本当は、魔法で水量を調節できるのだが、指でつついてもバケツ一杯分出るので、顔を洗うのには、不自由していない。


「この桶に水がたまるから、顔を洗うのに使ってね。後は流すだけでいいわ。自然と外に流れるから。ここで、行水はできるけど、お風呂はあきらめてね」


「お風呂、欲しいかも」


「バスタブの作り方は、教えてもらったよ。でも、お湯にするのは、火岩石が必要だし火魔法だから、当分無理。水風呂の方がきついよ」


「ここは、地球と周期が一緒なのに、東京よりずっと温かいもんね。我慢する。でも、壁がほしいかも」


「そうよね。バスタブもそうだけど、そう言うのは、ウィンディなのよ。頼んでみる。本当は、自分で全部やりなさいって言われているのよ。それから、トイレは、カフェのを使ってね。後で案内する」


「そっか、最初は、広いと思ったけど、大変だね。キッチンもいるだろうし」

 そう言って、あゆが部屋を見回した。今あるのは、和布団一式だけ。明るいのだけが取り柄の部屋だ。


「じゃあ作業場に案内する。絹のハンカチが完成しているんだ。見るでしょう」


「見たい見たい」


 洗濯は自分でするって言ってたけど、私が東京に走った方が早い。洗濯は、土の浄化魔法か、風の浄化魔法が使えればいらないのだけど、あゆも私も使えない。水の魔法は、干さないといけないし、風の魔法は、高等魔法になるので当分できない。今だとブローができるだけ。


 確か、土魔法のパトーナムよね。ヒイラギに教えてもらって、私がやる方がいいかも。


 私たちは、向かいの作業場に向かった。此処には、ヒイラギが調子に乗って作った、絹の反物もある。ハンカチは、1枚あげる予定。みんな賛成してくれた。

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