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妖精カフェ  作者: 星村直樹
アルバイトはカフェで
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精霊界は、魔力、つまり力社会なんだ

 夜の繁華街を抜けて首都高に。皇居近くの入り口から、高速道に入り中央自動車道を目指す。途中、代々木や新宿を通るのだが、ゆっくり見物している気にはなれなかった。


「ごめん、まだ、渋滞中だね。予定よりかかりそうだ、向こうで頑張ってもらいたいんだ。寝ていなさい」

 マスターは、「寝ていなさい」というが、全く眠くならない。私の膝で、ぐったりしていたヒイラギは、見たことのない東京の光の洪水に目を奪われて、窓に張り付いた。

 京爺は、助手席で、ラジオの音楽番組を聞き出したし、私だけ緊張して、背筋を伸ばして座っていたので、マスターが、気を使って話しかけてくれた。


「千里君、そんなに緊張していたら、疲れちゃうよ」


「こんなこと、しょっちゅうあるんですか」


「人間界側は、あまりないよ。でも、妖精界側は、大変かな。ちょっとはヒイラギたちの身の上を聞いたかい」


「みんな、お姫様だって聞きました。それから、四大精霊は、冷戦状態で、大変だって」


「そうだよ。みんなを支えられるのは、千里君だけだよ。そうだね、四大精霊に、光の妖精がいないって思わなかったかい」


「光とは思いませんでしたけど、電気の妖精がいないなって思いました」


「同じことじゃ」

「そうですね。光も電磁波の一つだ。そして、その対局が闇。重力波なんかがそうだね。精霊界には、この、光と闇の性質を持った精霊はいない」

「わしらがそうなんじゃよ」

「人間界は、この光と闇の力が支配している世界なんだ。だから、ブラックホールが、身の回りでしょっちゅう起きては蒸発するという現象が、頻発する」

「私たちから見たら、千里は、光と闇の精霊よ」


「昨日、わしは、空間魔法を使って、世界樹の中に入って行ったじゃろ。あれは、闇の魔法じゃ」

「店の6次元膜もそうだよ」


「じゃあ、光の魔法って、どんなのがあるんですか」


「召喚魔法がそうだね。例えば、精霊界にいるヒイラギを千里君は、東京に召喚することができるんだよ。ヒイラギは、千里君に自分の因子を注ぎ込んだだろ。その因子と、ヒイラギは、離れていても絡み合っているから、同じ変化をする。千里君がヒイラギの承認を得れば、自分の持っているヒイラギの因子を実物にすることができる。何処にいても、ヒイラギは、千里君のもとに現れるという魔法だよ」


「ここまで強い結びつきちゅうのは、あまり例がないのう。伝説で知る限りじゃ。じゃが、言霊で話ができたら、脈があるかもしれん」


「じゃあ、ヒイラギが危険になったら、私のもとにテレポーテーションさせることができるってことですか」


「理論的には、そうだよ。これは、光の速度も次元おも越えた10次元の世界の魔法だからね。伝説で知っているだけだよ。こんな大魔法は、大変かもしれないけど、君はもう、ヒイラギの因子を貰っている。ヒイラギの原資と絡み合った同じ変化をする因子を持っているのだから、本当は、ヒイラギに、こっちに来てもらわなくても、土の魔法を使えるはずなんだ。でも、今は、ヒイラギに助けてもらわないと何の変化も起きない。これは魔法じゃなくて魔術だね」


「まあ、切っ掛けだけじゃろ。じゃが、そこから頑張れ」


「二人とも、大魔法の話ばかりなんて飛躍しすぎ。もっと、簡単なのを教えてあげてよ」


「そうだね。じゃあ『コウ』」

 マスターは、そう言って、ハンドルから左手を離して、人差し指を光らせて見せてくれた。 運転に集中してもらいたいかも。


「私もやりたい」

 東京の夜景を見ていたヒイラギが、これに食いついた。

「ごめんな。千里君ができないと、ヒイラギもできないんだよ」


「千里、早く覚えて!」

「う~ん、よくわかんない」


「まず、自分のオーラが見えないと、光色ちゅう技が使えん。その先が『コウ』じゃ」

 そう言って、京爺も指先を光らせた。

「よう見てみい。指が光っているわけじゃないじゃろ。これは、自分のオーラを強化した光なんじゃ。ちょっと弱くしてやるか」


「あれ? オレンジ色になった」


「これが、わしのオーラの色ちゅうことじゃ」


「じゃあぼくも」

 マスターが、また、ハンドルから、左手を離した。止めてー。前見て運転して。


「マスターは、深い青色ね」

 ウィンディとヒイラギは、青金じゃないかと思って、かぶりつくようにマスターの指先を見た。金色、赤金、青金は、希少種。

「これは、青金じゃないよ青色だよ。色が深いのは、重力魔法が得意だからさ。ちなみに、アンナは、緑色だよ。だから、風系の魔法と相性がいいんだよ」

「なるほど、それであの時、私だけが・・」

 ウィンディが遠い目をした。


「じゃあ、千里は、何色?」


「金色じゃな。目は、お前さんたちが見ている通りじゃよ」


「すごい、三色持っているって事じゃない」

「千里、光って」


「無理よ」


「そのうちわしが、オーラを見えるように押してやろう。最初は、周りが変に見えて戸惑うかもしれんが時期慣れる。そこからは、アンナに光色ができるように修行をつけてもらいなさい」


「その前に、うちの仕事を覚えて貰わないとね」


「がんばります。そう言えば、マスター。アンナさんに、ヒイラギのことをご両親に説明してくれって言ってましたけど、どういうことですか」


 京爺が、答えてくれた。

「今さっき、千里が、『コウ』を覚えんと、ヒイラギも使えんと博史が言ったじゃろ。逆に言うと、千里が、魔法を覚えると、ヒイラギたちも使えるちゅうこっちゃ」


「何でもってわけじゃないけどね。それでも、妖精の常識を超えた魔法が使えるようになるんだ。精霊界では、大変なことなんだよ」

 ヒイラギが、身を乗り出して答える。


「魔力至上主義だもんね。民主主義社会が作れいない壁よ」

「私も嫌い」


「精霊界は、魔力、つまり力社会なんだ。魔力が強い妖精が貴族や騎士になる。王族は、その中でも、一番魔力が強いんだよ」


「もしかして、私の因子もヒイラギたちに流れ込んでいるんですか」


「契約が成立した証だね。いやじゃあなかったのだろ」


「嫌どころか、逆に元気をもらった気がしました」


「私たちって、深ーい縁だってことよ」

「よろしくね」


「うん」

 そう聞いて、さっきまで緊張していたのがほぐれた。マスターが運転する車は、一路、青木ヶ原を目指して、中央高速をひた走った。

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