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妖精カフェ  作者: 星村直樹
火龍王のタマゴ
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あゆ 妖精カフェに来る

 今日は、とても目まぐるしい一日になった。マスターたちは、でっかいボストンバックを車に積んで準備万端。そこに、あゆを迎えに京爺がやって来た。あゆの両親が、京爺に駆け寄って、何か言っている。京爺は、両手をご両親に握られて、ちょっと、にやけ顔。多分「大丈夫じゃ」と、言っているのだろう。


「あゆ、ごめんね。お弁当は準備してくれた」


「みんなの分も、お母さんが作ってくれたよ。それで、ガラスの糸は、紡げたの?」


「やっぱりまだかな・・。最初は、ごわごわだったのよ。蛍光石に変えて何とかって感じ。でも、もう一日かかりそう」

 気合と現実は、同じにならなかった。やはりガラスの糸は、難しかった。物凄く、素材の蛍光石に助けてもらっている。でも、そのおかげで、感じがつかめたと思う。


「後これ、灘の春」

「日本酒?だめよ、京爺が働かなくなるわ。私が預かっているね」

 こそこそと清酒を台所に隠した。


「あゆ。ほんじゃあ行くかの」

 京爺は、昨日ただ酒をたっぷり飲めているので上機嫌。

「すまんが、この光豆を持っていてくれ。あゆが光で、わしが闇魔法をやるでな。大丈夫じゃ、これが触媒になる。わしの後について、詠唱せい」


 あゆは、まだ、オーラを見ることができない。だから、光の凝縮魔法を使えない。それを京爺がほとんどサポートする。そして、あゆは、紫というあまり見ない色のオーラを発している。


 大海家の台所で、両親の立会いの下、あゆが、大魔法を実演することになった。


「コウ」

「コウ」

 そう言うと、両親でも見えるぐらい光豆が光り出した。

「コウ波」

「コウ波」

 両親は見入っているが、私にはとっても眩しく感じる。


「よしええぞ。苦しくても、そのまま我慢するんじゃぞ。常夜」


 今度は、京爺の手の上で、闇が凝縮されていく。まるで、光を吸い込んでいるようだ。


「さあ、次元門の前に立つんじゃ」


 マスターが柱のスイッチを押すと、大海家の二階に通じる扉に、ちょっと光っている黄色い膜が生成された。


「あゆの聖門は、丹田か。はーーー、パオ」

 聖門が開かれた。そして、京爺が黒い玉をあゆのお腹に入れて閉じた。

「さあ通りなさい。ご両親、もし、あゆが立ち止まったら、背中を押すんじゃ」


 思った通り、あゆも、途中で立ち止まった。精霊界側ではアンナが、あゆを待っている。


「背中を押すんじゃ」

 そう言われて両親が背中を押した。あゆは、つんのめるように精霊界に入った。


 奈落の底を説明している京爺。それでも涙ぐむお母さん。思わず美代さんに駆け寄った。美代さんが私のハンカチを受け取ってくれたので、ちょっと安心して、私も精霊界に入った。そこに、次元門酔いで、くらくらしているあゆがいた。


「もう、光豆を光らさなくていいわ。これは、あなたの魔力を一時的に強くする魔法よ。光るのを止めないと、後で疲れちゃうわ」

「気を落ち着けるのよ」

 私も、アンナの説得に参加した。


 あゆの光豆は、徐々に光を無くして、最後には光らなくなった。今回は、この「コウとコウ波」の魔法を覚えるのがあゆの課題だ。さっき、京爺によってあゆの聖門が開かれたので、後は、この次元門を通れるぐらい魔力を高めることができれば、一人で通り抜けられるようになる。ついでに、あゆの特性や、精霊との相性属性を確認することになる。運が良ければ、なにがしかのエレメンタルが友達になってくれるかもしれない。


「何なの亞の闇、怖かった」


「奈落の底よ。次元の狭間。長くいたらだめな所よ」

「あれは一挙に通り抜けるしかないよ」


「千里、あゆをデッキに連れて行って。あゆ、オープンスペースは絶景よ」


 そこは、眼下に森と林と草原と、遠くに海を見下ろすことができる絶景の場所だった。遠くに飛んでいる翼竜は見たことがなく、ここが異世界だと思い知らされる。あゆは、「ここに座って」という私の言葉をよそに、この絶景の中に立ち尽くした。



 やっと落ち着いたあゆに、アンナがアドバイスする。


「まず、精霊界に慣れてね。明日の朝食は、サーシャにお願いしたわ。火の国料理もおいしいわよ。時間と暦だけど、人間界と精霊界は一緒。目覚まし時計は持ってきたわね。朝8時が食事よ。ごめんね、京爺は早起きなのよ。でも、ちょっとやっていることがあって、お昼過ぎにならないと魔法を教えてくれないわ。その間は、千里にいろいろ教えてもらって」


「私が教えるのは、魔法じゃないわ。でも楽しいかも。みんなの秘密の部屋に案内するね」


「今日から千里の部屋で寝泊まりしてね。水場は、カフェの水場を使うしかないわ。細かいことは千里に聞いてね」


「分かりました」

「了解です」


「じゃあ、まずは私の部屋からね。何もなくてごめんね」

「布団は、あるんでしょう」

「それだけよ」


「千里は、魔法を覚えた?」

「増殖魔法を覚えたかな。でも、ちゃんと使えない」

 下手に使うと大惨事になるからと、まだ、練習さえ止められている。私は、魔力が強すぎてダメな人。

「サラとアクアが来たら、後で、作業場に来てね。ガラスの糸を紡いでいるところを見せるわ」

「見たい。それだけでも、ここに来た価値があるよ」

「あるかなー、そうなるよう頑張るね」


 アンナは、私たちを見送って、頭を切り替えた。アンナは、これからマスターを死ぬ気で守る。



 京爺は、バクバと念話で打ち合わせ。例の京爺がやっつけた魔術師が、リザードマンの村に現れたそうだ。人の身体は弱い。バクバが説得を試みる。まずは、火の国の案内。その中には龍王城も含まれる。龍王も忍耐の時。下手にチャームを使うと、こちらの質問にしか答えないから、彼の記憶の中にある、隠された情報を得ることができなくなるかもしれない。京爺に説得された際、王は、憤懣やるせなくて、何か近くの物を壊したそうだ。


 サイモンは、ずっと龍王城。ターシャも行っている。サーシャとムシキングは、不審者探査を続行中。

 ユミルは、今日到着する。でも、夕食は、私。明日からは、ユミルが私たちの食事をサーシャの所で作ってくれる。そして、ユミルは、3日後に帰って、魔術師の説得に加わる。


 ウィンディとヒイラギがやって来た。いよいよ、今朝、ウィンディ店長が始動する。

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