土の精霊次席様は
今晩は 年の瀬ですね。まぁ普通に投稿しております。お読みいただけると幸いです。
なぜか今僕は、ぼんやりとした景色の中にいます。
「 あぁ これ多分夢だよねぇ 明晰夢ってやつかな 」
僕はそんなことを口に出したりしながら辺りを見回してみるけれど、靄がかかったような景色が広がるだけで良く見えない。
まぁ本来いるはずの坑道内ではないことは確かだと思う。
「 おっしゃるとおり ここは夢の中です 」
誰かの声が聞こえました、どうやら女性のような気がする
「 どちら様ですか? 僕の夢で話ができるということは僕の事はご存じでしょうか 」
「 はい、良く存じ上げておりますわリック様 もうし遅れましたが私はデニエ、土精霊の次席でございます 」
そう名乗った声が近くで聞こえてきた。そして靄が薄くなり現れたのはエイシアさんサイズの精霊さんだ。
「 どうもはじめまして で、どういった御用でしょうか 」
「 まぁそう急かさずに先ずは お話しでもしましょうよ 」
デニエさんが手を上げると、さらに靄が引いてゆき そこには湖畔に建つ小さな家とその庭にテーブルセットがあった。
「 はぁ・・・ 」
「 どうぞお掛けになってくださいな 」
デニエさんに勧められるがままに椅子に腰かけると、小さな家からはメイドさんが現れた。
「 おお! メイドさんだ 」
思わず声に出してしまったけれど、クラシカルなメイドさんが2人も僕の目の前に。ティーセットを持ってきたのは犬族の獣人さんかな、あとお茶菓子を出してくれてたのは角の感じから見て羊族の獣人さんだろうか。
2人ともとても可愛らしい感じのメイドさんだ。
「 狐族のメイドは レイル 羊族は フェリリと言いますわ 」
メイドさんに見とれているとデニエさんが教えてくれた。
犬族じゃなくて狐族さんかぁ あぁ尻尾がモフモフだぁ 触ってみたいなぁ。
「 ありが・・・ 」
狐さんから目を引きはがし、お礼を言いながらデニエさんの方を向いたら、お礼の言葉が途中で止まってしまった。
だってそこには等身大のデニエさんが微笑みを浮かべていたから。
「 どうかいたしましたか 」
真っ白いチャイナドレスからすらりと伸びた脚は褐色でとても美しい上に、スリットが深いなんてものじゃなくて目のやり場に困ります。
「 え、 いえ、 すみません ・・・ 」
「 ぅふふ 」
絶対この人狙ってやっているよなぁ
出されたお茶を飲んで少し落ち着いたのですが、デニエさんはテーブルの対面に有った椅子を僕の右斜め前に持ってきて、しかも足を組んでお座りになりました。
何が起るかというと、想像通りとても素晴らしい光景が広がるわけですよ。
もうねぇお茶どころじゃないですよね。
「 デニエ様は何故僕の夢に? 」
何とか平常心を保とうとしながら話しかけてみる。
「 だーめ 」
「 はい? 」
何かダメ出しをされてしまった。
「 デニエって呼んで、様なんて付けないで 」
「 え、 あのぉ じゃじゃあ デニエさん 」
「 だめよ デニエって呼んでくれないと話もしてあげないわよ 」
妖艶な見た目とは裏腹なお茶目な表情と話し方で告げられるとどうにも断ることも出来ないので
「 デニエ でよろしいですか 」
「 うん、これからはそう呼んでね 」
ウインクをしながら言われました。
「 デニエ 改めて聞きたいのですけれど 何で僕の夢に? 」
「 うーん それはねぇ リックに逢いたかったからよぉ 」
本気なのか冗談なのか分かりにくい声で伝えてきながら、椅子をずらして僕のすぐそばまで近づいてくる。
「 アトレ様から僕の話をお聞きになったからですか 」
僕は以前に会ったことのある土精霊の長アトレ様を引き合いに出してみた。
「 そうねぇ アトレが褒めていたというのも事実よねぇ だけどぉそれ以前に私があなたに会いたかったのよぉ 」
「 デ、デニエ様・・・ そ、そ そのだいぶ近いですけれど 」
既に椅子はピッタリとくっついていて、デニエ様はいつの間にか僕の膝の上に腰かけていらっしゃいまして
腕を僕の首に絡めていただいたりしております。
「 本当はねぇ あの時も私が行きたかったのだけれど ダメだったからぁこうして会いに来たのよぉ 」
デニエ様は耳元でそんなことを囁かれます。
「 大変に光栄です 」
「 うふふ 本当にいい子ねぇ ご褒美あげる 」
デニエ様からものすごく濃厚な祝福を頂いてしまいました。
具体的に言うとキスされました、最大級の祝福だそうです。
「 あのねリック ここはね正確に言うと夢の中ではなくって 私の仮想空間なのよ もちろん貴方は今眠っているのだけれど 起きてもきちんと覚えているし祝福ももちろん本物 」
「 ありがとうございます 」
なんでこんなに精霊様にモテるのかは知りませんが、嬉しい限りです。
「 私に会いたくなったら心の中で呼ぶといいわ リックが呼んでくれればすぐに現れるからね 」
「 はい、 でも何で僕にそんな特別扱いをしていただけるのでしょうか 」
「 他の精霊は知らないけれど、私は貴方が好ましいからよ 貴方がこの世界にやってきた時から恋をしてしまったのよ 」
「 でも僕は電子精霊の加護を受けていますよ 」
「 そんなことはどうでもいいのです、私はリックのために。 恋する貴方のために出来ることをしてあげたいのです 」
真っすぐな眼差しでデニエ様に告白されてしまったようです。
その後もデニエと色々な話して仲良くなれた気がしました。
「 私は精霊なので本当は人間に恋をするなんていけないのだけれど許してね。 また会いに行くわね その時は現実で会いましょう 」
別れ際にデニエはそう言ってキスをしてくれました。
「 リックぅ どこに行くんだよぉ 」
目を覚ました僕はデニエに教えてもらった通り坑道を進む。
「 うん この先の行き止まりまでね 」
僕が起きたことに気が付いたマーサと共に歩いて行く先は、野営前にも確認した行き止まりの箇所。
「 何にもなかったとこだろぉ 」
「 うん、そうだよ 」
不思議そうな顔でついてくるマーサ、それは不思議だよね実際に行き止まりだし何も無かったし。
すぐに坑道は行き止まりになっている、天然の岩肌に採掘の跡埋め戻したような形跡もない。
「 リック?? 」
僕は突き当りの岩肌に手を当ててゆく。
「 これかな? 」
魔力を流しながら岩肌を触っていると魔力の流れ方が微妙に違うところが感じ取れる、とても微妙な感覚デニエに教えてもらっていなかったら多分気が付くこともない程度の違和感。
あたりを付けたところに一気に魔力を流してゆくと徐々に反応が変わってくる。
「 え、えぇぇぇ リック それって 」
怪訝そうな表情で見ていたマーサが驚きの声をあげる、そう岩肌の一部が銀色に輝きだしたのだ。
「 もう少し・・・ 」
更に魔力を流し続けると・・・
「 これって・・・ 神様の 贈り物箱・・・ 」
銀色に輝く箱が岩肌から姿をあらわした。
そう、デニエが教えてくれたのはこの贈り物箱の存在。
坑道内は土精霊の守備範囲内、この坑道内にある贈り物箱やその他の情報を教えてくれたのだ。
本日もお読みいただき感謝感謝でございます。




