龍王城
火竜の体長は、だいたい6メートルぐらい。龍王城は、何もかもスケールが違った。いつまで歩いても到達しない城。凱旋路にいる多くの衛兵。城の広い庭には、多くの火竜が集まっていた。その中には、8メートル級、更に10メートル級の火竜が混ざっている。
「あの、緑の鱗をした火竜が、グワン将軍よ。とっても鱗が固いんですって」
ウィンディは、火竜のスーパースターたちの集合に目を見張っている。
「グワン将軍はね、龍王城の守護神だよ。反対側に赤い火竜がいるでしょ。あれがサラマンダーおじ様だよ。攻撃特化の激烈な将軍なんだ」
武闘派好きのサラは、赤竜側を見ていた。
「火竜4将軍のうちの2将軍を見られるなんて、めったにないことですわ」
「そうでもないよ。おじさまと、よく食事してる。ぼくもよく同席しているよ」
「それは、サラさんだからです」
「あはっ」
「じゃあ、ハガラ将軍と、ショウギ将軍もいるの! すごい、見てみたい」
「ウィンディ様、あまりきょろきょろしてはダメです」
しのに叱られた。
「ヒューガ将軍が中にいると思うよ。今は、5大将軍時代なんだ」
「ええっ、一人増えたの!ヒューガ将軍ってどんな火竜?」
「ハガラ将軍の弟子だった人。怪力無双って感じかな。ハガラ将軍は、スピードタイプだから、こんな竜がいるなんて思わなかった。今までぴんと来なかった人だよ」
「やったね千里。城の中なら、声をかけるチャンスがあるかも」
「私は、ちょっと怖いかな。おっきいし」
「そんなの、私から見たら千里だってそうでしょ。いっしょいっしょ」
そんな話をしていたら、城の中から、リザードマンが出てきた。彼らは、擬人化人ではない。有翼族といっしょで、初めから精霊界にいた火の竜人。沼地にいるリザードマンは、淡水の竜人。この後行くのは、海なので会わない。
「サラ様、それにお友達まで。よくいらっしゃいました。火龍王様がお待ちです。ささっ、どうぞこちらに」
「爺、それにユミル」
「久しぶりね。早く学校を卒業しなさいよ」
「これ、ユミル」
「今卒業したら、公務をさせられるんじゃないかな。結局、あまり遊びにこれないよ。でもほら、千里だよ。契約したんだー。多分、妖精カフェのメイドに成れると思う」
「わたくしも」
「そしたら、ちょくちょく妖精カフェに、遊びに来てね」
「あー、噂のアクアに、ウィンディ。千里は初めてね。千里は、人の世界から来たんでしょう、ちょっと教えてよ」
「火龍王様がお待ちじゃ」
「ごめんなさい」
「相変わらずだね。次は夜通しのフライトになるから、お昼からは時間があると思うよ。後で、みんなと話したら」
一応、3人で、頭を下げた。京爺は、ユミルのおじいちゃん、バクバと旧知の間柄らしくて、目で話している。私たちが頭を下げたので、後ろのメイド6人も頭を下げていた。なんだか、映画の中にいるみたいだと思った。ユミルが先導してお城の中に入る。バクバと京爺は、難しそうな話をしながら、後ろからついてくる。
私たちがお城中に入ると、「ガオーーー」と、ものすごい雄たけびが聞こえた。単に、「入城」と言っただけなのにすごい声。ユミルが、行く手に立ちふさがっている若い火竜に声をかけた。
「ヒューガ将軍。サラ様とその一行です。先導お願いします」
「心得た」
ものすごく強そうな火竜。さっき怪力無双って言ってたけど、パワータイプなのは間違いないって感じ。
「人の場合なんだけど、本当は、謁見の間で、ひれ伏して、火龍王様に、お声をかけていただいてから、名乗るのがしきたりよ。でも、妖精たちが小っちゃいでしょう。見えなくなっちゃうから、千里も無礼講だって。立ったままでいいよ」
そう言えば、謁見の礼儀作法をまったく教えてもらってない。
「ユミルさんもずっと一緒にいてくれるんですか。私、なんにも知らなくて」
「大丈夫よ。サラがいるから、ほら、謁見の間の扉も開いたままでしょう。普通は、閉じていてから、開けるのよ」
そう聞いて正面の部屋を見た。奥には、ハガラ将軍に負けないぐらい大きな火竜が座っていた。深緑の緑沢のある鱗に、胸の赤い模様。額には第三の目を持っている。魔力が、何なのか良く分かっていない私でさえ、桁外れな魔力を感じた。
奥から、火龍王が「ガオーー」と言っている。
「サラ、早くこんか」
「友達と来たんだよ。紹介するから待って」
「ワハハハハハ」
すっごく遠いのに、大声でやり合ってる。サラの場合は、儀礼って関係ないのかなと思った。でも、廊下の衛兵は、びくともしない。私は初対面だから、礼儀を外しちゃだめだと思って、ユミルの歩調に合すように歩いた。
この謁見は非公式だと聞いていたが、列国の大使も控えているし、国の重鎮もいる。さっきまで外にいた、グワン将軍やサラマンダー将軍の顔も見える。なんだろ、この人だかり。国事じゃないよねーと、きょろきょろしてしまった。
「多分、このまま、移動して迎賓宮で、昼食になるんじゃない」
「私たち、ここで、お披露目されるのですわ」
「ヒイラギも連れてくればよかったかー」
妖精たちは、こんな状態に慣れているのか、平常心だ。
ダメだ、心臓がバクバクする
なんだか、ガッチンガッチンに、なって歩き出した。
「こりゃ、なーに緊張しとるんじゃ」
「京爺!、そりゃ緊張するよ。人、多くない?」
「国の長がやることじゃから、そりゃ盛大になる。大丈夫じゃ、わしもじゃが、サラたちがついておるじゃろ。ウィンディたちと、ハイタッチした時を思い出せ。落ち着くぞ」
「うん」
私には、みんなの力が宿っている。そう思ったら、少し気が楽になった。
「ごめんね、ここからは、広域放送しているみたい。ほら、千里は、ゴールドヘクロディアじゃない。みんな、大写しで見たいのよ」
ユミルに言われて、せっかくほぐれた緊張が一気に戻った。
「おー、来たか」
何、他人事のように!!!
サイモンが嬉しそうに私たちの列に加わった。今回、こうなっちゃった元凶が来たので、ギャーと腹が立って、緊張が、ふっ飛んだ。
「サイモンさんひどいですよ」
「すまんすまん。これも平和のためだ」
「それは昨日聞きましたけど、いくらなんでも、心の準備が」
「そうか?緊張しているようには見えんぞ」
「さっきまで、ガチガチじゃったんじゃ」
「そりゃ悪かった。後で、ターシャにご馳走してもらおう」
お前もなんかしろよ 〔心の声〕
そうこう言っているうちに、火龍王の前に来た。




