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妖精カフェ  作者: 星村直樹
アルバイトはカフェで
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妖精の糸の作り方

 私がいるカウンターに、4大精霊が集まった。ウィンディが、私の肩から飛び降り、カウンターの上で、妖精のドアを指さした。


「わたし、ウィンディ・オルケストラが、皆さんを秘密の部屋に案内するわ」

「作業場よ。作業場」

 ふわふわ浮かんでいる3人は、ウィンディのテンションについて行けず。ドン引きしている。

「材料は買ったんだよね」

「わたくし、さっきお父様たちに。ハンカチより難しい品物を作ると、豪語してしまいましたわ。まずいですわ」

「お茶とケーキを持って行こうよ。うちの親、テンション高すぎ。気疲れしたー」

 ヒイラギは、作業場で、駄弁る気満々だ。


「行くわよ」

 ウィンディは、みんなの反応をもろともせず先頭を切った。


「ぼくも、京爺の魔法見たかったな」

「わたくしも」

「千里、紅茶とケーキ持ってきてー」


 みんなは、ぞろぞろついて行く。私は、マスターに断って、紅茶とマスター特製のケーキをサービスした。今日のマスターは、ケーキの話をすると、機嫌が良い。気前よくおごってくれた。中立地帯の大使たちが来たおかげで、実は、今日もケーキが出ている。


 作業場に行く通路は、京爺が、5次元空間を亜空間として残してくれたので、カフェの様子も分かるし、昼間なら、外の光が入って明るい。作業場は、結構誰でも入れるが、私の部屋には、アナログのカギがついていて一応自分の部屋という感じだ。その二部屋の更に奥に、秘密の部屋がある。入り口は、マスターが、ちょっとした鍵のような魔法を施していて、関係者以外、入ることができないようになっている。たとえ親でも、ゲスト認定しないと勝ってには入れない。


 まさか、自分専用の部屋があると思っていなかった3人は、ウィンディ以上にテンションをあげた。


「この部屋、勝手に使っていいのよね」

「決まっているでしょ」


「わたくしの、わたくしがー」

「意味不明」


「ここで、寝るー」

「ケーキ食べるんじゃなかったの?」


 ウィンディが、一々突っ込みを入れて、みんなを部屋の外に呼び出した。


「皆さん、秘密の部屋にようこそ。でも、打ち合わせをするわよ」


「えー」

「でもですわ」

「うー」


「はいはい、紅茶が冷めるわよ」


 作業部屋には妖精の糸車と機織り機を借りて置いてある。京爺に作ってもらったちゃぶ台は、妖精用の食卓と兼用。みんなは、椅子に座り、私は、床に座る。今度ここに、カーペットを作らなくっちゃあと思う。

 食卓に、お茶の準備をしていたら、みんなが戻ってきた。みんな自分の部屋を想像して、なんだか遠いところに行っている。


「みんな、紅茶飲むでしょ」

「みんなは、自分の部屋を想像中よ」

「好きな所に座ってね。それで、どうやって、材料から、妖精のハンカチを作るの?」

 私は、とりあえずウィンディに、教えてもらうことにした。


「絹のハンカチもガラスのハンカチも、人間界のより細くしないとごわごわなのよ。まず、絹糸だけど、昨日見たアンナの魔法がベースかな。絹糸に生命を与えて、増殖させるのよ。その時、細ーく伸ばすのがコツ。絹糸に命を吹き込むのは私。増殖させるのは、ヒイラギ。その増殖している糸を引き延ばすのが、千里よ。これを一度に4本作れたら、糸をよりながら糸車に巻く。これで糸の完成よ」


「ふーん、ええー。今でも細いのに、これ以上細くすると切れちゃわない」


「だから大変なのよ。私とヒイラギは、糸を引っ張ってる千里に魔力を流しているでしょう。この魔力の加減も絶妙じゃないと糸が丈夫にならなかったり均一にならないのよ。糸を伸ばすことができれば、後は、アクアとサラに任せればいいのよ」


「わたくしが糸をよって差し上げますわ」

「ぼくが糸車を回せばいいのかな。絹糸の方が簡単よね」


「そうなの?」


「だって、原形を引き延ばせばいいだけじゃない」


 そう言えば、300円で買った絹糸は、4本双2540mの生糸だ。4本双とは、4本の生糸を依ったもの。


「ガラスの糸は、絹糸より細くしないと、しなりませんのよ。でも、ほら、わたくし達の羽って透明な人が多いでしょう。これに合わせた服を作るなら、やっぱり透明な生地をふんだんに使わないと美しくないと思いません?」


「ガラスの糸を作るためには、サラがビー玉を溶かして、液状になったガラスをアクアが伸ばす。それを4本同時にやるから、千里が4本を依りながら糸車に巻くのよ」


「ウィンディとヒイラギは?」


「下手に手出ししないよ」

「絹糸は、千里が伸ばしたところで、ほとんど完成だけど、ガラスの糸は、依るときに、サラと、アクアの魔力を同時に借りないと、ちゃんと寄れないし、切れちゃうのよ。自分で糸車を巻きながらやらないと、均一にならないわよ」


「じゃあ、絹糸からやるってこと」


「そうですわね」

「絹の機織りは、ヒイラギに任せるよ。ぼくは、ガラスを溶かさなくっちゃいけないからね」

「私は、お店があるから、ヒイラギお願い」

「うん」


 なんだかやれそうだと思って、お茶を飲んでから、試しに絹糸を作ってみることにした。しかし、頭でわかっていることと、現実は、マッチしないものだ。自分たちが作った絹糸は、買って来た絹糸より、確かに細くなったが、太さが、均一だとは、お世辞にも言い難く。ぼこぼこしていた。太さも、どこまで細くすればいいのか、見当がつかない。これを何キロメートルもの長さ作らなければいけない。


「う~ん、本物が見たい。みんなの服は、妖精の絹糸を使ってないの」


「これは、土の妖精と風の妖精の共同作業じゃないと作れませんのよ。わたくしたちは、他の種族とにらみ合っています。無理よ」


「冷戦状態、長いもんね」


「雑貨店にもないのよ。ごめんね」

「ウィンディが謝ることじゃないよー」

 ヒイラギが、ウィンディに抱きつく。


 これは、やはり、大変な作業だとわかる。

「ねえ、涼夏堂さんにないかな。古いお店なんでしょ」


「聞いてみるのも手ね」


「今日は、ここまでにしない? ぼくの部屋に王国築きたいし」

「わたくしも」

「私は、このままで満足なんだけど」


「ヒイラギは、ちゃんとベットで寝るのよ。でも、そうね。涼夏堂さんに期待して、今日は、ここまでにしましょう」


 そんなわけで、後は、駄弁りタイムになった。まさかの質問攻め。3人は、人間界に行きたくて仕方ないのだ。私と契約したから、マスターさえうんと言えば、妖精カフェの6次元膜を通ることができる。300年前までは、精霊界の方が格段に文化が進んでいたのに、この300年で抜かれそうな所まで来ている。そのうえ社会の制度は、完全に抜かれている。だからみたいと言っていた。

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