君の名前は
今晩は本日分の投稿です。
朝起きたら知らない女の子がベッドで寝ていました。
しかもすっぽんぽんで・・・
問1 奥さんに何と言い訳すれば被害を最小限で食い止められるでしょうか。
100文字以内で答えよ。
模範解答なんてないよね、頭に血が上った奥さんに何と説明すればいいのか分からないし。
そもそも知らない子だし、ここは努めて冷静にだ。
「 リックぅぅぅ 」
でもぉ
怒ってます、マーサが相当怒っています。
「 マーサ、まず落ち着こう。 この子が誰なのか僕が聞きたいくらいだし、もしかしたら部屋を間違えてきた寝ぼけた女の子かも知れないしね 」
なんとか必死にマーサを宥めようとしていたのだけれど・・・
間の悪いことに
「 主様ぁぁぁ 昨晩は嬉しゅうございましたぁ 」
背中にものすごく柔らかくて、気持ちのいい感触と耳元でささやく声が
いや、平和な時ならこれ以上ない感触と声なんですけどね、今は非常時と言いますか火に油どころか火にガソリンを注ぐという言葉が生まれる予感がします。
「 うぁぁぁぁぁん リックの馬鹿馬鹿馬鹿バカバカバカ ぁぁぁぁぁ 」
そして噛みつかれました、腕を・・・ 思いっきり・・・
思い切り噛みつかれるとどうなるのでしょう
答え 血が出ます
問2 それを見た人は普通どうなるでしょう
「 あぁぁぁ 主様ぁぁぁ も、もったいのぉございます 」
どうやら普通ではなかったようで・・・
腕の傷を目にした女の子が、マーサを押しのけると僕の腕の傷にその赤い唇を這わせた。
そう、流れ出る血を全て舐めとるように。
その光景を見て、僕は昨晩の夢を思い出す。
いやあれは夢ではなかった
「 君は 誰 」
その問いに対して僕の傷口を、そこから流れる血を全て舐めとり妖艶な微笑みを浮かべながら彼女は答えた。
「 私は竜種と呼ばれる存在 主様に出会うべく生まれ、主様の血と精を戴くことが出来ました。 これからは主様のためだけに私は有ります、どうぞ末長くお側においてくださいませ。この身は主様と共に 」
「 竜だか何だか知らないけど、筆頭嫁のあたいを差し置いて なに小難しい事言ってるのよぉ。 リックはあたいの大事な大事な旦那様なんだからねぇ 」
丁寧なあいさつをしてくる竜種を名乗る御嬢さんの前に、敵意剥き出しのマーサが立ちふさがる。
「 えーと さぁ 二人とも 」
「 リックは黙ってて ここはあたいが 」
ダメだマーサさん怒りの矛先が完全に変化してる。
とりあえず客観的な事実を指摘して、多少でも気を逸らせて冷静にしないと
「 いや・・・ じゃあさぁ せめて服着ようよ 」
「 きゃ 」 マーサは可愛い悲鳴を上げて慌ててシーツを掻き寄せたけれど
竜種を名乗る女の子はニコニコ笑ったままだ、あまり羞恥心が無いのだろうか。
でも胸はそれなりにあるよなぁ・・・
服を着ようという提案に対して、マーサは室内着に着替えかけたのだけれど
相手はいつの間にか見るからに煌びやかな見たこともない衣装を着ていることに気が付いた。
慌てて持っている服の中で一番見栄えのするドレスに着替えるのだった。
ちなみに竜種を名乗る女性が着た服は着物に似た衣装、帯も日本の物によく似ているが丈が短くまるでミニスカートのようだ。
着替えも終わり多少は落ち着いたので、一つ一つ確認することに
「 えーと、まずは名前を教えて欲しいのだけれど 」
まだ敵意をむき出しにしてガウガウしてるマーサを腕で制しながら、女の子に聞いてみる。
「 名前はまだありません 」
「 名前が無い? 」
「 あい、名前は主様に戴けるものと存じております 」
えーと、何か心配になって来たけど大丈夫かな。
「 今までは何て呼ばれていたの みんなからは 」
「 私はご存じのとおり卵から生まれ、主様以外とは話をしたこともございません 」
えーとなに そういう設定なのそれともそういうプレイ?
あーでも 夢の中でもその話聞いた気がする
「 残念ながらその子の言っていることは真実なのですぅ 」
突然目の前で腰に片手を当てて、彼女を指さしながら宣言するエイシアさん
最近は突然出てこられてもあまり驚かなくなりました。慣れるってすごいよね。
「 え、じゃあこの子は名前が無いの 」
電子精霊であるエイシアさんは嘘を付けないはずだし、この子の事も知っているってことか。
「 名前が無いのもぉ 竜種というのも含めてこの子は嘘をついていませんしぃ、つくことも無いのですぅ 」
「 あい、私が伴侶たる主様に対して嘘などつけるはずもございません 」
あ、伴侶って言葉に反応してマーサがまた怒りはじめてる。
良い子だからもう少し話を聞こうね、そういう意味を込めて背中を撫でて落ち着かせようとしているけれど、流石に今回はそう簡単に落ち着かないなぁ。
「 まぁエイシアさんもそういうなら名前が無いのはわかったけど、なんで僕なのかな会った事ないよね 」
僕としては当然の疑問をぶつけてみる。ちなみにマーサも思い切り頷いています。まぁ気になるよね。
「 私が卵より産まれたのは人の子の数え方で言えば、恐らくは数十年ほど前の事です 」
彼女の口から語られたのは竜種としての数奇な運命。
卵で産み落とされる竜種は、10年ほどかけて孵化に至る。その後10数年かかって幼生から人間の形態へ変化してゆくのだという。
そして人の姿かたちになった後は、生涯の伴侶となるべき者を探すこととなる。ちなみに孵化してから数十年の間は一切何も口にすることは無い、竜種の食事は伴侶によってのみ与えられるのだ。よってその数十年の間に伴侶を見つけられない竜種は、静かに死んでゆくのみである。ではその伴侶はいかにして探し出すのかというと、星の導きと呼ばれる占いに近い物であり、さらには本能と魔感知の力である。また基本的に竜種は伴侶を見つけるまで孵化した場所を動くことは無く、動き出す時は伴侶の元へ嫁ぐ時のみであるという。
伴侶と定めた者の血や精のみが竜種の糧であり、伴侶が生き続ける限りその生は尽きることが無いと言われている。
彼女は孵化して後に人の姿を取ってからもひたすらにまどろみ続け、異世界で生まれた伴侶がこの世界にやってくるのをひたすら待ち続けていた。
その命が尽きる寸前にて僕の残した血痕に辿り着き、今ここに居るのだという。
夢ではなくて彼女はここにいる、もし僕が彼女を拒むのなら元の場所へ帰り静かに死を迎えるだけだとも言う。
竜種は伴侶以外の糧を受け入れないのだ。
「 じゃあ あんたはリックの嫁になれなかったら死んじまうってことかよ 」
「 あい、そうなりますね 」
あっさりと死ぬことを認める竜種の少女。
「 なぁ リックぅ 」先ほどまでの剣幕が嘘のようにおとなしくなっているマーサ、基本的に優しい子なので彼女が死ぬということが耐えられないのだろう。
しかも食べ物を取ることが出来ずに死ぬ、餓死の恐ろしさや悲惨さはスラムでの経験から分かっているのだろう。
もちろん竜種の場合、自ら選ぶ死になるのだが・・・
「 だめなのですぅ 大反対なのですぅ 」
流れを断ち切るようなエイシアさんの叫びが響き渡る。
「 なんでだよぉ 死んじまうよぉ 」もはや受け入れる気になっていたマーサにとってはエイシアの反対は予想外だったようで、その表情は驚きと困惑が隠し切れない。
「 ぜーったいにダメなのですぅ 何故ならぁ竜種は子供を死ぬ間際にしか産まないのですぅ 」
エイシアさんが反対する理由はそこにあるようだ、彼女にとっての至上命題は加護持ちを増やすこと。そのためには僕のお嫁さん達が子供を産んで、その子供たちに加護を与えるのが最も効果的。それは電子精霊族の勢力拡大につながり、エイシアさんの悲願である。
「 でも、子供は産むんでしょ 」
さっきエイシアさんは死ぬ間際に子供を産むと言った。少なくとも子供を産まないわけではないと思うのだけれどもどうなんだろ。
「 ですからぁ 竜種は伴侶が死なない限り生き続けるのですぅ。 リックさんわぁ元々ハーフエルフの上にぃ神様庇護下にあるのでぇ相当長生きなのですぅ。 ですから事実上子供を望めない竜種は不要なのですぅ 」
まぁはっきりした意見表明ですこと。いっそすがすがしい限り。
精霊としては当たり前の意見なのかもしれないけれど凄いね。
「 そんな冷たいこというなよぉ この子可哀そうだよ。 この子の分もあたいが産むからさぁ嫁にしてあげようよ 」
あららマーサは完全に同情して賛成に転じた模様です。さすがは筆頭嫁だね、基本的に涙もろいし面倒見は良い子だからねぇ
「 ありがとうございます マーサ姉様 お気持ちは嬉しゅうございますが、始まりの精霊様にここまで反対されましては・・・ 」
「 ・・・ え 姉 姉様って あ、あたいのことかい 」
マーサさんがものすごく食いついてきましたよ。
「 あい、筆頭嫁とあらば他の嫁にとっては姉様というべき存在、不躾な呼び方でしたでしょうか・・・ 」
「 う、嬉しいよぉ あたいなんかを姉様なんて呼んでくれて・・・ 大丈夫だよあんたはあたいの妹だ、絶対に嫁にしてあげるから安心して 」
「 いくらぁマーサさんを味方に付けてもぉ ダメなものはダメなのですぅ 」
うわー マーサVSエイシアの構図になってきたよ、これはこれで困るなぁ。
マーサにしてみれば泥棒猫かと思ったら、妹分が出来そうなので一気に嬉しくなったようだ。
まぁマーサが喜んでいるからいいけど、見た目はともかく実年齢的には年上だよねぇ・・・竜種の成長段階とか分からないから考えるだけ無駄か。
『 竜種の成人条件は伴侶を見つけることですから、まぁ成人したと言ってよいと思いますよ 』
ミーネのワンポイントアドバイスきたぁ!
『 ところで竜種ってドラゴンなの? 』
『 ご主人様の想像するドラゴンとは違います。どちらかというと亜神ですね、神に近い存在で元々は異世界からやって来たようです 』
『 亜神 ? 』
『 はい、神ではありませんが自らが望むだけの寿命と不死身に近い肉体を持つ存在です。それがまるで伝説の竜のようだということで竜種と呼ばれています 』
ミーネが嘘をつくはずもないけれど、だとすればなんでそんなすごい存在が僕の嫁になりたいんだ?それが不思議
『 なんで伴侶が僕なんだろう 』
『 竜種の伴侶選びの基準は分かりかねますが、ご主人様はそれだけの存在なのです。私から言わせていただけるならば、ご主人様も自己評価が低すぎますマーサ様の事を言えません 』
『 うーん 』正直よくわからないが、さっきも僕の血を舐めているってことは他の人では彼女の伴侶に成れないのだろうし間違っても死なせるなんてことは出来ないよね。問題はエイシアさんか・・・頑固だからなぁ結構。
「 認めるわけにわぁ いかないのですぅ 」
「 だめだよぉ この子はあたいの妹なんだから 死んだりさせないからね 」
うわぁマーサは完全に妹と認定して守ろうとしてるよ。
なんとかエイシアさんを説得しないとなぁ。
『 ご主人様 竜種は伴侶に完全に服従します。死ねと言われれば躊躇なく自死を選びます(この場合の自死とは糧を求めないことによる死です。その他の手段では死ぬことはありません)。竜種にとって伴侶とはそれほど重要なのです 』
『 じゃあ 加護を受け取ってもらうとか出来るの 』
神に近い存在であって、生まれてこのかた誰とも会っても話してもいないとするならば加護は持っていないのかも
『 竜種を含む亜神は加護など必要としないため持っておりませんが、与えることは可能です 』
それを聞いた僕は
「 エイシアさん この子に加護を与えられるとしたら嫁として認めてくれますか 」
「 はぁぁ 亜神に加護ですかぁ 」 エイシアさんが素っ頓狂な声で反応する。
「 ねぇ 君は加護を受けてくれるかい 」
僕の問いかけに対して竜種の女の子ははっきりと答えるのだった。
「 主様のお心のままに 私のすべては主様の物、いかようにもお使いください 」
「 えぇぇぇぇぇ 亜神に加護・・・ 受け入れる・・・ すごいですぅ すごいですぅ リックさん とってもすごいのですぅ 」
「 リックぅ じゃあこの子は大丈夫なのかい 」
涙目で聞いてくるマーサに対して大きく頷いて返事にかえる。
「 はぁぁぁぁぁ もう もぉぉぉ リックさんは素晴らしい始祖なのですぅ 認めますぅ認めますぅ 貴女を嫁と認めるのですぅ 」
でた、エイシアさんの必殺技! 掌返し! あっという間に態度がチェンジ!!
「 早速ぅ 加護をぉぉぉ はっ ・・・ 名前 名前なのですぅ 名前を付けるのですぅ 」
エイシアさんが血相を変えて僕に向かってきた。
そうか、加護の儀式には名前を宣言する必要があるのだったね。
「 主様ぁ どうか私に名前をお願いいたします 」
嬉しそうに見上げてくる黒髪の破壊力すごいな。
しかし名前かぁ・・・
ペットに付けるわけではないしなぁ うーん 可愛い名前なのか それとも 見た目から和風な名前もいいかな
これは困ったなぁ かといって時間かかりすぎるとエイシアさんが爆発しそうだしなぁ
『 なんか私の時より 悩んでおられるのは気のせいでしょうか 』
ミーネさん念話に棘が入ってますよぉ
竜種、黒髪、着物・・・
間違ってもゴシックロリータとかでなくて良かった。それだけはあかんからね。
そういえば・・・龍神に 確か瀬織 うん セオ どうだろうか
「 セオ 君の名前は セオ 竜の姫 セオ 」
「 あい、私はセオ 主様に頂いた大事な名前 今より私はセオと名乗ります 」
「 おおお オーケーなのですぅ さぁ加護を受け取るのですぅ あぁぁぁぁぁ 」
エイシアさん的にはじらされ過ぎたようで、テンションがマックスのまま加護の儀式に突入しました。
安心してください、ちゃんと加護は付与されて。
嫁の仲間入りも出来ました。
はぁ 疲れた・・・
『 私もです・・・ 』
およみいただきましてありがとうございました。