旅の夜のお楽しみ
本日の投稿です。よろしくお願いいたします。
街道を馬車はひた走る、出発して2日目の朝日を浴びながら。
ちなみに初日の野営は特に大したことは無かったよ。
ソーン君と交代で見張りをしながら、火の番をしていたくらいかな。
まぁ寝てなさいって言ったにもかかわらず、僕の奥さんたちは交代でそばに来るので寒くも無いし眠くなっている暇もなかったけど。
『 私だって・・・ 』 あとはミーネがなんか呟いていたかな。
ミーネがどんどん人間っぽくなってきてる気がするよね。
成長しているのかなぁ、今度詳しく聞いてみよう。
そんなこんなで日が昇る頃には他の乗客の皆さんも起きてきて、馬車は日の出とともに出発。
随分と忙しい気がするけれど、日の出と共に走り出さないと秋が深まってきているので昼間の時間が短くなってきているし予定通りに進めない事になりかねないからね。
ちなみに夕方までには、最初の経由地であるビワ村に到着する予定。
小さな村だけど宿もあるのでゆっくり眠れる。
行商人のマンドさんの話だと料理が中々美味しい宿らしい、マーサがそれを聞いてとても楽しみにしていた。
美味しい物って言葉に弱いからねぇうちの筆頭嫁様は(笑
ビワ村へ向かう日中の街道では、ソーンに教えてもらいながら御者の見習いとして練習中。本来なら御者は2名で交代しながららしいのだけれども、今回は色々タイミングが悪くてソーン一人だからね。問題の無いところは僕が交代出来たら少しは楽かなと思い申し出てみた。
この世界の乗り物としては馬車は一般的な物だし、憶えておけば役に立つだろうし。
実際にやってみると難しいけれど面白い。まぁソーンが教えるのが上手なのと、訓練の行き届いた馬だからということもあって少しは役に立てているようです。
今日の行程は特に平坦な道が多くて、比較的真っすぐな道も続くので練習にはもってこいだ。
いつのまにかソーンは隣で睡眠中、とても利口なライ君に抱き着いて良く寝ている。ライ君は寝ているご主人に代わって周囲警戒をしてくれているようで、ピンと耳を立てて辺りをうかがっています。偉いねぇ。
その後も馬車は順調に進み、夕日で空が赤くなりかけた頃ビワ村へ到着しました。
「 ビワ村ですよ~ 」
村の中心部で馬車が停車して、ソーンの声がかかると乗客が馬車から降りはじめた。
「 うにゃーーーー 」 最初に降りて大きく伸びをしながら声が聞こえたのは猫族のレスカさんだな。
やっぱり猫族ってうにゃとか語尾にニャンとか付いたりするのだろうか。
そんなことを考えながら降りる人達を見ていたら、背中に柔らかい物がくっついてきた。
「 リックぅ 早く宿に行こうよぉ あたい疲れたぁ~ 」
甘えんぼの筆頭嫁さんだ。
「 そうだねぇ 」
答えを返しながら荷物を下ろそうとすると、馬車の中からセオとフェオが荷物を持って降りてきた。
「 リック様の分も持ってきましたよ 」
健気にもフェオが僕の荷物まで持って来てくれたらしい。獣人は力があるけど無理しなくてもいいのにね、本当にいい子だ。
「 ありがとうフェオ 」
荷物を僕の足元において、褒めて褒めと言わんばかりに尻尾を振りながら、見上げて話すフェオの頭を撫でてあげる。
「 くふぅーーーん 」 小さな声をあげてうっとりとした顔になるフェオ。
はぁ可愛いよなぁ・・・
「 あたいも撫でてよぉ 」
少し拗ねたような顔で後ろからさらに体を押し付けてくるマーサ、
そしてそれをニコニコしながら見つめるセオ、あぁ本当に幸せだなぁ。
僕は幸せを噛みしめながら夕日の中に佇んでいた。
村に中心部の一番大きな建物が今夜の宿。
といっても宿は一件しかないし、小さな村なので屋根のあるところで眠れるだけで嬉しいので、特に贅沢言うつもりはありません。
「 4人さんだね~ 一部屋しか無理だけんどええかい 」
「 構いませんよ みんな僕の嫁ですし 一部屋で結構です 」
まだ嫁という言葉になれないフェオが 「 くぅーーーん 」と恥ずかしそうにしている声が背後から聞こえてくる。
「 んなら~ 4人分でぇ、食事つきで一泊銀貨2枚だよ 」
「 じゃあ これで 」
その場で支払いを済ませると、すぐ食事に出来るけどどうするか聞かれたので、すぐにお願いしますと伝えて、部屋に荷物を置いてからすぐに食堂と教えられた場所へ。
するといい香りが早速鼻に届いてきた。
「 いい匂いだよ~ お腹が空いたよ 」マーサは早速嬉しそうな声をあげている。
「 あい、楽しみですね 早く席に着きましょう主様 」
そしてセオが嬉しそうに僕の腕を取って席へといざなう
「 セオ姉様ずるい~ 」
フェオも負けじと僕にしがみついてくる
「 あら、早い者勝ちよ。さぁ主様ここへ 」そうして僕を席に着かせると、さりげなく隣に密着して座るのだった。
「 小さな村なんで、大したもんもだせねぇけんど どうぞ~ 」
宿の女将さんがテーブルにおいてくれたのは、キノコや肉の煮込み料理と鮭のパイ包み焼き。
それと黒いパンが籠に一杯入っていた。
「 うわー 美味しそうだよぉ リックぅ早く食べようよ 」
「 ほれ、これもだよ 」
女将さんがそう言ってテーブルの上に置いたのはワインが入った容器。
「 こんなに? 何か多くないですか 」
宿の料金の割にえらく豪華な気がして女将さんに聞いてみると
「 あぁ さっきあんたらと同じ馬車に乗ってるマンドとかいう商人さんが、あんた等の飯を豪華にしてくれって言ってきたんだよ。銀貨も一枚貰ってるからその分だよ 」
どうやらマンドさんが気を効かせてくれたようだ、後でお礼を言っておかないと。
「 それでこんなに 」
「 もらい過ぎだって、あたしも言ったのだけどねぇ。 だからパンとワインはお代わりしとくれ、あと明日の朝も楽しみにするとええよ。あと弁当もこしらえてやるからな 」
女将さんも相当に良い人のようだ。
「 おいひぃ~ 」
煮込み料理を食べながら嬉しそうなマーサ。
フェオは目を輝かせながら、セオが取り分けるパイ包み焼きを見つめている。
「 喜んでもらえて何よりだぁ こんな田舎料理だけんど味は悪くないと評判だぁ 」
素朴な味わいの料理だけれど、どれも近くで取れた山の幸や川の物らしい。
煮込んである肉はとても柔らかく、キノコも数種類入っていて実に芳醇な味が口の中に広がる。
少し酸味のある黒パンとの相性も抜群だ。
また、自家製だというワインもとても香りがよく深い味わいで美味しかった。
結局パンもワインもおかわりまでさせていただいて、満腹になった僕たちだった。
そうそう、食事中にマンドさんたちも現れたので、きちんとお礼を言っておいた。
トランプの遊び方について色々説明も出来てとても喜んでいたよ。
「 ここは譲れません!! 例えお姉様方を敵に回しても譲れません 」
「 筆頭嫁として引けない事もあるよ 絶対ダメ 」
「 私にも負けられない理由があるのです、主様見ていてくださいませ 」
お腹もいっぱいになってワインを飲みながら、マンドさん達とさらに夕飯を食べに来たゴドックさんとカレーニャさん夫婦とも和やかに歓談したりしながら過ごし、
後は部屋に帰って寝るだけのはずが・・・
突然、壮絶な嫁同士の譲れないバトルが開始されてしまったのです。
きっかけは部屋の中にあるベッドにあった。
さっきは荷物を置いてすぐに夕飯を食べに行ったので気にしていなかったのだけれども、いざ眠る段になり部屋に戻って冷静に見てみるとそこにはベッドが並んでいた。小さな宿なので部屋もそれほど広くないためベッドもセミダブル程度の大きさの物が2つ。
それを見たお嫁さん達はというと
当然のことながら誰が僕と一緒に寝るかについて話し合いを始めたのですが
前回と違って僕の横で眠れるのはどう考えても一人ということ、そして3人とも酔っている状態ということもあり最初は穏やかだった話し合いがやがて一色触発の状態になってしまったのだ。
しかも決着がつかない。
「 主様は誰と眠りたいですか 」
埒が明かないと見たセオが突然僕に話を振ってきた。
「 リックはもちろんあたいだよねぇ 」
当然のようにこちらを見つめてくるマーサは自信満々、対称的にうるうるした目で切なそうに無言で訴えるフェオ。
選べないよぉ~ 僕の無言の叫びは通じるはずもなくヘタレた提案をしてみた
「 じゃあ みんな大好きなトランプで決めたらどうだろかな 勝った人と一緒に寝るってことで 」
「 あい、主様がそういうのなら 」大きく頷いて賛成するのはセオ。
「 ダメったら絶対にダメーーーーーー 」 「 私も反対です セオ姉様には勝てません 」
どうやらトランプはマーサ<<<フェオ<<<セオ といった力関係にあるようだ。
そりゃあセオは大賛成だよね。
なので別の勝負方法を教えて欲しいと言われ
(この世界の一般的な勝負だと竜種であり亜神のセオが圧倒的に有利になってしまうので)
提案したのが・・・
「 あっち向いてぇ ホイ 」
「「 ジャン ケン ポン 」」
「 あっち向いて ホイ 」
熱い戦いが繰り広げられているあっち向いてホイ大会。
簡単にできて良いかなと思って提案してみた。もちろんルールは簡単だしみんなすぐに覚えたし出来るようにもなったのは良いのだけれども問題はそこから。
練習としてのゲームを終えてから、いざ本番となり早々にフェオは脱落。
ものすごい熱戦となっているこの2人の戦いだよ。
竜種であり亜神でもあるセオの反射神経や先を読む能力が高いのは分かるのだけれども
マーサの方もとんでもなかった。
練習ではセオの方が上かなと思っていたのだけれども、いざ本番になるとその負けず嫌いな性格と身体能力の高さからセオに食らいついて行った。
最初は本気を出していなかったセオだけど途中からは明らかに本気モード。
もう見ているこっちも目が付いて行かないペース。
もはやゲームの域を超えている気がするのですけど・・・
「「 ホイ ホイ ホイ 」」
「 リック様ぁ 」
もう疲れましたと言わんばかりの顔で僕を見つめるフェオ
「 うん 」 僕も同じだよと目で受け応える僕。
アイコンタクトで意見の一致を見た僕とフェオは熱くなりすぎている2人を放置して、そっと空いているベッドに潜り込んだ。
「 おやすみ フェオ 」
「 おやすみなさいです リック様 」
掛け布団を頭から被って二人で抱き合い軽くキスしてから眠りについた。
高速過ぎてもはや何を言っているのかよくわからなくなってきている、超高速あっち向いてホイが丁度良い子守歌代わりになった。
まぁ次の朝にはボロボロになったマーサとセオに、僕とフェオは物凄く怒られました。
ちなみに勝負はつかなかったそうです。
お読みいただきまして、まことにありがとうございます。




