敵襲
こんばんは本日の投稿になります。
「 主様 来ます!! 相手は魔操兵です 」
セオの声が飛ぶ、後方から接近してきたのはどうやら魔操兵であるようだ、無生物なので当然〈MAP〉には反応しないわけだ。
今後は移動物体の感知とかもできるようにしないといけないけれど、まず今は目の前の魔操兵への対処だ。
「 数は? 」
「 確認できるだけで10体ほどですわ 体長1m程度で武器は剣です。外観から判断して金属製、おそらく青銅魔操兵かとおもわれますわ 」
魔操兵とは、魔法によって生み出され使役される魔道具で、人間を模した形状を持つモノの総称である。
術者によって命令を与えられその命令に忠実に従い任務を遂行する。
僕たちの目の前に現れた魔操兵が誰の命令によって、どんな任務を与えられているかは分からないが。
行き止まりの道で後方から退路を塞ぐように現れて、少なくとも10体以上が存在することから僕たちを捕えるか、最悪の場合せん滅を目的にしている可能性もある
まぁ話が通じる相手ではないだろうけれど、魔操兵を通して監視している者が居る可能性もあるのでまずは話しかけてみよう。
「 僕たちはこの道を通って国境を超えたいだけだ、それ以外の目的は僕らにはない。どうか通してもらえないだろうか 」
近づいてくるゴーレムに大声で訴えてみるが、その動きは止まることが無く。さらに先頭の魔操兵が腰の剣を抜くと、残りの魔操兵も従う様に抜剣してさらにこちらへ進んでくる。
「 主様 交渉決裂ですわ 」
そもそも交渉になっていたかどうかは別だけれど、話が通じる相手では無いようだし剣を抜いた上で進んでくるということは敵意ありと判断するしか無いようだ。
「 仕方ない セオ援護を 」
相手が青銅魔操兵であれば攻撃の手段は限定されてくる。
感覚や感情が無い相手は動けなくする、要するにぶっ壊すしかないのだ。
「 おまかせください 」
この場所は坑道内としては多少広いが、元々閉鎖空間に近い坑道内であり派手な魔法は味方に被害が出かねない上に落盤や崩落の危険があるので使える魔法が限られる。
しかも相手が生物ではないので、精神干渉系や肉体影響系の魔法はそもそも効果がない。
そこでセオが援護射撃として選択したのは〈拘束〉だ。
複数の魔操兵の足元に地面から延びる影のようなモノが絡みつきその場から動けなくなる。
竜種であるセオは電子魔法以外にも多様な魔法を使いこなす能力がある。
「 マーサ!! 〈走査〉で制御系の場所を確認して 」
「 あいよ リックぅ 」
マーサと作り上げた新しい電子魔法〈走査〉は、対象物をスキャニングして生物であれば神経の集中している箇所や心臓の場所と言った急所を、相手が無生物であれば集中制御系統や魔力供給源といった箇所を見つけ出す電子魔法だ。
使い勝手がよく戦闘時にはとても役に立つ魔法、早速役に立つときがきたようだ。
その間に僕はユーンに高位収納魔道具から出して貰った主力武器の日本刀に魔法を付与する。
刀身に付与するのは、〈静炎〉。
これは火精霊のレイア様に最大の祝福を頂いた結果使えるようになった火系統の魔法。
武器に付与することで、その切れ味を増し武器そのものの耐久性が格段に上昇する。
火魔法だが刀に纏わせたその炎は青く決して熱くはない。
ただしその切れ味は凄まじく、試し切りをしたときは直径10cmほどの鉄の棒をいとも簡単に一刀両断してしてしまった。
あくまでもその青い炎は武器強化であり、熱や炎によるダメージを与える物ではないのだ。
「 リックぅ 分かったよ!! 制御系は胸の中央に入っているし魔力供給は頭の中に魔石があるよ だから首を刎ねちまえば多分動かなくなる 」
マーサの言葉を聞いて、攻撃の箇所を相手の首に定めて刀を振るってゆく。
セオの魔法によって拘束され身動きの取れなくなった青銅魔操兵の首に魔法が付与された刀を振るえば、次の瞬間にはただの青銅の塊として転がってゆく。
あっという間に坑道内には十数体分の元 青銅魔操兵が転がることになった。
「 これで終わりか? みんな 怪我はないかい 」
「 主様こそ大丈夫ですか 」
フェオは自分の身よりまず僕の身を案じてくれる。
嬉しいのだけれど、僕としてはもう少し自らを大事にしてほしいのだけどね。
まぁ精霊の護りや神様の祝福もあって、奥さん方に怪我はないし護衛対象のノエルさんの所まで影響はなかったようで、まずは一安心。
ちなみに僕は相手の動きが遅かったこともありかすり傷一つない。
まぁ擦り傷一つでも作ろうものならセオが血相変えて治癒魔法を使ってくるのは目に見えている。
さて、向かってきた魔操兵は全て倒したがこれで終わりか?
罠だとするならば、せん滅した時点で行き止まりの壁が解消されても良さそうなものだけれど、行き止まりの壁に一切変化はない。
未だ条件が達成されていないということか・・・
「 リック様 まだ何かがこちらに向かって来ます 」
フェオの魔法が再び移動するモノを捉えたようだ。
「 そう簡単には済まないか 」
罠を仕掛けた側にしてみれば、十数体の魔操兵は使い捨てに出来る存在なのか?次に来る相手の攻撃手段である程度見当がつくかもしれない。
戦力を逐次投入してくる理由は?
徐々に敵の攻撃能力が上がってくるのか。
とりあえず魔操兵の残骸を端に寄せて戦いに少しでも支障の無いようにする。
「 主様 第二陣が来ましたわ 」
通路を確認していたセオが声を掛けてくる。
「 また魔操兵かな? 」
同じ様な連中なら後は数の問題だけだが・・・
「 いえ、先程とは形状は違うようです 恐らくは鎧騎士のようですが・・・ 生きてはおりません 」
相変わらず〈MAP〉に生命反応は無い。
「 魔道具の類か、それとも呪術かアンデッド・・・ 」
いずれにしても厄介そうな相手だ。
「 数は? 」
「 5体 ですね 」
「 リックぅ あいつら制御系が無いよ しかも魔力供給源の反応が全体にあるよぉ 」
マーサが先程とは打って変わった困惑した声で叫んでくる。
「 主様 恐らくは甲冑の各部が独立した魔道具で中身は空洞のはずです 」
セオの口ぶりだと相手に見当が付いたのだろう、竜種の知識の中にある存在か。
接近してくる鎧騎士は確かにぎこちない動きで、カチャカチャと甲冑の立てる音だけが妙に軽く響いている。
音の反響具合からして確かに中身は空なのだろう。
さて、どうやって対処するべきか。
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