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ピピピッという目覚ましの電子音がなる。


「月曜…朝か……仕事行きたくねぇ」


今日は遅番で7:30までに間に合えばいいのだ。

バイクで10分もあれば余裕で着く。


「突然異世界化でもしないかなぁ……」


俺、愛内克(24歳)は出勤の準備をしながらそんなことを呟く。


皆はこの現実世界をどう思っているだろうか。

中学生までは勉強をしなければならない義務があり、高校を卒業しなければ就職が難しい。

就職して働けば、給料が低く残業しなければ稼げない人が殆どだろう。


俺もその例に漏れず、専門学校を卒業して工場に就職したが低給料だった。

80時間残業をしてようやく17万いくかというぐらいだった。

流石に体を壊してまでやりたくなかったので3年で辞めて、専門学校時代にアルバイトしてた全国チェーン店の薬局で店長が知り合いに代わったのをきっかけに、今の職場…薬局に転職した。


前の職場と違ってお金に余裕が出来ていいことのはずなのに、俺は“この世界が生きにくい”と感じていた。


初めてそう感じたのが高校生時代で、理由は何となくとしかわからなかった。


次に実感したときが専門学校時代にバイトし始めた頃だ。

半社会人として法律やマナーというルールに縛られ、働き、稼いで生きる。

理屈はわかっている。

無秩序ではいけないし、縛り過ぎも良くないのは理屈としてわかっている。


でも、感情だけは別だった。


そして専門学校を卒業し、就職すると特に顕著になった。

税金を納めて、法律に厳しく縛られ、感情を押し殺して、職場環境は最悪で、こんなにも窮屈なのかと思った。


息苦しい、イライラする、退屈だとか常に思うようになった。

転職して余裕が出来た今でも思っている。


「ファンタジーなRPGの世界にならないかなぁ……」


理想の世界を知っていればよりそう思う。


ゲームでは、剣や魔法で敵を倒して、レベルをあげて、クエストを受けたり素材を売ったりしてお金を稼いで、強い武具を作ったりなど自由でやりたいことだけ出来る。


だから仕事が終わり帰宅すればゲーム、休日もゲーム、飲みに誘われてもゲーム。

いつもゲームのキャラと自分を重ねて楽しむ。

楽しい時間が終われば“生きにくい”現実と向き合い、苦痛ともいえる時間を過ごすのだ。


別に仕事が出来ない訳でも、コミュ障でもない。

商品発注は曜日や客入りから予測してすることが出来るし、接客態度も指名される程に良いし、品出しや前列陳列、賞味期限チェックも出来き、在庫の格納も重器の展開も何でも出来る。

それこそ、学生時代のときに昇給した程に仕事は出来るのだ。

その能力もあってすぐに採用されたのもあるのだが。


もちろん、彼女がいたことも性交の経験もあるがあまり楽しくなかったのを覚えてる。

やはり二次元が1番だ。


「はぁ……行くか」


シャワーも浴びた、朝食も食べた、身仕度も出来た。

いくら仕事が出来るといっても退屈なのは変わらない。

楽しいゲームのことを妄想しながらやることやって事務所に篭るとしよう。


ガチャリと玄関のドアを開けると人がいた。

男が全身血塗れで首や腕が食いちぎられたように無くなっていて、目は虚ろで足取りは覚束無くまるでゾンビのようだ。

マンションの廊下は、見える範囲では隣人らしき人物が血塗れで倒れており、出血量からして既に事切れているだろう。


え、何コレ?ドッキリ?バイオなハザードの撮影とか聞いてないんだけど?

と予想外の展開に硬直してしまった。


「ヴァァアアァァ……」


内心パニックになりボーッと突っ立ってるとゾンビのような人が襲いかかってきた。

よく見ると口に肉らしき物が残ってる。


「どあっせい!?」


危機感を感じて反射的に蹴り飛ばすと、思いのほか威力が高かったのか、廊下の手摺りを乗り越えて下に落ちてしまう。


「あ、ちょっ!!」


俺の部屋は4階にあり、下はコンクリートの駐車場なので落ちたらまず助からない。

急いで手摺りから手を伸ばすが空を切り、ドチャッという音が聞こえた。


「嘘……だろ……」


襲われたからやり返すのはいいとしても、殺してしまうと問題だ。

警察やら裁判やらと自分の絶望的な将来のことを色々と考えてると、ポーンッというどこかでか聞いたことがある効果音が流れた。


『レベルアップしました』


更に、事務的な淡々とした女性の声も聞こえてきた。


「は?レベルアップ?」


知らない訳じゃない。

むしろよく知っている。

ゲームで敵を倒すと経験値が貰え、一定以上溜まるとレベルが上がることだ。


自分のスマホを確認してみるが特に変わったところもないし、何より先ほどのような効果音や女性の声の類いは一切ないはずだ。


疑問に思っていると目の前に文字が現れた。

どちらかというと、目の前に浮かび上がったというより、網膜に焼き付いてると言った方が近いかもしれない。


「っ!?」


驚いて声を上げそうになったが、『安全を確保してからお読みください』という文字を見て何とか抑え込んだ。


いつの間にか視界の隅にアイコンが現れている。

メールのアイコン以外は全て灰色になっており、恐らく読まなければ何も出来ないのだろうと予測する。

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