愛は魔法をも強くするのです
今晩は本日も投稿させていただいております。
電子魔法は〈暗視〉の効果は抜群で問題なく、まだ夜中のうちに目的の農家には到着することが出来た。
ここまで頑張ってくれた馬を柵に括り付けて、水を飲ませてあげていると本物のセオも姿をあらわした。
「 主様 大変お待たせいたしました 」
「 大丈夫だよ全然待っていない、ほらまだ夜明けまでは時間もあるしね セオこそ色々お疲れ様 本当にありがとう 」
セオをねぎらうように声を掛けると
「 いえ、嫁として当然ですわ。 あと主様、周囲を警戒しましたが特に問題はありません 」
「 流石だね、ありがとう セオ 」
冷静な言葉とは裏腹に、褒めて褒めてと言わんばかりに近づいてくるセオ。獣人ではないので尻尾がないのが残念だ。もし生えていたらきっとブンブンに振っているはず。
あまりに可愛いので優しく頭を撫でてあげると、さらに嬉しそうにすり寄ってくる。
いつもなら嫉妬して自分も撫でてとばかりに近づいてくるはずの他の子たちは、セオが暫く離れていたこともあり、少々我慢してくれているようだ。
「 じゃあセオ、もうひと頑張り頼めるかな 」
もっと撫でて欲しそうだったけれど、キリがないので我慢してもらってから肝心のお願いをする。
「 あい、ではこちらへどうぞ 準備は出来ておりますわ 」
セオに案内されたのは農家の納屋。
お嫁さん達には道中に念話で説明して、何とか納得してもらっているので準備が済むまで周辺を警戒してくれているはず。
夜明け前の納屋は真っ暗だけれども、〈暗視〉のおかげで全く問題なく視野は明るい。
扉を開けて入った納屋の中は既にセオの魔法で清められており、敷物も用意されていた。
「 ごめんねセオ、時間もないしムードもへったくれもなくて 」
「 いえ、私はどんな時でも主様のものです、この身は全てどうぞ自由にお使いください。お役に立てるのが最大の悦び、ましてやお情けを頂けるのであれば例え地獄の釜の中でも私は嬉しゅうございます 」
セオは頬をほんのり染めながら本当に嬉し気に伝えてくれて、そして自らの身に着けているものを全て捨て去るように自ら脱いでゆく。
ここで何が始まるかというと、それは夫婦のお楽しみです。
ただし今回は何時もとはちょっと違う、楽しみのためではなくてセオが竜種として僕の魔力を取り込むための儀式も兼ねているのだ。
そのために営みの途中で僕の血も飲んでもらう、それによってセオの能力を一時的に底上げして普段は行使できない魔法も使う事が可能なのだそうだ。
さしずめ竜種とその配偶者の文字通りの合体技というところか。
「 綺麗だよ 本当に美しい 」
恥じらうセオの白い肌はほんのりと紅がさして正に女神のようだった。
「 さぁ 準備は出来た 」
「 リックぅ 待ちくたびれた セオばっかりずるいよぉ 」
納屋から出てくるのを待ちかねていたようにマーサが抱き着いてくる。
「 ごめんごめん、でもちゃんと説明しただろう 」
「 分かっているよぉ あたいだって理解しているんだけどよぉ それでもさぁ 」
拗ねているマーサを抱きしめて、しっかりしたキスを贈った。
「 ・・・ んん ・・・ ずるいよぉ 」
「 マーサは良い子だからか、少し我慢してな 」
「 うん 」
マーサは俯いたまま小さく返事をすると強く抱きしめ返してから離れてくれた。
「「 マーサ姉様こそずるいです」 ニャ」
フェオとユーンが羨ましそうにこっちを見ているので、二人を呼び寄せて同じように抱きしめて順番にキスをしてあげた。
お嫁さんは平等にしないとねぇ。
みんな可愛いなぁと思いながらお嫁さん達を眺めていたら、袖を引かれている感覚に気が付いた
「 あ・・・ あのぉ あのあの・・・ 」
そこには真っ赤になって何かを訴えるノエルさん。
「 どうかしましたか? もうすぐ出発ですので待っていてくださいね 」
「 あ、 ・・・ はぃ ええと 」
真っ赤な顔のまま俯いてしまったかと思うと、小さく何かを話しかけてきた。
「 えっと、 良く聞こえなかったのですけれど・・・ 」
僕が俯いているノエルさんの声を聞こうと思って身をかがめると同時にノエルさんの手が伸びてきた。
「 私も 待っておりました ・・・ 」
そう言うと僕にキスをしてきた。
「「「『 ああぁぁぁぁぁ!!』」」」 お嫁さん+αの声が響き渡る。
嬉しいけれど・・・ 本当に大変だ
混乱を何とか収めた頃には夜が明け始めていました。
「 じゃあ 改めて出発するよ 」
「 あい、準備は出来ておりますわ 」
セオは準備万端だ、魔力もとても高まっている。
「 荷物も全部入ってますニャン 」
ユーンが腕輪を見せてくる。
「 みんないるよぉ あたいも準備できてるよ 」
「 フェオも平気です 」
そういえばフェオに、自分の事を名前で呼ぶのって可愛いよねと言ったら真に受けて自分の事をフェオって呼び出したなぁ。
うん可愛い可愛い。
「 私はどうすればよろしいですか 」
ノエルさんが何をしていいか分からないようで僕の側にやってきた。
「 ノエルさんは僕の腕を掴んでいてください 」
「 は、はいっ 」
嬉しそうに僕の右腕にしがみつくように体を寄せてくる。
「「「『 むっ 』」」ニャ」
対抗するように僕にしがみついてくるお嫁さん達。
セオだけは少し離れたところで少し困った顔をしている。
「 さぁ皆様、主様にくっついてください まとめて転移していただきますから 」
いずれにしてもみんな僕にくっついて貰わないといけないからちょうど良かったのだけどねぇ。
「 大丈夫そうだね、じゃあセオお願いするよ 」
僕がセオに声を掛けると、セオの魔力の高まりを感じることが出来た。
「 ふわぁぁ セオ姉様・・・ すすごいですニャ 」
ユーンの毛が逆立っている、恐らく真夜中ならばセオの魔力の高まりが燐光となり見えるほどだったろう。
「 ゆきますわ!! 〈転移〉!!! 」
セオの声が聞こえたかと思うと目の前が一瞬にして光り輝き目を開けていられなくなった。
「 もう目を開けても大丈夫ですわ 主様 」
セオの声が聞こえる。
目の前には明らかに違う景色、古ぼけた小屋とその奥には山肌に口を開けた廃鉱山の入り口。
どうやら転移は大成功のようだ。
「「「 ふわぁぁぁぁ」」 ニャ」
マーサもフェオも、そしてユーンも驚いている。
「 リック様・・・ す凄いですね 」
ノエルさんも目を丸くして驚きを隠せない。
「 セオを褒めてあげてください 彼女でなければ使えない魔法です 」
「 あい、お役に立てて嬉しゅうございます 」
いつの間にか傍らに立っていたセオ、先ほどまでの圧倒的な魔力はもはや感じることは出来ない。
「 お疲れ様 よく頑張ったね 」
「 褒めてくださいまし 」
そっと頭を寄せて撫でて欲しいアピールをしてくる。
すっかり撫でられることが大好きになっているセオ、まぁ他の3人が獣人ということもあって撫でられるのが大好きなので、真似していたらすっかり嵌ったようだ。
「 うん、偉い偉い セオのおかげだよ 」
セオの長い髪を撫でながら時折首筋や耳に手を伸ばすと、さらに嬉しそうに可愛い声をあげて悦びをあらわしてくれる本当に愛しいお嫁さん。
さぁ一休みしたら、次は洞窟探検だ。
僕らは真っ暗な鉱山の入り口を見つめるのだった。
お読みいただきありがとうございます。




