名付け
こんばんは 今日もよろしくお願いします。
「 名前を付けたいのです 」
フェオが訴えてきた。
「 まぁそうくるよね 」
「 あい、良い名前を付けましょう 」
先ほどユーンが持ち帰ってくれた山羊のミルクを、少しづつ飲んで今は寝ている白い物体。
恐らくは狼の子であろう、推定生後20日程度かなもう目があいているしね。
とにかくフェオが大興奮で世話を焼いていたが、当の本人(狼?)は飲むだけ飲んだら寝てしまったので、今は程よい温度と湿度に設定した簡易保育器の中で熟睡中。
うん魔法ってつくづく便利だ。
しばらくは眠っていそうなので少しほっとしていたところ、すっかり母性に目覚めたフェオが名前を付けたいと言い出した。
「 まぁ フェオが面倒を見るのだし、お母さんとして名前も付けてあげればいいよ 」
僕としてはごく普通に言ったつもりだったのだけれど・・・
「 ふやぁぁぁぁぁっぁぁ わ、わ 私がお お母さんーーー ・・・ はぅぅぅ 」
「 そうですわ、遅かれ早かれ主様の子供も産むのですから慣れておけば良いのです 」
セオも特に意識せずに言ったのだと思う。
「「「 ちょっと まったー 」」 ニャン 」
フェオの混乱に拍車を掛けるような声が響き渡る。
「 あたいも考えたよ!! 名前は シロが良いよ 真っ白だし 」
「 いえ、名前はタマが良いのですニャ 伝統的に白いのにつく由緒ある名前なのですニャン 決まりニャのです 」
「 名付けは精霊の仕事なのですよぉ!! ましてや初子の名付けを私を差し置いて決めるとなんて許せないのですぅ それでなくても最近影が薄いのでぇ ここらで私の存在意義を強くアピールするのですぅ!!! なのでその子の名前は私の名前を考慮してシアンにするのですぅ これで決まりですぅこれしかないのですぅ 」
マーサ 直球過ぎ
ユーン この子は決して猫ではないからね
エイシア 違う色になってるし、自己主張強すぎです
「 却下 !! 」
「「「 えーーー 」」 ニャ 」
何か不服そうな声を上げる3人、特にエイシアさんに至っては、まさか却下の一言で片づけられると思っていなかったのか空中で崩れ落ちている。
「 精霊の存在意義が・・・ 」
「 そもそも僕の子供ではないし、フェオが責任を持つ子なんだからフェオに名付けてもらいます 」
「 むぅ ・・・ じゃあ あたいも拾ってきていいだろう 」
あーこれはいけないパターンだ、しっかり言い聞かせておかないと。
「 マーサ。 基本的に動物の営みに人間が手を貸すのは良くないことが多い、今回はどこにもお母さんが見当たらなかったし、フェオが連れて来たから面倒を見ているのだよ 」
「 だから、あたいもそういう子を見つければいいんだろ 」
「 じゃあそんな子が世界中にどのくらいいるか分かるかい 全部助けてあげられる? 」
僕はマーサを咎めるつもりはない、もしそうしたいと思うのならそれでもいいのだ。
「 え、 でもよぉ リックはあたいを助けてくれただろ セオだって、フェオもユーンも だからあたいも・・・ 」
「 うん そうだね。 でもマーサを助ける時に狼を殺してしまった、あの狼にもし子供が居たら・・・ 今後もそういうことは起きるよね 」
「 う、 うん 」
「 残念ながら僕らが全ての命を救うことなんて出来ない、それにもし出来たとしても狼をみんな救ってしまったら世界に狼が必要以上に増えてしまったら 一体何が起きるかな。 それは幸せな事なのかな 」
僕はマーサに語りかける、片一方で救いもう片方は殺す・・・ 実に勝手な話だ。
でも人の身である以上、出来る事に限りはあって、ましてや博愛なんて貫けない。大事な人を守るためには他を犠牲にもするし我侭も通すことになる。
「 リックぅ ・・・ ごめんよぉ もう我侭言わないから・・・ 」
「 良いんだよ 」
マーサを抱き寄せて背中を撫でてあげる、この子は苦労を重ねて怖い目にも散々あって来たのだ。
もっともっと幸せにするためにも、落ち着く場所を探さないとなぁ。
「 名前は レウィにしたいです 」
散々悩んだ末に、フェオが名前を決めたのは次の日の朝食の席だった。
フェオは狼の子が眠っている簡易保育器と言う名の魔法が掛かった箱の側で一夜を過ごし、お腹を空かせて目を覚ます子供にミルクを与え、排せつを促すことをしていたのだ。
母性とはかくも強いものである。
そして翌朝の食卓で先の発言となる。
「 フェオ姉様ぁ 何か由来のある名前なのですかニャ 」
ユーンから尤もな質問が出てくる。
「 あい、私も聞きたいですわ 」
「 えーとぉ フェオの好きなお花にレウィシアってお花があるのです 」
「 あー あたい知ってるよ。 小さな可愛い花だぁ 」
マーサがフェオの言う花の名前に反応して答える。
「 そうなのです 山に生えている小さな花で 白くて可愛いのです この子を拾った辺りにも咲いていたのです 」
「 だから その名前にしたんだね 」
保育器の中でレウィと名付けられた小さな白い子が、何かを訴えるように鳴く声が聞こえフェオは小走りで側へ向かう。
「 お母さんなのですニャ 」
フェオがミルクを口移しで与える姿は、まさに母親のそれだった。
本日もお読みいただけたことに感謝いたします。




