覚悟
こんばんは 本日のお話です。
エーリーシャ様からの祝福を頂いたことによる混乱からやっと解放されました。
結局メッセージカードに書いてあったのは、祝福をくれるということ 革袋内は金貨が入っているはずだよということ、それに箱の中身は適切に使ってねという話。
ちなみに革袋の中には金貨がぎっしりと詰まっていました、いったい何枚入っているのやら。
そのままユーンに預けて高位収納にしまってもらい、落ち着いたらポルちゃんに入れようかねぇ。
問題は2つの小箱の中身です。
黒い箱と白い箱、メッセージカードには中身についての話は一切書いてないし開けてみるしかないか。
どちらの箱にも共通しているのは箱の上面に模様が書かれていること。
「 主様。 この模様は魔力紋だと思われますわ 」
箱とその上部に描かれた模様を見つめていると、セオが声を掛けてきた。
「 魔力紋? なにそれ 」
「 あい、魔力に反応して特定の行動を引き起こす魔導式のことですわ。 この場合は恐らくですが対象の特定と箱自体のセキュリティを兼ねた物でしょう、それだけ重要な物が入っていると思われます 」
セオの説明によればその魔力紋に魔力を流すことでしか箱を開けることは出来ないのではないかという、もし無理やり開ければ中身も無事ではないだろうと。
おそらく外箱を開けた時点で生成された魔力紋だろうということ。
いったい何が入っているのやら・・・
『 ご主人様 』
『 ん? 』
ミーネが声を掛けてきた、もちろん念話だけれど。
『 先ほどご主人様が生命神様の祝福を受けた際に、私にも生命神様からの情報が流れ込んできました 』
『 どういうこと? 』
ミーネから語られたのは、生命神様からの伝言とでも言うべき情報がミーネに流れ込んできたこと。
伝言は箱の中身の使い方と、何故それを使うべきかという事だった。
「 開けないわけにはいかないよなぁ 」
正直気が重い、何故僕がという気持ちもある。
だけど神様が嘘をつくとも思えないし、なにより僕の大事なお嫁さん達や子孫のためにも僕が成すべきことをする必要がある。
「 主様 何もお一人で重荷を背負うことはありませんわ。マーサ姉様を筆頭に、私たちは主様に身も心も捧げております、そのことをどうかお忘れなきよう 」
セオの言葉が、気負っていた僕の心に染み込んでくる。
そうだった、僕が守りたい大事なお嫁さん達は ただ守られているだけの女の子じゃない。
「 ありがとう セオ みんな 」
いつのまにか僕の周りに集まって、見つめてくれている マーサ、セオ、フェオそしてユーン。
僕に出来ることをしよう、大事な人を守るためにもね。
「 リック様・・・ 」 ノエルさんも少し離れたところから心配そうに見つめて声を掛けてくれていた。
「 ありがとう ノエルさん 大丈夫ですよ 」
まずは彼女を無事に送り届けて、今後の事を考えていこう。
とりあえず、黒と白の箱はユーンにしまってもらいました。
中身は分かっているし、生命神様の依頼というか願いは僕らにとって一生かけて行うことになりそうだしね。
あ、ミーネが教えてくれた生命神様の祝福による効果というか特典はこんなところ
まず、多くの命あるものと意思の疎通が可能になったらしい。
ようするにソロモン王の指輪みたいなことかな。
残念ながら坑道の奥過ぎて、まともに話の出来るような動物とかはいないようだ。
まぁミーネの説明によると、会話というよりは意思疎通なので、犬とかイルカのような脳が発達して意思伝達が相当なレベルまで可能な生き物が居るのに対して、昆虫辺りは意思疎通が図れない。要するに知能の発達段階に応じた意思疎通しか図れないとのこと。
ただし、昆虫とかでもその本能的な行動を刺激することで使役出来る可能性はあるとのこと。
例えば社会的な昆虫である蟻や蜂に対して、集団を誘導することにより別の場所に移動させる等のレベルなら可能とのこと。
さらには魔素を固定する能力を授けられたようで、これは坑道内ということもありすぐに実証できた。
金属や金属を含む鉱石に魔力を流し込むことで、質的変化を起こすことが出来るようになった。
これによって、銅鉱石が魔素を取り込んだ魔銅鉱石になるような変化を起こす。
化学反応ならぬ魔導反応とでもいうところだろうか。
魔素を取り込んだ金属や宝石は、道具に加工した後も魔法的性質を持ち続けることになる。
例えば魔鉄を鍛えて作った包丁や鍬は耐久性が格段に向上し、切れ味も増す。
また、宝石や水晶に魔力を大量に蓄積し魔石化したものは、動力源や魔力供給源としてこの世界に変革をもたらす可能性を秘めている。
今までは自然に産出するものに頼っていた魔石や魔金属が人工的に作れるのだ。
他にも生命神様の祝福による特典はあるのだけれど、この二つの恩恵の影響力がとても大きい。
では何故生命神様は贈り物を用意したのか・・・
実は何よりも生命神様が懸念されていることの一つに、人族優勢主義の台頭があった。
ランドヴェールが必要以上の魔素に満ちてしまい、なおかつ魔法生物が存在しないことにより、繁殖力に優る人族がその数を増やしてゆく。
これは生命神様の小さなミスが招いてしまった結果であるが修正できない事実でもある。
絶対数を増やした人族は魔法が使える上に組織作りが巧みであり、他種族に比べて支配階級を形成しやすい特徴がある。
エルフやドワーフといった種族も魔法は使えるが、繁殖力や組織力といった点で人族と差がある上に、個体の寿命が長いが故の短所として執着心や向上心に欠ける。
それに対して獣人族は個体寿命は人族と大差はないのだが、基本的に魔法の行使が出来ず(マーサ達は例外)また性別的に女性しか生まれないことがあり差別対象となってしまう。
実際にランドヴェールの多くの国において奴隷制が存在し、貧困や差別から獣人が奴隷落ちする例が後を絶たない。
そしてそのことが人族優先主義をさらに台頭させる土壌となってしまう。
すでに幾つかの国で人族優先主義は国家方針にまでなっており、獣人は良くて国外追放、場合によっては強制労働を強いられ使い捨てにされている国もあるのだ。
このことは生命神様が予見され憂いていたこと。
命を司る神にとって命が軽んじられることは心が張り裂けるような痛みなのだ。
だが直接的な干渉は神にとって禁忌である、ましてや生命神は管理神に世界を引き継いだ後は一切関わることが出来ないのだ。
だから、生命神であるエーリーシャ様は例外的に許されたたった一度の限定された干渉の機会に贈り物を用意した。
そして神としてその能力の全てを駆使して未来を予測し、全てを贈り物に託したのだ。
そして悠久の時を超えて贈り物は僕の元へ現れた。
生命神様は決して強制することは無い、贈り物を受け取った僕が好きにしていいそうだ。
だから僕は大好きなお嫁さん達が安心して子供を産み育てられる世界のために、出来ることを一歩ずつ進めてゆくことにした。
「 あたいはバカだから難しいことは分からないけれどよぉ リックと一緒だよ ずっとずっと 」
「 主様と共にありますわ この身は全て捧げております 」
「 フェオも姉様方と一緒です そして出来ることなら昔のフェオみたいな子を救ってあげてください 」
「 リック様に救われたこの命、この世界でお役に立てるのが嬉しくて仕方が無いのです 」
僕は覚悟を決めた。
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