死亡フラグが立ってますけど、ヒーロー更正させてみせます!
私の大好きな漫画の話をしよう。
「アネモネ」
私の大好きなその漫画は一般家庭でごく普通で平凡のヒロインと財閥嫡子で容姿端麗、文武両道のヒーローの学園恋愛物語。
…………と、書けば普通に王道ストーリーを思い浮かべるだろう。
ヒロインに恋する当て馬キャラのチャラ系イケメンや、ヒロインに嫌がらせをする悪役令嬢。身分の差による擦れ違いに、ヒロインの初恋の謎の青年。
ヒロインは王道ストーリーらしく、ちょっと可愛い平凡な容姿をしていて、カースト制度に近い学園の仕組みを疑問に思い突っかかっていく強者という王道であり清々しいキャラである。説得力のある言動や、時に悩んで立ち止まってそれでも進んでいく姿に感激され人気のあるキャラである。
王道ストーリーのヒーローはヒロインを助けて恋を育んでいくキャラか、最初は対立していてだんだんと距離が縮まっていくキャラの2パターンが殆どだろう。この漫画のヒーローは後者である。
そこまでは、王道。王道中の王道である。だが、そのヒーローに問題があった。
容姿端麗で文武両道であり、基本的にクールな女嫌いで無表情がデフォルトである正に理想的で通称「冷帝」のヒーロー。
そんな、ヒーローは初恋の人をずっとねちっこく想っている未練がましい男だったのだ。
初恋の少女はヒーローと幼馴染みで、病弱であった。ヒーローと一緒にいた事によって、悪質な苛めにより心が壊れていき、その精神的な負担から体調を壊して命を落としてしまったのだ。
ヒーロー所謂、病弱で儚い美少女で自分が守らなければならない大切な存在であり愛しい人…らしい。
苛めていたのが悪役令嬢を含む学園の中でもヒーローと初恋の少女と同等の地位を持つ女性達。元々、初恋の少女以外の女が嫌いであったヒーローは激しい女嫌いとなった。
そんなヒーローと最初は対立するヒロイン。お互いの意見が噛み合わず、ヒーローはヒロインを退学に追い込もうとしたり、ヒロインはヒロインでヒーローをギャフンと言わせようとしたりとする。
途中、ヒーローの親友で優しい腹黒美青年に恋が芽生えようとするが、その青年には大切な存在の彼女でもある婚約者がいて、ひっそり失恋する。そんなヒロインを慰めるわけでもなく、いつも通りの上から目線な発言や、わざと怒らせる言動をとって立ち直らせるヒーロー。そんなヒーローにヒロインは惹かれていく…
ヒーローが無自覚にヒロインと当て馬キャラに嫉妬した時は、今までにないほどにこの漫画の読者が悶えた。あんなにねちっこく初恋の少女を想っていたヒーローがっ…と親目線になるひとが多かったそのシーンは「アネモネ」の中でも特に人気なシーンである。
ちなみに、ヒロインの初恋の青年はヒーローの年上の従兄弟でありそれによるすれ違いもあったが、その話はヒーローがヒロインの事を好きだと自覚した後だった事もありニヤニヤするしかない甘々ストーリー回で人気なシーンだ。
ヒーローがそれはもうねちっこく初恋の少女を想っていて自分の気持ちに気付くのが物語の終盤となるが、それからの展開が甘々すぎて目に毒……だが、ヒロインの頑張りを知っている読者の殆どはヒロインをもっと幸せにしろ!やら、オラオラァ!嫉妬でもしやがれよ!やら、ヒロインよかったねぇぇぇぇぇ!!と言わんばかりの感激っぷりである意味伝説となる。
ヒロインとヒーローが付き合ってから、まさかの新登場人物も出る。初恋の少女が亡くなったことでヒーローをずっと恨んでいた、初恋の少女の弟である。彼の策略によって一般家庭の娘が財閥嫡子の恋人として相応しくないと一度は引き裂かれるが、お互いを強く想い合い行動する姿に、相応しくないと考えていた財閥の者達が考えを改めて祝福する。
初恋の少女の弟はそれでもヒーローを恨もうとしたが、流石はヒロインのビンタ&説教によって心を入れ換えて、ヒーローの初恋の少女に対する想いを聞いて、涙を流して立ち去っていく。
それからも様々な事件があるが、ある意味最強カップルなヒロイン&ヒーローは全て打ち勝っていき、最終話で誰もが期待していた結婚式の話となる。
その時に、一度だけ。
今までにどんなにヒーローが昔を回想しようが顔が出てこなかった初恋の少女が出てくる。
「幸せになって」
そう、ヒロインとヒーローの結婚式を見て微笑んだ初恋の少女。ヒーローがふと初恋の少女がいた場所を見つめて、
「ありがとう…深鈴」
口許を緩めて小さく呟いてヒロインを抱き上げるシーン。
正直に言えば、ヒーローが何度か言葉にした通りめちゃくちゃ可愛かった。登場人物の中で一番頑張っただろと言わんばかりの美少女。最終話は結婚式の話よりも初恋の少女が出てきたという事で最大の話題となった。予想だにしなかった事で流石は先生…書くことが違うとまた伝説を残したのは別の話。
ヒーロー鳳祥院郁斗の馬鹿みたいな鈍感具合とヒロイン芦部琴乃の健気な男前具合で爆発的大ヒットを生み出したこの漫画。
アニメ化映画化をして更にヒットして、ドラマ化と舞台化をしてブームを巻き起こした。
私も当然、この漫画にのめり込んで大ファンとなったのだが、そんな漫画の世界にどうやら転生したらしい。
「……そうよ、なんで転生してんの。」
「どうかした?深鈴」
「…なんでも、ないデス」
そう言うと、よかったと甘い笑顔を浮かべる5歳。隣に座っている5歳の男の子。5歳にして甘い笑顔を浮かべている恐ろしい子である。
彼の名は鳳祥院郁斗。私の名は桜ノ宮深鈴。
そう…私は、「アネモネ」で死ぬキャラに転生したのである。
ふざけんな!!!なんでモブじゃないの!?ヒーローとヒロインのじれったい恋愛を近くでニヤニヤ見つめたい。あわばよく、好きなキャラである、初恋の青年を見てみたい!なのに、なぜ…!?
「深鈴?まだ具合が悪い?」
「大丈夫、です…」
「無理はだめだよ。もしも、深鈴に何かあったら………何するか分からないや。」
私は、先月の5歳の誕生日を迎えた日に高熱を出して、3日間生死をさ迷っていた。ちなみに、その時に前世の記憶を取り戻しました。
その生死をさ迷う熱から早1ヶ月…両親にはほぼ軟禁されてます。まあ、仕方ないんだけど。復活して軟禁嫌々と暴れたけれど、弟に大泣きされて抱き付かれちゃったら、まあ可愛すぎる弟の頼みを叶えるしか選択肢はない。
熱を出して倒れたのがこの目の前にいるヒーロー…郁斗の真正面で。郁斗はそれからトラウマになったのか、ほぼ毎日私の家に来て、ベッタリなのであります。
ヒーローよ、お前いつから初恋の少女が好きなの…?自我を持ってからの熱を出すまでの今までの記憶を振り返っても隣で大人顔負けの甘々笑顔を向けている記憶しかないんだけど。ヒーローの両親も最初は可愛いわねぇとか微笑ましそうに見ていたのに、最近は申し訳なさそうに見てくるんだけど。
私の家族はですか?愛されるわねと母は笑い、娘はやらん!と父は吠え、弟は甘えてくる永遠のマイエンジェルですよ。
初恋の青年には出逢えてませんな。というか、この歳で私が話しかける男子全員に威嚇するのかヒーローよ。
あれ?回想では幼少期だけど、小学生になる少し前に恋をしたとか書いてなかった?つか、今思うと誰得の情報だよ…それ。
「深鈴、深鈴…可愛い」
「あ、りがとう…?」
「ほんと、可愛い。僕の深鈴」
待て待て待て。本当にまずいぞ。
私はヒーローとヒロインのカップリングが大好きなんですよ。何度この二人でニヤニヤした事か。一部のファンの間ではヒーローと初恋の少女とのifのカップリングの二次創作が流行ったけど!美形×平凡よりも美形×美形がいいとかいうファンも中にはいるけど!私は美形×平凡が好きなんですっ!!!
自己評価の低い平凡な少女が紳士イケメンに溺愛されるものや、強気な平凡少女と俺様金持ち美形の某漫画とかめちゃくちゃ好きなんです。
けれど、今のままでは駄目だわ。これはアカン。そう、私の第六感が告げている。
仮に私が死んだとしたら、病むか後を追うか…そんな将来しか見えない5歳児の美少年。あ、話を誇張していないです。本当に、真面目にそうしか見えない辺り怖いです。
ちなみに、私は死ぬ予定なんてないから!だって、ヒーローとヒロインの恋を間近で見たい!!恋のライバル的ポジションになったんだったら、私に嫉妬するヒロインを見てニヤニヤしてヒーローはヒロインが好きなんだって言ってからかいたい!!そして、あわばよく親友という唯一無二の存在に………
その為には2つある深刻な問題を解決しなければならない。
1つ目は、漫画の通り私は病弱儚い系美少女ということ。転生前とか風邪?何ソレ?美味しいのと言わんばかりの超健康体質だった私。そのままの行動すると100%の確率で喘息で呼吸困難になります。軽いのから割とヤバイのまで。1度、ガチで三途の川の先でおばあちゃんが手を振ってたわ……おばあちゃんピンピンに生きてるけど。
軟禁生活はそれも理由の一部だったりするけれど、動きたくてたまらない。けれど、本能のままに動くと倒れて入院……。
うん、まずは病弱を治そう。ほら、よく言うじゃない?病気は気からって!実際、科学的にも証明されたとかあるじゃんか。まずは軽い運動から初めていけば……うん、いいかも!
でも、世の中には原作の強制力というものがある。いじめに遇ってもピンピンしてると思うけど、原作補正なんてあったら死ぬわ!!まあ、それは無いことを祈ろう。
そして2つ目の問題。こっちが深刻すぎる。
ヒーロー、郁斗の私への執着心をどうやって他人に移すか。………かなりムリゲー。けれど、このままだったら将来なんて目に見えている。良くて結婚、悪くて監禁…あれ、寒気しかしない。5歳なのに、こんな将来が見えるヒーローとか本当に何者よ。漫画でさえ10年以上初恋の少女は想い続けるねちっこさは全てヒロインに向けばいいんだよ。というか、ヒロインまじで尊敬するわ。よくねちっこく初恋の少女を美化して想い続けるヒーローを好きになったね。よくそんなヒーローを落としたよね。健気な男前とか矛盾してね?とか思ってたけど健気な男前…その通りだわ。
ヒロインの為にも郁斗を更正しなければ!!!
その為には原作に近い性格を目指そう!いける気がする!あ、女嫌いはどうしよう。元々化粧が濃い女性や香水臭い女性は嫌とか言ってるし…それはそのままでいいかな。それ以外の女性に対してはなるべく紳士にって言っとこう。
冷帝って学園で呼ばれているけれど、今のヒーローは冷帝の面影もない。…まあ、冷帝は常に無表情で冷徹な学園で最上級の財閥嫡子だからって意味が込められていたりするからね。無表情になったのは初恋の少女が死んだからだし。私は死ぬ予定がないからなぁ。原作補正があったらどうなるか分かんないけど。…原作補正でヒーローは元通りの性格になるのか微妙すぎる。というか今更だけどこんなある意味問題だらけの彼がヒーローかよ。流石は流行に囚われない先生のマンガですね。
うん。取り合えず重すぎる男にならない様に常日頃から言っておこう。そうすれば、ヒロインに迷惑はかけないはず!!
よし、目指せ!ヒーロー更生計画&死亡フラグぶっ壊せ計画!!
2つ目の問題、根本的な解決にはなってない気が…まあ、なんとかなるよね!!
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鏡に映る一人の少女。透き通る様な白い肌にほんのり色付く頬に薔薇色の唇。長い睫毛は陰を落として、青みのかかった黒目が伏せられる。腰まである藍色の髪はさらりと靡かせる。
全てのパーツを組み合わせて儚くみえるここ数年でやっと見慣れた超絶美少女。
「ふふ、ふふふふ…」
そんな、美少女は不気味に笑う。可笑しそうに、自分を鏡で何度も確認して。だって、ついにこの日がやって来たのだから。長年夢見ていたこの日が。
「姉さん、鏡を見て何やってんの?姉さんは何時でも可愛いけどさ」
「ん?あら、深緒。…今日はとても美しいと改めて感じていたのよ。」
「なにそれ。」
桜ノ宮深緒。私の…深鈴の愛しの弟!!!名前が女の子っぽいのを気にしている可愛い弟は、もう中学2年。可愛い弟と学年が2年違う私。幼馴染みであるヒーローとヒロインが出逢うのは高校1年の春。
つまり、私は、死亡フラグを折ることに成功したのです!!
もちろん、簡単ではなかったよ。……かなり、色々とやばかったのよ。
「ああ!今日という日を迎えられるなんてっ…!」
「本当にどうしたの姉さん?」
「ふふ。私、この年まで生きれないって言われていたから嬉しくてね。」
「っ…!」
そう!!何度目かの通院で高校生になれるか…って宣告されたのよ。という訳で食生活に気を付けました。前世を思い出すまではかなりの偏食だったのに驚いたよ。え?前世ではいなり寿司とか油揚げ系以外は何でも食べれましたけど。いなり寿司が、何故か苦手なんだよね。赤い●つねでも上に乗っかってる油揚げがもう苦手で……。それ以外は何でも食べれますけどね!まあ、最初に好き嫌いせずに全部食べたら家中が大騒ぎになって病院に連れていかれる寸前にまで追い込まれたけど。
ほんと、初恋の少女も彼女で何してるの…?
「好き嫌いしたら、食べ物がかわいそう。せっかく皆がつくってくれるの、残すのはもうしない。」って言ったらコックさん達、号泣だから。偏食な少女にあの手この手を尽くして頑張っていたからね!本当に、申し訳ない。
それと、やっぱり体力作りには気を付けたよ。最初は家周りでウォーキングから始めて、だんだん距離を伸ばてある程度体力がついたと思ったらマラソンにチャレンジ!腕立て伏せ腹筋背筋は周囲に止められてあんまりやってない。私の代わりに郁斗が腕立て伏せ腹筋背筋を毎日頑張って腹筋が割れて細マッチョになってるよ。マラソンは深緒を含めて3人でやってたんだけど、いつの間にか家全体でマラソンブームになって両親がマラソンの地域大会に参加したりとか、使用人の一人がマラソンランナーとして活躍したりとか。何度か目の前に車が突っ込んで来たけれど、毎回郁斗が気付いて庇うから怪我を負ったことは一回もない。
「姉さん、そんなこと言わないでよ。」
「あら…ごめんなさい。深緒達が居てくれたから健康体質になったから感謝しているのよ。」
「それは、姉さんが頑張ったから!ほんと、姉さんが自己評価が低い。」
「そんな事ないわ。」
「ある。ほら、郁斗兄さんの相手をしている執事がそろそろ可哀想だから早くいこう!」
「あら、何で可哀想…ええ、今行くからそんな目で見ないで、ね?」
愛しの弟に呆れた目線を向けられるのは本当に辛いから!ちなみに、言葉遣いが違うのはあれです。一応財閥令嬢なのでそれらしく見えるようにしてるだけなんです。…ちゃんと財閥令嬢っぽく見えるよね?
ああ…体力を身に付けた後は、病弱という理由で今まで逃げていた教養を身につけようとのことで、習い事通いが始まったわ。社交ダンスに始まり、音楽はピアノとバイオリン当然、前世でも習っていたトランペットや習字も習って、他にはバレエ、花道に茶道、弓道、日舞等々。文字どうりお稽古事浸けになったけれど、同じ時に郁斗も社交ダンスを始めて、ピアノやバイオリンは勿論、習字や何故か花道に茶道も習って他には剣道や弓道とか武道系も習ったっけ。まあ、弓道って言っても体が出来上がって居ないからゴム弓が殆どでお互いちゃんと始めたのは小3だけど。武道って響きが格好いいよね。剣道とか弓道とかやっている人に憧れるって前に郁斗に話したこともあったわ。
淑女として必要なマナーを学んで、大手企業も参加するパーティーに参加したりとかもした時は、幼馴染みのよしみで郁斗がエスコートしたっけ。その時には、基本的には女性に対して(表情は殆ど変えないけれど) 紳士だったし、私を束縛するような雰囲気を出していなかったら更生成功したって感動した!!
何故か同い年の少年達が近付いてこなくて、既婚者の男性くらいとしか話す機会がなかったけど。
ちなみに、更生成功した今の郁斗は口許を緩めて小さく笑う事まで出来るようになったぜ!
「おはよう、俺の姫君」
「おはようって…それは辞めてって言っているじゃない。私は郁斗のじゃないのよ?」
「………は?誰かのなるって?誰のだ?なあ?」
「私は私のものよ!」
漆黒で艶やかな髪を軽くかき揚げて、読んでいた本を畳んで微笑みかける郁斗。制服の下にある体が実はかなり鍛えられているのは長年一緒にいた事もあって熟知している。精神年齢が高い事もあって教養が進んでいた私に合わせていたら私よりも優秀になったのも悔しいけど流石はヒーローだと思う。カリスマ性を発揮して小学生になった途端に信仰される様になったのも十分知っている。一般家庭だからを見下すに解決策を考えたりと新味になってくれるようになった。……ヒロインに恥じないヒーローになったでしょ!!!!
たまに臭い台詞を言ってくるのが難点だけど…まあ、大丈夫なはず。
「なら、やっぱり俺のだ。可愛い姫」
「ほんと、毎日言って厭きないわね。ああ、そうだったわ!今日は一緒に帰れないけど、いい?」
「…橘か。まあ、いい。」
よっし。郁斗に許可を貰ったわ。
ちなみに、例の悪役令嬢にいじめられるのは回避しました!やったね!もう、本当に最高なのよ!!
悪役令嬢の橘香理。マンガ内では、悪質ないじめをしたりそれこそ命に関わりそうな事を金を使って色々してくれた超ヤバイ女性。元々は初恋の少女がなる予定だった婚約者の座を婚約者が死んだからとゴリ押しして婚約者(仮)になったんだけどその頃には大の女嫌いとなっていたヒーローに邪険されていた子です。最初は可哀想だと同情的な意見もあったんだけど、上のいじめや初恋の少女が亡くなった原因である事が判明して…まあ、このマンガきっての超悪役になったよね。
途中でヒーロー達に糾弾されて学園から自主退学したんだけど、色々とぶっ壊れたキャラでですねぇ…まあ、ヒロインがヒーローにプロポーズされた後にヒロイン誘拐すると言うなんとも馬鹿な事件をおこす。その時には親戚一同に認められているのよ?私の可愛い弟の話は終わっているのよ?ヒーロー溺愛一直線なのよ?ヒーローの家族もヒロインに甘々なのよ?………どうなるのか目に見えているだろう。
権力を使って全ての伝を使って、悪役令嬢の会社を破綻に追い込んだよ。留めに「初めからお前だけはずっと嫌いだった」とバッサリヒーローに言われます。悪役令嬢、自暴自棄になります。その後は知らないけど。
そんな、悪役令嬢の何が最高だって?
悪役令嬢だったはずの香理がまさかのツンデレだった事だよっ!!!
初めて会ったとき警戒したんだけどね、郁斗に対して睨んで「べ、別にあんたの事何とも思ってないから!」って頬を赤く染めて言ったかおりん!くっそ可愛いです。もう、速攻友達になろうって決めたよね。
ツンツンした言い方で勘違いされやすいけど、物凄くいいこだった!最初は私に対してもツンツンでデレの1つも無かったんだけど、それでも話し掛けていたら少しずつデレを見せてくれてっ……!!ああ、本当に可愛い。
ついでに言えば、元々の設定が悪役令嬢だからなのか少しつり上がった目で派手な容姿なのを気にしている姿に胸キュン。高いものしか受け付けませんよと言わんばかりの容姿をしながら実は可愛いものが大好きで隠そうとする姿には鼻血出るわ。もう、この子がヒロインのマンガがあってもいいんじゃないかって考える位に可愛い。
ヒーローの親友役で、幼稚園からの腐れ縁となる金髪碧眼の優しい見た目をしときながら実は腹黒男な六道寺ユーリが目をつけたのは未だに許せないけど。あいつ原作では彼女兼婚約者いたくせに、このユーリはかおりんにゾッコンでずっとアタックしている。そろそろかおりん落ちそうだけど…いや、女遊びが酷かったあいつに渡したくない。けれど、かおりんがたまに見せる超絶可愛い姿や、ふにゃりとした破壊力満点な笑顔にこっそり悶えてる所はなかなかの逸材だと思っている。お互い撮ったかおりんの可愛い写真を交換したりするけど、まだ認めんぞ。
かおりんの初恋はやっぱり郁斗だったらしいけど、すぐに好きじゃなくなったって話していたっけ。なんでも毎日の様に見せつけられたら逆に呆れるとか。可笑しいな、紳士に育てたはずなのに。それを言うと変な顔されるけど、深鈴はそれでいいのよ。と諭される。
そうそう、私へのいじめ事件は…まあ色々と。やっぱり原作補正なのかかなり悪質でした。勿論だけど、かおりんは関わってないからね?いじめて来た女共がかおりんに罪を擦り付けようとした時はキレそうなったけどさ。それで郁斗にバレて真っ黒ヒーロー降臨…って君そんなキャラだっけ?まあ、そんな郁斗が女達にキレる前にかおりんがやったと罪を擦り付けようとした事に気付いたかおりんが怒ってくれたのよ!親友だって!親友だって言ってくれた!!ほんと、なんであの時ボイスレコーダーを持ってなかったんだろう。録音して永久保存したかった。ちなみに、その事件からかおりんが今までに以上にデレを見せてくれるようになったからいじめなんて忘れた。郁斗が退学させたとか話してたけどかおりんといちゃいちゃするので忙しいから話聞いていなかったわ。
「深鈴、俺の知らない場所で男と仲良くなるなよ。」
「何言ってるの?香理を似非王子から守るので必死な私に対する嫌み?」
「男と少しでも親密な関係になったら、俺どうするか分からないから」
「ちょっと、1度も彼氏のいない私に何言っているの。」
郁斗ってたまによく分からないわ。それ以外は良くなったと思うのに。
女性に対して紳士的な態度をとれるし、女嫌いは直らなかったけれど女を全拒否する程酷くないし。原作の通り文武両道だし。いや、原作より凄いと思う。幼少期から様々な習い事をしていたから、家には様々賞がずらりと飾ってあるし。サッカーとかバスケとかバレーとか色々挑戦して全て人並み以上とかほんとハイスペックでしょ。郁斗は剣道一筋で行くって話していたけど勿体無い。ちなみに、私は弓道を体が鈍らない程度にやっていて弟が弓道で賞を取りまくってます。
ボランティアにも積極的に郁斗と参加して、いつの間にかおじさんおばさん達に可愛がられるようになったわね。今でも学校に行く途中とか会えば野菜やら果物やらお菓子やら沢山貰うよ。近所付き合いは大切だからね!
将来の旦那様に手料理を食べさせる為に料理教室に何年か通った事もあったわ。郁斗の両親にお願いされて何度か手料理を振る舞ったっけ。郁斗は色々な事を学んでいく中で料理だけは学ばなかったんだけど、何でなのか不思議だわ。まあ、郁斗ならどうせ出来るだろうし、彼の作るスイーツ美味しかった。今でも時々作って持ってきてくれるんだよね。自分の作った物が人の口から入っていくって嬉しいことなんだな、とか言ってニコニコ微笑んで私が食べてる姿を見てくるけど当たり前の事だよね。自分の作った料理を美味しいと言われたら嬉しいに決まってる。
……あれ?原作よりなんかハイスペックになってる気がする。ま、まあいいよね!ヒロインにとってもその方が!
「ん、深鈴には俺だけでいい。」
「それは困るわ。財閥令嬢として駄目に決まってるじゃない。嫌でもベタベタ触れてくる男性の相手をしなきゃいけない時もあるし。」
「………す」
「ん、何か言った?」
「いや…だったら、尚更だ。俺にずっと付いていればいいだろ」
「本当!?助かるわ!」
「俺もとても助かる」
やっぱり郁斗は紳士になったわね!待ってて、ヒロイン!!貴方とヒーローの出逢い、私がバッチリ見ているから!!ヒロインとヒーローの出逢いは入学式の前で中庭よね。そこまで郁斗を誘導して私は隠れて、と。流石に動画は駄目かな。動画をとって結婚式にあげるのもいいと思うんだけど。んん、でもバレたら警戒して覗くことさえ出来なくなりそうだし。ああもう!ヒロインに逢うのが楽しみだわ!!
儚い系美少女はそれは嬉しそうに微笑む。
そんな彼女を愛しそうに見つめる絶世の美青年は、うっそりと笑う。
「もう少し」
それは誰の台詞だろうか。
最後辺り修正します。
本当は連載作にしようと思って考えたんですけど、気力がなかった…