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よりそう  作者: 乃里
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沖田宗次郎、土方歳三が出てきますが、新選組とはまったく関係の無い筋書きになっています。ご了承下さい。歴史と云うより時代小説です。

 とうとう釘を打つ手を止めると、松吉は後ろを振り向き、短い息をついた。

「ぼうず、そろそろえんな」

松吉は子供の相手に慣れてはいない。だから大工仲間と交わすような、いつもの乱暴な物言いになりはしまいかと、少しばかり気にしながら声をかけた。

だが少年は、まるで言葉を失くしてしまったかのように、黙って松吉を見上げている。

その、瞬きをしない瞳が、上を向いている分だけ余計に大きく見え、更に面輪の線の細さが其れに輪をかけて、何とも頼りなげな風情に映る。

「家じゃ、おめえの事を、きっと心配しているぜ」

 何を云われても応えない少年に、松吉はほとほと困り果て、空に散っていた鰯雲を手早く仕舞いながら、町全部を柿色に染めて沈みつつある天道を仰いだ。




――江戸、浅草猿若町。

一丁目に中村座、二丁目に市村座、三丁目には守田座が芝居小屋を張り、華やかな絢爛さを詰め込んだこの町が、時の老中水野忠邦により、隅田川の西、浅草寺裏手に造られてから、十年余りの月日が経っていた。

芝居小屋の周囲には、客を目当てとする、料理屋、茶屋、土産物屋が立ち並び、そして賑やかな表通りの裏には、役者を始め、座で働く者たちの住む裏店が、ひしめくように軒を連ねていた。

 猿若町への出入り口は、まるで吉原のように、三箇所の木戸に限られていた。しかしだからこそ人々は、この町が世俗と切り離された夢うつつであるような気がし、独特の高揚感を持って木戸を潜る。

そして松吉は、この猿若町で働く大工だった。

もう四十になろうとしている松吉が、弟子のひとりも取らず、親方と呼ばれる事も無く、気侭に頼まれ仕事をしているのには訳があった。


 物心付く前に既に父親は亡く、女手ひとつで育ててくれた母親も流行病で亡くなると、十二で孤児になった松吉は、家作の大家の世話で、神田明神近くの大工の棟梁吉兵衛に弟子入りをした。

やがて八年の年季奉公も明け、小さな仕事ならば任せて貰えるようにもなり、振り返れば、それが人の一生の内で、一番張りのある時期だったのかもしれない。

そんな時に出会ったのが、今の女房のおゆきであり、それは松吉の一目惚れから始まった。


 明神下の茶屋で働いていたおゆきは、松吉よりも二つ下で、その名のとおりの白い肌を持ち、少し寂しげだが、形の良い、鈴を張ったような目元に印象の残る娘だった。

 だがおゆき目当てで仕事帰りに茶屋に通う内に、松吉は、おゆきがその前の年に相次いで亡くした両親の薬代の為に借金を負い、自由の利かぬ身である事を知った。

松吉が姿を見せれば、おゆきは嬉しそうに笑う。だがそれは他人に分からぬ程度の小さなもので、すぐに仕舞われてしまう。そうしておゆきは又忙しそうに、他の客の注文を取りに立ち振る舞う。しかしそのほんの僅かに見せてくれる笑みを自分ひとりのものにしたくて、松吉は、もう一人立ちしている兄弟子の大工に頼みこみ、親方に内緒の仕事を回して貰った。だがそれは、年季奉公が終わったとは云え、まだお礼奉公が残っている身にとっては、ひどく危険な博打を打っている事と同じだった。もしも親方の吉兵衛に知れたら、恩を仇で返した松吉は、江戸で大工をしていられなくなる。が、それでも良いと思った。

 そうして形振り構わず仕事をし、おゆきの借財を払い終えたその三日後、松吉は吉兵衛に呼ばれ、破門を云い渡された。だが松吉には、何の後悔も無かった。恩のある師を欺いた事よりも、おゆきと云う女を手に入れた事の悦びが、松吉に満足を与えていた。


 ひっそりと、音も立てずに小ぬか雨が闇を濡らす夜、、形ばかりの旅支度を整えると、若い二人は寄り添うようにして江戸を離れた。


 それから十年ばかりして二人が江戸に戻って来た丁度その時、この猿若町の普請が急速に進められており、松吉は当座の仕事としてそれを手伝っていたが、結局そのまま町に居ついてしまった。

 芝居で糧を得る役者は、商人以下とその地位を限られ蔑視されていた。だがそう云う者達が集まり暮らす町は、飾り気が無く、流れ者の大工である松吉の肌にも馴染んだ。それに芝居小屋の小さな修繕やら何やらで案外に仕事は多く、笑えば、重ねた年を目じりの皺に優しく残すようになったおゆきも、幕間に賑わう近くの茶屋を手伝うようになっていて、夫婦の暮らしは貧しいながらも落ち着きを見せていた。

そんな松吉を困惑させているのが、今目の前にいる、少年とも云えぬ年端の子供だった。




「ここぁ、いつまでも子供の遊んでいる処じゃねぇ。暗くなりゃ、化けもんが喰いに来るぞ」

少しばかり怖い顔になり脅すように云った途端、少年の身がびくりと強張り、深い色の瞳が潤んだのが分かった。

「そら、見てみろ、おめぇだってそんなになっちまうのは嫌だろう?だったらさっさと帰ぇんな」

腰を折り、両手を膝にあて、そうして少年の目線に自分の其れを合わせて、松吉は小さな面輪を覗き込んだ。


 頼まれた家の裏戸を直しながら、後ろに誰かがいると気がついたのは、半刻ばかり前の事だった。それでもその時は、振り向こうとは思わなかった。何故かと云えば、背に負う天道が、その者の影を足元近くにまで伸ばしていたが、それは本当に小さなもので、咄嗟に松吉は、さっきまで近くで聞こえていたわらべ唄の声の一人だろうと思ったからだった。

だがすぐに居なくなると思っていた影は、いつまで経っても其処におり、じっと動かぬ様子に、流石に異な事と思い振り向いた松吉を見上げていたのが、この少年だった。

 身に着けているものは上等とは云いがたかったが、小ざっぱりとした藍地の木綿が、少年の、蒼を透けさせたような白い肌を浮き立たせている。袴や、結った髪から、何処か侍の家の子供だろうとは分かったが、それにしても、他人の自分ですら先を案じてしまうような、頼りない身体つきだった。

だが少年は瞬きもせず、まっすぐに松吉を見つめている。


「おめえ、口が利けねえのか?」

もしやと思った懸念をぶつけてみれば、初めて、か細い首が横に振られた。

「じゃぁ、だんまりはよしな」

曲げていた腰を伸ばし、胸元で腕を組み、少し声を叱るようにすると、振られたばかりの首が、今度は萎れたように項垂れた。

そのまま、目を合わせることの無い睨めっこは暫し続いたが、先に根を上げたのは松吉の方だった。


「ぼうず、おめぇ帰ぇる処がねぇのか?」

 幾分声を和らげたものの、それにも応えず、ただただ項垂れたままの少年に、松吉は諦めともつかぬ深い息をついた。






「それでお前さん、助左の旦那は何て云いなさったの?」

菜を洗う手を休めず、猫の額ほどの土間から、おゆきは顔だけを松吉に向けた。

「一応、宗次郎と云う名前と、九つと云う年だけは控えなすって、今日はこんな時分になっちまったから、明日他の町に、行方知れずの届けが出ているどうか、調べてみると云う事だった」

「そう、親御さんも心配しているだろうに・・」

辺りはすっかり宵闇につつまれている。

手元を照らす蝋燭の火が揺らめいて、三畳が一間ほどの小さな部屋の隅に、行儀良く座っている少年を見るおゆきの頬に、痛ましげな翳を落とした。


――結局の処、あれから松吉は少年の手を取ると、この町を任されている岡っ引きの助左のもとへ連れて行った。もうこの時には迷子だとの見当はついていたが、それには助左も同じ意見で、大方、芝居を観に来た親とはぐれたのだろうと、のんびりした所作で、行方知らずの届出が出ているか帳面をめくった。だがようやっと少年から聞き出した、宗次郎と云う名と年を照らし合わせてみて行ったが、それに該当するような届けは無く、明日町の外の番所に行ってみると云う事で、話は落ち着いた。

 そんな訳で、乗りかかった舟から下りることも出来ず、松吉は再び少年の手を引き、猿若町の東はずれにある、この裏店へと連れ帰ったのだった。



「さぁさ、大したものもありはしないけれど、たんとお上がり」

炊けたばかりの麦飯と、菜っ葉の汁と香の物。それにもう一品の焼いた魚は、突然、見ず知らずの少年の手を引いて帰って来た亭主から事情を聞いたおゆきが、慌てて買いに走ったものだった。だが少年は、なかなか箸をつけようとはしない。

「どうした?腹でも痛てぇのか?」

行灯の明かりが行き届かず、覗き込むようにして問う松吉に、俯いた面輪が小さく振られた。そして細い手指が魚の乗った皿を持ち上げると、それは松吉へ差し出された。

その途端、松吉が破顔した。

「それはおめぇが食えばいいんだよ、俺ぁ魚は苦手なんだ」

三つの膳に、魚の皿があるのはひとつしかない。

箸を持とうとしない少年の憂いは、其処にあったのだろう。だが松吉の声にも、少年は頑なに首を振る。そうして今度はおゆきの方を見て、同じように皿を差し出した。

「あら、あたしもいいのよ、それは・・ええっと、宗次郎ちゃんだったかしら?あんたが食べる為に焼いたんだから」

笑って言い訳したふたつの目が、柔らかく細められたが、それでも宗次郎と呼ばれた少年は手にした皿を膳に戻そうとはしない。

「それじゃ、みっつに分けたらどうかしら?ねぇ、お前さん?」

小さな気遣いを無碍にするにはあまりにも切ないと思ったのか、おゆきの声が、困りきった風情で少年を見ている良人へと向けられた。

「俺ぁ、かまわねぇが・・」

が、それに応えた途端、、一瞬ふわりと心が浮いたような、それでいてくすぐられるような、奇妙な思いが松吉の胸を覆い、その戸惑いに、先を繋げる声が小さくなった。

「三人で食べたら、きっと美味しいわ」

その松吉の心裡など知る由も無く、そろそろあかぎれが出来始めたおゆきの指が、器用に魚の身と骨を別け始めた。



 身体つきからも凡そ見当はついたが、少年は元々の食が細い質らしく、椀によそった一膳の麦飯を、松吉が呆れるほど時をかけて食べ終わった。だがその間にも、おゆきは、やれ汁は熱くないか、魚の身に骨は混ざっていないかと、それを楽しむかのように世話をやいていた。そしてそんなおゆきを見ながら松吉は、時折覚える、不意に胸の一番奥を捻られるような、痛さとも切なさともつかぬ、得も云えぬ感覚を、又感じていた。


 自分達の間に、子は恵まれなかった。だがその事を、松吉は別段寂しいとも思わず通ってきた。だが最近になって、ではおゆきはどうなのだろうと思うことが侭ある。

おゆきは欲を云わない女房だった。それは自分の為に、親方に破門され、積み上げてきた修行時代を棒に振り、大工としての鑑札すら貰えず、一生を歪めてしまったと思い込んでいる引け目の所為だと、松吉は思っている。子を授からなかったのは、どちらが悪いのでも無い。けれど欲を云わないおゆきが、唯一望んでいるものが自分との子であるのならば、それをどうしてやる事も出来ない辛さに、松吉は女房のいじらしさを哀れに思う。

今も、代わりの汁はもういいのかと、目線を同じにして問うている姿は、いつもよりも生き生きとしているように、松吉には思える。

 そんな二人の姿からから目を逸らせるようにして、松吉は、脇に寄せてあった煙草盆を引き寄せた。




「それじゃぁ、明日はお店の隅に置いて貰うように頼んで、目を離さないようにするから大丈夫よ。こんなに大人しいんだもの、邪魔になどなりはしないわ。それに丁度明日は、半日で仕舞いにさせて貰う事になっていたのよ。・・・そうだ」

半纏の綻びを縫い終え、始末した糸を噛み切ると、おゆきは松吉に向き直った。

「ねぇ、店を終えたら、宗次郎ちゃんと一緒に、浅草寺まで足を伸ばしてみようかしら。手を合わせたら、親御さんも早くに見つかるかもしれないし・・」

「だが助左の旦那から何か云って来た時に、おめえが行方知れずじゃ、旦那が困るだろう」

「あらだって、すぐそこじゃない。半刻もしないで帰って来るわ」

思いつきは、話している内には決まりごとになってしまったようで、おゆきは渋い顔をした松吉に膝を詰めるようにして、良いいらえをねだった。

「手を合わせりゃ、とんとんとんと、上手く事が運ぶとも思えねぇが・・まぁ、しないよりはましかもしれねぇな。行ってきな」

珍しいおゆきの強引さだったが、先ほど、ふと心の片隅を過ぎった思いが重なり合い、松吉はしぶしぶの体を装って頷いた。それに、心底嬉しそうな笑みが返った。


「ぼうず、明日は大人しく店番をしているんだぞ。その後には、浅草寺に連れて行ってくれるそうだ。浅草寺には、行った事があるか?」

夕餉を終え、又室の隅に行儀良く座っている小さな影に目を向けると、少年は微かに首を振った。

助左の所で、それこそ聞き取れない程の声で、名と年を告げたきり、少年の口は一度も開かれてはいない。だが今にも壊れてしまいそうに硬いばかりだった面持ちが、ここに来てから少しずつ強張りを解いて行くのが分かり、それが松吉の心を浮き立たせる。

「そうかい、それじゃ、人に紛れて、また迷子になるんじゃねぇぜ」

小さく頷いた途端、少年の瞳が、ふと輝いたと思ったのは錯覚だったのかもしれない。

だがそれでも良かった。不安ばかりにいた稚い心は、少しだけ闇を出掛かっているのかもしれない。その事に、松吉は満足していた。






「あたしの布団に一緒に寝かせるから、お前さんはひとりで寝て」

膝の上に抱くようにし、少年の身を支えている松吉に向けて掛かった声が、囁くように小さい。

「真ん中に入れて、川の字になって寝りゃいいだろう」

が、室の隅に畳んであった夜具を敷いているおゆきに返った声も、腕にある少年の眠りを覚まさぬよう、輪をかけて低いものだった。


 ささやかな夕餉のあと、ひとしきり浅草寺の話で和やかな時を費えていたが、ふと松吉が気付いた時には、少年は、細い身を前後ろに揺らし、もう小さな舟をこぎ始めていた。

思えば、仕事も仕舞いにしようかと思った夕間暮れ、ひょんな事から持った関わりと、それからの成り行きに、此方も右往左往の連続だったが、それ以上に稚い心は怯え震えていた筈だった。それが小さな安堵の中に置かれた途端、張り詰めていたものが一気に緩んだのだろう。

そうして見れば、精一杯不安を堪えるかのように、大きく見開かれていた瞳を閉じた面輪は、今細い明かりの中で、危ういほど儚げに思える。息をも殺すようにして交わされる夫婦の遣り取りは、せめてその安寧を守ってやりたいとの、ささやかな願いだった。


 芝居小屋は天道の陽を上から取り入れ、それで舞台を見せるように造られているから、芝居は日の出と共に始まり、日の入りと共に仕舞われる。そして猿若町は、それに合わせて全てが動く。

朝が早ければ、その分、闇が町の灯を包み込むのも早い。だから松吉もおゆきも布団に入るのは早かったが、それにしても、こんなに早くと云う事は無い。まだ暮れ六つである。

いつもならば、夕餉を終えてから暫しの時を、松吉は翌日の仕事に使う道具の手入をし、おゆきは頼まれものの縫い物をして過ごす。だが今日はその時を一足飛びにして、早布団に籠もろうと云う訳だから、長い夜になりそうだと、松吉は声にせず、喉仏だけを動かし苦く笑った。それでも其れが、厭わしいとは思わなかった。




「隙間が、出来ちゃいねぇか?」

「大丈夫」

ほとんど目だけで頷いたおゆきの口元が笑っていた。

一枚の布団がおゆきと少年を包み、そしてその上から松吉の布団が覆うようにして被さる。薄いながらも二枚の布団のぬくもりの中で、少年の眠りは深そうだった。


「こんなに可愛い子が行方知れずじゃ、親御さん、今頃眠れないでいるんでしょうねぇ・・」

少年の寝顔を見詰めながら、小さく呟いた声が、顔も知らない相手の心を思い憂いに沈んだ。

「・・迷子なら、案じるのはちげえねぇが・・」

だが松吉は、先程からふと胸を騒がせ始めていた思いを口にした。その松吉を、おゆきが怪訝そうに見遣った。

「・・もし、もしもの話だが・・」

そして更に先を云う松吉の物言いが、躊躇いを映して、どこかぎこちない。

「捨て子・・だったらと、思えてな」

「お前さんっ・・」

「静かにしろいっ、ぼうずが目を覚ましちまう」

横臥していた身を、思わず起こしかけたおゆきを、低い声が叱った。その声に呼応して、おゆきも慌てて自分の口を塞いだが、少年の眠りに変わりの無い事を見届けると、ゆっくりと其れを離した。そうして暫し、闇に浮かぶ白い寝顔を見詰めていたが、やがて静かにその視線を松吉に向けた。


「・・ねぇ、お前さん。・・もしも、そのもしもが、本当だったら・・」

不意に語りだしたおゆきを、松吉は黙って見ていたが、言葉は中途で途切れ、そのままいつまでたっても先は紡がれようとはしない。

「本当だったら、何でい」

今度は此方から問うても、おゆきは口を噤んだまま、少年から目を動かさない。

「おゆきっ・・」

「しぃ、目が覚めてしまうと云ったのは、お前さんよ」

とうとう堪え性が切れて、少しだけ声を大きくした松吉を諌める声が笑っていた。

「おめえが先にっ・・」

「あらっ・・」

焦れて待たされた不満を口にしようとしたその寸座、それを制するかのように、おゆきの声が小さく上がった。今度は何かと、松吉も目を凝らせて見れば、いつの間にか少年の身が横に向き、細い指がおゆきの夜着を握っていた。

「あたしの事を、おっかさんだと思っているのかしら・・」

「まだ乳が恋しいんだろうよ」

話が中途で終わっている事など、何処かへ置き忘れていまったかのように、松吉の声にも笑いが籠もる。

「明日浅草寺へ行ったら、飴でも買ってやんな」

握っている小さな手の、その上からそっと自分の手を重ね、目を細めている亭主に向かい、おゆきも嬉しそうに頷いた。


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