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依頼

こんばんは 今日の投稿になります。

今日のもう一つの重要な予定、それはダッジさんからの依頼について行う打ち合わせだ。


打ち合わせにはセオを参加させる、そもそもダッジさん達が僕らを信用している理由は竜種であるセオの存在が決め手だからね。




ダッジさん達の部屋をノックして声を掛けてから待っていると、ドアがゆっくりと開いてダッジさんが迎えてくれた。


「 お待ちしておりました、リック様 セオ様 」


僕たちの部屋よりも更に広い室内に案内されて、ソファーを勧められる。



どっしりとしたソファーに腰を掛けたタイミングで奥様のフェリエさんがお茶を出してくれた。

フェリエさんは僕たちの向かい側にダッジさんの隣に腰を掛け、そのタイミングでダッジさんが話を始めた。


「 この度は無理なお願いをお聞き入れくださり、誠にありがとうございます 」


「 いえ、我々としても乗りかかった船ですし、とりあえずの目的地も同じですからお引き受けした迄です 」


襲撃者を撃退した時点でこちらも狙われている可能性もあるうえに、元々国境越えはするつもりだったので引き受けたにすぎない。


「 まずはこれを 」


そう言いながらダッジさんが僕の前に差し出してきたのは皮の袋。この世界で貨幣を入れるのに一般的な袋だ。


「 では、改めさせていただきます 」


セオが僕を制して、袋を引き寄せると中身を数え始めた。

恐らくセオは交渉は僕が行い、些細な事は控えた自分が行うことで、僕が主であることを示しているのだと思う。純血の竜種であり、亜神でもある自分が仕えるのは夫であるこの男性のみであるということを。


「 報酬として不足があればおっしゃってください 」




「 主様 共通金貨が50枚 クレイファ共和国金貨が25枚です 偽貨は無く、摩耗もない物です 」


『 ミーネ 共通金貨って何だっけ 』


『 はいリック様 共通金貨とはクレイファ・スウェインランドを含む10か国程度で結ばれている通商条約加盟国が発行する金貨で、主に貿易商人により流通しています。 取扱いに便利なように各国発行の金貨よりサイズは小さめです、そのため金の含有率が高く摩耗に弱いので、強化魔法が掛けられているのが普通です。貨幣価値としては信用度も高くエルフ女王国金貨の次に評価が高いものです 』


速やかに的確な情報を提供してくれるミーネは本当にありがたい。


『 ありがとうミーネ。 助かるよ 』


『 お役に立てて幸いです もっと頼ってくださいね 』


気のせいかミーネが嬉しそうだったなぁ




「 ダッジさん、正直申し上げてこの金額でも相当な破格の報酬と思いますが、まだ支払う用意があるともおっしゃる 」


「 はい、用意に2日ほどいただければ倍程度の金額でしたらご用意できます 」


「 ようするにそれだけのリスクがある依頼ということですよね 」


馬車に乗り合わせた乗客が護衛の報酬を自主的に支払ったを見ても分かるように、この世界において対価を適正に支払うということは信用に繋がる行為である。

よってあれだけの報酬を用意するということは、それだけリスクの高い依頼と考えるのが普通だ。

さらに言えば秘密性が高く、それも高額な報酬に影響している可能性が高いとも考えられる。


「 もちろんリスクはあります、さらにノエル様にはそれだけの価値があるとも言えます 」


「 ご存知と思いますが、僕たちは護衛のプロフェッショナルではありません。もちろん仕事を受ける以上は最善を尽くしますが、私には家族を守る義務もあります。家族を必要以上の危険にさらしてまで護衛の任務を遂行する気はありません、もちろん庇護下に入ったノエルさんは全力でお守りしますが、私にとっての最重要は家族であることはご理解いただけますでしょうか 」


言っていることが矛盾しているのは分かっている、でも専門の護衛職でない人間に依頼するという時点でそこに専門性を求められても困るものなのだ。

プロとアマチュアには技術面でも信条面でも大きな開きがあるのは事実。


「 はい、ですので護衛対象はノエル様のみとしております。 私共が求めるのはノエル様をクレイファ共和国のレミンまで送り届けていただけることその一点のみです 」


「 もし私が旅の途中で殺されたり意識が戻らぬほどの重傷を負ったとしても構いません、遺体でも良いのでお運びいただければ依頼は成功です。最悪の場合私の頭部や心臓だけでも問題ありません ただその場合は現地でお支払する報酬を減額させていただくことになりますが、前払い分は成功失敗にかかわらずお納めください 」


ダッジさんの言葉に重ねる様に声が聞こえてきた、いつの間にか奥の別室の扉が開いておりそこからノエルさんが姿を見せていた。


「 ノエル様 まだお休みになっていませんと お体に・・・ 」


慌てて立ち上がったフェリエさんが駆け寄ったのだが、ノエルさんはそれを手で制すると言葉を続けるのだった。


「 リック様 このような姿でご無礼申し上げる。私はドリエイン=ジベ=ノエル ドリエイン家の次男にして・・・ 」


「 ノエル様 それ以上はいけません 」


必死で止めるダッジさん、先ほどまでの冷静さから一転して慌てふためいている。貴族の名乗り以上に隠すべきことがあるのだろうか?

疑問が頭をよぎる。


「 爺、良いのだ 亜神であるセオ様を娶るお方に隠し事は不用。こちらのすべてをさらけ出して助力を願うしかないのだ 」


「 しかし・・・ まさか・・・ 」


「 そうだリック殿にはすべてをお話しする、全ての事実をお伝えしなければならないのだ。 私には分かるリック殿はトォーニ様の祝福を持ち、さらにこの世の全ての精霊に最大の祝福を贈られている唯一人の存在。 これが意味するところは分かるな 爺よ 」


「 ・・・それは まさか  いやしかし ノエル様の真偽眼に映るのであればそれは・・・ 」


「 そうだ爺よ だからリック殿に出会えたこの機会を逃すわけにはいかないのだ。おそらくそこには神の御意志が働いているのだ 」





『 ねぇセオ 』


『 あい、主様。おっしゃりたいことは良く分かりますが、まぁよろしいのではないでしょうか 』


『 だよねぇ 』


文字通りの以心伝心でセオと話したことは、阿佐ヶ谷のオジサンことトォーニ様の意志ではないよなぁということ。多分単なる偶然で一緒になっただけ。

ただ、ノエルさんが僕の祝福の事とかまで知ってるのは驚いた。




『 見る人が見れば分かります、リック様がお気づきになってないだけです 』


『 え、そうなのミーネ 』


『 はい、実際にトオッカでもそうでしたし、ここフェーンでもリック様に気が付いて足下に平伏そうと近づく者も何人となくおりました。 もちろん全てセオ様が神威にて寄せ付けておりませんが 』


『 えええええ そうだったの? でも宿の人とかマンドさん達は平気だったよ 』


『 一般の人々ではまず気が付きません、高位の魔法師や高位精霊加護持ちでかつ魔力感知が可能な人でなければまず分かりませんから大丈夫です 』


なんかとんでもないことをサラッと言われた気がするのですが・・・

嫌だなぁ どう考えても分不相応だよぉ



「 リック殿 ・・・ リック殿 」


念話に気を取られていて、呼びかけに気が付かなかった。集中集中っと。


「 すみません 少々気を取られておりました 」


「 いえ、大丈夫です。失礼ですが念話をされておられたようで 」


「 え・・・ はい 」


そこまで分かるのかぁ ノエルさんって何者だ?


「 さすがはリック殿、私も念話は嗜みますがリック殿の念話は内容を捉えることすら出来ませんでした。素晴らしい能力です 」


「 ノエル様 我が主様の念話を読み取ろうなどとはこれ以上思わないことです、いくら依頼主であろうと不敬に当たります 」


セオの物言いに流石に顔色を変えて食いついてくるダッジさん。


「 セオ様 いくら竜種の配偶者といえど、不敬とはいかなる言われ様でしょうや 仮にもノエル様は・・・ 」


「 よせ ダッジ 非礼は当方にある。セオ殿のもうし様も最もである 」


ダッジさんの言葉を遮って頭を下げてくるノエルさん。


「 いえ、こちらこそ失礼いたしました。しかし我が主様には、管理神トォーニ様より直接お話しかけになられることもありますので、ご留意ください 」


その言葉を聞いたダッジさんの顔色は一気に青ざめてゆく。


「 配下の失礼の段、どうかご容赦くださいませ 知らぬこととはいえ誠に失礼なことを申し上げました 」


もはや、地につかんばかりの勢いで謝罪するノエルさんとダッジさんフェリエさん夫婦。

改めて思うけれどトォーニ様って本当に神様なんだね。


「 どうか頭を上げてください。僕自身はただの庶民ですからどうぞお気になさらずに。セオも大げさにしないの 」


「 あい、すみません主様 」


怒られたと思ったのか心細げに見つめてくるセオの頭を、僕は優しくなでてあげた。

この姿を見ている限りはとても亜神とは思えないけどねぇ。






話も長くなりそうなので、一旦仕切り直しましょうと提案して出されていたがすっかり冷めたお茶に手を伸ばした。


「 気が付きませんで すぐに新しい物を 」


フェリエさんが立ち上がってお茶を入れ替えようとしたのだけれど、出来ればもう一杯いただきたいとお願いしてカップを口に運んだ。

冷めていても、口に含んだそのお茶は香りが高くほのかな甘みもある美味しいものだった。






「 では改めて、私の事を知っていただこう。 ノエル=ジベ=ドリエイン  ドリエイン家の次男にして吸血族の血統を持つ者だ ここまでは一般にも公表されている事実。だが私は正確には次男ではなく長女なのだ そして我が母親はエルフであり父とは正式な婚姻関係にはなく、兄である当主デリナイとは異母兄妹の関係だ 」


ティーブレイクを挟んだ後の話し合いで、ノエルさんから出た言葉は最初から衝撃的だった。


「 ノエル様は男性として育てられ、過ごされてきました。ノエル様が女性であることを知る者は、先代のドリナエン公爵様と私たち夫婦のみです 」


「 失礼を承知でお伺いしますが、なぜそのような真似を 」


「 それは・・・ 」


「 私が話そう 」


恐らくずっと秘密にしてきたであろう事を話せたことで気が晴れたであろうノエルさんの表情は明るくなっていた。

そしてその口から紡ぎだされたことはさらに衝撃的だった。



曰く


ノエルさんは父であるドリエイン公爵とある高貴なエルフとの間に生まれた子供であること、そして生まれたのは今から57年前。

要するに目の前の薄幸の美少年改め美少女は57歳。まぁハーフエルフなので57歳はまだ若いのだけれどね。

エルフとの間に生まれた子供であることを隠すため、男子として育てられることになった。

(まぁ胸も育たないし、女の子だと嫁に出す必要がありエルフの血が発覚するため)

これにはスウェインランドの支配階級に人種ひとしゅ優位主義者が多いことも影響している。

彼らの理屈によれば人種ひとしゅ以外の種族は全て亜人であり劣等種ということになるらしい。獣人差別もそれが由来であり、エルフも亜人なので忌むべき存在なのだそうな。



だがその相手の高貴なエルフとドレイン公爵の間に生まれたのがノエルさんであり、そのエルフというのが、実は我が母親が跡を継ぐべく継承中のエルフ女王国の現女王アグネイシア陛下その人・・・

どうも現女王陛下が退位を急がれているのも娘に起きていることが伝わりその身を安じてのことらしい。


じゃあそもそも誰が何のためにノエルさんを狙っているかというと。

黒幕はどうも兄である現ドリナエン公爵その人。


ドリナエン家はスウェインランドの有力貴族であり、先祖に吸血族をもつ亜人である。スウェインランド建国に寄与した功績により爵位を賜り、王家との姻戚関係も深い。

吸血族といってもいわゆるバンパイアではなく、始祖であり建国の英雄の一人であるデリバ=ドリエインが編み出した魔法というのが、倒した相手の血を飲むことでその魔法を受け継ぐというもの。

だがその魔法はデリバ一代で一旦途切れてしまう。どうやら特殊な体質によるところが大きかったようで後継者は現れなかった。

しかし7代後にドリナエン家に誕生したロイエンがその体質を発現することになる、相手の魔法を受け継ぐことは無いのだが、魔力が強い相手の血液を飲むことにより自らの魔力量の向上に成功する。

しかし彼は魔力の過剰摂取により若くして死亡してしまう。

そしてノエルさんにもその体質が発現した、彼女(彼)の場合は血を飲むことにより一時的に相手と同じ能力を持つことが出来る、しかもその状態のノエルさんの血を飲むことにより飲んだ人間も能力が一時的とはいえ向上するのだ。

このことが兄の耳に入り、ノエルさんは強力な魔法師の血を飲まされ自らの血を抜かれるために屋敷に軟禁されることとなった。


そのことがアグネイシア陛下の耳に届いたのだが、すでに先代のドリナエン公爵は黄泉に旅立っておりいくらエルフの女王と言えども他国のしかも貴族の家に影響力を行使することは出来ない。

下手をすれば外交問題にも発展しかねない。

そのため自らの退位を急ぎ、さらに私財を投じて人を使いノエルさんの側仕えであるダッジ夫妻との接触に成功したのだ。


実はダッジ夫妻、ノエルさんの側仕えであり幼馴染でもあったのだ。ノエルさんがハーフエルフなので見た目の年齢は大幅に離れてしまったが子供の頃よりそばに仕えてきた夫妻にとっては何としてもその境遇から救い出したいと思っていたのだ。


何とか隙を見てノエルさんとダッジ夫妻は屋敷を抜け出し、国外へ逃亡する途中だったのだ。



お読みいただきありがとうございます。お話が動き出しました、さてどうなりますやら。

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