現実はラノベより奇なり
本日2話目の投稿となります。
あの後、騒ぎすぎて喉が枯れてしまったので、母親の用意してくれたお茶を飲みながら、少し落ち着いて話を聞かせてもらった。
いまだに信じられないけど、受け入れないといけない現実でもあるらしいので整理しよう。
前提として、父親は日本生まれの日本人。
元格闘家にして、政治家の叔父(父親の叔父)のボディーガード兼秘書(?)的なこともしていたらしい。今は、親戚の会社で働いている。
母親は、エルフ・・・。
異世界生まれの異世界育ちで、純エルフ(そんな言葉があるのかは知らない)。
水の魔法と風の魔法を使いこなす高位な魔法師であり、弓も達人らしいよ。
そもそも日本に居た父親が、なんで異世界に関わることになったのか、詳細は色々と面倒すぎるから省略するけど。
なんでも異世界の神様にスカウトされて(場所は代々木らしい)30歳頃に異世界に連れて行かれ、神様の加護とかもあり、元々規格外に強かった人がさらにメキメキ強くなって、なんか勇者専用の魔法とかも使えるように進化。ありがちな展開だけど復活しようとしていた魔王を、エルフの魔法使いとともに倒しちゃったそうな。
もうその時点で、なにそのライトノベルって感じだけど事実らしい。
そんでそのエルフの魔法使いが今の母親、これもありがちな展開だよね・・・まさにテンプレそのもの。
しかも、エルフの次期女王で、そろそろ戻ってエルフの国を治めろとの要請もある。
じゃあなんで日本に来たの?って言う疑問が湧くでしょ。
実は一昨年亡くなった、うちの父親の叔父さん。
若いころの父親がとても世話になった上に、仕事も面倒見てもらった大恩人。
しかもその叔父さんのとこは子供がいなかったので、父ちゃんはとても可愛がってもらっていたらしい。残念ながら奥さんは父ちゃんが異世界にいるうちに亡くなられていて、叔父さん自身は政界を引退したのだけど、若い頃からの無理もあったし引退後は病気になってしまい入退院を繰り返していたから、叔父さんに少しでも恩返しするために、うちの両親が老後の面倒を見ることにした。
その叔父さんも昨年亡くなって(僕も葬儀には参列しました)、母親もエルフの国の女王継承を長いこと待たせていたとあって、異世界へ帰ることになったらしいよ。
(神様が異世界との往来には責任を持ってくれるらしい、すごいね。)
そこまでは分かる、大人だし色々事情があるよね。でも僕としては当然、言ったよ。
「もう18歳だし、子供じゃないからこのまま日本で暮らしたい」って
そしたら、「・・・ぇぇぇぇぇぇ だーめだよぉ~ ぜーったいだめ」
母親からは想像通りの全否定の答えが返ってきたけど(甘いから、うちの母親)その後の説明がさぁ、寂しいからとか、家族が離れ離れはダメとか僕が勝手に想像した理由とは違った。
「一人暮らしはしてもらうけど、日本ではだーーーめ」
「え、一人暮らしは良いの?でも日本はダメ???」
妙に口調とあった仕草と表情で、自分の母親ながら見とれてしまいそうになるとこを、ぐっと堪えてさらに反論しようと思ったのだけど。
このままでは話がまともに進まないと考えた父親が詳しい説明をしてくれた。
ようするに、僕はエルフと人間の間に生まれたハーフエルフこれ大前提。
ハーフエルフは、子供から大人までの成長速度は人間に近いけど、大人になってからの老化はエルフと同様にほぼ進行しない(外見上や肉体的な老化がほぼ無い)。
しかも個体差はあるけど、ハーフエルフでも500歳くらいは普通に生きるらしい。
あ、そうそう僕の耳はエルフ耳ではありませんでした。
僕は外見上、人族の特徴が強いタイプのようです。(少し残念、エルフの特徴が強ければイケメンだったかも・・・)
ちなみに、うちの父親は神様に呼ばれた時点で、老化に一時停止の魔法が掛けられ、更にエルフの王女と結婚したことにより、風の精霊と水の精霊から最大級の祝福を受けた結果、母親の命が尽きるまで死なないし老化もこれ以上しないらしい。
もうねぇ、ホントどこのライトノベルですかって話。
なので、僕がこのまま日本で生活するのは困難ってことらしい。
まぁそうだよね、20年後に同窓会とか行ったら、周りはみんなアラフォーなのに僕は見かけ上なーんにも変化なし、・・・30年後は・・・絶対に無理だな。
魔法で見かけを変化させる方法も聞いてみたけど、あれはうちの母親が毎日かけ続けていた精霊魔法で、当然のことながら、魔法なんて使えない僕には無理な話でした、残念。
あと、母親が言っていた『一人暮らしはしてもらう』ってことも説明してくれた。
これから暮らす異世界では、15歳くらいになれば普通に独り立ちしているらしい。それは人族もエルフ族も一緒で、特にエルフは子供のころから旅に出て、世界を渡り歩いてくることも珍しくないらしい。
「あたしは~ 15歳から世界中を旅していたもん」
これはうちの母親の発言。
ちなみにその時に母親の実年齢も教えてくれたのだけど、132才だって。
エルフとしては、まだ若いらしいけど、先代の女王が引退したいから、早く交代するように言われているとのこと。
「可愛い子には旅をさせろって~言う 素敵なことわざもあるしぃ。 シロー君がきっちり鍛えたものねぇ。あと~ あたしも たくさんお勉強教えたか~らぁ 大丈夫よぉ」
ちなみにシロー君って、父ちゃんのことね。
「そうですねぇ(以下棒読み)
子供のころからの厳しい修行はこのためでしたか。父親には物心ついたころから、ガッツリ鍛えられました。しかも学校まで15kmとか毎日走って通いました。
高校に至っては、30km以上もありました・・・もちろん片道です。もちろん学校を休んだことは一日もありません。台風でも大雪でも走る日々。
母親には、英語でもなく、ドイツ語でも中国語とも違う、全く誰も知らないような言葉を教わり、最終的には全く不自由なく読み書きできるようにしてもらいました。今思えばあれは異世界の言葉だったのですねぇ。全てはこの日のため!!」
僕の熱弁(棒読み)は続く。
「エルフの女王になる母親と、そのそばにいて女王を守る騎士であり、勇者にして配偶者の父親。ちなみにエルフの王国は世襲制でもなんでもないし、女王の子供でも関係なく平等だそうです・・・ 素晴らしい!!!」
大きく深呼吸して、気持ちを整えてから
「ようするに、これから一人で生きて行けってことかぁーーーーっ」
まぁ覚悟はしたものの、確認と甘えを込めて思いっきり叫んだ僕に、帰ってきた答えは
「がんばってねぇ~~~」というエルフの次期女王様の能天気な声と
「父として教えるべきことは全て教えた、達者に暮らせ」何か知らないけど、妙に古風な言い回しの、神の加護を持つ勇者様のお言葉でした。
明日以降も基本的に毎日投稿を目指しております。
ここまでお読みいただいた方、本当に感謝でございます。
明日以降もどうかよろしくお願いいたします。