混沌と親父ギャグ
本日も投稿でございます。登場人物が増えてきましたが、人間じゃない… すみませんこういう仕様です。
エイシアさんの気合が頂点に達したのだろう
ストレッチを終えると、おもむろに口を開いた
「では、これより電子精霊としての~ 最初の大仕事を始めさせていただきますぅ」
何が始まるのか、とりあえず見ているとマーサが身動きしだした。
目が覚めたのかな
「 ・・・ ん ん リック?」
見上げてくる顔が可愛い、まだ理解が追い付いていないようだ。
「まだ無理しないで、寝てていいよ。 頭も痛いだろうし 我慢しないで」
自らの経験から、目が覚めた後の頭痛にマーサが苦しんでいるかと思ったのだが
「平気だよ、むしろ元気が出てきたくらいだし。何か始まるのでしょあたいも見たい、だってあたいにも関係あることなんだろ」
マーサの顔は、決して無理をしている感じではない
僕の場合は始祖としての加護だったから、色々と違いがあるのかも知れない。
それにマーサも立派な加護持ちだ。電子精霊の大仕事に立ち会う必要もあるだろう。
「その通りですぅ マーサさんにも大いに関係があるのですぅ」
エイシアさんがこちらを向きながら話しかけてくる、ちゃんとこちらの話も聞いていたようだ。
「役者も揃ったしぃ 始めるのですぅ」
エイシアさんは空中に浮かびながら、大きな声で話を始めた。
「私は電子精霊、その始まりの精霊エイシア。この身は神により認められた精霊であり、人の子に加護を与える資格を持つ者」
一気に言い切った後、何もないはずの四方の空間を見渡してゆく。
「異議ある者は発言を、我を知り認める者は沈黙を以って同意せよ。なおこの場には我が加護を持つ人の子が在り、その眼前に姿を表さぬはいかなる理由在ってのことか」
エイシアさんの何時もとは全く違う話し方と迫力に、僕もマーサも全く口を開けない。もっとも今は口を挟む雰囲気でもない、それくらいは僕でもわかる。
そして、何もなかった筈の空間が揺らぎ始めるのを僕らは目のあたりにする。
「 応 」 張りのある低い声がしたかと思うと、小さいけれど迫力のある壮年の男性が空中に現れた。
『 あれは 土精霊の長、アレト様です。 精霊族の中でも一目置かれる重鎮です』
ミーネが教えてくれる。
「 なら私も姿を見せますわ 」 少し甘い声が響いたかと思うと、深紅の長い髪と大人の雰囲気を漂わせる女性が姿を見せる。
『彼女はレイヤ様、火精霊の次席です。ちなみに火精霊の長は、ここ500年ほど不在となっております 』
ミーネがしてくれる説明を聞いていたら、3人目の精霊が無言で姿を現していた。
『彼女は、ディネア様です。水精霊の最古参にして、最も力のある方です。水精霊には長や席次といった概念はないのですが、最古参である彼女がこの場に現れるとは、正直驚きです』
精霊なので人に見える外見はあまり意味がないのかもしれないけれど、ほぼ半透明のドレスだけを身に纏うのは止めて欲しいです。目のやり場に困ります、はい。
ちなみに、髪色は限りなく透き通るような青い色。
無言なのはいつもの事らしく、ほとんど口を開くこともないらしい。
「やれやれ、わざわざ姿を見せるのも面倒なのだけれどねぇ」
最後に明らかに気だるそうに姿を見せたのが風の精霊だろうか。
『最後に現れたのが、風精霊のエスティ様です・・・ 。気まぐれな方なので現れたことが奇跡に近いです。風精霊の長ですが、普段は次席に全て任せており、ほぼ引きこもりのはずなのですが』
冷静なミーネが驚いている感じが伝わってきた。エスティ様、引きこもりの精霊って・・・ありなんですか。
『しかし、すごい精霊ばかり集まったという認識でいいのかな』
『はい・・・ 事実上の精霊トップが揃っています。このような状況は1000年以上前に、かろうじて記録があるだけです』
「要請に応えていただき、感謝する」
4大精霊をゆっくりと見渡しながら、エイシアさんが語り始める
「我はここに告げる、条件は整った。始祖たる人の子、新しき理、その成した事象、そして添い遂げる者」
エイシアさんは視線を僕たちに向ける。
「始祖は良き男、健やかであり好ましい色を持っていますわ」
火精霊のレイア様が僕のそばで言ってくれた。
多分褒めてくれたのだと思うが、そのあとで僕の頬にキスをしていった。
あの、マーサが引きつっているのですけど・・・
相手が小さくても精霊でも嫉妬しているようなのですが。
「 理は優れておる、実に新しく力強い 俺は認めよう 」
アレト様は土の精霊、僕の目の前までやってきて大きく頷いてくれた。
『当然です。ご主人様の魔法は実に素晴らしいです』
ミーネさんの意見は身びいき過ぎな気がしますよ。ありがたいですが。
「・・・ 魔法 綺麗 祝福 」
とても小さいけれど、透き通るような声でディネア様が声に出すと、一瞬で僕の目の前に移動して来た。
そしてレイア様がキスをしてくれたのと反対側の頬にキスをしていかれました。
マーサは当然のように引きつっています・・・まいったな
他の精霊の皆さんも呆気にとられたような顔をしています。
『ええええ、ディネア様が口を開かれて、ししししかも祝福を・・・ こんなこと記録に残っていません。 えええええ』
ミーネが動揺している??? こんなミーネ初めてだよね。
『そんなに驚くことなの?』
『 大変失礼しました。あまりのことに冷静さを失いました、それくらいの衝撃的な出来事です』
どうやらとんでもない事態になっているようだ。
まぁマーサの怒りもとんでもない状態みたいだけど。後がこわいです・・・ ハイ
「添い遂げる者は可愛いくらいに嫉妬深いようだが、筆頭嫁としてはそのような事はあまり望ましくないぞ。まぁ今後に期待しよう。まぁ仲が良いのであれば子宝には恵まれるであろうさ」
いかにも気だるげに話をしてくれたのはエスティ様
その後も実にゆっくりと僕の前に移動してくると、屈みながら僕の目を覗き込んでくる。
ゆったりとした服の、その胸元から見えるのは・・・ え えええ
正確なところ精霊に性別があるのかは知らないけど、見た目は少なくとも区別できる。
てっきり、可愛い男性(?)だと思っていたエスティ様はどうも立派な双丘をお持ちのようで。
っていうか見せつけてないですか、エスティ様
「僕もついでに」 そういいながらエスティ様は額にキスをしてくれた。しかも柔らかいものを押し当てて。
まさかの僕っ娘さんですか、ボーイッシュだけど実はとか言うパターンですか。
でも、こちらはそろそろ視線で殺されるかも知れないです。
「我が始祖に対して、過分なるお心遣いに感謝する。各位においては異議なしと受け取ってよろしいか」
4大精霊は沈黙を持って答え、それぞれの顔をエイシアさんがゆっくりと見渡した。
「異議無きと受け取らせていただく、各位には感謝申し上げる」
大きく息を吸い込んでエイシアさんの話は続いてゆく
「聞け、数多の精霊たちよ。ここに我は告げる、電子精霊の氏族としての成立を。 4大精霊の意を表す者達からの異議は無く、条件はすべて整った。我は宣言する、この世界において5番目となる精霊族が今ここに誕生したことを。神よ、管理神トォーニ様に申し上げる、電子精霊族の成立をここに宣言したことを。この行為が神の意にそぐわぬのならばいかなる罰をも受け入れましょう、審判やいかに」
静まり返った雰囲気の中、僕らはただ息を潜めていることしか出来なかった。
沈黙と静寂に支配された時間がどのくらい続いたのか、ほんの数秒だったのかそれとも1時間だったのか
その緊張感を破ったのは甲高い声だった
「 いいんじゃなーい !! 」
声と共にその場に突然姿を現したのは、スーツ姿の男性
年の頃は50代後半? 眼鏡を掛けて、メタボ気味のお腹、寂しくなった髪の毛と絵にかいたようなサラリーマン
あれ、気のせいじゃなくて・・・ しかもあの妙に甲高い声
「阿佐ヶ谷のオジさん???」
思わず叫んでしまった。目の前に現れた男性は父親の先輩で、我が家に良く遊びに来ていた人。
名前は戸鬼塚さん。
東京の阿佐ヶ谷ってとこに住んでいるらしく、いつも駅前の洋菓子店の土産を持って来てくれた人。
「よーう、りっ君久しぶり~」
やっぱりそうだ、でもなんで???
意外すぎる登場に軽くパニックを起こしてしまう僕
「びっくりした~ ? 」ニコニコ笑いながら聞いてくるけど、何と答えてよいのやら
「トォーニ様、態々(わざわざ)の御顕現に感謝を申しあげます。先ほどのお言葉は神意と捉えてよろしいでしょうか」
「もちろん ええよ~ しっかしエイちゃんは相変わらず固いねぇ せっかく可愛いのだから、もっとソフトにね」
「御心に沿うよう努力いたします」
エイシアさんは深々とお辞儀をしながら話している。
「え、え、えええ オジさん 戸鬼塚さんが神様? え、トォーニ様って ええ」
1人、パニックです僕。だって良く家に来てましたよ、お土産ももらったしお年玉だって・・・
「いやー、黙っててごめんごめん ごめんくださーい、ごえんくださーい あげません」
うわー、間違いないや。あの寒ーいギャグ。間違いなく戸鬼塚さんだ、子供の頃から何度も聞かされたもの・・・
「トォーニ様 お楽しみのところ大変申し訳ございませんがよろしいでしょうか」
エイシアさんが極めて事務的に入ってきました、実に正しい対応です。
正に親父ギャグ連発の課長に対する、冷ややかな女性社員の対応そのもの。
もしかしてOLの経験でもあるのだろうか。
「はいはーい、何かなエイちゃん」
「電子精霊の精霊族昇格はお認めいただけますでしょうか」 気のせいでなく、エイシアさん怒ってる?
「もちろんOKですよ OKOK OKスト○」
うわー、牧場じゃないパターンのヤツ。主に南関東でしか理解できないはずのやつだよ。
「では、たった今よりランドヴェールにおいては電子精霊を含め5大精霊族となることが神により承認されました。電子精霊族の長は、このエイシアが、始祖の加護を持つ者はこれなるリックの名を持つハーフエルフ。そして始祖と添い遂げる筆頭嫁は、兎族のマーサが担います」
どうやらこれで終わるのかな、色々聞きたいことは山ほどあるけど神様に直接聞いたら不敬とかに当るのだろうか。神様はともかくとして、機嫌が悪化しているエイシアさんに怒られるかも。あ、それを言ったらマーサの怒りを鎮めるのが先か・・・困った。
そんなことを考えながら、神様らしい戸鬼塚のオジさんやエイシアさん、4大精霊様の姿を眺めていたのだけれど・・・
「 ちょっと待ってぇ~ なのよ~ 」 明らかに聞いたことのある声が、聞いたようなフレーズで訴えてきた。
嫌な予感しかしないのですけどぉ
目の前に現れたのは、エルフ・・・ 金色の長い髪の毛と、人種よりも長く尖った耳。
ある意味で見慣れているような、見慣れていないような若すぎるその姿
「ルーちゃん 何してんの」
「はぁ~い リックちゃん ひさしぶ~り~ ちゃんとご飯は~ たべてる~」
相変わらずのスローな話し方、これで女王が務まるのか本当に心配。
「ルーナリエ女王 わざわざ発言を求めに来たということは何か異議でもおありか。だが例えエルフ国の女王と言えども、神もお認めになった決定に異議を唱える資格は無い。立場をわきまえられよ」
エイシアさんが厳しい声と口調で咎めるように話しかける。
「もちろ~ん、そんなつもり~ないですよ~」
儀式に入った途端に普段とは正反対の口調になっているエイシアさんに対して、うちの母親の口調に全くぶれはない。まぁ神様が本当に戸鬼塚さんなのだとしたら、昔から知っているってことだしなぁ
「では何故に割って入られたか、事と次第によっては・・・」
段々口調がきつくなるエイシアさんを遮るように、うちの母親は言葉を被せてくる。
「え~と、 リックちゃんがお嫁さんを貰うって聞いたのだ~け~ど あたしは~ ちょっと怒ってるの~」
うちの母親が、拗ねた顔をこちらに向けてくる
あれ、でも何か透けてない? 気のせいかルーちゃんの向こうに窓が・・・ こっちを向いた際に動いたから気が付いたのだけど 透けてるよね
「ルーちゃん、幽霊にでもなったの? まさか・・・」
思わず心配になって大声で聞いてしまった、だって母親が透けてるって
「そんな~ ことより~ その子がお嫁さんね~ ふーん 」
いや、そんなことで片づけられる話ではないのですよ母上。万が一にも母親が幽霊化していたらえらいことです。しかもマーサがめちゃくちゃじっくり見られてるし~。
しかもエイシアさんは怒っているし、神様はニコニコしながら土精霊の長であるアレト様と世間話はじめてる。
あかん、収拾がつかなくなってきてる
混沌だ。
神様が居て混沌って、神話じゃ無いのだから勘弁してください。
こんばんは、本日もお読みいただきまして感謝感謝でございます。新たな評価も頂き嬉しい限りでございます。




