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興奮と混乱の坑道内

こんばんは メリークリスマスでございます。

廃鉱山の中は当然だけど、真っ暗です。


〈ライト〉の魔法で照らしつつ歩いているので問題はないのだけれど、やはり薄気味悪いよね。


「 きゃ 」 


特にノエルさんは仕方ないのだけれど、すぐに驚いてしまう。


蝙蝠が飛んで来た時なんか声も出ないほど驚いて、倒れそうになり慌てて支えて上げたのだけれど・・・


『 リック様ぁ ノエル様ばかりずるいですニャ 』


その度に非難の声が誰かしらから念話で飛んでくる。

流石に声に出しては来ないし、みんな顔は笑っているので余計に後が怖い。


まぁそんな感じで多少歩みは遅いけれど問題なく坑道内を進んで行く。


浅いところでは蝙蝠や蛇は予想通りいたけれど、〈ライト〉の光を嫌がって近づいてくることも無かった。


「 セオが先導してくれるので、こんな迷路みたいなところでもどんどん進めるね 」


「 セオ姉様はすごいですニャ 」


坑道は複雑に入り組んでいて〈MAP〉を見ながら歩いているけれど、うっかりしていると違う道に入りかねない。

でも先頭をセオに任せているおかげで間違えることなくどんどん進んでくれる上に、その魔力を恐れて厄介な生き物とかも近づかないようだ。


「 皆さんも凄いですよ、電子魔法という新しい魔法をここまで使いこなしていますし、今までの魔法では出来なかった事も簡単にできるのですから 」


ノエルさんにそう言ってもらえるととても嬉しい。まぁ電子魔法はまだここに居るメンバーしか使うことは出来ないのだけれどね。


「 そうなのですぅ 電子魔法はとても素晴らしいのです!! これからもっともっとこの魔法を世に広めるのですぅ 」


「 でた、エイシアさん・・・ 」


面倒な精霊様がとても嬉しそうに現れました。


「 ノエルさん!! あなたの感想は実に的を得ているものなのですぅ 電子魔法はこの私こと始まりの精霊エイシアと始祖リックさんの、いうなれば愛の結晶なのでよぉ!! まさにこのランドヴェールに革命を起こすがごとくのその威力ぅぅ。古臭い4大精霊魔法とは全く違う発想に基づく新魔法なのでぇす~ 」


「 エイシアさん 興奮しすぎ。色々問題発言ですよ まずいよ 」


テンション高く語るエイシアさんを少し冷まそうとしているのだけれど、全然聞いてくれないよこの精霊様ってば。


「 素晴らしいと思いませんかぁ この電子魔法!! そうこれからは電子魔法の時代なのですぅ 」


ノエルさんに向かって熱く熱く語りかける始まりの精霊様。


「 は、はい。とても素晴らしいですし羨ましいです。魔力の使い方も大変に美しい上、獣人の皆さんまで魔法を使いこなせるなんていまだに信じられないくらいです 」


そう、この世界の常識として獣人のような魔法的な存在は魔法の行使が出来ないとされてきた。ところがマーサもフェオもユーンも普通に魔法を使っている。これはとんでもないことなのだ。

もちろんこの驚愕の事実は、ノエルさんには他所で口外しないことを誓約として立ててもらってある。

亜神でもあるセオによる魔法誓約の効果は、誓約を立てたことに抵触する事を話すことも書くことも出来なくするものだ。

もっと強い誓約も可能なのだけれど、ノエルさんには必要ないだろうということで表現不可能の誓約としてある。


「 そうなのですぅ 不可能と言われてきた獣人の魔法行使の道を開いただけでなく新しい魔法をも開発させる、素晴らしいのですぅ はぁぁぁぁぁ 精霊冥利に尽きるぅ 」


「 いや・・・ それって加護というよりは 祝福・・・ 」


「 シャーーーラップぅぅぅ  そこは企業秘密ですぅ 」


マーサ達獣人が魔法を使えるのは、トォーニ様の祝福の影響が強いはずなんだけどなぁと思って突っ込みを入れようとしたのですが。とエイシアさんの叫びでかき消されてしまいました。

まぁ神様の祝福は色々大っぴらに出来ないところもあるのかなぁ。


「 本当に羨ましいです、しかも皆さんリック様の嫁として子供も産めるなんて 」


「 そぉなのですぅ 獣人は多産ですしぃ セオさんは竜種という希少種ですからきっと素晴らしく立派な子供たちが産まれるのですぅ はぁぁぁ その子供達にぃ 私が完璧な加護を授けるのですぅ もう、もう想像するだけでぇ 鼻血が出そうですぅ 」


あぁこの手の話になるとさらにエイシアさんは逝っちゃうからなぁ。


「 あ、あ、あのですね。あの もしも、もしもなんですが、たた例えば・・・   あのあの 」


ノエルさんが真っ赤になって何かを言おうとしているけれど、なんだろう大丈夫かな。


「 どうしました? もしや ノエルさんもぉ リックさんの子供を産みたいのですかぁ 」


エイシアさん・・・ いきなり何をぶっこんできやがりますか。


「 エイシアさん!! 貴族のお嬢様に何を言い出しますか、さらに言えばエルフの女王陛下の娘さんでもありますよ 」


「 はい!! 私は吸血族の娘ですので貴重な存在だと思います!! しししかもですね 祖先の体質を色濃く受け継ぐ者で亜人とエルフのハーフという希少種ですからぁ ど、どうでしょうか きっと良い子に恵まれると思います 」


ノエルさんもエイシアさんも人の話を聞いてくれないYo。


「 素質は中々なのですぅ でもぉ ノエルさんの加護は風か土辺りですかぁ それが残念ですぅ 」


「 い、いえそれなんですが 確かに我が家は代々風の加護を受ける家系ですが、私の存在が特殊すぎることもあって実は加護を得ることが出来ませんでした。始祖のデリバも加護無しだったそうで加護無しであるが故に吸血の能力が発現したようなのです 」


またとんでもない発言がきましたよぉ。ノエルさんの話によると、恐らく加護を受けると吸血による能力は消滅する可能性があるらしい。


「 ・・・  リックさん    ・・・ リックさん!!! 」


「 なんですか エイシアさん 」


「 嫁ーーーーーー 嫁にしましょう!! この子ぉぉぉ 嫁に嫁にしましょう  つついにぃ男子が男子を産むことが期待できる嫁ですよぉぉぉぉぉぉぉ 」


あぁ エイシアさんのテンションは限界突破してしまいました。

何もこんな坑道内で・・・


ノエルさんは真っ赤を通り越して、もはやこちらも限界突破しているようです。




はぁ 仕方ないここらで一旦休憩だ。


『 セオ!! どこかで休憩しよう ノエルさんが少し疲れてきたみたいだ 』


『 ではこの先に少々広いところがありますので、そこいたしましょう 』


セオは冷静で本当にありがたいなぁ





休憩を入れて エイシアさんとノエルさんを、少しクールダウンさせないとなぁ。





坑道の分岐点と採掘跡で広くなっている箇所に結界を張って休憩することにした。


こういうときは何といってもユーンの高位収納魔道具が大活躍する。


「 ユーン みんなに飲み物を配ってあげて 」


「 ハイですニャ 」


籠に入った冷たい飲み物やクッキーにサンドウィッチまで出てくる。


「 ふぁぁぁ 何で冷たい飲み物が?? 」ノエルさんが渡された飲み物に口を付けてびっくりしている。


「 高位収納に仕舞ったものは収納時の温度や鮮度のままなのですニャ 」


「 そのような魔道具初めて知りました 」


ノエルさんは相当に驚いているようだ。まぁ僕的にはラノベとかでお馴染みの物なんだけど、この世界では神話の中くらいにしか出てこないようだ。


冷たい飲み物と高位収納魔道具の驚きで、どうやらクールダウンしてくれたようだ。

ちなみにエイシアさんは僕のお説教を感じ取ったのか休憩場所に着くころには姿を消していた。相変わらず逃げ足が速いなぁ。


「 これはぁ 神様の作った魔道具ですニャン リック様には神様にも可愛がられているのですニャン 」


「 え、えええええ かか神様ですか ままさか 管理神様ですか 」


「 そうですニャン 」


ユーンは当然のような顔をしているけれど、まずいでしょそんなこと簡単に喋っちゃ。


「 ユーンさん、ダメですよ神様のことはそう簡単に話す事ではありませんわ 」


さすがセオ、僕が止める前に釘を刺してくれた。


「 あう、ごめんニャさい セオ姉様 」


「 ・・・ リック様とは いったいどんな方なのでしょうか・・・ 」


ノエルさんが困惑しているよ、まぁそうだよねぇ神様なんてそう簡単に・・・ まぁ子供の頃から知ってるけどね個人的には。

だけどこんなこと絶対に話せないよ、それこそノエルさんが益々混乱してしまう。



「 そう言えばさぁ ノエルさんの母上はエルフの女王様なんだろう 」


マーサが気を利かせてくれたのか話題を変えようとしてくれているようだ。さすがは筆頭嫁だね。


「 はい、私の母上はエルフの国の女王です 」


母親の事を話すノエルさんはどこか誇らしげだ、まぁエルフは長命だから随分長いこと会ってもいないのかもしれないけどなぁ。


「 やっぱりかぁ じゃあ申し訳ないけどノエルさんはリックの嫁にはなれないなぁ 」


「 え、えええええええ そそそんなぁ ・・・ なんで、何でなのですか 」


ノエルさんはマーサの言葉に相当なショックを受けているようだ。


「 だってさぁ ノエルさんとリックは姉弟なんだろう 」


「「 え? ・・・ えええええええええええ 」」



坑道内に僕とノエルさんの声が響き渡るのだった。



今日もお読みいただきまして本当にありがとうございます。クリスマスですが、平常運転でございます。

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