4人目
今晩は 本日の投稿です
考え込んでも埒が明かないし、一つ一つ片づけよう。
「 ポルちゃ~ん 」
僕はユーンちゃんの主にあたるポルちゃんと話すことにした。
ポルちゃんを呼ぶ僕を見て、ユーンちゃんは少し不安げだ。
「 おーう 俺を呼ぶってことは 買い物かぁ !! あれ なんでユーンがいるんだ? 」
「 ひゃ ひゃいいい あああのですニャ これはその ニャンというか 」
動揺してしまいまともに話せないユーンちゃん。
「 ポルちゃん、ユーンちゃんに収納魔法で預かってもらおうと思って無理言ってきてもらったの 勝手に呼んじゃってごめんね 」
「 そういうことかぁ 別に平気だよ。 ユーンも呼ばれたら嬉しいだろうしよぉ 」
「 ひゃい そうですニャ 嬉しいですニャ 」
とりあえずポルちゃんは気にしていないようだ。
「 ポルちゃん、お願いがあるのだけれど 」
「 おう、主殿のお願いなら大抵のことは聞くぜ。 た、ただよぉ お、俺が欲しいならもう少し待ってくれよ もう少しパワーアップしたら・・・ ふふふふふ きっと驚くぜぇ 」
「 う、うん その時はきっと驚くだろうね 」
ポルちゃんの話がよくわからないけれど今は話を合わせておこう。
「 おう、驚くけどきっと主殿は喜ぶぜ!! 情報収集は怠りねぇからなぁ おっとこいつは秘密だぜ 」
「 うん・・・ 楽しみに待ってるね 」
何かよくわからないけれど、まぁポルちゃんが嬉しそうだから良いか。
「 ところでさぁ ユーンちゃんなんだけれど 」
「 あぁ 普段は配送センターで待機だから、呼んでやってくれよぉ 喜ぶしよぉ 」
「 うん ありがと でね、そのユーンちゃんはポルちゃんの使い魔なんでしょ 」
僕はやっと本題へ切り込んでゆく。
「 おぉ もちろんそうだよ。 トォーニ様によって使い魔として転生したんだぜ カッコイイよな 」
「 転生? 」
ポルちゃんの口から思わぬ言葉が飛び出した。転生ってどういうこと?やっぱり別世界から来たってことなのか。
「 あぁ まぁ主殿とセオさんしかいないから言えるけれど、ユーンは異世界の住人だよ 」
「 ・・・ やっぱりそうなんだ 」
ある程度そんな気はしていたのだけれど、転生者確定ってことか。
「 あ、でもな人間じゃないぜ 元々猫だよ 普通のネコ 獣人じゃなくて猫 」
「 え? ええーと それってどういうこと 」
獣人ではなくて転生猫ってこと?じゃあなんで獣人に?
訳が分からなくて、???になっていたらポルちゃんが説明してくれた。
ユーンちゃんは日本生まれの日本育ちの猫だったらしい。
いわゆる野良猫、見事な雑種の黒猫。
普通に野良のお母さんから生まれた4匹のうちの1匹、やんちゃな子猫だったらしい。
地方都市の高校の近くを縄張りにしているお母さんと一緒に暮らしていたようだ。
穏やかな日々の中で悲劇は突然やってきた。
車に母子共々はねられてしまったのだ、母猫は助からなったが子猫のユーンは辛うじて助かったのだけれど・・・
後ろ足が不自由になったユーンに生き延びることは困難だった。
必死に生きたいと願うユーン
生きたいと必死に思う、もちろん全ての生き物は本能で生きたいと思っている。
こうしている間にも命は生まれて死んでゆく
それは単なる偶然
細い細い線が繋がった奇跡
『 君は生きたいと強く願った またあの人に会いたいとも強く強く願った 』
誰かが話しかけてきた
『 ・・・ たぶん そうです あの温もりにもう一度包まれたい 』
言葉にならない願いがあふれ出す、もう命の火は長く持たないからこそ、その願いは強く純粋に
『 その願いは、この世界ではかなえてあげられない ただ私の世界に来るならば願いはかなうかもしれない 』
『 よくわからないけれど 生きたい会いたい お願いします 』
難しいことは分からない、でもどんなとこでもいい
『 思いは受け取った 君の望みを叶えよう この私 トォーニの名において約束しよう 』
そうして、ユーンちゃんは転生して使い魔になった。
今の体はトォーニ様に与えられた使い魔としての肉体。
「 じゃあ ユーンちゃんは使い魔としてしか生きられないの? 」
使い魔として生きていることがどういうことなのかは良く分らないけれど、食べる必要もなく死ぬこともないという。
「 これは神様から言われているのだけれどよぉ 今は使い魔なのは間違いはないのだけれど、ユーンが心から願ったことがあるらしいんだよ それをしっかり思い出して神様に心から願えば使い魔ではなくて本当にこの世界で転生したことになるらしいんだぜ 」
ポルちゃんが教えてくれたことは、さっきのユーンちゃんと神様の話の事だろう。
ユーンちゃんは元々猫だったからか転生前の記憶があいまいな感じだ、だから願いがまだ神様に届いていないのかもしれない。
「 じゃあ ユーンちゃんが心から願えば・・・ 」
「 あぁ 食べて寝て、喜んで怒って、子供も産める幸せを掴めるはずだぜ 」
僕とポルちゃんの話を一生懸命に聞いていたユーンちゃんが難しい顔をしている。
「 ・・・ 私・・・ 確か・・・ 」
思い出せそうなのに思い出せない、そんなもどかしさがユーンちゃんを困らせる。
とても大事なこと・・・
今にも泣き出しそうな顔で、いや既に涙は今にも溢れんばかりに溜まっていた。
「 落ち着くのです、貴方ならきっと思い出せます。 竜種である私にはわかります 貴方が願うべきことは、すぐそばにあること 」
セオがユーンちゃんを優しく抱き寄せて諭すように伝えている、せかすことなく穏やかに。
背中を優しく撫でられて徐々に落ち着きを取り戻すユーンちゃん。
暫くして、ユーンちゃんが顔を上げる。
その表情はすっかり落ち着きを取り戻して、決意に満ちている。
「 もう大丈夫ですわね どうなさいますか、もう少し時間を置きますか? 」
セオが優しく話しかけている。
「 いえ もう大丈夫ですニャ セオさんのおかげで理解できました。 本当にありがとうございますニャ 」
そのユーンちゃんの言葉を聞いて、僕はどうしても気になっていたことを言わずにいられなかった。
「 ユーンちゃんごめんね 僕が語尾にニャンを付けて欲しいなんて言ったから付けてくれているんでしょ 喋りにくくしてごめん ・・・ もう 」
「 違いますニャ 」
僕の言葉を遮るようにユーンちゃんが声を上げる。
「 え、でも 」
「 私は本当に嬉しかったのですニャン リック様にお願いされたことは私には喜びなのですニャ だから続けさせてくださいニャ 」
ユーンちゃんの声も表情も真剣にそう伝えてくる。
「 なんで、ユーンちゃんはそんなに・・・ 」
こんな可愛い黒猫獣人さんに、好意を寄せてもらえて嬉しくないなんて訳はないのだけれど
「 リック様 聞いてほしいのですニャ 今から私は神様にお願いをしますのニャン 」
「 うん しっかり聞くよ 」
ユーンちゃんの真剣な表情に、僕は心からそう思った。
心を落ち着ける様に深い呼吸を何度か繰り返した後に、ユーンちゃんは天を仰いで大きな声で話しかけた。
「 神様 私は使い魔のユーンですニャ 助けていただいて本当にありがとうございますニャ 」
どこからも答えはないけれど、一呼吸おいてユーンちゃんは続ける。
「 私は色々なことを思い出しましたニャン 今よりずっと小さな猫だったことニャ 子猫の時に迷子になった私をお母さんに会わせるために一生懸命になってくれた人の事も思い出したニャ 私の願いはその人に会いたいということだったはずニャ 」
え・・・
ユーンちゃんの話を聞いて僕の脳裏に浮かぶ思い出
学校の帰りに良く寄ってきたブチの猫、高校に入学した時から挨拶を交わして気が向くと撫でさせてくれた猫
3年の時にはしばらく姿を見なくて心配していたら、子猫を連れて現れたこと。
ある時、学校からの帰り道で大きな声で鳴いている子猫、真っ黒い子猫
あのブチ猫の子供だった。
なんでこんな学校から離れたところに居るのかは分からないかったけれど、もしかしたら誰かに連れてこられたのかも知れない。
慌てて抱き上げて服の中で温めながら、親猫を探した。
きっとあの猫も探しているはずだから。
2時間ぐらい後にやっと親猫を探し出して、子猫を見せると慌てて連れて行った。
3日位経った頃に、親子で嬉しそうに現れてくれたこと、いつの間にか姿を見なくなって少し寂しかったこと
僕は鮮明に思い出した。
「 私は願います、あの人の・・・いえリック様のお役に立ちたいのです。 リック様と一緒に生きてゆきたいのです 」
ユーンちゃんはしっかりと自分の願いを、天に届けと伝えきった。
「 うーん 無問題よぉ 今日からユーンちゃんは猫耳獣人になりました。 もちろん子供も産めるよぉ ただ、ポルちゃんの仕事はアルバイトでしてあげてねぇ 」
天から声が返ってきたよ。
あの声は間違いなく阿佐ヶ谷のオジサンことトォーニ様
そして神様の声が響いた後にユーンちゃんの体が淡い光に包まれた、しばらくして光が収まるとユーンちゃんはその場にしゃがみ込んでしまった。
慌ててユーンちゃんに駆け寄って抱き留めた。
「 リック様・・・ 私・・・ 」
「 うん、ユーンちゃん ごめんね まさかユーンちゃんがあの時の 」
「 分からなくて当然ですニャ、こちらこそ神様に勝手なことを願ってしまいました ごめんニャさい 」
真っ赤になって謝ってくるユーンちゃん
そんな僕らの側にセオが近づいてきて僕の手の上にそれを置いてくれた。
「 セオ ・・・ 」
「 もう 主様はお決めになっておりますのでしょ 私共嫁は主様の決定を間違いなく尊重しますわ 」
「 ありがとう 」
セオは僕の背中を押してくれた、すでに僕の心の中が決まっていることもお見通しだ。
「 ニャ? 」
僕とセオのやり取りを見ていたユーンちゃんが問いかけてくる。
「 ユーンちゃん 」
「 ひゃい ですニャ 」
「 左手を貸して 」
「 ひゃひゃい ・・・ えええええ そんにゃ 」
僕はユーンちゃんの左手の薬指に、4番と書いた布が付いていた指輪を通す。
その指輪は光を放つと、ユーンちゃんの指にピッタリと吸い付くようにサイズを変える。
「 次は右手ね 」
「 ひゃ ひゃい どうぞ 」
腕輪も同じようにまるでユーンちゃんに合わせる様に光りながら二の腕に収まる。
そして指輪は3本のリングが重なるように組み合わさったゴールドに輝くもので、石はエメラルドが輝き、腕輪にはアクアマリンが輝きを放っている。
「 僕の4人目のお嫁さんとして皆に紹介するよ 」
「 ひゃひゃい どどうか よろしくお願いしますニャン 」
こうして僕に4人目のお嫁さんが出来た。
少々バタバタしておりまして、本日の投稿がいつもより遅い時間になってしまいました。
申し訳ございません。




