ご挨拶です
こんばんは、本日のお話になります。
「 感謝いたします リック様 」
僕の目の前にいるのはエルフの国の前女王陛下、ノエルの母上 アグネイシア様。
あれから僕らは無事に渡船で国境を越えて、クレイファ共和国入りした。
一応警戒は続けて、ノエルは〈光学迷彩〉で姿を変えたまま移動していたけれど拍子抜けするくらい何事もなく移動できた。
まぁ神様からのお告げもあったし、元凶のドリナエン公爵はすっかり大人しくなったみたいだから当然と言えば当然か。
ちなみにドリナエン公爵は謝罪すべくクレイファ共和国に向かっているらしいけれど、冬季ということと自らのしでかしたことの後始末でまだ時間がかかるようだ。
取り急ぎ高価な魔道具を使っての、公式の謝罪文章だけが届いた。
爵位を返上して引退するとも書いてあったけれど、そうするとノエルが引き継がなければいけなくなる
文章を呼んだノエルさんは即座に返信をしたためて、そのまま伯爵位に留まるように指示を出したらしい。
ノエルは貴族に戻る気は全くないようだ。
「 いえ、そもそもは依頼で受けた仕事ですし 個人的にもノエル さんを護ることは当然です 」
つい呼び捨てにしそうになってしまった・・・
お母さんだからなぁ まだ結婚の許しも貰ってないし。
「 ふふ、ノエルの事はよろしくお願いします。 ろくに母親らしいことも出来ず、護っても上げられませんでしたが 素晴らしい伴侶を見つけて幸せになってくれるものと思っていますわ 」
「 母上・・・ それでは 」
ノエルが母親に声を掛ける
「 ルーナリエの息子で貴女を護ってくれる、素敵な伴侶を見つけたわね とても嬉しいわ 」
ニッコリと微笑みながらアグネイシア様は僕らの結婚を許してくれた。
「 本当にありがとうございます アグネイシア様 」
深々と頭を下げる僕に、席を立って近づいてくるアグネイシア様
「 頭を上げてくださいな、 私はもう女王でもありませんし それ以前にノエルの母として貴方の義理の母にもなるのですから 」
目の前のアグネイシア様はエルフの常としてとても若い、失礼だし恐ろしくて年齢など聞けないけれど 見た目は二十代前半にしか見えない。
これは後々ノエルから聞かされたことなんだけれど
アグネイシアさんは170歳でエルフとしては比較的若い時にノエルさんを産んだらしい。
その後ノエルさんと引き離され、エルフの国に戻り女王となった。
もちろんノエルさんの事は気になっていたらしいのだけれど、長命なエルフという種の特徴として些事に拘らない傾向があり、しかも先代のドリナエン公爵はとても真っ当な方だったので大きな問題にはなっていなかったらしい。
しかし、跡を継いだ息子の現ドリナエン公爵の所業は・・・
そしてそれがアグネイシアさんに伝わり、娘を救い出すために女王の座を降りることにしたらしい。
女王の座にあるままでは国家間の問題に発展する可能性もあるので、それを危惧したようだ。
そして次の女王に指名されたのが僕の母親、ルーナリエとのこと。
エルフの国では神様の樹と呼ばれる、神聖な樹を中心に森となっているらしい(僕は行ったこと無いけれどね)
その神様の樹が女王を指名するんだって、まぁどうやって指名するのかは秘密らしいから教えてもらえなかった。
世の中って結局色々繋がっているんだよね、世間って狭いなぁというのが今回の感想かな。
「 リック様 」
色々と考えていたらぼんやりしてしまってようで、ノエルの顔がすぐそばにあった。
「 あぁ ごめんごめん 少し考え事していた 」
「 すみません、到着してすぐに休む間もなくでしたものね 」
あぁいかん アグネイシアさんが申し訳なさそうな顔をしてしまった。
「 いえ、大丈夫です 」
まぁ確かに一気に首都まで来て、直ぐに面会だったからね 慌ただしいと言えばそうだけれど ノエルを早くお母さんに会わせたかったからね
ちなみに此処は、クレイファ共和国の首都であるレミンという街。
共和国の南西部にあり、交通の要衝でもあり政治と経済の中心都市だ。
先触れを出しておいたので、アグネイシアさんと側仕えのエルフさん達が街の入り口で迎えてくれて、街に入る手続きもほとんどなかった。
そして案内されたのが高級そうな宿の一室というわけ
「 本当に失礼しました。 部屋をご用意してありますので、旅装を解いてくださいませ 」
アグネイシアさんがそういうと、側仕えのエルフさんが案内のため立ち上がってくれた。
「 うわーーーー 広いよぉ 」
「 あのぉ この子も部屋で一緒にいて良いですか まだ子供で・・・ 」
マーサは部屋の広さに大騒ぎで、フェオはレウィの事を宿の人に聞いている。
「 はい、まだ子供ですし一緒で構いませんよ 後ほど寝床をお持ちしましょう 」
高級な宿でしかもVIP待遇らしく、あっさりレウィの事もOKが出た。
これでフェオも安心だ
「 ふわぁっぁ 大きなお風呂ですニャ リック様ぁ 一緒に入りましょうニャ 」
「 あー あたいも入るよぉ ユーン! 抜け駆けはダメだよ 」
「 はいですニャ マーサ姉様 全然平気ですよぉ だってほらぁ みんなで入れるぐらい広いですニャン 」
ユーンの言葉に惹かれて風呂を覗き込んだマーサが驚いている、部屋だけでなく風呂も本当に大きいようだ。
「 ノエルは母上と一緒でなくて良かったのですか 」
「 はいセオ姉様 先ほど旦那様にもそういわれて母に相談したのですが、旦那様の側で可愛がってもらいなさいと言われました 」
「 あい、それならばたくさん可愛がってもらいましょうね 」
「 はい、姉様♪ 」
セオとノエルは何やら楽しそうに話しているし、お嫁さん達はうまくやってくれそうで良かった良かった。
お読みいただきまして、本当にありがとうございます。




