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妖精カフェ  作者: 星村直樹
火龍王のタマゴ
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龍の食卓

 リクシャン様は、あまりお食べにならない。だから、その前にいるのだけど、そわそわする。なんせ、5大将軍と、火龍王が囲む食卓の上にいるからだ。間違えて、食べられやしないかと、落ち着かない。


 火龍王が妃のリクシャンを連れて迎賓宮に入って来たので、とても盛大なことになった。そのすきに、私たちは、こそこそと、自分の席に座る。


 さっきの話を二人に相談したかったから、京爺とサイモンが、お酒を飲まないでいてくれたらいいのにと思っていた。だけど、案の定というか、やっぱりというか、遅れて迎賓宮についてみると、二人とも顔が赤くなっていた。


 もう、この二人は!。トラングラー魔法学園のクリスタ先生に、平和のためだって、まじめなことを言ってたくせに


 アクアは、メイド長のマーナに、きつく言われていたから、そんなに食べていなかったけど、ウィンディは、「なにこれ、おいしい」と、がっついていた。そう言えば、あさ食べていないと言っていた。


「ウィンディ、がっつきすぎ」

「千里、サラ、遅かったじゃない」

「リクシャンを連れて来たんだよー。すごいでしょ」

「体調がすぐれないって聞いてたけど良くなったの?」


 そこに火龍王とリクシャンが戻ってきた。


「あなたがウィンディね。では、ふわふわした可愛い子がアクア」

 リクシャンが、私たちの食卓をのぞき込んだ。


「初めまして、王妃様。アクアです」

 アクアはスカートを少し上げて正式な挨拶。

「う、う、」

「何?」

「千里、死ぬ」

 ウィンディは、慌てて食べ物を飲み込もうとして、のどに詰まらせた。

「もう!」

 ウィンディが背中を指さすから、人差し指で背中をさする。


「ごほっ。ウィンディです」


「まぁ! しっかり者だって聞いていましたけど。可愛いのですね」


「いつもは、しっかりしているんです」

「はい、お水」

 サラがウィンディに水を渡す。


 ゴクゴク「ごめんなさい。半分仕事が済んだじゃない。ちょっと一休みのつもりだったのよ・・です」ウィンディがしまったと、王妃を見上げた。


「ウィンディは、今回、千里のフォローなんだ。水中で息するとか、言葉のフォローとかがそうだよ」


「私はまだ、皆さんの言葉が分からないんです」


「えらいわー。ウィンディは、もう、妖精カフェで働いているのですって」


「はい、千里と契約しちゃったので、絹糸も紡ぎました」


 リザードマンのユミルが、私たち用の食事を持ってきてくれた。ユミルは、妖精カフェに行く気満々だ。

「妖精カフェは、ここから近いじゃない。今度行くわね」


「ぜひぜひ、リクシャン様も来てください。樽のブドウジュースがお勧めです。すっごく香りがいいんです」


「今は、ちょっと体調がすぐれませんが、元気になったら、そうさせてもらいますね」


「絹糸の次は、ガラスの糸をアクアと千里で紡ぐんだ」

 アクアと、サラが、私の両肩にとまる。

「火龍王様に。蛍光石を貰いましたから、素晴らしい産着を作って見せますわ」


「楽しみだわ。3人とも、よろしくね」


 リクシャン王妃は、私たちにニコニコと対応してくれているけど、さっきの沈痛な面持ちを見ているから、心配しそうになる。だけど、ユミルが目で、『心配してはダメ、普通にね』と、手を下で抑えながら合図するので、私もサラも、いつもの感じで対応した。


 やはり、ここに来た以上リクシャン王妃は、いろいろな人と挨拶しなくてはいけないらしく、席こそ立たないが、その対応をしだした。私たちにも遠巻きにギャラリーが来ているが、火龍王と5大将軍がにらみを利かせている席なので、話しかけてこない。


 火龍王様からもらった龍眼を無くさないようにしなくてはいけない。京爺に即席のネックレスか何かを作ってもらうことにした。


 酔ってるけど、大丈夫かな。ただ酒だと思って、ほんとうに。


「京爺、京爺」


「千里か。やってるか」

「平和を守るっていいよな」

 サイモンは、寝ちゃいそう。


「今、後宮から帰ったところ。二人とも、昼間っからこんなに飲んで」


「明日の朝には、酔いが抜けとらんといかんじゃろ。考えもなしにというわけでもないんじゃぞ」

「そうだ・・ぞ」


 サイモンはダメそう。昨晩から、根回しをずっとしていたから疲れたのね。いいわ、起こさなくても


「京爺、みんなには内緒にしてって火龍王様とリクシャン様が言ってたわ。いい、約束よ」


「なんのことじゃ?」


「サラ、ちょっと来て」


 そう、言うと、みんなついてきた。


「赤い玉を京爺に見せてあげて。無くさないように、ネックレスか何かにしてもらおうよ。京爺、お願い」


 サラが、龍玉を京爺に差し出すと、みんな目を見張った。


「わあ、綺麗」

「リクシャンにもらったんだ」

「うらやましいですわ」


「なんじゃい、ルビーか。安もんじゃと、もろい宝石じゃが、ええもんなんじゃろうのう」

 そう言って、赤い玉をのぞき込んでぎょっとした。

 玉の中に目があって、キョロっと動いたからだ。

 京爺は慌てて、火龍王とリクシャンを交互に見た。二人は意志の堅い表情をしている。


「サラ、貸してみろ。ちょっと酒が回っているでな細かい作業はできんが、首輪ぐらいなら何とかできるじゃろ」


 そう言って、サラから、龍玉を借りて、これにひそひそ話をした。


「レビアタン、なーに考えとるんじゃ」

― 竜宮の様子を見たくてな。いいだろう

「じゃったら、竜宮に入ったら目玉を動かすんじゃないぞ」

― その時は、大人しくしている。心配するな


 京爺は、ため息をついて、ポケットから、世界樹の樹皮を取り出した。私たちの部屋を作ってくれた時のあまりものだ。まず、狭空間を作り出して、これを放り込んだ。これに、やわらかい琥珀を足すと、樹皮が柔らかい皮のような感じに、ぐにゃぐにゃになる。


「サラ、こっちゃこい。しの、しのは居るか」

「なんでしょう」

「なんじゃこの服は、何枚着とるんじゃ。襟の中まで入る太い首輪を作るでな。襟を下げてくれ。ぴったりするようなのがええじゃろ」

「なんですか?」

 サラのメイド長からすると、ここで、着付けを崩すなんてとんでもないと言う顔だ。


「しの、そうして。リクシャンに、赤い宝石を貰ったんだ。失くすといけないから、京爺に首輪を作ってもらっているの。襟を下げて」


「分かりましたけど」

 しのは、いぶかしい顔をしていたけど、京爺たちをのぞき込んでいるリクシャンに促されて了解した。


「首の所は、水の中に入いるときに、クリオネのように変身しても変わらんところじゃろ。今のまま型を取るぞ。おっと、エラ呼吸はできるようにせんといかんか」


「うん」


 京爺によってグニャグニャになった世界樹の樹皮をサラの首に巻く。


「京爺、なんだか熱い」


「火のエレメンタルでも熱いか。じゃが、ここからが本番じゃ。我慢しろ」


 そして、首の付け根を厚くして、ここに龍玉を埋め込んだ。


 それはぴったりとした。リボンのような首輪で正装に似合う美しいものだった。


「まだじゃぞ。後ろを切っとかんと、外れんようになるぞ」


 京爺は、風を起して後ろを綺麗に開いた。


「よう我慢した。苦しくないか」


「大丈夫」


「これは、弾力性があるでな。しのの力でも、開けば外れる。やってみろ」


「出来ます」


「まあ、今日は、そのままでもいいじゃろ」


「サラ様。襟をなおしますね」

 しのは、慣れた手つきで、12枚もある服の襟をなおしだした。


「可愛いですわ」

「綺麗」

「えへへ」

「京爺、私にも作って」


「さっきので、最後じゃ。今度にせえ」


 京爺は、火龍王と話したそうに、そちらを向いたが、公の席で話せそうな内容では無いので、困った顔をして「酔いがさめたわい」と、独り言を言った。

 後で、私たちが、タマゴが盗まれた話をした。京爺は、難しい顔をして黙ってしまった。




 将軍たちと火龍王は、難しい話を始めた。そのため別室に行くと言い出したので、昼食会はお開きになり、リクシャン王妃も後宮に戻られた。私たちはというと、一人寝ちゃった奴がいるので、ユミルのおじいちゃん、バクバの命令で、サイモンが、リザードマンに担がれて退場。とっても恥ずかしい思いをした。


 サイモンは、そのままシップウの背中に有るリュックの様な客室に運ばれた。シップウは、これから夕方まで、飛んで、夜休み、早朝もう一度飛んで、アララテ海に有る竜宮の海面に浮かぶ貝の里に到着する予定だ。アララテ海は、とても浅い海。暖かく、明るい海だ。水深は、10メートルから20メートルと、マナ藻荘園が延々と続く。アララテ海には、外海と繋がっている海溝があり、この深いところに竜宮がある。そこは、水深が100メートルもあるのにとても明るいところだ。大きな宮殿の先端は海上に顔を出しているので、すぐ見つかると言っていた。


 私たちが、シップウの背中の上で、そんな話をしているとき、妖精カフェで、一大決心をしていたアンナは、ヒイラギにカフェの留守番を頼んでマスターを説得。イギリスに電話をかけようとしていた。相手は、トニー・マーティン。ちょっと前に、妖精カフェで、魔石を買って、富士山の樹海に、腐海を発生させた張本人の一人。

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